第二十二話 エルレイの休日
朝起きて皆楽しそうに出かける準備をしていた、今日は俺の休日でソートマス王都へ出かける事になっている。
問題はアドルフをいかに説得するかだが、それについては心配していない、朝食時にアドルフに説明すれば皆からの視線を浴びる事になるからな、アドルフと言えどそれを受け流す事は出来ないだろう。
皆と共に食堂へ向かい朝食を頂く、勿論そこにはアドルフもいる、今日は執務室に入れないから話す時は今しかない。
「アドルフ、今日の予定だが、皆でソートマス王都の観光に行く事になった」
アドルフは珍しく驚いた表情を見せ食事を止めていた、そして、その話題をアドルフに振った事で俺の思惑通り皆の視線がアドルフに集ま事となった。
「王都観光ですか・・・」
「そうだ、警備の必要は無い、皆魔法が使え、誰にも負けることは無いからな」
「確かにそうかも知れませんが・・・いえ、やはり警備は付させて貰います」
警備を付けるという事は、王都に行く事は許可されたと思っていいのだろう。
「分かった、しかし警備隊を連れて行く訳には行かないだろう?」
王都に警備隊を連れて行けば問題になる、警備隊と言ってるが要は俺の私兵だ、私兵を王都に許可も無く連れ込んだとなれば、俺が陛下に反意を持っていると思われて攻撃を受けても文句は言えない。
「その通りでございます、ですのでエリオット、ラルフ、オスカル、トーマ、フリストの五名をお付けいたします」
その五名なら信頼できるし問題無いな、王都にも行った事無いだろから一緒に観光を楽しむ事が出来るだろう。
「分かった、食後に玄関に寄こしてくれ」
「承知しました」
食事を終え一度部屋に戻って来て出掛ける準備をしていると、ラウラが俺に声を掛けて来た。
「エルレイ様、エレン、アンナ、マリーの三名も連れて行く事は出来ませんでしょうか?」
「あぁそうだな、執事の五人連れて行くのに、あの三人を連れて行かないと可哀そうだな、カリナさんの許可が下りれば連れて行く事にしよう」
「ありがとうございます、では許可を頂いてまいります」
ラウラは笑顔で部屋を出て行った、自分が教えた子供達だから可愛いのだろうな、暫くするとラウラが許可が下りましたと言って来て、皆の準備の手伝いをしている三人の下へと向かって行った。
ラウラと入れ替わる様にユーティアとエルミーヌが俺の下へとやって来た。
「エルレイ、今日は私とエルミーヌが街を案内するわね」
「それはありがたいけど、任せて大丈夫なのか?」
「大丈夫よ、普段から王都の街へ出かけていましたから」
「分かった、二人に任せるよ」
「エルレイ様、お任せください」
皆準備が出来たようなので玄関へと向かった、すでに五人は到着しており、アドルフより何か教えられている様だった。
「待たせたようだな」
「いえ、それよりもエルレイ様、王都では問題を起こさない様お願い致します」
「分かっている」
流石にリアネの街の様に俺の好き勝手には出来ないからな、問題を起こしても捕まる事は無いと思うが、警備兵のお世話にはなりたくないものだ。
「エルレイ様をしっかりお守りするのだぞ」
「「「はい」」」
アドルフが五人に俺を守るようにと命令をしていた、出来れば俺では無く婚約者たちを守って欲しいのだが、それは俺の方で采配すればいいか・・・。
「アドルフ、行ってくるよ」
「エルレイ様、お気をつけて行ってらっしゃいませ」
皆を連れ王都のロイジェルク様の館へと転移で移動してきた、ヴァイスさんには昨日の内に許可を貰っている。
そろそろ俺も王都に移動用の住宅が欲しい所だな、帰ったらアドルフに相談してみるとするか。
ロイジェルク様の館を出て徒歩で貴族街を歩いていた、館を出る時馬車を用意されていたのだが、こちらの人数が多いうえに、馬車で観光していては通行の邪魔にしかならないからな。
今のうちに組み分けをしておこう、観光と共に皆の親睦を深めてもらいたいからな。
組み分けは昨日リリーとラウラに手伝ってもらって決めている、エリオット達はその周りを固めてもらう感じにすればいいだろう。
「皆聞いてくれ、今から組み分けを言うから、今日一日その組で一緒に行動するようにしてくれ」
「組み分けでしょうか?」
エンリーカが怪訝そうな表情で聞いて来た、ルリア達はリアネの街で同じような事をやっているから普通に聞いていた。
「エンリーカ、キュロクバーラ王国と違って街は危険だから、安全のために組み分けておく必要があるんだよ、何かあった時はその組で行動するようにしてくれ」
「分かりましたわ」
「では組み分けを発表する、一組目ルリア、エミリア、リゼ、二組目リリー、リディア、ロレーナ、ロゼ、三組目ヘルミーネ、エンリーカ、ラウラ、四組目アルティナ、エレオノラ、ユーティア、エルミーヌ以上だ、エリオット達の配置は任せる」
「承知しました」
皆それぞれ組み合わせどうりに別れていた、この組み合わせなら何か非常事態が起こったとしても飛行魔法で逃げられるようになっている。
「エルレイが組み合わせに入っていないのはどうしてなのかしら?」
「エンリーカ、俺がどこかの組に入ると不満に思うだろうから、定期的に入る組を変わる事にしたんだよ」
「確かにその方がよろしいですわね」
エリオット達も話し合って決まった様で、前にエリオットとフリスト、左にラルフとエレン、右にオスカルとアンナ、後ろにトーマとマリーで四方を囲むような配置になっていた。
皆組み分け出来た様で、再び貴族街を歩いて行く、俺はまずアルティナ、エレオノラ、ユーティア、エルミーヌの組へと入った。
王都の街の案内はユーティアとエルミーヌが行う事になっていて、先頭を歩いているからな。
「王都の街の案内はユーティアとエンリーカが行ってくれる事になっているから、行きたい所があれば二人に言ってくれ」
俺の言葉を聞いて皆はそれぞれ行きたい場所の希望を二人に言っていた、やはり食べ物が多いのは仕方が無いだろう。
普段美味しい食べ物を食べているが、やはりお店の前で売っている物を食べ歩く事など普段できない事だからな。
皆の意見を聞き終えた二人はどこに行くか相談している様だった、ユーティアの声は非常に小さいが、エルミーヌには聞こえている様なので会話は成立しているように思える。
「ユーティア、最初は何処へ向かうのか決まったのだろうか?」
「・・・・・・」
「エルレイ様、最初はお洋服のお店に向かう予定です」
ユーティアは黙ったままで、慌ててエルミーヌが俺に答えてくれた。
エルミーヌとは声が小さいながらも話していたのに、俺には話してくれないんだな・・・。
それはまぁいいか、そのうち外でも俺に話してくれるようになるのだろう。
服屋はこれだけ女性がいるから、当然押さえておかないといけない場所だな。
「エルレイ、お姉ちゃんに服を買ってくれるわよね?」
「私も新しい服が欲しいです」
「アルティナ姉さん、エレオノラ、今日は制限を付けないから好きなだけ買っていいぞ」
「お姉ちゃん嬉しい!」
「嬉しいです」
アルティナ姉さんは喜んで俺の腕に抱き付いて来て、それに対抗してかエレオノラは反対の腕に抱き付いて来た、歩きにくいから止めて貰いたいが、今日はされるがままにしておこう。
そうしている内に貴族街から街へ出る門へとやって来た、エリオットが警備兵の所に行き説明すると、すぐに門が開けられ通る事が出来た。
さて、いよいよ王都観光だ、思えばここまで来るのにかなりの時間が掛ったな。
本来であれば俺が男爵位を授与された時に行く予定だった所だ、それ以降何度も王都に足を運んだが、貴族街から街に出た事は一度も無かったからな。
貴族街から出た場所は立派な商店が立ち並んでいた、この辺りは王族や貴族相手に商売をしているのだろう、商店内に見える商品はどれも高級品だと一目でわかる。
ユーティアとエルミーヌが一軒の店の前で立ち止まった。
「皆様、こちらの店でお洋服を買いましょう」
エルミーヌがそう言ってユーティアと共に店に入って行った、俺達も続けて入店する。
「ユーティア様、いらっしゃいませ、本日は多くのお客様をお連れ頂きありがとうございます」
ユーティアが店に入ると、店主らしき服装がばっちり決まった男性と数人の店員が出て来て頭を下げていた。
