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公爵令嬢の婚約者  作者: よしの
第一話 アリクレット男爵家
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第二十四話 リースレイア王国

≪ガロ視点≫

会議を抜け出したガロは開発室へ戻り、真面目に次の戦いに向けての研究を行っていた。

とは言え、ミスクール帝国からはあれ以来魔石が入って来てはいない。

「さてと、どうしますかね」

ガロは独り言を言い、隠してあった魔石を取り出して、思考を巡らせる。。

人を魔物に変える魔石はすべて処分するように言われていたが、そんな勿体ない事をする訳もなく、隠し持っていた訳だ。

この魔石、一度魔物にしてしまえば、普通の魔石として回収出来るのは実験で分かっている。

ミスクール帝国の狙いは、魔法を吸収させる事では無く、魔石を簡単に入手するための物だという事だ。

しかも大量に用意出来る様だから、魔道具を作る材料としては最高の物に成るだろう。

ただそこに、人の命がかかわって来るのが問題だが・・・。

動物でも実験したが、出来上がった魔石は人で作った物より劣る事が分かっている。

何が違うかと言うと、扱える魔力量にかなりの差が出て来る、動物で作った魔石だと中級魔法程度までだが、人で作った魔石では上級魔法を超える魔力量を扱う事が出来る。

魔導具及び魔剣は、魔法の組み合わせによって、さまざまな効果をもたらす事が出来る訳だ。

つまり、人で作った魔石を使えば、より強力な魔導具を作る事が出来るという訳だ。

その分魔力を大量に使用してしまうが、そこは魔力を吸収出来る魔石もあるから、どうにか出来ると言う物だろう。

俺としてもその魔石を使い、強力な魔剣を作りたいが、無い物はどうする事も出来ない。

俺に出来る事と言えば、対策を考え軍に伝えてやる事だけだろう。

パーヴェルとヨルゲンには取り返しのつかない事をしてしまったからな。

せめての罪滅ぼしに、他の仲間がこの魔石の犠牲とならない様、研究を続けて行く事にしよう。


≪ミスクール帝国サイド≫

リースレイア王国が戦争に向け準備を進めているという情報は、ミスクール帝国も入手していた。

そもそも魔石の実験台として使ったのだから、攻め込んで来られるのは当然ともいえた。

その対策会議の為、ミスクール城の会議室には三人の男性が集まっていた。

年老いていて、笑みを浮かべている、摂政のプライス。

やや太っており、怪しい目つきをした、魔道具開発室長ステフィン。

鍛えられた体に、ガッチリとした体格の、ミスクール帝国軍司令官マクミラン。

「ステフィンよ、魔道具の準備は整ったのか?」

プライスが笑みを浮かべたまま問いただした。

「くふふ、必要な数の魔石は、帝国軍に協力して頂きそろえる事が出来ましたので、あと数日で準備が整います」

「何が協力してだ!新しい魔道具の実験に兵を貸したが、自国の民を犠牲にして魔石を作るなど言語道断だ!」

マクミランはステフィンを睨みつけ怒鳴り声を上げた。

ステフィンは実験と称して村の住民全員を魔物に変え、帝国軍に始末させて魔石を回収していたのだった。

「くふふ、あの村は疫病に侵されていたのですよ、放置しておいては帝国全土に広がってしまいますからね」

ステフィンはマクミランの視線を軽く受け流して、平然と答えた。

「何が疫病だ!あれは貴様が作り出した魔石による物では無いか!」

「マクミランよ、お主の怒りはもっともだが、事態は既に終わった事、民の犠牲を無駄にしないためにも我らは勝利せねばならぬ」

「くっ、ステフィンよ、今後自国民及び我が軍に被害が出た場合、お前を生かしてはおかぬから覚悟致せ!」

「くふふ、ご心配なさらず、今後は敵がやって来てくれますからね、二度と被害を出さないとお約束致しましょう」

「さて、マクミランは防衛線を築き、敵を打ち破る準備を致せ」

「分かった」

「ステフィンは魔道具の作成を急げ」

「くふ、了解しました」

会議を終え、三人はそれぞれの持ち場へと戻って行った・・・。


≪エルレイサイド≫

ソートマス王国を飛び立ったエルレイ達は、二時間ほどでリースレイア王国へとやって来ていた。

本来であればもう少しゆっくり飛ぶつもりだったが、ルリアが速度を上げた事で、仕方なく高速で飛ぶ事となった。

おかげでノーリッシュと二人の部下は精神的に疲れ果てている様だった。

「ノーリッシュ、大丈夫か?」

「あぁ、大丈夫だ・・・」

発する声に元気が無い様だが、彼にはこれから案内して貰わないといけないからな。

「これから高度を落とす、何処に向かえばいいか指示を出してくれ」

「分かった・・・」

ノーリッシュに案内して貰い、リースレイア王国の王都へとやって来た。

「エルレイ、王都の門の外に降りてくれ」

「分かった」

門の外にある道へと降り立つと、ノーリッシュと二人の部下は地面に着いた事に安堵している様子だった。

「やっと着いたわね、でもここから城まで歩くのかしら?」

ルリアがノーリッシュに尋ねた、王都上空を飛行出来ないのは安全上必要な事だが、ここから城まで歩いて行くのは俺も嫌だった。

「暫く待っていてくれ、連絡を入れたから馬車が迎えに来てくれる手筈となっている」

「分かったわ」

どうやら馬車が来てくれるようだな、暫く待っているとノーリッシュが言ったように馬車が二台門から出てこちらへとやって来た。

ノーリッシュ達は前の馬車に乗り、俺達は後ろの馬車に乗り込んだ。

馬車は王都へと入り城へと向かって行った。

「意外と栄えている様ね」

ルリアは馬車から見える街並みを見て感想を述べていた。

「そうですね、買い物に行って見たいですね」

「リリー、残念だが今回は遊びに来た訳では無いから、買い物に出る事は出来ないだろう」

「そうでした・・・」

「でも次来る時は、皆で買い物に行けるように頑張ろう」

「はい、エルレイさん」

城へ着くまでの間、皆で街並みを眺めながら楽しく会話をして行った。

城へ着くなり、俺達五人は謁見室へと通された。

事前に連絡を入れいてたためか、それとも状況が切迫していたりするのだろう。

王様の前で跪き頭を下げた。

「面を上げよ」

横に立っている人から声が掛かり、俺は頭を上げて王様を見た。

王様は太っていて、偉そうに玉座にふんぞり返っている、これこそが王様って感じだな・・・。

「ソートマス王国の魔法使い、エルレイ・フォン・アリクレット侯爵です、リースレイア王国の要請により馳せ参じました」

俺がそう言うと王様は満足そうに頷いていた。

「ふむ、私がディヴァール・ヒュー・ド・リースレイア王だ、エルレイ、よく来たの」

「はい、こちらはソートマス王より預かって来た親書となります」

俺が親書を差し出すと、文官が受け取り王様へと差し出した。

王様はそれを受け取り、軽く目を通しただけで俺を見て来た。

「うむ、分かった、今日はゆっくりと休み、明日からに備えてくれ」

「はい」

親書の内容読んで無いよな、部下任せの王様なのだろうか・・・。

それはいいとして、面倒な王様との謁見は終了し客室へと案内された。

俺達がソファーへと座ると、メイドさんがお茶とお菓子を用意して下がって行った。

「なんだか不思議な感じです」

「そうですね、少し落ち着かない気がします」

リゼとロゼはメイド服では無いから、俺達と同じ扱いをされる事に戸惑っている様子だった。

「リゼとロゼも魔法使いで俺の婚約者なのだから、堂々としていてくれ」

「そうですね」

「分かりました」

「そんな事より、あの王様大丈夫なのかしら?」

ルリアは先程見た王様の態度が気に入らない様だった、確かに俺もあれは無いんじゃないかと思った。

今まで会った王様は、しっかりした人ばかりだったからな、でも俺のイメージではあの王様が一番しっくりくる。

「そうだな、部下がしっかりしていれば大丈夫なんじゃないのか?」

「それって駄目って事なんじゃない」

ルリアは王様に対して不信感を抱いている様だった。

さて、今後の事を話し合っておく必要があるだろう。

『皆これからどうするかを話し合おう、まだこの国が信用できないから、重要な話は念話でする事にする』

『分かったわ』

『エルレイさん、分かりました』

『はい』

『承知しました』

『今回の戦争は出来るだけ俺達は前に出ない事にする』

『そうなのね?私はさっさと終わらせて帰りたいわよ』

『ルリア、それをしてしまうとこの国に楽をさせるだけだろ、信用のおけない国の土地を増やしてやる必要は無いだろう』

『それもそうね、ではどうすると言うのかしら?』

『今回の相手はミスクール帝国で、どの様な魔導具を使って来るのか分からない、それに魔法も効かないだろうから、しばらく静観する事にしよう』

『分かったわ、弾も使わないのね?』

『そうだ、あれは切り札だから勝てる時にしか使わない事にしよう』

『それは分かりましたが、この国が負けてしまうのではないでしょうか?』

『リゼ、負けても俺達さえ無事なら構わない、今回は出来るだけ相手の手の内を見る事にしたいと思う』

『分かりました』

『その事で、リリーには治療で負担を掛けるかもしれない、勿論俺も手伝うからな』

『エルレイさん、分かりました』

『ロゼはリリーの護衛を頼む』

『承知しました』

話し合いを終え、皆で雑談していると、メイドさんがお客様ですと伝えて来たので入って貰うように言った。

メイドさんが扉を開けると、派手なドレスを着飾った三人の女性が入って来た。

三人ともふくよかな体型で、俺の事を睨んでいる様だった。

「失礼ですが、どちら様でしょうか?」

「おぉ~ほっほっほっ!わたくしリースレイア王国第三王女、ポリアンナ・ヒュー・ド・リースレイアですわ」

「リースレイア王国第四王女、グロリアーナ・ヒュー・ド・リースレイアですわよ」

「リースレイア王国第五王女、ベアトリス・ヒュー・ド・リースレイアです」

どうやら王女様達の様だな、今回婚約者として王女様は不要だと断ったから、何の用があって来たのだろう?

ルリアも王女様と聞いて警戒している様だ。

「これはご丁寧に、私はエルレイ・フォン・アリクレット侯爵です、この度はどの様なご用件でいらっしゃったのでしょうか?」

「特に用事はありませんわ、ただ・・・わたしくとの婚約を断った殿方の顔を拝見しにまいった次第ですわ」

なるほど、親書を送った段階では王女様を一人差し出すとなっていたから、彼女が俺の婚約者になる予定だったという事か・・・。

何というか、断って正解だったな!!