「(コクン)」
ユーティアは頷くと店内の奥へと進んで行った、店主もユーティアへの対応は慣れている様で、気にしている様子は無かった。
「私はこの店の店主でゴロフと申します、大変失礼でございますが、お名前をお伺いしてもよろしいでしょうか?」
店主が俺の前に来て挨拶をして来た、正直面倒だから相手をしたく無いのだが、返事をしないといけないか・・・。
「俺はエルレイ、俺の事はいいから皆の服を選ぶのを手伝ってやってくれ」
俺の名前を聞いて一瞬驚きの表情を見せたが直ぐに元の笑顔に戻った、どうやら俺の名前を知っている様だな、そうで無いと商売人など務まらないか・・・。
「アリクレット侯爵様、ようこそいらっしゃいませ、お連れの皆様、お入り用の服が御座いましたら遠慮なく申しつけてくださいませ」
店主は俺達にも頭を下げ店員たちに俺達の世話をするよう指示を出し、ユーティアの所に向かって行った。
他の皆もすでに服を見て回っている、俺は特に服が必要では無いな、俺の服はいつもリゼやロゼの手によってリアネ城に来た服屋に注文され勝手に増えて行っているからな・・・。
そうだ、護衛について来たエリオット達にも服を買ってやろう、休日に着る服など持っていないだろうからな。
「エリオット、オスカル、ラルフ、トーマ、フリスト、こっちに来てくれ」
俺は周りを警戒している五人を呼び寄せた。
「「「エルレイ様、お呼びでしょうか?」」」
五人集まり大きな声で返事をするものだから注目を集めてしまった。
「店内だからもう少し静かに話してくれ」
「「「はい」」」
「いいか、お前達に任務を与える、エレン、アンナ、マリーに似合う服を選んでやってくれ」
「よろしいのでしょうか?」
「エルレイ様、私達はこの様な所で服を買えるお金を持っておりません」
「お金は俺が支払うから気にしなくていい、とにかく似合う服を選んでやってくれ」
「「「承知しました」」」
エリオット達は相談しながら服を選びに行った、次はエレン達だな。
「エレン、アンナ、マリー、こっちに来てくれ」
「「「エルレイ様、何か御用でございますか?」」」
「今エリオット達にお前達の服を選びに行かせた、だから三人でエリオット達の服を選んでやってくれ」
「「「・・・承知しました」」」
三人は顔を見合わせていたが、エリオット達が服を選んでくれるという事だからか、素直に納得してくれて服を選びに行ってくれた。
さて、俺がエリオット達の代わりに周りを警戒しておくか、とは言え店内にいる他の客は貴族のご婦人やその従者が数人いるだけで、平和そのものといった感じだ。
この様な店に平民が入って来るはずもないからな、そうしているとアルティナ姉さんが店の奥から俺に手招きをしている。
見張りはやらなくてもいいかなと思い、アルティナ姉さんの下へと向かった。
「エルレイ、どちらの服がお姉ちゃんに似合うかしら?」
アルティナ姉さんは赤と黄色のドレスを並べて俺に聞いて来た、どちらも似合うと思うから両方買えばいいと思うが、選ばないといけないのだろうな。
「そうだな、どちらも可愛らしくてアルティナ姉さんに似合うと思うけど、赤い色の方が良いんじゃないだろうか?」
俺がそう言うとアルティナ姉さんは赤のドレスを自分の体に当ててみて、次に黄色のドレスを当てなおして見比べている。
「そうねぇ、エルレイが選んでくれた赤もいいけど、やっぱり黄色も気になるわねぇ・・・」
これは暫くかかりそうだな・・・そう思いゆっくりアルティナ姉さんから離れようとすると腕を掴まれた。
「エルレイ、私のも選んでください」
エレオノラが俺の腕を引っ張り服が並べてある所へ連れていかれ、そこには青、緑、黒のドレスが並べてあった。
「この中から選んで欲しいのです」
「エレオノラには黒く美しい髪があるから、青か緑が似合うのでは無いかな?」
「えへへ、そうですか、では青か緑に決めたいと思います」
エレオノラは髪を褒められたのが嬉しかったのか、少し恥ずかしそうに髪をいじっていた。
俺はこの世界に転生してきて金髪になったが、元は黒髪だったからな、こうしてエレオノラの黒髪を見ていると、美しくてうらやましく思う。
エレオノラは後は自分で決めるのだろう、周りを見て見ると、テーブルに座りお茶を飲んでいるユーティアとエルミーヌがいたので俺も近寄ってユーティアの隣に座った。
俺が席に座ると店員が気を利かせて俺にもお茶を入れてくれた。
「ありがとう」
俺が礼を言うと店員は頭を下げて下がって行った、貴族が来るお店だから店員の教育も行き届いている様だな。
「ユーティアは買う服は決まったのか?」
「(コクン)」
「そうか、エルミーヌもなのか?」
「いえ、私は使用人ですので・・・」
「別に遠慮する必要は無いぞ、使用人と言え服は必要だろう?」
「メイド服だけあれば十分です、それに服が合っても着る機会もありませんし・・・」
エンリーカはそう言えって俯いてしまった、確かにメイド服以外着る機会は無いか・・・いや、あるじゃないか!
今度使用人の為のパーティを開く予定だから、その時に着て貰えばいいだろう。
「エルミーヌ、まだ決定では無いが、使用人の為のパーティを開く予定にしている、その時に着るドレスを買っておいてくれないか?」
「えっ?」
エルミーヌは驚きの表情を見せていた、それはユーティアも同じだった、こんなこと今まで誰もやって来てなかっただろうから当然の反応かな。
「アドルフにはすでに話を通しているから、そのうち行われるだろう、ユーティア、エルミーヌのドレスを選んでやってくれないか?」
「(コクン)」
ユーティアは席を立ちエルミーヌを連れて服を選びに行ってくれた、となればリゼ、ロゼ、ラウラにもドレスを買ってやらないといけないな。
『ルリア、リリー、ヘルミーネ』
『何かしら?』
『エルレイさん、どうなさいましたか?』
『エル、何の用だ?』
『リゼ、ロゼ、ラウラにドレスを買ってやってくれ、近いうちに必要になるからな』
『エルレイ、また何か考えているのね、分かったわ』
『エルレイさん、綺麗なドレスを選んでおきますね』
『うむ、ラウラには世話になっているからな、飛びっきり高いドレスを買ってやろう』
『値段は高くても構わないが、似合うドレスを買ってやってくれ』
これで良しと、俺が選んでやった方が喜ばれるとは思うが、ルリア達の方が良いドレスを選んでくれるだろう。
さて俺は一人で優雅にお茶を楽しむ事にしよう、手をお茶に伸ばそうとした途端腕を掴まれ服選びに連れていかれた。
結局皆の服選びに付き合わされたが、俺が選んでもその服を選ばないんだよな、俺が選んだ服に決めたのはリリーとリディアくらいだった、何のために俺に聞いているんだか分からない・・・。
皆の服が決まったのはお昼近くだった・・・服選びにある程度時間はかかる事は覚悟していたが、ここまでとは思わなかった。
俺はお金を支払い服を受け取ろうとしたが、後日ロイジェルク様の館に届けると言われた。
服はこれから作るとの事、そう言えばそうだったな、ここにある服はあくまで見本で、それぞれの体に合わせて作るのだった。
「ユーティア、昼食を食べられる店が近くにあるだろうか?」
「(コクン)」
「エルレイ様、ご案内いたします」
ユーティアが頷きエルミーヌが答える、最初からエルミーヌに聞いた方が早そうだが、ユーティアを無視する訳には行かないよな。
俺はユーティア達の所を離れて、ルリア、エミリア、リゼの所へやって来た。
「あら、こっちに来たのね」
「エルレイ、手を繋ぐ」
「ルリア、エミリア、リゼと昼食を食べようと思ってね」
エミリアが可愛らしく近寄って来て手を繋いで来た、そうだな、俺は反対の手でルリアと手を繋いだ。
「私は繋がなくていいわよ」
ルリアは手を繋ぐ事が恥ずかしいのか顔を背けてしまった、でも手は離さなかったからこのままいいのだろう。
エミリアとルリアの手を繋いでユーティア達の後をつけて歩いて行くと、背後からリゼの寂しそうな気配が伝わって来る・・・。
しかし俺の手は二つしかないからな、リゼとはいつも一緒にいるから今日は我慢して貰おう。
ユーティア達が店の前で止まった、ここは宿屋だろうか?
「エルレイ様、昼食はこちらの宿屋で頂きます」
「分かった、では入ろう」
エルミーヌが俺の所に来て説明してくれた、宿屋と言っても貴族が使う高級宿屋だ、以前ルリアとリリーの三人で泊まった所より数段上の様に思う。
中に入るとユーティアが宿屋の人から挨拶を受けていて、エルミーヌがそれに応対し昼食を摂る事と人数を伝えていた。
ユーティアに応対していた宿屋の人が慌てて俺の所へあいさつにやって来た。
「アリクレット侯爵様、ようこそおいで下さいました、私は店主のヨハンと申します」
「エルレイだ、使用人達も一緒の席で食事をするから、俺と同じ席を用意してくれ」
「承知しました、ではご案内いたします」
店主は深々とお辞儀をして、俺達を二階の広間へと案内してくれた。
「料理をご用意させて頂きますので、席にお座りいただきしばらくお待ちください」
店主は再び深くお辞儀をして広間から出て行った。
広間にはテーブルがいくつも用意されていて、ルリア、エミリア、リゼの四人で一つのテーブルに座った。
他の皆もそれぞれの組み分けした者どうしでテーブルを囲んでいる。
「料理はどのような物が来るの?」
エミリアが首を傾げて聞いて来た、そう言えば店主から何も聞かれなかったな、エルミーヌが頼んだのか、それとも料理は決まった物が出て来るのかだろう。
「分からないな、ルリアは知っているか?」
「そうね、以前来た時は普通の料理だったわよ」
エミリアが普通の料理と聞いてがっかりしている、ルリアの普通は基準が高いからな、美味しい料理が来ることに期待しよう、。
「しかし貴族街の外にこの様な貴族向けの宿屋がなぜあるのだろう?」
「エルレイ、貴族街に屋敷を持っているのは伯爵までよ、それと城に勤めている法衣貴族くらいね、他の貴族はこの様な宿に泊まるのよ」
「なるほど、という事は俺も王都に屋敷を持った方が良いのだろうか?」
「エルレイは魔法ですぐ来れるから必要ないんじゃない?でも、ユーティアがうちに来たから必要になるかも知れないわね・・・」
ルリアは腕を組んで考えるような仕草を見せていた。
「どうしてユーティアがいると必要になるんだ?」
「そのうち分かるわよ、必要ならユーティアが言って来るでしょうね」
「分かった、後でユーティアに聞いて見るよ」
「そうして頂戴」
ルリアは俺に説明する気が無いらしい、そうしていると料理がテーブルに運ばれてきた。
やはりとても美味しそうに見える。
「では頂こうか」
「「「頂きます」」」
スープから頂こう、うん美味いな。
「美味しい」
エミリアとリゼも美味しそうに食べている、しかしルリアの表情は普通だな。
子供の頃からこの様な料理ばかり食べて来ているから仕方が無いのだろう。
ルリアはリアネの街の酒場で食べた昼食の時は表情豊かに食べていたからな、あのような食べ物の方がルリアにとってごちそうになるのかもしれないな。
美味しい食事を終え、食後のお茶を頂いていた。
「ルリア、この後何処に行くのか分かるか?」
「分からないわ、私はあまり王都を歩き回ったことが無いのよ・・・ただ買い物になる事だけは間違いないでしょうね」
「そうだろうな、街並みを見て歩いても楽しくないだろうしな・・・」
「美味しいもの食べたい」
「エミリアは今昼食を食べたばかりなのに、まだ食べたいのか?」
「大丈夫、まだ食べられる」
エミリアはまだ食べ足りない様だが、結構お腹いっぱいになったから暫く食べなくてもいいかな・・・。
お金を支払って表に出る、今度はリリーたちの所へ行くか。
リリー、ロレーナ、リディア、ロゼがいる所へ向かうと、リリーとロレーナが仲良く手を繋いでいて、ロレーナはいつも通りにこにこと楽しそうにしている。
それならば俺はリディアとロゼと手を繋ぐ事にしよう、俺がリディアの手を握るとリディアはびくっと驚いていた。
「エルレイ、びっくりしたじゃないかー」
「リディアがリリーとロレーナが手を繋いでいるのを羨ましそうに見ていたから繋いだのだが、いけなかったか?」
「そうだけどー、いきなりはびっくりするんだよー」
「それはすまなかった、反対の手でロレーナと手を繋ぐといい、俺はロゼと繋ぐからな」
俺がそう言うとロゼはスッと俺の手を握って微笑んだ、リディアはロレーナがこちらに気が付いて差し出した手をじっと見つめてから握った。
それを見てロレーナがニコッと笑うと、リディアもつられて笑っていた。
「これで仲良しじゃな」
「そーだねー」
リディアは明るく誰とでも話せるが、手を繋ぐとなると少し違うようだな、キュロクバーラ王国で常日頃競争して来たから手を繋いで仲良くするという事が苦手なのかもしれないな。
それもこれから無くなって行くだろう。
「それでは皆様、次の場所へご案内いたします」
エルミーヌが少し大きめに声を張り上げ次の場所に案内すべく歩き出した。
「次は何処じゃろうか?」
「甘いお菓子が食べたいー」
「そうですね、甘い物食べたいですね」
「今昼食食べたばかりでまだ食べたいのか・・・」
エミリアもまだ食べられるような事言っていたしもしかして昼食の量が足りなかった?