王様によく似た顔と体型だから、正直好きになれない・・・。

「そうでしたか、私はこの様に多くの婚約者がいますので今回お断りさせて頂きました、その事で王女様の御心が傷付いたのであれば謝罪致します」

「その心配はご無用ですわ、わたくしも婚約が破棄されて清々しておりますわ」

「そうでしたか、私達は戦争に向けての話し合いをしておりますので、御用が無ければお引き取りをお願いします」

これ以上面倒な事はごめんだから、お帰りをお願いした。

しかし王女様は帰る事は無かった・・・。

「用事はたった今できましたわ、エルレイの婚約者には貧相な者しかいらっしゃらない様ですから、わたくしが変わって差し上げてもよろしくてよ」

王女様はルリア達を見回して貧相だと言った、ふくよかな王女様からすると貧相だろうけど、明らかに王女様の胸は脂肪だと思います・・・。

「あなたのは単に太っているだけじゃない」

その事をルリアが的確に指摘した・・・けどそれを言ってしまっては不味いのでは無いだろうか。

王女様も顔を真っ赤にして怒っている様だし・・・。

「このわたくしが太っているですって!あなたたちの方こそ栄養が足りてないのでは無いかしら」

「周りを見てごらんなさい、貴方達三人だけ太っているでしょう」

ルリアの言った通り、王女様三人以外は周りにいるメイドも含めて普通の体型をしていた。

「そこの女!私と勝負しなさい!」

王女様は事実を指摘されて気に入らなかったのか、ルリアに勝負を申し込んでしまった・・・。

俺はルリアに断る様にと視線を向けたが、ルリアはにやりと笑っていた。

「その勝負受けたわ!」

ルリアは挑まれた勝負を断るような事は無いと言い切れるが、面倒ごとは避けたかったので断って欲しかった・・・。

「ルリア、ここはよその国だし、自重してくれないだろうか?」

僅かな望みを込めてルリアを説得して見たが無理でした・・・。

「エルレイはどいてなさい、それで勝負の方法は剣かしら?」

「おぉ~ほっほっほっ!勿論剣に決まっておりますわ、では外へと参りますわよ」

「分かったわ」

王女様達は部屋から出て行き、ルリアもそれに着いて行った。

仕方が無いので俺達もその後へと着いて行く事となった。

『ルリア、間違いなく王女様は魔剣を使うと思うぞ』

『分かっているわ、その練習もして来てたから大丈夫よ』

『それならばいいが、相手を怪我させるなよ』

『それは相手次第だわ』

王女様に着いて行き、城の外の広場へとやって来た。

メイドが王女に剣を差し出し、それを王女様は慣れた手つきで抜いた。

ふくよかな体型だが剣の訓練はしている様だな、それに王女様が持つ剣には魔石が埋め込まれていて、明らかに魔剣だと言うのが分かる。

ルリアは魔剣対策をしているとの事だったが、大丈夫なのだろうか・・・。

「僭越ながら私が審判を務めさせて頂きます」

先程王女様に魔剣を渡していたメイドが、二人の間に入り審判を申し出た。

「ルールは相手が降参、もしくは気絶した場合はそこで試合を止めさせて頂きます、よろしいでしょうか?」

「構いませんわ」

「分かったわ」

王女様とルリアは同意し、お互い剣を構えた。

「では、勝負開始!」

メイドが開始を宣言したが、お互いに動かないでいた。

「あら、そちらから攻撃させてあげようと思いましたのに」

「私から動いたら勝負が一瞬で決まって面白くないでしょ、いいからその魔剣を使って来なさい!」

ルリアが魔剣を使う様に王女を挑発した、確かにルリアから斬りかかれば一瞬で終わるだろう、しかし魔剣を使わせる必要は無いだろうに・・・。

「わたくしに魔剣を使わせたことを、後悔させてさしあげますわ」

王女様がそう言うと魔剣が輝き、魔剣の刀身に氷が張り着き一回り大きな魔剣へと変貌を遂げた。

「へぇ、魔剣とは魔法を飛ばすだけの物では無かったのね」

ルリアは魔剣から魔法が飛んで来なかった事に驚いている様だった、俺も魔剣は魔法を飛ばすだけのものだと思っていたからな、あのような使い方が出来るなら俺も欲しいと思ってしまった。

「魔剣の怖さを教えて差し上げますわ」

王女様はそう言ってルリアに斬りかかって行った、ルリアはそれを剣で受け流し反撃するのかと思っていたら、後ろに飛び去って距離を開けた。

「面白いじゃない」

「どんどん行きますわよ」

王女様はルリアに次々と斬りかかり、ルリアはそれを受け続けた。

ルリアの動きがいつもより遅い気がする、よく見て見るとルリアの剣とその周囲は氷に覆われていた。

「そろそろ降参してはいかがかしら?」

王女様は余裕の表情で、ルリアを見下していた。

「その魔剣は相手を凍らせるだけの様ね!」

「それ以外にも出来ますけど、貴方相手に必要無いですわね」

「そう、なら使わせてやるわ」

ルリアは凍っていた自分の剣を思いっ切り振りぬき、刀身に付いていた氷を振り払って、王女様に反撃といった感じで連続で斬りかかって行った。

王女様はふくよかな割に動きは良く、ルリアの剣を受け流し続けて行った。

やはりルリアの剣は、王女様の魔剣に触れる度に凍って行き、徐々に剣速を落としていく事となった。

それはルリアもよく分かっている事だろう、ルリアはある程度凍った刀身を確認すると力一杯振り抜き、王女様に氷の破片を飛ばして当てた。

王女様はその様な事をされると思っていなかったのか、まともに氷片を体全体に受け倒れ込んだ。

「さぁ立ちなさい、その魔剣はその程度では無いのでしょう!」

ルリアは王女様を睨みつけ、王女が立ち上がって来るのを待っていた。

「そこまで言うのであれば見せてあげますわ」

王女様は立ち上がり、魔剣を持ち換えて地面へと突き刺した。

「目覚めよアバランチ!」

王女様の周りの地面から一メートルほどの氷のとげが複数突き出してきて王女様を囲って行き、やがてそれはルリアに向け、次々と打ち出されて行く事となった。

ルリアはそれを避け、打ち払い、全ての攻撃を躱して行った。

「もう終わりかしら?」

「まだまだ行きますわよ」

全ての攻撃を避けられた王女様は少し焦っている様だったが、また同じように氷のとげを作り出し撃ちだしていくが、ルリアに当たる事はなく、やがて魔剣の魔力が切れたのか王女様の攻撃は終わってしまった。

素早いルリアに対して物を飛ばす攻撃はあまり意味が無いな、最初の様に凍らせる攻撃の方が有効的の様に思う。

「どうやら魔力切れの様ね」

「そうですが、まだ負けた訳ではありませんわ」

王女様は魔剣を構えて、ルリアへと斬り込んで行った」

しかし、普通に斬り込んだ攻撃がルリアに通用するはずもなく、ルリアは魔剣を躱して王女の懐に入り首筋に剣を突き立てた。

「こ、降参しますわ」

「そこまで!」

王女様が降参した事でルリアの勝利となった、しかし勝った所で何かを得る事は無いのだけどな。

ルリアは満足した表情をしているので構わないのだろう。

「ルリア、よくやった」

「ルリア、格好良かったですよ」

「ルリア様、流石です」

「ルリア様、お見事でした」

皆でルリアを褒めていると、王女様達は逃げるように去って行ってしまった。

「部屋に戻ろう」

「そうね、部屋に戻ったら治療して頂戴」

「ルリア、何処か怪我をしたのか?」

「怪我では無いわ」

ルリアはそう言って手の平を見せてくれた、あの魔剣を受け続けていたせいだろう、凍傷になっている様だった。

「分かった」

この場で治療しても良かったのだが、ルリアが治療している所を見られたく無かったのだろう。

部屋に戻り、ルリアの手の治療をしてやった。

「他の場所は何ともないのか?」

「えぇ、大丈夫よ、しかしあの魔剣の攻撃を一撃でも受けると、その後どんどん動きが悪くなっていくでしょうね」

「そうだな、そう言う意味ではあの魔剣はかなり強いのだろう」

「俺様ほどでは無いだろうけどな!」

グールがいきなり発言して来た。

「グール、ここにいる間は声を出さないでくれ、グールの事がばれると分解されて研究の材料にされるかもしれないぞ」

「分かったぜ、俺様まだ死にたくはないからな」

この部屋には俺達以外いないから大丈夫だとは思うが、魔道具で盗聴されている可能性が無いとは言えばいからな。

ヘルミーネが遠くの人物を見られる魔道具を持っているから、そのような物が他にもあると思っていた方が良いだろう。

その後は何事もなく過ごす事が出来たが、部屋から出る事は出来ないので、退屈な時間を過ごす事となった。


翌日部屋にノーリッシュが迎えに来て、戦場に向けて出立するとの事だった。

どうやら軍は既に防衛拠点に向け出発していた様で、俺達もそこまで馬車で行かないといけない様だ。

俺達だけ飛んで行っても意味が無いから、ノーリッシュが率いる軍と共に移動する事となった。

リースレイア王都を出て五日後、ようやく防衛拠点の砦へと辿り着いた。

「やっと着いたわね」

「疲れました」

「馬車での旅は疲れたが、皆とこうして旅をするのは楽しかったぞ」

ルフトル王国にロイジェルク様と旅をした時より気を遣わず楽な旅だった。

「そうね、でも馬車の旅はもういいわ」

「私もエルレイ様との空の旅の方が良いです」

「そうだな、しかし今回の戦争の間は馬車の旅だろうから我慢してくれ」

俺がそう言うと、皆更に疲れた表情を見せていた。

「エルレイ、部屋に案内しよう」

「分かった」

ノーリッシュに案内されて兵舎の一室を貸して貰った。

「あまりきれいな所では無いが、これしか無いので我慢してくれ」

「それは構わない」

「それと今から軍議があるから、エルレイは来てくれないか」

「分かった、ルリア達は留守番を頼む」

「分かったわ、行ってらっしゃい」

「エルレイさん、行ってらっしゃい」

「「エルレイ様、行ってらっしゃいませ」」

ノーリッシュに案内されて会議室へと入って行った。

既にそこには数人の男性が座っており、俺はやたらと睨んでくる老人の隣に座らされた。

「皆揃った様だな、軍議を始めよう、まずはソートマス王国の魔法使いに自己紹介をして貰おうか」

この軍議を仕切っている指揮官と思われる人から指示をされた。

「皆様、初めまして、私はソートマス王国の魔法使い、エルレイ・フォン・アリクレット侯爵です、エルレイとお呼びください」

「エルレイありがとう、私はリースレイア第一魔剣軍団長アンドレアルスだ、以後よろしく頼む」

「わしは宮廷魔導士フィリップじゃ」

俺の事を睨んでいた老人は宮廷魔導士だったか、そりゃ睨んでくるわな。

「飛空魔剣部隊隊長バーニアンです」

「魔剣開発部ガロだ」

その後もこの場にいる全員紹介されたが、名前を覚えきるはずもなかった・・・。

「現在の状況を説明しよう、我々はこの場にいて、ここからミスクール帝国の砦を落とすために進軍する予定だ。

此方の部隊は全体で六万、ミスクール帝国の砦に配備されている兵の数は二万と少ない。

これ以上敵が増える前に攻め込もうと思うが、皆の意見を聞きたい」

アンドレアルスは地図を指しながら説明をし終えると、皆を見渡していた。

暫くの沈黙が訪れたが誰も反論する事は無かった、そしてアンドレアルスが俺に聞いて来た。

「エルレイは何かあるか?」

「私は今日此方に着いたばかりで状況が分かりませんので、作戦に関して異を唱える事はありません、しかし質問をしてもよろしいでしょうか?」

「うむ、構わない、何なりと聞いてくれ」

「ありがとうございます、では一つ目、ルフトル王国との戦いで使った魔石に関しての情報を出来る限り教えて下さい。

二つ目、ミスクール帝国が所有する魔導具に関して、分かっている物があれば教えて下さい。

三つ目、今回の戦争に関してなぜ私が呼ばれたのかを教えて下さい、以上です」

「ふむ、一つ目は後でガロに答えさせよう、二つ目は敵がどの様な魔導具を使って来るかは分からない、三つ目だが、エルレイはこれまでの戦いで勝利を収めて来た様だからな、今回の戦いでも勝利をもたらしてくれ」

・・・敵がどの様な魔導具を使って攻撃して来るのか分からないで、戦争を仕掛けるつもりなのか。

はっきり言って負けが確定しているのでは無いだろうか、砦に攻め込んだ際に全滅するんじゃないのか?

それに俺を頼りにされても、今回の戦いで俺が役に立てることは余り無いと思う、どうせ魔法が効かないのだろうからな・・・。

「ガロ、説明してくれ」

「分かりました、ルフトル王国との戦争の際に使われた魔石は、一定以上の魔力を吸収すると近くにいる生物を吸収して魔物へと変えます。

距離にして一メートル、それ以上離れていた場合、魔物は発生せずに魔石が砕け散ります。

これはあくまでこの国に渡された魔石を基に実験をしたため、より大きな魔石だとその範囲は広がると思います。

そしてその魔石に吸収された魔力を魔法へと変換した場合、吸収された魔力をすべて使い斬る事は出来ませんでした。

つまり徐々に魔石に魔力が貯まって行き、最終的に近くにいる生物を魔物へと変えてしまいます。

あの魔石の安全な運用は出来ないという事です。

ただし、魔物から取れる魔石は良質な物で、ミスクール帝国はこの魔石を得る為に作り出した物だと判断します」

なるほど、やはり魔石を得る事が目的なのだな、という事は、魔石を得る為にこちら側に向けて使われる可能性が高いという事だな。

「ご説明ありがとうございます、ガロさんに一つ聞きたいのですが、魔石が砕け散るまでどのくらいの時間が掛りましたでしょうか?」

ガロは俺の質問に少し考えてから答えてくれた。

「・・・実験の際時間まで計っていなかったが、一分以内だと思う」

「そうですか、つまり魔石に魔力を込めてから、こちらに撃ち込む余裕はありそうですね」

俺がそう言うと周囲の人達がざわめき始めた、この人達魔石の危険性を全く考えていなかったのだろうか?