「お菓子は別だよー」
「エルレイさん、甘い物は別です」
「「ねー」」
リリーとリディアはロレーナを挟んで仲良く頷き合っていた、ロレーナはそんな二人を見てにこにこしていた。
「それでは甘い物を食べに行くのじゃ」
「分かった、次の場所が何処か分からないが、ユーティアに言っておくよ」
周りを見ながらしばらく歩く、この辺りはまだ身なりのいい人ばかりで俺達にちょっかいを掛けてくる様子は見受けられない。
エリオット達が周りで睨みを利かせているから、誰も近寄って来ないと言うのもあるな。
だがこの大人数で歩いていると人々の注目を集めているのは間違いない、何時誰が襲ってきても対応できるように警戒だけはしておこう。
やがてユーティアとエルミーヌが足を止めた。
「皆様、次はこのお店です」
エルミーヌがそう言うとユーティアは店の中へと消えて行った、俺達もそれに続いて店の中に入る。
「靴屋じゃな」
「お菓子じゃなーい」
「そうですね、でもこれは先程買った服に合わせた靴を選ぶという事でしょう」
「確かにそうだな、服に合った靴を選ばないといけないな」
繋いでいた手を離し、それぞれ靴を選びに行ってしまった、エリオット達にも必要だな。
「ラルフ、エレン」
「「お呼びでしょうか」」
俺は近くにいたラルフとエレンを呼んだ。
「先程と同じだ、買った服に合う靴を皆で選んでくれ」
「「承知しました」」
俺がそう言うと二人は楽しそうに見つめ合って皆の所へと歩いて行った。
ラルフとエレン、オスカルとアンナが仲が良いのは聞いているが、トーマとフリストとマリーの事は聞いていないな・・・俺が心配する事では無いな、アドルフが使用人の結婚相手は見付けると言っていたからな。
さて皆の靴選びに参加しよう、どうせ選んでくれと声を掛けられるのだろうからな・・・。
「ロレーナの靴は決まった様だな」
「これじゃ」
ロレーナは可愛らしい靴を俺の前に差し出した、ロレーナに良く似合う大きなリボンが付いている靴だった。
「ロレーナに良く似合った美しい靴だね」
「そうじゃろう」
ロレーナは余程この靴が気に入ったのかニコニコとしていた、ここでロレーナに可愛いとは言ってはいけない。
俺がロレーナを皆のお姉さんと言っている以上、美しいとか綺麗と言わないと機嫌を損ねてしまうからな。
「ロレーナ、皆の靴を選びに一緒に行こう」
「そうじゃな、お姉さんじゃから選んでやらないと行けないのじゃな」
「その通り、皆も喜んでくれるだろう」
ロレーナと手を繋ぎ皆の靴を選んで回った、服が決まっていたせいか靴選びは一時間程度で終わった、午前中潰した服選びに比べれば随分と早い物だ。
靴も後でロイジェルク様の館に届けて貰う事になり店を出た、次はヘルミーネ、エンリーカ、ラウラの所だな。
「ヘルミーネ、エンリーカ、ラウラ、一緒に回ろう」
「やっと来ましたわね」
「エル、遅いぞ」
エンリーカとヘルミーネは自分たちが最後になったのをお怒りの様だ、機嫌を直してもらうべく二人と手を繋ぐ。
「次行く場所は美味しい物が食べられる所だぞ」
先程靴屋で次行く場所は美味しいお菓子を食べられる所へと、ユーティアにお願いして来たから間違いはない。
「それは楽しみですわね」
「うむ、エル、早く行こう」
二人は美味しい物と聞いて笑顔になってくれた、ヘルミーネと手を繋いでいるラウラも微笑んでいた。
余り表情を変えないラウラが微笑んでいると言う事は甘い物は大好きの様だな、嫌いな人はあまりいないか・・・。
「エンリーカ、魔法は上達したのだろうか?」
最初以外リリーに任せっきりだからな、エンリーカ達がどの属性を使えるのかも知らない。
「えぇ、リリーのおかげで中級まで使える様になりましたわ」
「凄いな、四人はどの属性を使える様になったのか教えて貰えないだろうか?」
「分かりました、まず四人共風属性が使えます、そして私は地属性、エレオノラは回復魔法、リディアは火属性、エミリアは水属性ですわ」
四人共風属性を使えるとは驚きだな、血筋で使える属性が決まる?それなら風以外も同じでないといけない気がするな。
グリフォンと関係があったりするのだろうか?今の段階では分からないが興味をそそられるな、今すぐに結論が出る様な物では無いから一度考えるのをやめよう。
「風属性が使えるのは羨ましい」
「そうだな、しかしヘルミーネにはラウラがいるから問題無いだろう」
「うむ、ラウラには感謝している」
ヘルミーネの言葉を聞いてラウラは嬉しそうにしていた。
「しかしなぜ私は地属性なのでしょう、火属性や水属性の方が良かったですわ」
エンリーカが地属性の不満を言うとヘルミーネが俺がやった方に地属性の有用性を説いていた。
「そうでしたのね、地属性とはそんなにも素晴らしい物なのですね」
「うむ、そうだぞ」
「俺も地属性にはかなり助けられているし便利だからな、キュロクバーラ王国の川辺でテーブルを作ったのも地属性だしな」
「そう言えばそうですわね、私も地属性を頑張って使いこなせる様になりますわ」
前を歩いているユーティアが立ち止まった、外にいるのに店の中から甘い匂いが漂ってきて説明されなくてもどんな店なのかわかると言う物だ。
ユーティアに続いて皆我先にと店内に入って行っている。
「エル、早く入るぞ」
ヘルミーネに引っ張られて俺も店内へと入る、お菓子屋だと思ったが店内でも食べられるように席が多く設置されていて、喫茶店を高級にした様な感じだろうか。
皆はもう席に着いていたので俺達も四人で一つのテーブルに着いた。
店員がメニューを持ってやってきて見せて貰ったが、どれがいいのかよく分からないな。
ヘルミーネ、エンリーカ、ラウラは真剣に選んでいる様だが・・・まぁいいや。
「おすすめのお菓子を一つと紅茶を頼む」
「畏まりました」
俺が注文すると皆も続けて注文していた。
「エルレイ、こういう所にはよく来るのかしら?」
「いや、初めてだ、たまに来るのには良さそうな所だな」
「そうですわね」
エンリーカはにっこりと微笑んでいた、つまりまた連れて来いと言う事なのだろう。
「ヘルミーネも初めてだよな?」
「当然だ、私が城から出られると思っていたのか?」
「そうだよな」
「この王国は窮屈ですわね」
「そうだな、キュロクバーラ王国と違って人の出入りが激しいから、身分の高い者ほど自由に出歩く事が出来なくなるな、ちなみに俺は暗殺者に四、五回襲われている・・・」
「嫌な王国ですわね」
エンリーカは暗殺者と聞いて表情を歪ませていたが、その時注文していた食べ物が甘い匂いと共に運ばれてきて一気に笑顔へと変わった。
俺の前にも運ばれてきた、パンケーキの様な感じで丸い焼き菓子の様な者が五段ほど積み上げられていた。
「エルのは美味しそうだな」
「そうですわね」
二人は俺の食べ物と自分の食べ物を見比べていた、確かに大きさでは俺のが一番大きいが、ヘルミーネのもエンリーカのも美味しそうに見えるぞ。
フォークを手に取り端から切り崩すようにした、すると随分と柔らかくすんなり切りくずく事が出来た。
口に運ぶと柔らかな触感と甘く、そして間に挟んである果物の酸味が後から来て非常に美味しい物だった。
「これは美味いな」
おすすめと言うだけの事はあるな、俺が続けて食べていると、ヘルミーネとエンリーカがこちらをじっと見ている。
仕方が無い、少し行儀が悪いが構わないだろう、俺はフォークにお菓子を乗せヘルミーネの口の前に持って行ってやった。
「あ~ん」
ヘルミーネは差し出された物をためらい無く一口でぱくりと食べた。
「エル、美味いな!」
「そうだろう」
ヘルミーネにしたように今度はエンリーカの口元へと運んでやった。
「あ~ん」
エンリーカは少しためらっていたが、俺がフォークを更に差し出すとエンリーカもぱくっと食べてくれた。
「美味しいですわ」
最後は正面に座っているラウラだな、テーブルから身を乗り出して手を思いっ切り伸ばした。
ただし、背が低い俺ではテーブルの中央まで差し出すのが精いっぱいだった・・・。
ラウラが気を利かせてくれて、自ら身を乗り出し食べてくれた。
「エルレイ様、美味しいです」
ラウラはにっこりと微笑んでくれた、普段表情を崩さないラウラの笑顔はとても可愛らしい。
三人に分けてやったせいで俺の分は残り少なくなったが、皆の笑顔が見られたから良しとしよう。
残りを食べ終えお茶を頂く、甘い食べ物の後はお茶に限る、お茶と言っても紅茶だ、緑茶はこれまで見た事が無い、茶葉は同じ物だから発酵させなければ緑茶が作れるはずなのだが、俺は作り方を知らないし、知っていてもそれを教える事などできないからな。
やがて皆も食べ終わったようなので店を出る事にした、ヘルミーネはまだ食べたそうにしていたが、これ以上食べると夕食が入らなくなるからな。
お金を支払う前に、アドルフ達に焼き菓子を買って帰ろう、この前陛下がヘルミーネのためにとくれたお菓子が並べてあったからな。
多分陛下は貴族からのお土産として頂いた物だったのだろうな、お金を支払い店の外に出た。
すると何やら皆が警備兵に囲まれていた。
「エルレイ、陛下がお呼びだそうよ」
ルリアが俺の所へ来てそう言った、まぁ貴族街から出る時名前は告げているから俺が王都に来ている事は分かるだろうが、どんな要件なのだろう。
陛下に呼ばれるとはまた何か頼みごとをされるのだろうな・・・。
「分かった」
俺は警備兵の下へ向かった。
「アリクレット侯爵様、陛下がお呼びです、王城までご同行お願い致します」
「分かった、皆も一緒に連れて行って構わないのだろうか?」
「はっ、皆様もご一緒にとの事でした、馬車をご用意しておりますのでお乗りください」
警備兵の後ろには数台の馬車が用意されていた、なるほど人数も把握して用意してくれたのか。
俺はヘルミーネ、エンリーカ、ラウラと馬車に乗り込み王城へと運ばれて行く事となった、他の皆も後ろの馬車にそれぞれ乗り込んでいた。
「エル、お父様はどの様な用件だと言ったのだ?」
「要件は何か聞いていないな、特に思い当たる事も無いしな」
「これからソートマス城へと向かうのかしら?」
「その通りだ、王都観光に来たから丁度良かったのかも知れないが、要件が何か分からないのが少し怖いな」
「エルレイでも怖い物があったのですのね?」
「怖いというか、今まで陛下からはの頼み事は戦争に関係する事が多かったからな、キュロクバーラ王国に行った時もそうだったし・・・」
「それは確かに怖いですわね・・・」
エンリーカは戦争と聞いて真剣な表情をしていた、今の段階で戦争と言うとキュロクバーラ王国、ルフトル王国、リースレイア王国、ミスクール帝国という事になり。
エンリーカの故郷であるキュロクバーラ王国はラウニスカ王国を手に入れた事ですべての国と隣接しているからな。
「だがエル、戦争に関係する事なら私達まで呼ばれないのではないか?」
「そうかも知れないな」
陛下から何を頼まれるのか不安に思いながら馬車は王城へと辿り着いた。
「ここがソートマス城、美しいですわね」
「うむ、そうであろう」
エンリーカが城を見上げてそう声を出すとヘルミーネが自慢げにしていた。
「皆様、こちらへお越しください」
出迎えてくれていた執事が城内へと案内してくれた。
案内された先は食堂と同じような長いテーブルが置いてあり、そして豪華な装飾が部屋の至る所に施されている部屋だった。
「ヘルミーネ、この部屋を知っているか?」
「うむ、偉い人が来た時に父上と会食をする部屋だな」
そんな部屋に俺達が来ていいのだろうか、でも案内されたのだからいいのだろう・・・。
執事達が椅子を引いてくれて俺達を座らせてくれる、部屋が豪華と言うだけで陛下と話すのにはもう慣れたからな。
席に座り周りを見渡すと、皆堂々とした態度で座っていた、ロレーナだけはここに座っていいのだろうかとびくびくとしていた。
名目上ルフトル王国の王女という事になっているから堂々としていて貰いたいが、無理だろうな。
リゼ、ロゼ、ラウラ、エリオット達は流石にここでは部屋の隅に立っている、陛下と同席させる訳には行かないからな。
席に着き暫く待っていると陛下ともう一人女性が部屋に入って来て席に座った、食堂で見た事はあるが名前は知らないな。
「陛下、本日はお招きいただきありがとうございます」
俺は席を立ち陛下に挨拶をした。
「エルレイ、急に呼び立ててすまなかった席に座ってくれ」
「はい」
俺が席に座ると、陛下が給仕に目配せをすると、お茶とお菓子が一人ずつ目の前に用意された。
「今日は特別用事があったわけでは無い、お茶でも飲みながらゆっくりエルレイと話をしたかっただけだから、皆気を緩めてくれ」
陛下はそう言うとお茶に手を伸ばした、そう言う事なら俺もゆっくりとお茶を楽しませて貰おう。
「エルレイ、ルフトル王国の王女とキュロクバーラ王国の王女を紹介してはくれぬか?」
「はい、ルフトル王国の王女ロレーナです」
俺がロレーナを紹介すると、ロレーナはびくっとして慌てて立ち上がりお辞儀をした。
「ロ、ロレーナじゃ、い、いえ、ロレーナです」
ロレーナはいつもの話し方だと不味いと思ったのか言い直したが、そのままでも陛下は怒るようなことは無いだろう。。
陛下も慌てているロレーナの姿を微笑ましてみているからな。
「キュロクバーラ王国の王女エンリーカ、エレオノラ、リディア、エミリアです」
「エンリーカですわ」
「エレオノラです」
「リディアでーす」
「エミリアです」
四人は一斉に立ち上がり優雅にお辞儀をしていた、こちらは本物の王女だからな礼儀作法はしっかりしている。
「私はソートマス王ゼルギウス、そして隣におるのがヘルミーネの母カテリーネ」
「カテリーネと申します、皆様よろしくお願いしますね」
ヘルミーネの母親だったのか、ヘルミーネと違って随分穏やかな人の様だな。
「しかしエルレイ、随分と増えたものだのぉ」
陛下は俺の婚約者たちを見て驚きの声を上げていた、十人の婚約者が座っているからな・・・・仕方のない事だ。
「申し訳ございません、気が付いたらこのような事になっておりました、しかし皆私の大切な家族です」
「別に責めている訳では無いぞ、私もエルレイの婚約者を増やす事に手を貸したわけだしな」
陛下はそう言って笑っていた。
「ヘルミーネ、元気に過ごしていますか?」
「母上、毎日皆と楽しく過ごしていていますから心配いりません」
「それは良かったですね」
ヘルミーネは両親の前だから礼儀正しく話をしているな、普段と違うから違和感が激しすぎる、こちらのような話し方の方が正しいのだが、ヘルミーネにはいつもの様にしていて貰いたい物だ。
「はい、この前難民が押し寄せて来た時も皆と協力して対処する事が出来ました」
「ほう、難民の事は聞いておる、ヘルミーネはどの様な事をしたのだ?」
ヘルミーネが難民の対応に当たった事を話し始めた、俺がヘルミーネをその様な事に使っている事を知って陛下が怒らないだろうか・・・。
「はい、魔法で難民の為の家と畑を作りました」
「それは凄いな、ヘルミーネも立派な魔法使いになった訳だ」