ガロの説明は皆受けたのだろし、普通これくらいの危険性は分かりそうなものだが・・・。

「ガロ、その様な事が出来るのか?」

アンドレアルスがガロに問いただした。

「エルレイが言った様な事は可能だと思います、ただし、あの魔石の魔力吸収量の上限が上級魔法三回程度でしたので、それに事前に魔力を貯め込んでこちらに向け撃ち込むのは、現実的では無いように思います」

ガロが俺の意見に否定的な事を言ったため、その場は何とか落ち着きを取り戻した様だ。

ガロだけは真剣な表情で俺が言った事を考えている様だ。

「どうやら私の気にし過ぎの様ですね、私の質問は以上です、ありがとうございました」

「うむ、では予定通り明日の朝ここを出立し、ミスクール帝国に攻め込むぞ!」

「「「おぉ!」」」

軍議を終え会議室を出た所で、ガロに声を掛けられた。

「エルレイ、少し話がしたい、俺の部屋まで来てくれないか?」

「構いませんよ」

「では着いて来てくれ」

ガロに着いて行き部屋に入ると、魔剣の手入れをすると思われる様々な器具が所狭しと置かれていた。

「そこに座ってくれ」

真剣な表情のガロとテーブルに向かい合って座った。

「先程の話だが、エルレイは可能だと思うか?」

「はい、可能だと思います、ルフトル王国に攻め込んだ際の魔剣の数はどれくらいでしたか?」

「・・・一万だ」

「つまり一万の魔物が生まれた訳です、それだけの魔力をルフトル王国では出せたのです、それをミスクール帝国に出来ないとでも?」

「そうだな、その可能性を考えなかった訳では無いが、それが現実となった場合一方的に敗北する事になるな」

「その通りです、ガロさんは魔石に吸収されないようにするための実験を行ったのでしょうか?」

「勿論行った、魔石から発生される光は魔力そのもので、障壁魔法や体を覆うほどの大きな盾など使えば防げる」

障壁魔法で防げるのは助かるな、魔石が障壁魔法に当たれば消されてしまう可能性があるから、そこは注意しないといけないな。

「そうでしたか、では障壁魔法と大きな盾があれば兵士を守る事が出来そうですね」

「そうだな、それは徹底させよう」

「ところで、ガロさんは魔剣開発部だとおっしゃいましたが、なぜ戦場に来ているのでしょう?」

俺が質問をするとガロさんは少し落ち込んだような表情を見せた。

「それはだな、前回碌に実験もせずに魔剣を渡して犠牲を出したから、今回その様な無い様にと、相手の魔道具対策を考える為に着いて来ている」

「そうでしたか、前回私は敵でしたが、人が魔物に変わって行く姿は見るに堪えませんでした、私も二度とあのような事が起きない様にと今回の戦争に参加した次第です」

「そうか、エルレイすまなかった」

「それはすんだ事ですから気にしないで下さい、それより本当に相手が使って来る魔導具の情報は無いのですか?」

「本当に分かって無いのだ・・・」

「それでよく戦争を仕掛ける気になった物ですね・・・」

俺に教えないだけで、調べている物だとばかり思っていたが、嘘では無かった様だ。

「それだけこの国は追い込まれているという事だよ、攻め込まなければ逆に攻め滅ぼされる事は分かっているからな」

「なるほど、それで今回役に立たない私まで駆り出された訳ですね・・・」

「そう言う事だ、相手に魔法が効かないと分かっていて魔法使いに助けを求めたのだからな、エルレイは適当な所で逃げるといい」

ガロは真剣な表情でそう言った。

「私にそう言う事を言っていいのですか?」

「構わないさ、どうせ無くなる国だからな」

ガロは悲しそうな表情を見せていた、俺もこの国を助けるつもりは無いしな、しかし滅びない様に守るくらいの事はしようと思う。

それをいざと言う時の保険を掛けておくか。

「分かりました、私もこの若さで死にたくありませんので、適当な所で逃げさせて頂きます」

「そうするといい」

「では失礼します」

ガロとの会話を終え、皆がいる部屋へと戻って行った。

「ただいま」

「エルレイお帰り、軍議はどうだったのかしら?」

「エルレイさん、お帰りなさい」

「「エルレイ様、お帰りなさいませ」」

椅子に座りロゼにお茶を入れて貰って一息ついた。

「明日からミスクール帝国に向け進軍する事となったが、予想以上に敗戦する可能性が高い」

「そうなのね、それでも私達は手を貸さないのかしら?」

「予定通り、相手の魔道具の情報を得るまでは様子見だ、それと例の魔石だが、魔力を込めてこちらに撃ち出せば近くにいた者を魔物に変える可能性が高い」

「そう、それで防げる方法はあるのかしら?」

「障壁を張っていれば大丈夫だが、障壁が魔石に当たってしまうと吸収される恐れがあるから注意が必要だ」

「分かったわ」

「それと魔石が飛んできた場合、対抗策としてトルネードが有効では無いかと思う」

「それも吸収されるんじゃないのかしら?」

「魔法自体は吸収されるだろう、だがトルネードで土や砂を巻き上げさせておけば、それに当たってくれるだろう」

「そうね、いい考えだわ」

「その他にも、体を覆うほどの盾でも防げるそうだから、遮蔽物があれば大丈夫そうだ」

「そう言うのは私には出来ないから、エルレイに任せるわ」

「そうだな、俺とロゼでどうにか出来ないか考えて見よう」

「承知しました」

その後食事をして就寝しようとしていた所で、ろいじぇるく様より念話が入った。

『エルレイ君、私だ』

『ロイジェルク様、何か御用でしょうか?』

『ミスクール帝国の事で、分かったことを知らせておこう』

『それは助かります』

『うむ、最近ミスクール帝国で疫病が流行っているらしく、村一つが壊滅したそうだ』

『それは本当に疫病なのでしょうか?』

『エルレイ君が思っている通り疫病ではなく、恐らく魔物に変えられて魔石を確保したのであろうな』

『そうですか、悠長にしている場合ではないようですね』

『そうだな、それで勝てそうなのか?』

『分かりません、状況はかなり分が悪いですね、ですので保険を掛けて置こうかと思っております』

『ふむ、保険か・・・それはエルレイ君に任せるよ』

『ありがとうございます』

『では気をつけてな』

『はい、では失礼します』

ロイジェルク様との念話を終え、眠ることとなった。


翌朝、朝食を終えた俺たちは、砦の広場に整列している軍の前に立っていた。

アンドレアルスが壇上に立ち、兵士たちを前に進軍を宣言した。

「我らはこれよりミスクール帝国に進軍する!

この戦いはリースレイア王国の命運をかけた戦いで、敗北は許されない!

戦いは厳しいものになるだろうが安心してくれ!

今回数々の戦争に勝利をもたらしてきたソートマス王国の魔法使いも応援に駆けつけてくれた!

我々の勝利は約束されたようなものだ!

それに犠牲となった一万の兵の弔い合戦でもある!

仲間の無念を晴らそうではないか!!」

「「「おぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!」」」

兵士の士気は高そうだ、何気に俺のことをだしに使われたが、そのくらいは構わないだろう。

アンドレアルスの話が終わり、皆進軍に向けての準備が始まった、俺たちはここまで乗ってきた馬車に乗り込み運ばれていくだけだ。

「いよいよ始まるのね」

「でも、戦場までの移動で一日かかると言う事なので、今日はゆっくりできるだろう」

「はぁ、今日も一日馬車なのね・・・」

ルリアはため息をついていたが、他の兵士は歩きだから贅沢を言う訳にはいかない。

行軍は一日続き夕刻前に陣を張る場所へとたどり着いた。

俺はいつものように家を取り出し準備をしていると、兵士が軍議があるので参加してくださいと呼びに来た。

「リゼ、ロゼ、準備を任せる」

「「承知しました」」

家の中に食料を取り出しリゼとロゼに任せた後、兵士に着いて行った、大きなテントに案内され中に入ると、皆揃っているようだった。

「皆様お待たせしました」

「うむ、座ってくれ、軍議を始める」

アンドレアルスに促されて席に着く。

「明朝この先にある砦に進軍し、部隊を三つに分け三方向から同時に攻める!

フィリップ率いる宮廷魔導士と魔法部隊は障壁を張り、味方を守ってくれ!」

「うむ、承知したのじゃ」

昨日ガロから説明を受けたのだろう、フィリップは素直に役目を受け入れたようだ。

「飛空魔剣部隊は後方にて待機、状況が分かり次第攻め込ませるので準備しておいてくれ」

「はっ!」

「エルレイは俺と一緒に中央にいてくれ」

「分かりました」

いきなり前線に出されなくて安心した、アンドレアルスは俺が前線に出ても活躍出来ないと分かっているようだな。

「何か意見はあるだろうか?」

アンドレアルスが意見が無いかと全員を見渡している、特に誰か意見を言うような雰囲気ではないな、俺が聞くしか無いか。

「一つよろしいでしょうか?」

「エルレイ、言ってみろ」

「はい、これから砦に偵察を出すのでしょうか?もしよろしければ私が見てこようと思いますが、いかがでしょう?」

「ふむ、偵察は出す予定だが、エルレイは飛んで行けるのだったな?」

「はい、上空から見てまいります」

「それならば任せよう、だが近寄りすぎないよう頼む」

「分かりました」

「他に意見が無いようであれば解散する、明日に向けしっかり休んでおくように!」

「「「はっ!」」」

テントを出てそのまま上空へと飛び上がった、敵に見つからないよう姿を変えておいたほうがいいだろう、俺は出来るだけ高度を上げた。

「ウィル」

「はい、ご主人様」

「俺の姿を鳥に変えてくれないか」

「わかった~」

ウィルに俺の見た目を鳥に変えてもらった、これで上空を飛べば多少は怪しまれないだろう。

その前にルリアに連絡を入れておくか。

『ルリア』

『何かしら?』

『今から砦まで偵察に行ってくる』

『分かったわ、私も着いて行っていいかしら?』

『いや、今俺の姿を鳥に変えているから一人で行ってくるよ』

『そう、分かったわ、気を付けて行ってらっしゃい』

さて、高度を落として砦に向け飛んで行った。

砦が見えてきたところで、グールに話しかけられた。

『マスター、砦に結界が張られているようだぜ!』

『それはどのような物なのか分かるか?』

『そこまでは分からねぇが、エルフの所のとは違うようだな』

『そうか、侵入者を見つける為の物かも知れないな、結界に触れたくないから指示を出してくれ』

『分かったぜ』

グールに指示して貰いながら砦の周りを飛んで確認していった。

城壁の上に複数の砲台のような物が設置されていた。

『グール、あれが何か分かるか?』

『マスター、さすがの俺様も見ただけでは分からねーよ!』

『そうだよな』

『しかし、あの物体から魔力は感じねーな』

『そうか、後から何かを入れて使う物かも知れないな』

あまり長く見ていては怪しまれるので、来た方向とは別の方角に飛び去り、遠回りしてから元の場所へと戻って行った。

地上に降りる前に変身を解き、兵士に聞いてアンドレアルスのところへ案内してもらった。

テントに入ると中にいたのはアンドレアルス一人だけだった。

「偵察に行ってまいりました」

「エルレイ、ご苦労、それでどうだったか?」

「はい、砦は侵入者感知用と思われる結界に覆われていて、中の様子を詳しく見ることは出来ませんでした、ですが、城壁の上に砲台のようなものを複数確認することができました」

「そうか、その数と位置を教えてくれ」

「はい、何か書くものはありますでしょうか?」

「うむ、これを使ってくれ」

アンドレアルスから紙とペンを受け取り、簡単な砦の形と砲台の位置を記していった。

「エルレイにはこれがどんなものか分かったのか?」

「いえ、遠くから見ただけですので分かりませんでした」

「そうか、それでこれを破壊することな可能だろうか?」

「おそらく難しいかと思います」

「分かった、今日はもう休んでくれて構わない」

「では失礼します」

テントを出て皆が待つ家へと向かった、テントが立ち並ぶ中で家は目立っており、周囲の兵士からも見られているが気にしてはいけない。

「ただいま」

「エルレイ、お帰り」

「エルレイさん、お帰りなさい」

「「エルレイ様、お帰りなさいませ」」

すでに夕食の準備は終わっており、食べるのを待っていたようだ。

夕食を頂きながら、先ほどのことを話すことにした。

「明朝砦に向け出立し、俺達は中央の本陣待機となるようだ」

「それは良かったわ、前に出てもする事がないでしょうからね」

「それと砦を見て来たのだが、城壁の上に砲台のようなものがあり、恐らくここから魔石が撃ち出されて来るのだと思う」

「分かったわ、それの前にトルネードを出せばいいのかしら?」

「そういう事になるが、状況を見てからだな」

「そうね」

「明日から戦争はどんな事が起こるのか予想がつかない、したがって単独行動はしない様にしてくれ」

「分かったわ」

「エルレイさん、分かりました」

「「承知しました」」

「では少し早いが寝る事にしよう、夜襲が無いとも限らないからな」

「そうね、おやすみなさい」

「おやすみなさい」

「「おやすみなさいませ」」

今日はルリアの番で、抱きしめて寝る事にした。


翌朝早めに目が覚め、隣でまだ眠っているルリアの寝顔が可愛らしかったのでキスでもしようと思ったが、ベッドの脇にはリゼが待っているので、ルリアを起こさないようにそっとベッドから抜け出した。