「ヘルミーネ、頑張ったのですね」
「はい、父上と母上に恥じぬよう頑張りました・・・しかし私はまだまだですのでこれからも頑張って参ります」
「そうかそうか」
陛下とカテリーネ様はヘルミーネの話を聞いて優しく微笑んでいた、陛下が俺を呼んだのはヘルミーネと話をしたかったからなのだな。
陛下と言えども親なのだから娘の顔は見たいだろう、この前もヘルミーネにとお菓子をくださったし、頻繁に連れて来た方が良さそうだな。
「陛下、今までヘルミーネ様をお連れする事が出来ず申し訳ございませんでした」
「エルレイが謝る事では無いぞ、私もエルレイには仕事を押し付けていたのだからな、しかし今回の件でそれも無くなって行く事だろう」
「そう願いたい物ですね」
話が一段落した所で陛下の背後に控えていた執事が陛下に耳打ちをした。
「そうか、エルレイ済まないが私はこれで失礼する、皆もゆっくりして行ってくれ」
「はい、ありがとうございます」
陛下に面会者でも来たのだろうな、さて出されたお菓子でも食べるとするかな。
それは他の皆も同じだったようでお茶とお菓子を楽しみ始めていた、陛下の前で気楽にお菓子を食べる事は出来ないよな。
ヘルミーネはカテリーネ様と楽しそうに話をしている、しかしそろそろ日も傾き始めているから帰らないといけないな。
「カテリーネ様、楽しくお話のところ申し訳ありませんが、そろそろ失礼させて頂きます」
「あらそうですか、そう言えば日も傾いて来ていますね、残念ですがまたいらしてくださいね」
「はい」
「ヘルミーネも元気でね」
「はい、母上」
カテリーネ様はヘルミーネに優しく微笑みかけ、俺達が部屋を出るまで見送ってくれた。
城を出て馬車でロイジェルク様の館まで送って貰い、リアネ城へと戻って来た。
「エリオット、今日は付き合わせて悪かったな」
「いえ、私達も楽しむ事が出来感謝しております」
「すまないが、アドルフに無事戻った事を報告しておいてくれ、それとこれを皆で食べる様にと渡してくれ」
俺はエリオットに沢山のお菓子を渡し、一人で持てない様だったからラルフにも渡した。
皆と部屋に戻り夕食を食べて風呂に入り寝る事となった。
なぜか俺のベッドの横にエルミーヌが立っていた、エルミーヌは俺の婚約者では無いから一緒に寝る必要は無いのだが。
「エルミーヌ、俺と一緒に寝る必要合ないんだぞ?」
俺がそう言うとエルミーヌは泣き出しそうな表情を浮かべていた。
「はぁ、エルレイ、またそんな事を言ってるのね」
隣のベッドで横になっていたルリアが体を起こして俺を非難してきた。
「いや、だってエルミーヌは俺の婚約者では無いし・・・」
「エルレイ、エルミーヌはユーティアの専属メイドとして一日中傍にいて、さらにこの部屋にベッドがあるのよ、どうやって他の男性と結婚しろと言うのよ」
「あっ・・・」
「分かったのなら、ちゃんと責任取りなさい!」
「はい・・・」
ルリアはそう言うと再びベッドに倒れ込み頭から布団をかぶってしまった、ルリアの言う通りだな、それなのに俺と一緒に寝る必要は無いと言われては泣きたくなると言うものだ。
俺はエルミーヌの所に行き優しく抱きしめた、ものすごく柔らかく気持ちが良い。
このままずっとこうしていたいが声を掛けてやらないといけないな、少し離れてエルミーヌの表情を見ると顔を真っ赤にしていた。
「エルミーヌ、俺の婚約者になってくれ」
「・・・はい」
エルミーヌは恥ずかしそうに小さな声で答えてくれた。
「あのようにしてエルレイの婚約者は増えるのですね」
「うむ、エルはすぐに婚約者を増やすからな」
「これ以上増えないようにするにはどうしたらいいのかしら?」
「ですがエルレイは強いのですから当然の事です」
「また家族が増えて嬉しいのじゃ」
何やら外野が騒がしいが今はエルミーヌに集中しておこう、エルミーヌをベッドに招き入れると、エルミーヌの方から抱きしめて来た。
これはユーティアと同じでこの様にして寝る物だと教えられたのだろう、俺としては非常に嬉しいのでこのまま寝る事にする。
「エルミーヌ、おやすみ」
「エルレイ様、おやすみなさいませ」
エルミーヌの巨乳の柔らかさを堪能し、幸せな気持ちで気分よく眠る事が出来た・・・。
翌日目を覚ますとエルミーヌが隣で可愛らしく眠っていた、俺より遅く目を覚ますなどメイドとしては失格だが、ついこの間まで貴族の令嬢だったからな。
ふふふっ、エルミーヌが寝ている今が好機だろう!俺はエルミーヌの胸に顔をうずめた、柔らかな感触といい匂いがしてくる。
俺がそうすると、エルミーヌがびくっとして目を覚ましてしまった・・・非常に残念だ。
「・・・エルレイ様、おはようございます」
「エルミーヌ、おはよう」
俺は抱き付いたままエルミーヌに返事をした。
「エルレイ様、ユーティア様のお世話をしないといけないので離して頂けないでしょうか・・・」
エルミーヌが申し訳なさそうにそう言って来た、仕事の邪魔をする訳には行かないな、俺はエルミーヌを離し体を起こした。
するとベッドの横で俺の事を睨みつけているリゼと目が合った・・・怒っている様だな。
「エルレイ様、おはようございます」
「リゼ、おはよう」
リゼの声が低くて怖い。
「エルレイ様、着替えますのでさっさと起きてください!」
「はい」
何時もより乱暴にリゼに服を脱がされて全裸にさせられる、皆毎日見慣れている光景だから特に何も言う事は無い。
しかし今日は裸にされたまましばらくリゼに放置された、今度リゼと寝る時は可愛がってやらないといけないな・・・。
着替えを終え朝食を頂く。
「アドルフ、食事の後はそのまま道を作りに行こうと思うが、何か要件はあるだろうか?」
「特にございません、それと昨日は私達にまでお菓子を頂きありがとうございました」
「それくらいしかしてやれないのが心苦しいのだがな、そうだアドルフ、パーティの件だが服も全員に作ってやってくれないか?」
「服を出しょうか?」
「そうだ、折角のパーティなのに執事服とメイド服では可哀そうだからな、カリナさんもドレスを着てアドルフと踊りたいですよね!」
丁度カリナさんも今日は一緒に朝食を食べていたから聞いて見た。
「私はメイド服で十分ですが・・・そうですね、他の者たちはドレスを着たいかもしれません」
カリナさんはそう言っているが、やはりドレスを着てアドルフと踊りたいのだろうな、アドルフもその事に気が付いた様だな。
「分かりました、ただ全員の服を準備するのに時間が掛りますので日程については少々遅れます」
「それは仕方が無い、済まないが準備を頼む」
「承知しました」
食事を終え、ヘルミーネ、ロゼ、ラウラと道を作りに行こうとしていた所で、エルミーヌに声を掛けられた。
「エルレイ様、本日午後よりユーティア様と私を王都へ送って頂けませんか?」
「王都に構わないが、昨日何か忘れものでもしたのだろうか?」
「いえ、そうではありません、王都の館でユーティア様のお茶会があるのです」
「お茶会?」
{(コクン)」
俺が聞き返すとユーティアが頷いていた。
「お茶会と言うのは、貴族の女性が集まって情報交換をする場の事です」
俺が疑問に思っているとエルミーヌが答えてくれた、よく分からないが午後王都に送るだけなら問題無いな。
「分かった、午後迎えに来るから部屋にいてくれ」
「(コクン)」
「承知しました」
さて改めて道を作りに向かった、場所は以前父上の領地だった所からだな。
「エル、この場所はどのあたりになるのだ?」