「エルレイ様、おはようございます」

「リゼ、おはよう」

リリーもまだ寝ている様で、ロゼは朝食の準備をしているのだろう。

リゼに着替えさせて貰っていると、ルリアとリリー起きて来た。

「ルリア、リリー、おはよう」

「おはよう」

「エルレイさん、ルリア、リゼ、おはようございます」

ルリアとリリーの着替えも済ませると、ロゼが朝食の用意が出来ましたと呼びに来てくれた。

五人で朝食を頂く事にする、これから戦争だというのに何て幸せな時間だろう。

朝食を終えた頃、外から俺を呼ぶ声が聞こえた。

「エルレイ様、そろそろ出立致しますので、準備をよろしくお願いします」

「分かりました」

「皆行こうか」

「えぇ、行きましょう」

「はい」

皆で家の外に出ると、俺を呼びに来てくれた兵士が待っていてくれた様だ、俺は家を収納し準備が整った事を兵士に伝えると、家が消えた事に驚いていたが、すぐさま俺を案内してくれた。

「アンドレアルスさん、お待たせしました」

「うむ、ここからは徒歩となるが、構わないだろうか?」

「問題ありません」

「馬車は補給部隊と共に遠回りして来る事になる、我々は草原を進む、わしの後ろに着いて来てくれ」

「分かりました」

アンドレアルスはそう言うと、兵の方に向けて指示を出した。

「これより敵の砦攻略のために進軍する!」

「「「おぉぉぉぉぉぉぉぉ!!」

六万の兵が進軍を開始した、俺達はアンドレアルスの背後を歩いて着いて行く。

「皆疲れたら言ってくれ」

「これくらい訓練にもならないわよ」

「エルレイさん、大丈夫です」

ルリアの事は心配して無いが、リリーが疲れないか心配だ、普通の道を歩いている訳では無いからな。

前を行く軍隊によって踏み固められてはいるが、でこぼこした道だからな。

『ロゼ、リリーが無理していないか気を付けて見ていてくれ』

『承知しました』

二時間ほど歩いた所で敵の砦が見えて来て、全軍停止した。

「予定通り部隊を三つに分け、三方向から包囲せよ!」

アンドレアルスが指示を出すと、砦の左角、中央、右角のを攻めるように分かれて行った。

本来なら側面を攻撃する予定だったが、側面にも砲台が設けられていた事によって、中央にいる俺の援護が届かないという事でこの様な形にして貰った。

「報告します、全軍準備が整いました」

「うむ、ではこれより攻撃を開始せよ!」

「はっ!」

アンドレアルスより攻撃命令が出され、全軍砦に向け攻撃を開始した。

「エルレイ、頼んだぞ!」

「分かりました」

俺達の役割は、砲台の前にトルネードを出す事だけだ。

「では手筈通りにトルネードを出すぞ」

「分かったわ」

「承知しました」

俺はリゼを抱えて、ルリアは一人で、ロゼはリリーと共に飛び上がった。

砦の正面には五つの砲台が設置されていたから、ルリアと俺で二個ずつ、残り一個はロゼに任せてトルネードを発生させた。

土や砂が巻き上がりやすい様に、トルネードの下の地面を少し掘り下げておいた事により、より多くの土を巻き上げ茶色いトルネードが完成した。

後はこれを魔石に吸収されたとしても、掛けなおして維持して行けばいいだけだ。

此方の兵士達はトルネードを避け、砦の城壁へと接近していた。

さて、どんな魔導具による攻撃が来るのだろうか・・・俺は不安に思いつつも、今回は戦況を見守る事しかやるつもりは無かった・・・。


≪ミスクール帝国サイド≫

場所はミスクール城の一室にて、プライス、マクミラン、ステフィンの三人が巨大な鏡の魔道具に映った砦の状況を見つめていた。

「ステフィンよ、魔道具は安全なのだろうな!」

マクミランは兵士達が魔物にならないか心配でたまらなかった。

「くふふ、ご心配ありません、魔法を防ぐ魔導具も、敵を魔物に変える魔導具も近寄らなければ安全ですよ」

「それならばいいのだが、今作戦が上手く行かなかったら、兵を撤退させるからな」

「くふふ、構いませんよ、あの砦が落とされた所で痛くも痒くもありませんからね」

「確かにあの砦は重要では無いが、敵を調子に乗らせてしまうぞ!」

「くふふ、敵が来たようですよ、皆私の魔石になってくれる事でしょう」

鏡の魔導具にはリースレイア兵が押し寄せてくる状況が映っていた。

そうした所、砦の前に茶色いトルネードが映り込んだ。

「あれは魔法か?」

「くふふ、その様ですね、ですがこちらにとっては全く無意味ですね、吸収させるよう指示を出しましょう」

ステフィンは手元にある小さな箱型の魔道具を掴み、それに向けて指示を出した。

それは念話を誰もが使える様にステフィンが作った物で、軍の隊長以上の者に配布されていた。

これと鏡の魔道具があるため、この様な場所で戦況を見守りながら、指示を出す事が出来ているのだった。

城壁の上に設置された魔法を吸収する魔導具は設置型で、土台から支柱が伸び上部に円盤型の物が取り付けられていて、その部分を魔法に向けると魔力を吸い込む様になっていた。

勿論中に魔力を吸収する魔石が仕込まれているから、魔力の限界まで吸収すると魔石が壊れてしまうが、それはまた取り換えれば使えるようになっていた。

ステフィンから指示を受けた兵士達は、トルネードに向け魔道具を発動させて、魔法を吸収して行った。

「ステフィン、消えないでは無いか!」

「くふふ、可笑しいですね、少々お待ちください」

魔導具を通じて部下に連絡を取ると、魔法は吸収しており、すぐ魔力の上限まで吸収して魔石が破壊しているとの事だった。

「くふふ、魔道具は正常に動いている様ですが、魔法を掛け続けられている様ですね、術者の方を映してみましょう」

ステフィンは鏡の魔道具を操作し、上空に浮かび上がっているエルレイ達を映し出した。

「あれは例の子供の魔法使いか?」

「くふふふ、その様ですね、以前のルフトル王国との戦争の際に見かけました」

「戦った者同士、何故手を組んでいるのだ?」

「くふふ、私には分かりかねます」

「それに付いては、リースレイア王国がソートマス王国に援助を申し出ている、との情報が入っている」

今まで見ているだけだった、プライスがそう答えた。

「ふむ、なぜ離れた地にいるソートマス王国が手を貸すのだ?」

「金と女じゃないのか?あの魔法使い、各国から王女を嫁に貰っていると聞く」

「なるほど、所でステフィン、そろそろ敵が砦に張り付くぞ!」

「くふふ、では魔石を撃ち出すとしますか」

「敵の魔法が消えていないのに使うというのか?」

「くふふ、撃ち出せば魔法の魔力を吸収しますので、ご心配なさらず」

ステフィンは魔石を打ち出すよう指示を出した。

エルレイが見た城壁に設置されている砲台の様な物は、まさに魔石を撃ち出す物で、この様に大きくなっているのは、魔力を込める者が魔物にならない様する為の物であった。

砲台に魔石入れ込み蓋をして、魔力を込めると撃ち出されるようになっていた。

一台の砲台に付き五十人の魔道具使いが配置され、交代で魔力を込めて撃ち出すようになっていた。

ミスクール帝国の魔道具使いは、幼い頃より魔道具を使って魔力量を増やす訓練を続けてきたため、普通の魔法使い以上の魔力量があった。

それでも一人で撃ち出せる数は十個が限界で、全員で五百、五か所で二千五百撃ち出せる計算で、更に控えもいるので最終的には五千の魔物を作れる予定だ。

それでも敵の数からすれば少ないのだが、魔物となった者の力は数倍に膨れ上がり、味方同士戦い合ってくれるため、砦を落とすどころでは無くなるだろう。

兵士は指示された通り魔石を撃ち出した、しかし目の前のトルネードに魔石は吸い込まれていくだけで魔物が生まれる事は無かった。

「ステフィン、駄目では無いか!」

「くふふふ、おかしいですね、、魔法は吸収されているように見えますが・・・もしかしてあの茶色いのは土でしょうか、なるほど、考えましたね」

ステフィンは一人で納得したようだった。

「ええい、わしにも説明せんか!そろそろ兵を撤退させねば全滅させられるぞ!」

「くふふふ、仕方がありませんね、撤退させましょう」

ステフィンは設置された魔導具の破壊を命じ、撤退の指示を出した。

「くふふ、先程のトルネードの魔法ですが、どうやら土を巻き上げていた様ですね、それにより撃ち出された魔石を落としていたのでしょう」

「そんな事が出来るのか?」

「くふふ、土自体巻き上げるのは簡単な事でしょう、ですが、あの魔法使いの膨大な魔力量があって出来る事でしょうね」

「それでは今後とも同じようにやられてしまうのではないのか?」

「くふふ、一度見せて貰いましたからね、要は舞っている土に負けない様にすればいいだけの事です」

「そうか、魔道具の改良を頼んだぞ、次の拠点を破られる訳にはいかん!」

「くふふ、分かりました」

三人はリースレイア王国軍が砦を占拠していく状況を確認し、それぞれ部屋を出て行った・・・。


≪エルレイサイド≫

「エルレイ、魔法が吸収されているわよ!」

ルリアから焦りの声が聞こえた。

「ルリア、ロゼ、大変だろうが魔法を掛け続けてくれ」

「分かったわ」

「分かりました」

俺もトルネードの魔法を掛け続けていることに集中している。

「エルレイ様、あれが魔法を吸収する魔道具なのではないでしょうか?」

リゼが大砲の横に置かれてある魔道具を指して言った。

「そうかもな、リゼ、あの魔道具に向けて弱い魔法を打ち出して見てくれないか?」

「分かりました、ファイヤーアロー!」

リゼがファイヤーアローを魔道具に向け撃ち出すと、見事に吸収されてしまった。

「あれが魔法を吸収する魔道具で間違いないようです」

「そのようだな、リゼはあの魔道具が魔法を吸収し続けられるのか見ていてくれ」

「はい、ですが破壊しなくてよろしいのでしょうか?」

「今回は様子見だから破壊しなくていい、破壊できるタイミングがあるのかを見ていてくれ」

「分かりました」

ガロの話では、あの魔石で吸収できる量が上級魔法三回分と言ってた、そろそろ吸収できなくなっても良さそうなのだが・・・。

「エルレイ様、魔道具の上の円盤状の所から魔石が砕け散るのが見えました、ですがすぐに次の魔石に交換されたようです」

「そうか、魔法を吸収させて破壊することは出来いようだな」

「そう思います」

魔力を吸収できない時があれば、魔法を撃ち込んで壊せるかとも思ったが、そう甘くはないか・・・。

まぁ、弾を撃ち込めば簡単に壊せそうだが、それは最終手段として取っておこう。

こちらの兵士たちがそろそろ砦に接近するな、縄やはしごを用意しているようだからそれを使って登るのだろう。

魔法が使えない以上、あのような手段しかないか。

「エルレイ、大砲から何か撃ち出されたわよ」

「兵士が魔物になったりはしていないようだな」

「そうね、上手くトルネードで食い止められたようね」

「そうだな」

その後も何回か大砲が撃たれたものの、こちらに被害が出ることはなかった。

「エルレイ様、魔道具が壊れました!」

リゼがそう言うと、トルネードも吸収されなくなっていた。

「どうやら敵は魔道具を破壊して逃げたようね」

「その様だな、魔法を解除しよう」

「分かったわ」

「分かりました」

こちらの兵士達は城壁を登り中に侵入していた、後は彼らの仕事だな。

「俺達は後ろに下がることにしよう」

「魔道具を見に行かないのかしら?」

「まだ魔石が残っているかもしれないから、後でゆっくり見せてもらうことにしよう」

「それもそうね」

魔物になんてなりたくないから、極力危険を避けていきたい、壊して行ったのだから重要なところは残っていないだろうしな。

皆と後ろに下がり地上に降りた。

「アンドレアルスに報告に行ってくるよ」

皆に告げてアンドレアルスの所へと向かった。

「アンドレアルスさん、敵は敗走していって模様です」

「うむ、砦の中は既にもぬけの殻だと報告を受けた」

「そうでしたか、城壁に魔法を吸収する魔道具と、魔石を撃ち出す魔道具を確認できましたが、敵が破壊して逃げていきました」

「そうか、今回エルレイの活躍でこちらの被害を免れた、感謝する」

「いえ、私の役割を果たしたまでです、しかし、次も同じようにとはいかないでしょう」

「そうだな、同じ手は二度と通じないだろう」

「私も他の対策を考えてみますが、兵士達にも魔石から自ら守れるよう指導をお願いします」

「ガロが言っていたやつだな、分かった、次の戦いまでに徹底させよう」

「よろしくお願いします」

「今日はこの場で陣を張る予定だ、兵士から聞いたが家が出せるのだろう?適当なところで休んでいてくれ」

「では先に休ませてもらいます」

「うむ、後で軍議を開くからその時呼びに行かせる」

「分かりました」

アンドレアルスの所から離れて、適当な空き地を見つけて家を出した。

『ルリア、家を出したからこちらに来てくれないか?』

『えぇ、見えているからすぐ向かうわ』

ルリアたちはすぐにやって来て、家の中に入り休憩をする。

ロゼに入れてもらったお茶を頂きながら、先ほどの事を話し合うことにしよう。

「何か気になった事とかないだろうか?」

「そうね、魔力は結構使ったけれども、やる事自体は簡単な事だったから特に無いわね」

「魔法を吸収されるのに一定の間隔が空いていました、続けて吸収することが出来ないのでしょうか?」

ロゼに言われて気が付いた、確かに魔法をずっと吸収され続けるのではなく少し間が空いてたな。

「一回の吸収量に限界があるのかもしれないな、ルフトル王国の上空で戦った時、強力な魔法は使わなかったよな?」

「そうね、普段からあまり魔力を使わない攻撃しか使ってなかったから、あの時も中級魔法以下の魔力しか使ってないわ」

「そう言えばそうですね、私達は効率がいい魔法しか使いませんし、人に向けて大量の魔力が必要な魔法を使ったことありません」

「そうだな、ガロの説明によると、あの魔石が吸収できる最大魔力量が上級魔法三回分と言う事だった、もしかするとそれ以上の魔力を使った魔法は吸収されないのかもしれないな」

「俺様もマスターと同じ意見だな」

「それなら、思いっきり攻撃すればいいってことじゃない」

ルリアは全力で攻撃出来ると喜んでいた。

「ルリアが全力で攻撃したら敵も味方も吹き飛ぶんだが・・・」

「そこは味方に被害が出ないようにするわよ」

「でもその手段はまだ使わないで取っておこう」

「エルレイはいつまで様子を見るつもりなのかしら?」

「それは秘密だ!」

俺がそう言った次の瞬間ルリアに殴られた・・・。

「殴るわよ!」

「ルリア、殴った後に言っても意味がないのではないのだろうか?」

「いいから教えなさいよ、また殴るわよ!」

重要な事なので皆に念話で伝える事にした。

『念話で伝えるよ、俺はリースレイア王国に勝たせるつもりは無い、指揮官達はまともだが、王様があれではね・・・』

『それは確かに私もそう思うわよ、だけどミスクール帝国を滅ぼすのでしょう?』

『最終的にはそうするが、今の段階ではどうなるかはわからない、俺達だけで滅ぼす事になるかもしれない』

『エルレイ様、私達でだけで滅ぼした方が楽で速そうです』

『リゼの言う通りだが、その後の統治の問題が面倒なんだよな』

『エルレイさん、そこは皆で協力していけばいいのではないでしょうか?』

『そうね、お父様も喜んで協力してくれると思うわ』

『そうだな、そこは後で考えるとして、とりあえずこの戦争は消極的に行くから納得してくれ』

『分かったわ』

『エルレイさん、分かりました』

『はい』

『承知しました』

話し合いも終わり、皆で昼食を食べた後ゆっくりしていると、軍議ですと兵士に呼ばれた。

「行ってくるよ」

「行ってらっしゃい」

「エルレイさん、いってらっしゃい」

「「エルレイ様、行ってらっしゃいませ」」

兵士に案内されて大きなテントへとやってきた、まだ砦は使っていないようだな、まぁ罠とかあっても困るしな。

中に入り空いている席へと座った、やはり俺が一番最後だったようだ。

「皆揃ったな、軍議を始める、今回無事砦と制圧することが出来、皆の働きに感謝する」

アンドレアルスは感謝を述べ、皆それにうなずいていた。

「まず、砦内部の状況から報告してもらおう」

「はっ!砦内部の調査を行ったところ現段階で罠等、危険なものは発見されておりません、また食料などの物資もありませんでした」

「ふむ、敵は最初からこの砦を守るつもりが無かったと言う事か」

そうだよな、あっさりと退却して行ったし、城壁の上からの攻撃も砲台によるものしかなかったからな。

「続いてエルレイ、敵の魔道具を説明してもらえないか」

「分かりました、私が確認できた敵の魔道具は二つ。

一つ目は、昨日偵察時に見た砲台のような物で魔石を撃ち出していました、実物を近くで見ていないので憶測にすぎないのですが、恐らくあの大きさだったのは、味方を魔物にしない為の物だったのだと思います。

二つ目は、魔法を吸収する物でした、それに対しては、こちらも魔法を続けて使っていく事で維持は出来ました。

それと、魔石が壊れるタイミングで破壊できないか見ておりましたが、すぐ次の魔石に交換していてそれは出来ませんでした、以上です」

「うむ、ありがとう、味方の被害の報告を頼む」

「はっ!城壁に登る際に数名の軽傷者が出た以外の被害はありません」

「分かった、何か質問がある者はいるか?」

アンドレアルスが聞くと宮廷魔導士のフィリップが立ち上がった。

「わしからエルレイに質問じゃ、先程トルネードの魔法が吸収されたが使い続けて維持したと言っておったが、その様な事が出来るのか?」

フィリップが疑いの眼差しで俺を見て来た。

「はい、私を呼び出したのでご存知かと思いますが、私は詠唱を必要としません、ですので連続して使う事が可能なのです、それと連れて来た四人も魔法使いですから、分担してやりましたので簡単でしたよ」

俺がそう言うとフィリップは驚きの表情を見せていた、あれ、もしかして無詠唱の事知らなかった?余計な事を話してしまっただろうか・・・。

「確かにトルネードは五個出ておった、それを維持し続けたとはどれだけの魔力量が・・・」

フィリップは座り、ぶつぶつと独り言を言っていた。

「エルレイ、私からも一つ聞きたい、魔石を撃ち出して来ていた兵士はどれくらいの数がいたのだろうか?」

ガロが俺に質問して来た。

「はい、一つの砲台に十人付いていました、一人がどれくらい撃てるのかは分かりませんが、十回撃てたとして五台で五百、二十回撃てると千、少なくてもこれくらい無いとこちらに対して効果が無いかと思います、そして次の場所では更に数が増えるでしょう」

「そうだな、ありがとう」

ガロは俺の答えに対して納得した様で、対策を考えているのか座って俯いていた。

「他に何か質問はあるか?・・・無い様だな、安全が確認され次第砦を拠点として次の侵攻に備える、今日はゆっくり休んでくれ、解散!」

テントを出て家へと向かう、しかし俺の事を経歴だけで、どの様な事が出来るのかまでは調べて無い様だな。

敵の事も調べて無かったし、ろくな国じゃないな・・・。

家に戻り皆に報告する。

「敵は最初から砦を死守するつもりが無かった様だ」

「そうでしょうね」

「今日は休んで、明日からまた動く様だからゆっくり過ごす事にしよう」

「分かったわ」

「エルレイさん、怪我人はいなかったのでしょうか?」

「軽傷の者がいた様だが、俺達が治療する必要は無いだろう」

「そうでしたか、良かったです」

リリーは怪我人がいなかった事を喜んでいた、今回は大丈夫だったが次回からは多くの怪我人が出るだろう、この国の兵士には悪いと思うが、戦争を仕掛けたのだから犠牲はつきものだと諦めて貰うしか無いな。

俺達がその責任まで負う必要は無いだろう。

その後ゆっくり休んで、夕食後早めに寝る事にした。


翌朝朝食を食べ終わった頃、兵士に呼び出されて砦へと向かった、どうやら昨日の内に安全が確認された様だな。

砦内部の部屋へと入って行き席へと座った。

「これより軍議を始める、まずはこの地図を見てくれ」

アンドレアルスがテーブルに広げられている地図を指した。

「現在地がここで、この先にある城塞都市に攻め込む、厳しい戦いが予想される、皆気を引き締めて望んでくれ!」

「「「はっ!」」」

「それとここまでの進路だが二日で到達する予定だ、しかし少し迂回をしなくてはならない、情報によると間にあるこの村は疫病が発生し、壊滅したとの事だ・・・」

ロイジェルク様が言ってたのがこの村か、疫病と言う噂を流す事で此方の進軍も遅くなると言う訳か・・・。

「アンドレアルスさん、質問してもよろしいですか?」

「エルレイ、構わない、言って見るといい」

「はい、疫病と言うのは本当の事でしょうか?敵が流した嘘だとすると、挟撃される恐れがありますよ」

「うむ、最もな意見だな、誰かこの村の調査を頼む」

アンドレアルスは皆を見渡すが、疫病が発生しているかも知れない所に誰も行きたがらないよな・・・。

「私が飛んで確認して来ましょう」

「エルレイ、頼めるだろうか?」

「はい、ですが疫病が無いとも限りませんので、進路はそのままがよろしいかと思います」

「うむ、では準備が整い次第進軍を開始する!」

俺は砦の部屋を出て、皆の所に戻った。

「皆これから進軍の予定だが、俺はこの先にある村を偵察に行って来る、他の皆は軍に着いて行ってくれ」

「私も偵察に着いて行くわよ、と言うより皆で行きましょう、エルレイが単独行動しない様にと言ったじゃない」

確かに言ったが、もし本当に疫病だったら全員倒れてしまう恐れがある。

「ルリア、今から行く村は疫病で全滅したという事なんだよ、すまないが俺一人で行って来る」

「エルレイさん、それなら私も着いて行きます、病気になっても治療できますからね」

「リリーの言う通りよ、病気になっても治療できるし、障壁を張っていれば平気でしょ」

「そうだな、分かった、皆で行こう」

確かに病気にかかっても魔法で治療できるから、そこまで心配する必要は無いのかもしれないな。

家を収納し、リゼを抱えて皆で村に向けて飛び立った。

村までは速度を出していたお陰ですぐに辿り着いたが、歩くと一日はかかる距離だろう。

「先に俺とリゼで様子を見て来るよ」

「分かったわ」

「エルレイさん、お気を付けて」

リゼと二人で村へと降り立った。

「エルレイ様、酷い状況ですね」

「そうだな・・・」

村の家屋は崩れ落ち畑も荒らされていて、明らかに疫病で全滅した状況とは違うのだと分かる。

『ルリア、降りてきて構わないぞ』

『分かったわ』

ルリア、リリー、ロゼも俺達の所に降りて来て、周りの状況を見て言葉を失っていた。

「・・・エルレイ、疫病では無く戦闘の跡じゃない!」

「ロイジェルク様からも事前に疫病で村一つ壊滅したと教えられていたのだが、予想通り魔物に変えられた様だな」

「酷いです」

リリーは顔を両手で覆って泣いている、俺はリリーをそっと抱きしめた・・・。

「本当はこれを見せたく無かったのだが、こう言う事を平気でするような国と言う事だ・・・」

「その様ね、エルレイ、必ずこの国を滅ぼすわよ」

「そのつもりだ、一応生存者がいないか見て回ろう」

「分かったわ」

「「承知しました」」

皆で一軒一軒見て回ったが、一人もいなかった。

沈んだ気持ちのままリースレイア王国軍が進軍している所まで飛んで戻って行った、ルリアは今にも敵の本拠地に攻め込む様な鬼の表情を見せていたが、何とか皆でかなだめて我慢して貰った。