「俺が生まれた所だな」
ヘルミーネに地図を見せて場所を教えてあげた。
「なるほど、ここから王都まで道を作るのだな」
「そうだ、大変な作業だが最後までやれそうか?」
「うむ、任せておくがいい」
ヘルミーネは胸を張って答えた、ヘルミーネは責任感が強く、怪我や病気でない限り途中で止めたりすることは無いだろう。
「ロゼ、いつもと同じように作って行こう、ただし畑だけは道の横へ新たに移動しなければならないから注意してくれ」
「承知しました」
道を作りながら、先程のお茶会について聞いて見る事にした。
「ヘルミーネ、お茶会とはどのようなものなのか知っているか?」
「うむ、皆で集まってお茶を楽しむ事だな!」
ヘルミーネは自慢げにそう答えた・・・確かにその通りなのだろうけど、俺が聞きたかったことはそう言う事では無くてな・・・。
「エルレイ様、私がご説明いたします」
俺が困っているとラウラが説明してくれると言ってくれた。
「ラウラ、頼むよ」
「はい、先程エルミーヌが言っていた様に貴族の情報交換の場なのです、その情報ですが主に縁組に関してが多い様です」
「縁組か、でもそれは父親が決める物では無いのか?」
マデラン兄さんとヴァルト兄さんの相手も父上が決めていた様だったが・・・。
「はい、最終的には当主がお決めになりますが、そのお相手の情報を集めるのは主に奥様の役目なのです」
「なるほど、それでお茶会と言う名目で集まって相手の情報を仕入れて来ると言う事なのか」
「その通りです」
「しかし、なぜそれにユーティアが参加しているのだ?」
ユーティアは俺と婚約した訳だし結婚相手を見つける必要も無いだろう。
「ユーティア様は公爵令嬢という事で多くの人脈があり、定期的にお茶会を開く事で多くの情報を仕入れている様です」
「それでお茶会に参加してきた人たちと情報交換をして、必要な人に情報を流す訳か・・・」
「その様です」
なるほどな、ユーティアが外で話さない理由が分かった、貴族達の情報を多く持っているから下手に口を滑らさないためにも外では話さない訳だったのだな。
ユーティアが言う様に敵を作らないために話さないのは正しい事だな。
ユーティアの口が堅いから皆安心して情報を流してくれると言う事なのだろう。
俺が襲われるのが分かったのも、その情報のおかげなのだろうな。
と言う事はユーティアの情報網を上手く使う事が出来れば、襲われたりする事は無くなるだろうか?
・・・いや、止めておこう、ロイジェルク様も俺が襲われる事は知らなかったから、ユーティアの情報網は使っていない。
どの様な目的でも使てしまえば、ユーティアの信用は落ち、皆が安心して情報をユーティアに教える事は無くなるだろうからな。
また危険が迫った時にはユーティアが教えてくれるだろうから、今はそれで十分だな。
「エル、遅いぞ!」
考え込んでいるとヘルミーネとロゼに置いていかれていた、急いで石畳を敷く作業をする。
昼食をいつもの様に外で食べてユーティアを王都に送るため戻る事にした。
「ユーティアを王都に送り届けて来るよ」
「うむ、こちらは任せておけ」
「「行ってらっしゃいませ」」
部屋に転移で戻って来ると、ユーティアとエルミーヌに加えてエンリーカとエレオノラがいた。
「ユーティア、待たせた様だな」
「大丈夫、まだ時間に余裕はある」
「では王都に送るが、ヴァイスさんに連絡を入れないといけないから少し待ってくれ」
「エルレイ、その必要は無いです、すでに連絡は入れてあります」
よく考えるとロイジェルク様の館でお茶会を開くのだから事前に連絡は入れてあるよな。
「そうか、では転移するから手を繋いでくれ」
「エルレイ、お茶会に興味があるので私達も着いて行きますわ」
「私も行きます」
エンリーカとエレオノラもユーティアに着いて行くのか。
「ユーティア、構わないのか?」
「構いません」
キュロクバーラ王国の様に孤立していてはお茶会など出来ないだろうからな、興味がわくのは当然の事だろう。
と言うか俺もちょっと興味があるが、女性のみの様だから自重しておこう。
四人を連れて、王都のロイジェルク様の館へとやって来た。
「エルレイ様、夕方に迎えに来てくださいませ」
「分かった、ではお茶会楽しんで来てくれ」
俺はヘルミーネ達の所へと再び戻って、道を作る作業を続けた。
夕方作業を打ち切り、ヘルミーネ達をリアネ城へと戻してから王都へ転移した。
部屋にあるベルを鳴らし暫くすると、ユーティア達がやって来た。
「エルレイ様、お迎えありがとうございます」
「構わない、お茶会は楽しめただろうか?」
エンリーカとエレオノラは疲れた表情を見せていた。
「もう二度とお茶会には参加致しませんわ」
「疲れました・・・」
何があったのか分からないが、エンリーカとエレオノラにとっては大変疲れる時間だったのは分かるな。
四人を連れリアネ城へと戻って来た。
その次の日からも道を作る作業と、ユーティアを王都に送る事を繰り返す事となった。
ユーティアのお茶会は週に三、四日程度開かれているとの事、毎回違う貴族の女性が尋ねて来ると言うのだから凄い物だな。
エルミーヌはそのお茶会に母親と一緒に参加した時にユーティアと仲良くなったという事だった。
エンリーカとエレオノラにお茶会はどうだったのかと尋ねたら、延々と息子の自慢話をされたとの事。
ユーティアが言うには、息子の自慢話は重要だという事だった、殆どの人が自分の子供の事を悪く言う人はいない、そこで実際にパーティで見て他の人からも噂話を聞いたりして、自慢話との整合性を取って行くのだという事だった。
ユーティアにとっては重要でも、俺も他人の息子の自慢話に付き合いたくは無いな・・・。
「ユーティア、王都に俺も屋敷を持った方がいいだろうか?」
ユーティアが部屋にいる時に尋ねてみた。
「あると便利だけど、今は特に必要では無いわ、ただ結婚までには用意して欲しいわね」
「分かった、アドルフに相談しておくよ」
「お願いね」
今はまだユーティアもラノフェリア公爵令嬢だからな、ロイジェルク様の館を使っていた方が都合もいいのだろう。
結婚まではまだ時間があるからゆっくり探して貰う事にしよう。
道を作る作業も順調に進み、次の休みの日が来た。
今日はキュロクバーラ王国に行く事になっていて、王様に渡すお土産も昨日の内にアドルフに用意して貰っている。
お土産の内容は主に農産物だが、キュロクバーラ王国と採れる物が違うから喜ばれるだろうと、エンリーカのお墨付きも頂いている。
転移するため玄関へとやって来た、自室からでも構わないのだが、アドルフに玄関から移動してくれないと俺がいつ出掛けたのか分からないからと言われているから、出来るだけ行き来は玄関からという事になっている。
「アドルフ、行って来るよ」
「エルレイ様、お気を付けて行ってらっしゃいませ」
今回エリオット達は着いて来ない、キュロクバーラ王国は危険は少ないし、露骨に警備を付けたら俺が弱いと思われるとエンリーカに言われた。
そう言えばソートマス城に来ていたのはマティアス一人だけだった、お国柄と言うやつだな。
俺としては連れて行ったやりたかったが、また今度行く機会があるだろうからその時に連れて行く事にしよう。
転移でキュロクバーラ王国城の広場にやって来た、すると近くにマティアスが待ち構えていた。
「マティアス久しぶり、出迎えてくれてありがとう」
「気にするな、エルレイが遊びに来ると言うので顔を見に来ただけだ、エンリーカ、エレオノラ、リディア、エミリアも元気そうだな」