行軍に加わった後、俺はアンドレアルスに報告に向かって行った。

「アンドレアルスさん、村を見てきました」

「エルレイ、どうであったか?」

「はい、確かに疫病で壊滅しており、誰一人として生存者を確認する事は出来ませんでした」

「そうか、ご苦労だった」

「では失礼します」

去り際にアンドレアルスに触れて念話を飛ばした。

『村は戦闘により壊滅させられていました、恐らく村人全員魔物に変えられて魔石にされたのだと思います』

『分かった、報告感謝する』

アンドレアルスの所を離れて皆がいる所へと戻って進軍に加わった、一日中歩きだったため、途中で疲れたリリーを浮かせて運んだ所、リゼが私もと言ったのを機に結局全員浮かんで着いて行く事となった。

周りの兵士達が羨ましそうな視線を向けて来ていたが、よその国の兵士の事など気にする必要は無いので遠慮はしなかった。

今日の予定を進んだところで進軍は終わり、皆がテントを張る中、俺は家を出し寛ぐ。

アイロス王国に攻め込んだ時の様に兵士に施しをしたりしていないので、周りの視線はいい物では無いが、俺は呼ばれて来ているし、食料も自前で用意していて文句を言われる筋合いなど全く無かった。

その後軍議に呼ばれ、明日の予定と、村に敵がいない事が報告されて終わった。

リゼが作ってくれた美味しい夕食を食べた後、柔らかなベッドでゆっくり就寝した。


翌朝また行軍が開始され、昼過ぎに目的の場所へと辿り着いた。

この場所からはまだ城塞都市を見る事が出来ない、山の向こうにあるそうだ。

家を出し寛いでいると軍議に呼ばれた、大きなテントに入って行き席に座る。

「では軍議を始める」

ここまでの行軍で皆少し疲れた表情をしているな、元気なのは俺くらいだろう。

「ここから城塞都市まで山を回って行く事となる、事前にこの山には偵察を出し敵の有無を確認する。

細かな作戦はこれより情報を調べて明朝伝える事とする」

えぇ~、そう言う事って事前に調べて置く物では無いのだろうか・・・アンドレアルスは前線で軍を率いて戦うのは強そうだが、軍師の様に作戦立案するのは苦手の様だな、誰か他にいないのだろうか・・・。

俺の心配をよそに軍議は進められて行き、俺はまた空からの偵察をしてくるように言われた。

言われなくてもに見行くつもりだったからいいのだが、本格的に城塞都市で敗北するのでは無いのかと思えて来るな。

その方がこちらとしてもやりやすいか・・・上空に飛び上がり、ウィルにこの前とは違う鳥に姿を変えて貰って、城塞都市に向け飛んで行った。

一応山を上空から確認して見たが敵影は見えず、そのまま山を越えた。

山を越えると見事な城塞都市が見えて来た、周りに水堀も作られていて、攻め込める場所は東西南北にかけられた橋だけだな。

これを落とすの無理なのでは?

魔法が効かない上に、こちらを魔物に変えて来る魔石まである。

前回の様にトルネードで魔石を撃ち出すのを止める事も難しそうだ。

橋の上にトルネードを出しては攻め込めないからな・・・。

方法としては水堀を凍らせれば何とかなりそうだな、一度凍らせてしまえば魔法を解除されたとしても氷が融ける事は無い。

ただ一段低くなった水堀から城壁の上までは登らないといけないが、五メートルほどだから何とかなるか?

『グール、結界は張られているのだろうか?』

『張られて無いぜ、街に張っても人の出入りが多くて意味ねーだろ』

『それもそうだな、でもそう言う事なら街の住人も中にいるのだろうな』

『人の魔力は大量に見えるぜ、それが兵士かどうかは分からねーぜ』

『そうだな、では街に降りて見るとするか』

『大丈夫なのかよ』

『屋根に降りて見るだけだから大丈夫だろう?』

『マスターを殺せるようなやつはいねーと思うが、用心する事だな!嫁さん達を悲しませたくねーだろ?』

『十分注意するよ』

障壁を更に強化して高い屋根の上に降り立った、今は鳥の姿だから特にこちらを見ている人はいない様だな。

屋根から見える街並みは至って普通で、ここに敵が近づいて来ていて慌てているような様子は見受けられなかった。

街の人に紛れて兵士が歩いている程度だな、城壁の方には兵士が配置されて監視しているようだ。

街の人が安心して生活している所を見ると、城塞都市の防御力は高いと見た方が良さそうだな。

城壁の上に砲台は確認できない、あれから三日しか経ってないから改良が終わって無いのかな?

それならば急いで攻めた方が良いのか?魔物にさえならなければ十分戦えるとは思う。

その判断はアンドレアルスに任せる事にしよう、俺は屋根より飛び立ち遠回りをして戻って行った。

変身を解いて地上に降り立ち、アンドレアルスに報告に向かった。

「城塞都市を偵察して参りました」

「エルレイ、ご苦労」

「城塞都市の周りには水堀が掘られていて、入り口は東西南北に四か所ある橋だけでした。

城壁の上に砲台は無く、その他の魔道具も確認できませんでした」

「そうか、大勢で一気に攻め込むのは難しいか・・・」

「いえ、水堀を凍らせる事は出来ますので、五メートルほどの城壁を登る事が出来れば攻め込む事は可能かと思いますが、上からの攻撃をどう防ぐかでしょうね」

「それは城壁を攻めるのだから対策はしている、本当に水堀を凍らせる事が出来るのだろうな?」

「はい、それは問題無く出来ます」

「分かった、詳しい作戦内容は明朝伝えるが、エルレイにはそれをやって貰う事になるだろう」

「分かりました」

「では今日は休んでくれ」

「はい、失礼します」

さて皆の所に戻るとするか、家の中に入るとルリアに睨まれた。

「ただいま」

「どこ行ってたのよ!」

「軍議の後、城塞都市の偵察を命令されて行って来ただけだが・・・」

ルリアはなぜか怒っている様なので、恐る恐る答えた。

「単独行動はしないって話はどうなったのよ!」

「あっ・・・ごめんなさい」

俺が決めた事なのに、自ら破っていては怒られるのは当然だな。

「エルレイさん、ルリアも心配しているのですよ、勿論私とリゼとロゼもです」

「はい、もう二度と一人で行動するような事は致しません・・・」

俺は頭を下げて皆に謝った。

「それで、どうだったのかしら?」

「城塞都市は水堀が掘られていて、入り口が四か所の橋しか無く、守りは強固だと思う」

「そうなのね、それで私達はどうするつもりなの?」

「水堀を凍らせて、後は味方が魔物にならない様守るくらいだな」

「分かったわ」

「エルレイさん、それだと味方が大勢傷付いてしまうのではないでしょうか?」

「そうだろうな、これは戦争だから誰も傷付かないという事はない、俺達は手伝う事はするが積極的に戦う事はしない、何故ならこの戦いは彼らの戦争だからだ」

「・・・そうですね、分かりました」

リリーは人が傷付くのを見たく無いのだろうが、俺達が積極的に参加しても結局相手の兵士が傷付くのだからな。

「エルレイ、リリーをリアネ城に帰して頂戴!」

「ルリア、なぜそのような事を?」

「この先敵も味方も大勢傷付き死んでいくからよ、リリーはそう言うのを見たく無いでしょう?」

確かにこのままリリーをここに留めて置けば辛いものを見る事になるだろう、それならルリアの言った通りリアネ城に戻してきた方が良いな。

「ルリア分かったよ、リリーをリアネ城に戻そう」

俺がそう言うと、リリーが大声で断って来た。

「エルレイさん、私はここに残ります!皆と一緒にいさせてください!」

「だけど、ルリアが言ったようにこれからひどい状況を見る事になるぞ」

「覚悟は出来ています、それは一番最初にこの五人で砦を守った時に、全ての事を私達だけでやらないと決めましたから!」

「そうだったな、ルリア良いだろうか?」

「えぇ、リリーがその事を忘れてしまったのかと思ったから・・・覚えているなら構わないわよ」

俺はリリーをそっと抱きしめる。

「辛いのは皆同じだ、せめて兵士が魔物にならない様にだけは何とかしてみよう」

「はい、エルレイさん」

「その事だけどどうするのよ、同じ手は通用しないでしょう?」

「そうだな、何かいい手は無い物だろうか?」

あれからずっと考えているが、良い手段が思い浮かばないでいた。

「エルレイ様、魔石を障壁で囲んではいかがでしょうか?」

ロゼが意見を言って来た、確かに障壁で囲んでしまえば周囲に影響は出ないだろう、しかしどれだけの量の魔石が撃ち出されるか分からない・・・。

「全ての魔石を囲むとなると大変な作業になると思うのだが・・・」

「エルレイ、いいじゃない、五人でやれば何とかなるわよ」

「そうですよ、ロゼにしては良い案だと思います」

「リゼ、私にしてはとはどういう事なのよ!」

リゼとロゼが口喧嘩を始めてしまった、リゼとロゼは喧嘩をすることは余り無いのだが、一度始まると周りに被害を及ぼすので早めに止めないといけない。

抱きしめていたリリーから離れ、リゼとロゼの間に入った。

「二人ともやめないか、今のはリゼが悪かったから、今日のお世話はロゼにやって貰う事にする!」

「そんな~」

「エルレイ様、ありがとうございます」

「ところで撃ち出された魔石を障壁で囲うのは良いが、どのタイミングで囲うかだよな」

「それは落ちた時じゃないかしら?」

「それで間に合えばいいが、飛んでいる時には囲う事は無理だよな・・・」

「そうね・・・」

魔石は地面に落ちてから光る?いや、撃ち出す時に魔力を限界まで込めるのだろうからすでに光っているはずだよな、という事は落ちてからでは遅いという事になるな。

「エルレイさん、障壁に込める魔力を増やせば吸収されないのではないでしょうか?」

「そうだな、撃ち出された魔石は魔力を限界まで込められているだろうから、少し多めに魔力を込めればいいのだろうか?」

「マスター、それでいけると思うぜ!」

グールもお墨付きをくれたので上手く行くのだろう。

「それでやってみよう、駄目な時は魔石が落ちた所に掛ける事にしよう」

「分かったわ」

「エルレイさん、分かりました」

「分かりました・・・」

「承知しました」

リゼが先程から元気が無いが、今日だけだから我慢して貰おう。

その後はロゼに色々お世話をして貰いながら、夕食を食べ就寝となった。


翌朝起きるとリゼに寂しかったですと抱きしめられたが、数時間お世話をロゼと代わっただけじゃないか、これからはロゼと日替わりにした方が良いのかもしれないな。

今は戦時中だから、リゼの機嫌が悪くなるようなことはしないが・・・。

朝食を食べ終えた頃、軍議ですと呼び出しを受けた。

慣れたもので、大きなテントに入って行き席に座った。

「皆揃った様だな、軍議を始める、まずはこれを見てくれ」

アンドレアルスはテーブルの上に置かれている図を指した、そこにはかなり簡略された城塞都市が掛かれていた。

昨日他の偵察に行った人が書いた物なのだろう、大まかな事は分かるな。

「今日はここから進み、この一面を一斉攻撃する!

水堀についてはエルレイが凍らせてくれるそうだから心配する必要は無い!

一気に攻め込み城壁の魔道具を破壊せよ!

魔導具の破壊を確認できたら魔剣軍の出番だ、しっかり準備をしておくよう!

飛空魔剣部隊は我々の切り札だ、命令あるまで待機だ!

以上、質問がある者はおるか?」

アンドレアルスが周囲を見渡すと、フィリップが立ち上がった。

「水堀を凍らせると言うたが、一面全てを凍らせるのか?」

「はい、一面全てを底まで凍らせますので、融けて兵士が水堀に落ちる事は無いでしょう」

俺がそう説明するとフィリップは顔を真っ赤にして反論して来た。

「そんな事出来るはずがないじゃろ!どれだけの量の水と範囲があると思っておるのじゃ!」

「普通の魔法使いでは出来ないでしょうね、ですが私は普通ではありませんからね、そうで無ければこのような場所にいないでしょうし」

俺は出来るだけ笑顔でそう答えた。

「ぐぬぬぬぬぬ!」

フィリップは自分の事を普通だと言われて怒っている様だが、俺に言い返す事は出来ず座ってしまった。

言い返した時点で宮廷魔導士のフィリップが普通だと認める事になるからな。

「水堀はエルレイがそこまで言うのだから凍るのだろう、それとエルレイには魔石への対応をお願いする」

「分かりました」

今回も魔石の対応だけしてればいいという事だ、それ以上の事は俺もする気が無いしな。

「他に無ければ、これより城塞都市へ進軍する!」

軍議が終わり皆の所へと戻って行った。

「ただいま、これより城塞都市に向けて進軍する様だ」

「分かったわ」

「俺達の役割としては水堀を凍らせる事と、魔石への対応だ、水堀はリリーとリゼにやって貰おう」

「エルレイさん、分かりました」

「頑張りますね」

リリーは自分に役割があると知って喜んでいる、リリーはいつも後ろに控えさせていたからな、でも今回はリリーにも活躍して貰わないと厳しいだろう。

「攻め込む場所は城塞都市の一面全てになるから、皆で分散して魔石に対応しなくてはならない、そこでリリーとロゼは左側、ルリアは中央で、俺とリゼが左側を担当する」

「分かったわ」

「エルレイさん、分かりました」

「「承知しました」」

「後は戦況を見て柔軟に対応していくしか無いだろうな」

家を収納し、俺達も行軍に着いて行った。

山の麓を回って行くと、やがて大きな城塞都市が見えて来た。

「大きいわね」

「あぁ、街も結構栄えていたし、敵の兵士がどれくらいの数いるのかも分からない」

「これは厳しくなりそうね・・・」

ルリアは厳しい表情で城塞都市を見つめていた。

『皆も思っているだろうが、多分攻め落とせないと思う、俺達は自分達が生きて帰る事を優先するぞ!』

『分かっているわよ』

『はい、皆でリアネ城に帰りましょう』

『早く帰りたいです』

『承知しました』

暫く城塞都市へ向けて進軍し、城壁から五百メートルほど離れた場所で陣形を整えた。

「これより城塞都市攻略を開始する!

歩兵部隊!城壁に乗り込み魔道具を破壊せよ、守りはフィリップ率いる魔法部隊が着いているから安心して攻め込むがいい!」

「「「おぉぉぉぉぉぉぉ!!!」」」

アンドレアルスの号令で歩兵部隊が城壁に向け進軍を開始した。

「俺達も行こう、ルリアは一人だから無理をしない様に」

「分かっているわよ」

「リリーとロゼも無理ない様に」

「はい、大丈夫です」

「承知しました」

リゼを抱えて水堀へと飛び立って行った。


≪ミスクール帝国サイド≫

ミスクール城には三人が状況を確認していた。

「そろそろ城塞都市に敵が近づいて来るぞ、準備は出来ているのだろうな?」

マクミランがステフィンを睨みつけそう言った。

「くふふ、時間は十分にありましたからね、改良を終え配備済みです、今日は大量の魔物が見られる事でしょう」

「ふんっ、そうだといいがな」

ステフィンは自信満々の様だが、マクミランは前回の事があって信用していない様だった。

「魔物が出来なくても、例の部隊は配備済みなのだろう?」

「うむ、今日がミスクール帝国復活の為の記念日となるだろう」

「まずはリースレイア王国を手中に収め、戦争で疲弊したキュロクバーラ王国も落とさねばならない、マクミラン、ステフィン、油断する出ないぞ」

「分かっておる」

「くふふ、大丈夫ですよ、その為には今日の戦いで大量の魔石が欲しい所ですね」

大きな鏡の魔導具にはリースレイア軍が城塞都市に攻め込んで来ている様子が映し出されていた。

「むっ!橋を使わず水堀を泳いで攻め込むつもりか!」

「くふふ、よく見てください、魔法使いが何かやるつもりの様ですよ」

鏡の魔導具にはエルレイ達が飛んできて、水堀を凍らせている様子が見て取れた。

「なんと!、水堀が凍ってしまっているでは無いか、融かすように伝えろ!」

「くふふふ、融かす事は無理でしょう、魔法は既に終わった後ですから吸収できませんしね」

「それならば、登って来られない様攻撃させろ!」

「くふふ、既に命令済みです、折角改良した魔道具を壊されてはたまりませんからね」

城壁の上から登って来る兵に向け次々と魔導具による攻撃がなされていて、兵は抵抗できず落とされて行った。

兵を守っている障壁は、城壁に近づいたため吸収されて役目をはたしていない。

城壁の上の砲台からは魔石も次々と撃ち込まれていた。

「ステフィン、一向に魔物が発生していないでは無いか!」

「くふふ、おかしいですね、敵の所に落ちているのですが・・・」

ステフィンは鏡の魔道具を操作し魔石が落ちた所を確認していた。

「おい、あれは障壁では無いのか?」

「くふふふ、どうやらその様ですね、撃ち出された魔石全てを障壁で囲って効果を発揮させないようにするとは驚きです」

「驚いている場合か!どうにかならないのか!」

「くふふふ、どうにもなりませんね、相手の魔力が切れるまで撃ち出すしか無いでしょう」

「もういい、撃ち出すのをやめさせろ、こちらの部隊を動かす、このままでは城壁に登られてしまう!」

「くふふふ、仕方ありませんね・・・」

ステフィンは渋々部下に中止を命じた。

『ウエスト、お前の部隊で敵を殲滅せよ!』

『了解しました!』

マクミランは念話の魔道具で出撃命令を出し、状況を見守る事にした・・・。


≪エルレイサイド≫

「リゼ、水堀だけを凍らせてくれ」

「これはやりがいがありそうですね、アイスフィールド!」

リゼは張り切って魔法を使っていた、水堀だけを凍らせるとなれば魔法の制御がかなり大変だ、そこは今まで氷像を作って訓練してきた成果が出ているな。

リリーも見事に水堀だけ凍らせる事に成功していた。

「見事だ!」

「後で抱きしめてくださいね」

「今抱いていると思うのだが・・・」

「正面からと言う意味ですよ」

「分かったよ」

「約束ですからね!」

「それより砲台が見えるから魔石の攻撃に集中しよう、リゼは右側を頼む」

「分かりました」

兵士達は既に水堀に到達して、城壁を登り始めていた。

「エルレイ様、敵の兵士が杖の様な物を持っています」

「魔法の杖?」

「そんな物があるのでしょうか?」

そう言えばこの世界で魔法を唱えるのに杖を使っている人はいない、呪文と言う固定された物があるから、何か装備した所で威力が変わったりしないからな。

魔力が増強される木や魔石と言った物があればいいのだろうが、今までそんなものがあるとか聞いた事が無い。

そんな事を考えていたら、敵の兵士が持っている杖から魔法が放たれていた。

「魔法を使う物の様ですね、魔剣と同じような物なのでしょうか?」

「そうかもな、詠唱が不要で、誰でも使える魔法の杖と言った所か」

「そうですね、あっ!魔石が撃ち出されました」

「そっちに集中しよう!」

「はい」

魔石を魔力を多く込めた障壁で囲うと、障壁は吸収されずにそのまま地面に落ち、暫くすると魔石が弾けて効果を失った様だ。

「上手く行っている様だな」

「はい、周りにいる人達は魔物になっていません」

「ではこのまま続けよう」

ルリア達にも連絡したいが、魔石の撃ち出される間隔が早くて集中していないといけない。

かなりの数の魔石を処理して行ったら、急に魔石の撃ちだしが止まった・・・。

「エルレイ様、敵の魔力が無くなったのでしょうか?」

「分からない、皆に聞いて見よう」

『ルリア、リリー、ロゼ、こちらの魔石は止まったがそっちはどうだ?』

『こっちも止まったわよ』

『エルレイさん、私達の所も止まりました』

『そうか、全て止まったという事は何か他の攻撃が来ると思った方が良いだろうな、皆注意してくれ』

『分かったわ』

『はい、気を付けます』

『エルレイ様、あれでは無いでしょうか?』

ロゼからの念話来た時には俺にも見えていた。

『あれが敵の部隊みたいね、今までのはお遊びだったようね』

『その様だな』

城塞都市から敵部隊の大軍が上空に飛び上がって来た。

『エルレイさん、どれくらいの人数がいるのでしょう?』

『一万、もっといるだろうか・・・』

『そうね、あの数に攻め込まれてはこちらの勝ち目は無さそうね・・・』

ルリアが指摘したように、あの数で上空から攻められては魔剣を持っていようが関係なくやられてしまうだろう。

『アンドレアルスさん、撤退しましょう』

『うむ、だが今から下がった所で間に合わん!』

『私達が時間を稼ぎますので、撤退してください!』

『分かった』

アンドレアルスも状況は分かっているのだろう、歩兵部隊で撤退しても空を飛んでいる敵部隊から逃げられるはずもない。

『アンドレアルスに撤退させるように言った、俺達で撤退する時間を稼ぐぞ!』

『手を貸さないのでは無かったのかしら?』

『それはあくまで攻める事に対してだ』

『分かったわ、このまま見殺しには出来ないわね』

『そうですね』

『承知しました』

『ロゼ、ルリアの所に集まってくれ』

俺もルリアの所に飛んで行き五人でまとまる事にした。

「見方が近くにいるから、強い攻撃を使えないわよ」

まだ城壁にいた兵士達は、城壁からの攻撃を避けながら、なんとか逃げようとしていた。

「リゼ、地上二メートルから上を広範囲で霧に出来るか?」

「エルレイ様、魔力を分けてください」

「分かった」

「それなら私も手伝います」

「リリーはこの後治療をして貰わないといけないからな」

「分かりました」

リゼに魔力を渡していく。

「行きます、スーパーフォグ!」

リゼによって辺り一面霧に包まれた、この霧は大量に魔力を使っているから吸収される事は無いだろう。

俺たちがいる所も霧に包まれたので上空に避難した。

「リゼ、少しやりすぎなんじゃない?」

ルリアが自分たちまで霧に包まれたことに文句を言っていたが、これくらいやらないと意味が無いだろう。

そのリゼは俺の腕の中で魔力を使い果たし、ぐったりとしていた。

「これくらいやらないと上から魔法を撃たれてしまうだろう」

「それもそうね、所で敵も上がって来たわよ」

霧の中から敵部隊が上がってきた。

「よし攻撃しよう、ただし、使うのは初級魔法にしてくれ、範囲攻撃をすると霧が消えてしまう」

「面白くないけれど、数が多いからその方が撃ちがいはあるのかしら?」

「エルレイさん、分かりました」

「承知しました」

俺達は初級魔法を敵部隊に向け撃ち出していく、初級魔法とは言え強化しているから、障壁など関係なしに敵を打ち倒していく。

敵部隊からも魔法が飛んできていたが、こちらの障壁を破る事は出来ないので気にする必要はなかった。

「エルレイ、最初のころを思い出したわ」

「そうだな、ルリアと初級魔法で敵を倒した事もあったな」

アイロス王国が攻め込んできた時の事が懐かしく思える、そうしていると敵部隊が霧の中に隠れて行ってしまった。

「逃げたようだな」

「そうね、これからどうするのかしら?」

「味方が逃げ切れるまでは粘らないといけないかな、グール、下の状況は分かるか?」

「分かるぜ、水堀からの撤退は終わってるぜ、ただそれを先ほどの敵部隊が追いかけているようだぜ!」

「そうか、それはアンドレアルスがどうにかするだろう、俺達は上空の敵だけ対応しよう」

「そうね、しかしあれだけの数の飛行部隊は脅威ね」

「あれが以前数々の国を従えていた武力だったのだろう」

「そして魔石は作れるようになったのだから、これからも増えるという訳ね」

「その前に叩かないといけないだろうな・・・」

これ以上人を魔物に変えさせる訳にはいかない、しかしどうやって攻め込むかが問題だな・・・。

それは今考えることではないな、味方が安全に撤退させることを優先させよう。

「少し下がろう、もう上がってくる事は無いだろうからな」

「分かったわ」

「承知しました」

後方に下がり霧の範囲外の所まで来ると、兵士達が撤退している様子が見えた、後は殿を守りつつ撤退していくだけだ。

その日は夕暮れまで移動しキャンプを張る事となった、俺とリリーは負傷兵の治療を行っていく。

「リリー、重傷者から優先的に治療して、軽傷者の治療は行わなくていい、ロゼはリリーの護衛を頼む」

「エルレイさん、分かりました」

「承知しました」

俺も重傷者を優先して治療を施していく、軽傷者の治療は軍医たちに任せておいた、途中軍議に来てくれと呼ばれたが、当然無視して治療を続けた。

軍議に出ても話す事は決まっているからな、もう攻め込むことは出来ないし、防衛拠点まで下がって守るしかない。

治療を終え、リリーとロゼと共に家に戻って行った、リゼは魔力を渡したことで元気を取り戻し夕食の準備をしてくれていた。

「リゼありがとう、少し遅くなったが夕食にしよう」

皆で夕食を摂り、疲れていたため早めに就寝した。


翌朝俺は軍議に呼ばれ、大きなテントに入っていき席へと着いた。

「これより軍議を始める、まず初めにエルレイ、負傷兵の治療感謝する」

アンドレアルスはそう言って俺に頭を下げた。

「皆さんと同じく私に出来る事をしたまでです」

「そうか、それでも無事撤退できたのもエルレイのお陰だ、そちらも感謝する」

「それに関して異議があるのじゃ!」

フィリップが俺を睨んでいた。

「フィリップ、何か問題でもあったのか?」

「大ありじゃ、あれだけ大規模な魔法が使えるのなら、なぜそれを攻撃に使わなかったのじゃ」

フィリップの言う事はもっともだな、広範囲に霧を出すより攻撃した方が遥かに効果的だろう。

「あの場所で攻撃魔法を使用しなかったのは、味方と街の人達にも被害が及ぶからです、それに私の役割は兵士達を魔物に変えないよう守ることであって、敵を攻撃する事では無いですからね」

「うむ、エルレイは役割を十分果たしてくれた」

フィリップはまだ何か言いたそうにしていたが、アンドレアルスの言葉によってそれ以上何も言えないでいた。

「それで今後どうするかと言う事だが、皆の意見を聞きたい」

アンドレアルスが皆に意見を求めると、それぞれ撤退するべき、このまま攻め続けるべきと言う意見に二分されていた。

「皆の意見は分かった、エルレイはどう思うのだ?」

「攻めた所で全滅するのが見えていますので、撤退し防衛拠点で守るしかないでしょう」

「あれだけの魔法が使えるのだから敵を殲滅することは可能なはずじゃ!」

フィリップがそう言うと、周りも同調し、俺に敵を滅ぼせと言ってきた。

「皆さん何か勘違いをしているようですね、私はあくまで皆さんの手伝いをしに来たのであって、敵を攻め滅ぼしに来たわけではありません、私は戦うことが嫌いですからね」

「なんじゃと、この戦争は遊びではないのじゃぞ!」

「そうですね、では言い換えましょう、私一人で敵を攻め滅ぼすことは出来ます、ですのでミスクール帝国を滅ぼし私の国にします、皆さんよろしいですね」

「なっ!」

俺は笑顔でそう言うと、皆言葉を失っていた。

「エルレイ、皆を代表して謝ろう、強すぎる力に頼る事がどのような事か皆も分かった事だろう」

アンドレアルスは俺に頼りすぎるとどうなる事か理解していたようだ、頭を下げ謝罪してきた。

「これより撤退を開始し、王国の防御を固めることとする!」

アンドレアルスは有無を言わせず撤退の指示を出した。

俺もこれ以上無駄な問答をしたくないから助かった、俺達も撤退までは付き合わないといけないだろう。

皆の所に戻り追手が来ないか警戒しつつ、撤退を開始した・・・。


≪ミスクール帝国サイド≫

マクミランは鏡の魔道具で魔導飛行部隊が出撃したのを確認し、これより反撃を開始すると楽しみにしていた所、突如鏡の映し出す状況が真っ白になり、何も見えなくなてしまった。

『ウエストどうなっている、状況を説明しろ!』

『はっ!突如辺り一面霧に覆われました、これより上空に上がり確認します』

「霧だと!ステフィン、魔法は吸収されるのでは無かったのか?」

「くふふふ、魔石の容量より多くの魔力を使われてしまうと、吸収できないのです」

「そんな魔法が存在するのか!」

「くふふ、現に吸収されずに効果を表しているのですからね、普通の魔法では無いという事でしょう」

「ならば魔石の容量を増やせばいい事だろう!」

「くふふ、あの大きさより大きくしてしまうと制御出来なくなります、周りにいる者を魔物へと変えてしまうでしょう」

「むぅ、という事はあの魔法使いの魔法を止める事は出来ないでは無いか!」

「くふふ、方法が無い訳ではありませんが、あの場では無理ですね」

ステフィンとやり取りをしていると、ウエストから報告が上がって来た。

『上空から確認しましたが、広範囲に霧で覆われていて敵部隊を確認する事が出来ません、それと我らの前には魔法使いが五人います』

『分かった、そいつらを全部隊で攻撃しろ!』

『はっ!』

ステフィンは鏡の魔道具を操作し上空の状況を映し出していた。

敵の魔法使い確認出来たと思った所で、初級魔法を大量に撃ち出していた。

「ステフィン、初級魔法のように見えるが、なぜ我が部隊が被害を受けているのだ?」

「くふふ、障壁を貫通している様ですね、これは興味深いですね、どの様にすれば初級魔法であの威力を出せるのでしょうか・・・」

ステフィンは鏡を見つめて考え込んでしまった。

『マクミラン司令官!我が方の被害は甚大!撤退します』

『わかった、霧の中に逃げ込み撤退せよ!』

しかしあの霧では敵も逃げられないのでは無いのか?

「ステフィン!ステフィン!」

「・・・くふふ、何でしょう?」

鏡に地上付近を映し出してくれ、それを聞いてステフィンは鏡の魔道具を操作し地上付近を映し出した。

「はやりそうか」

『ウエスト、地上は霧が出ていない!敗走している敵に追撃を掛けろ!』

『はっ!しかしそれでは我が部隊の優位性が無くなります』

『遠距離から攻撃すればいいだろう!』

『はっ!』

魔導飛行部隊が敗走している敵に攻撃を始めると、敵の魔剣部隊により反撃に遭い、こちらの被害が増えるばかりだった。

「くふふ、地上では魔剣の方が有利ですよ、魔導飛行部隊は飛んでいるからこそその力を発揮できると言うもの」

「分かっておるわ!」

『ウエスト!、追撃をやめ、撤退せよ!』

『はっ!』

魔導飛行部隊はかなりの被害を受け撤退して行った。

今まで沈黙し、事態を見ていたプライスが声を発した。

「マクミラン、上空では子供の魔法使いに敗れ、地上では魔剣に敗れた・・・その様な事でリースレイア王国に攻め込む事が出来るのか?」

「それは・・・」

マクミランは言葉に詰まった、今言われたことは事実で、それを覆す事は出来なかった。

「ステフィン、お主もそうだ、敵部隊は魔物にはならず、魔法も吸収できなかった、このままだと責任を取って貰う事になるぞ」

「くふふふ、敵の魔法は見せて貰いました、時間を頂ければ対抗できます、それと疫病を流行らせる許可を頂きたく思います」

「またか、あれはリースレイア王国が手に入るから許可した事だ、今の段階でそれも怪しくなったから許可を出す事は出来ん」

「くふふ、ではキュロクバーラ王国に疫病を流行らせましょう」

「それこそ馬鹿な話だ!あの国はあの魔法使いの国と不可侵条約を結んでいるのだぞ、そんな事になればキュロクバーラ王国と魔法使いがこちらに攻めて来るでは無いか!」

「くふふ、だからですよ、魔法使いがキュロクバーラ王国に行けばリースレイア王国を攻め滅ぼす事が出来ます」

「ふむ、マクミランやれそうか?」

「あの魔法使いがいなければ簡単な事だ!」

「しかしそれでも問題はある、この国の防衛をどうするかだ!」

「くふふ、ご心配なく、古代兵器の修理は完了いたしました」

「そうか、疫病の準備にどれほどかかるのか?」

「くふふ、準備に三日、移動に七日と言った所でしょう」

「分かった、ステフィンは準備を急げ、マクミランは部隊を再編し、リースレイア王国攻略の準備いたせ、私は皇帝陛下に報告して来る」

プライスが退出すると、マクミランとステフィンもそれぞれの持ち場へと戻って行った。


≪リースレイア王国サイド≫

リースレイア王城で王とヒューイットが話し合いをしていた。

「陛下、アンドレアルス率いる部隊は撤退をし、砦にて防衛に専念すると報告を受けました」

「なんだと!それでは敵が攻めて来るというのか!」

「アンドレアルスの報告では敵にも被害を与えたため、直ぐに此方に攻めて来る事は無いとの事でした」

「そうか、ではなぜ撤退してきたのだ!」

「敵の部隊が強力で、攻め込めば我が軍は全滅するとの事でした」

「むぅぅ、あの子供の魔法使いはどうしたのだ!」

「それは戦場で大変活躍されたと言う事でした、こちらの兵士を魔物にならない様に守り、傷付いた兵士の治療も行ってくれたと、アンドレアルスは褒めておりました」

「それでは魔法使いは攻撃していないのでは無いのか?」

「その様ですね」

「あの子供には大金が掛かっているのだぞ、なぜ攻撃しないのだ!」

陛下は私に怒鳴り散らしているが、ソートマス王からの親書に攻撃に参加させない様にと書いてあったのだ、まぁ陛下はまともに読んでいないから知らないのだろうけど。

「それに関しては親書に書いてございます」

陛下に書いてある場所を見せた。

「なんと・・・それでは大金を払って借り受けた意味が無いではないか!」

それはちゃんとお読みにならなかった陛下の責任ですと言いかかったが、何とか思い止まる事が出来た。

「ですが先程も申した通り、魔法使いは大金に見合う十分な働きをしたのだと思います」

「戦争に負けておいて何が十分な働きだ!」

陛下はお怒りだが、多くの兵士の命が救われたのなら大金を払って十分だと私は思うのですが、陛下にはお判りいただけない様ですね。

「それと撤退が完了次第、魔法使いは自国に帰るようです」

「まだ戦争は終わっておらんぞ!」

「ですが侵攻には参加させて構わないが、防衛には参加しないと親書に書かれております」

また書かれている場所を陛下に見せた。

「むぅぅぅぅぅ、ならばもう一度侵攻するよう、アンドレアルスに命令しろ!」

「それで部隊が全滅しては、この国を守る者がいなくなってしましますが、よろしいのでしょうか?」

「・・・・・・わかった、今のは撤回する」

陛下は暫く考えてから撤回してくれた。

「では私はこれで仕事に戻らせて頂きます」

「ご苦労だった」

陛下の部屋を出て一息つく・・・。

「ふぅ」

何故私が戦争の報告をしなければならないのだ、私は財務官なのだぞ!

しかしこれでこの国も長くは無い事が分かった、たとえ防衛に成功したとしても、今回の戦費にソートマス王国への借金で、暫くは大変な時期を迎える事になるだろう。

私は妻と子供を連れ、この国を出て行く決心が出来た、そうと決まれば早い方が良いだろう、部隊が砦に撤退する三日後までに出て行く事にしよう。

私はそう思い、早めに帰宅する事にした・・・。


≪エルレイサイド≫

三日間に及ぶ撤退は、敵に襲われる事無く無事に砦へと辿り着いた。

そこで俺はアンドレアルスに挨拶をする為に部屋を訪れていた。

「アンドレアルスさん、私達はこれで帰らせて頂きます」

「うむ、我が軍の被害を抑えてくれた事、感謝する」

「私の仕事をしただけですのでお気になさらず、防衛に関してですが、もう少し王都に近い所で行った方がよろしいのではないでしょうか?」

「何故そう思う?」

「あの時の敵部隊の数は一万以上いました、かなりの被害を与えましたが、魔道具が壊れていなければ直ぐにその数を用意できるでしょう、一万の敵部隊が王都を直接攻撃してくる可能性がある訳です」

「確かにそうだな、だがここを取られる訳にも行かない」

「そうですね、今の意見は子供の思い付きだと、聞かなかった事にしてください」

「参考になった、皆と話し合ってどうするか決めたいと思う」

「では失礼します」

「エルレイ、ありがとう」

アンドレアルスに別れを告げ皆の所へと戻って行った。

「お待たせ」

「さぁ帰るわよ」

「エルレイさん、早く帰りましょう」

「今回は歩いてばかりで疲れました、帰ってゆっくりしたいです」

「エルレイ様、私もさすがに疲れました」

皆疲れていて、早く帰ってゆっくりしたい様だ、俺も疲れたから早く帰りたい。

「そうだな、では上空に飛び上がろう」

今回は試したい事があって、リゼを抱えないで飛び上がった。

「エルレイ様、なぜ抱えてくれなかったのですか!」

「ちょっと試したい事があってね、皆下から見えない様にもっと上空に上がろう」

「分かったわ」

「承知しました」

下から見えない位置まで上昇し魔法の準備をする事にした・・・。

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