マティアスはそう言っているが本当は妹達の顔を見に来たのだろう、エンリーカ達の顔を見て安堵している様だからな。
「マティアス兄さん、私達は楽しく過ごせていますわ」
「マティアス兄さんも元気そうでよかったです」
「マティアス兄さん、毎日訓練で楽しいよー」
「元気です」
「良かった、それと皆さんはじめまして、私はマティアス、よろしく」
「「「よろしくお願いします」」」
「エルレイ、今日は遊びに来たんだったな」
「あぁそうだ、街を見て回るつもりだ」
「そうか、帰る時にまた城に寄ってくれ、エンリーカに頼まれていた物を渡さないといけないからな」
「分かった、それとお土産を持って来たんだが、どこに置いたらいいだろうか?」
「わざわざすまないな、城の玄関に置いてくれないか」
「分かった」
エンリーカが頼んでいた物が気になるが、どうせ服等前回持ってくれなかった物を頼んだのだろうな。
城の玄関に野菜や果物のお土産を大量に置いた、受け取りに来た使用人が慌てて応援を呼びに行っていたが、頑張って運んで貰おう。
城を出て街へと歩き始めた。
「さて今回も組み分けをしよう、一組目ルリア、リディア、ロレーナ、二組目リリー、アルティナ、エンリーカ、リゼ、三組目ヘルミーネ、エレオノラ、ロゼ、四組目エミリア、ユーティア、エルミーヌ、ラウラ」
皆俺が言った通り分かれてくれた、出来るだけ前回とは違う組み合わせにしたが、ユーティアとエルミーヌだけは離す事が出来ない。
外では話さないユーティアの代わりにエルミーヌが説明してくれるからだ、皆も俺が事情を説明すると納得してくれたし、エンリーカとエレオノラはそのお茶会に参加したから理解が早かった。
「最初は誰が案内してくれるのだろうか?」
「私でーす」
リディアが元気よく答えた、この前と同じように一人ずつ交代で案内してくれる事になっている。
という事で最初はリディアのいる組へと入る事にした、すでにロレーナとはルリアとリディアが手を繋いでいるな。
ルリアでさえもロレーナとは楽しそうに手を繋いでいるのだから、いかにロレーナと手を繋ぐ事が気持ちを温かくしてくれるかが分かると言う物だ。
仕方ないので俺はリディアと手を繋いだ。
「リディア、案内を頼むよ」
「任せてよー」
俺が手を繋ぐとリディアは元気よく歩き始めた。
リディアの案内でやって来た所はこの前も来たお菓子屋さんだった、分かってはいたがまた食べたかったからな。
早速リディアが店に入り人数分のお菓子を注文し、人数が多かったせいで少々時間が掛ったが全員にお菓子がいき渡り早速食べ始めていた。
「これは美味しいわね」
「美味いのじゃ」
「そうでしょー、でもここだけじゃないから早く食べて次に行くよー」
「リディア、時間はあるからゆっくり味わって食べよう」
「はーい」
こんなに美味しい物を急いで食べるなんてもったいない、ゆっくり食べる事にした。
それからリディアは果物のジュースの店と、もう一軒別のお菓子の店へと案内してくれた。
「リディア、さすがにもう食べきれないぞ」
「そうだねー、じゃぁ次はエレオノラに案内して貰おうー」
「分かりました、では私が案内いたします」
リディアに変わりエレオノラが案内する事となったので、俺はエレオノラとヘルミーネの手を取り歩き始めた。
「ふむ、エレオノラは何処に案内してくれるのだ?」
ヘルミーネがエレオノラに尋ねると、エレオノラは少し悩むようなしぐさを見せた。
「・・・そうですね、服を見に行こうと思ったのですが、この前ソートマス王都で買った様な美しい服は無いです、ですので食器を見に行こうと思います」
「食器は食べられないな・・・」
ヘルミーネは食器と聞いて残念そうな表情を見せていた、あれだけ甘い物を食べたのにまだ食べたり無いのか・・・。
「ヘルミーネ、これ以上食べると昼食が入らなくなるぞ」
「ふむ。それは嫌だな、折角外で食べる様に用意して貰ったからな」
ヘルミーネは道を作る際に外で食べる昼食が非常に気に入った様で、今日もお昼は皆で外で食べようと、ラウラに頼んで用意して貰っていた。
「皆さんこのお店です」
エレオノラに案内されて店内へと入って行った。
「これは綺麗な色だな」
店に展示されていた食器はどれも薄い水色の綺麗な物だった、ソートマス王国では主に白色の食器か粘土の赤茶色が出ている物が多かった。
「周辺の山でこの様な色の土が採れるのです」
「なるほどな、ロゼ、良い物を買って帰ろうと思うから選んで貰えないだろうか?」
「はい、エルレイ様、一緒に選びましょう」
「うむ、私も選んでやろう」
「私も選びます」
「分かったよ、四人で選んで行こう」
四人で楽しく食器を選ぶ事となった、普段部屋で使うティーセット、お菓子を入れる皿に、食堂で使えそうな食器を大量に買う事となった。
他の皆も自分が気に入った者を買っていたようで、展示されている商品がかなり少なくなってしまった。
「エレオノラ、こんなに買って住民が困ったりしないだろうか?」
俺は心配になりエレオノラに尋ねると、それが聞こえたのか店主が答えてくれた。
「また作ればいいだけだから心配いらねぇよ、それに食器が無くても飢える事は無いからな」
そう言って店主は大笑いしていた、確かにその通りだな。
「では遠慮なく購入させて貰うよ」
「毎度あり~」
大量に購入したので店主が気を利かせて城まで運んでくれると言ったが、魔法で運べるからと説明してから食器を収納した。
多少驚いてはいたが、説明していた分すんなり受け入れてくれた様だ。
店を出ると太陽が真上に上っていた。
「昼食は外で食べる様にしている、エミリア、案内してくれないか?」
「分かった、着いて来て」
俺はエミリアとユーティアの手を取り街の外へと移動して行った、行先はエミリアのお気に入りの場所だ。
花が咲き誇る川辺に着くと、ヘルミーネとラウラがテーブルを作り始めた、これも道を作る所でのヘルミーネとラウラの仕事となっていた。
俺は単に四角いストーンウォールで作っていたが、ヘルミーネは実際のテーブルの様に作っていて見た目も美しい。
俺は機能すれば見た目はどうでもいいと思ってしまうが、ヘルミーネにはそれが許せなかったらしい。
屋外に大きなテーブルを作る訳には行かないので、四つのテーブルが用意され昼食の準備も整った。
「頂きます」
「「「頂きます」」」
食事を開始すると何故か、エミリアがじっとこちらを見つめて来る。
「エミリア、どうかしたのだろうか?」
「食べさせて欲しい」
どうやらエミリアは俺に食べさせて欲しい様だ、そう言えば王都で俺がお菓子を食べさせてやってから皆要求して来るんだよな・・・。
やってしまった物は仕方が無い、皆平等にしてやらないとな。
俺は自分の昼食をフォークに刺しエミリアの口元へと持って行った、エミリアはそれをぱくっと食べにこやかに微笑んでいた。
「美味しいか?」
「美味しい」
一人やったら皆にやる必要がある訳で、ユーティア、エルミーヌ、ラウラへと食べさせていった。
皆喜んでくれたようで良かった。
「エミリアは最近嫌な事があったりするだろうか?」
エミリアは嫌な事があるとこの川辺に来ると言っていたかのを思い出して聞いて見た。
「ううん、最近毎日楽しい、それに勉強もラウラが教えてくれて楽しくなってきた」
「それは良かった、ラウラはヘルミーネやこの前王都に一緒に行ったエリオット達の勉強も教えていたから上手いのだろうな」
「ラウラは教えるのが上手」
エミリアに褒められたラウラは少し恥ずかしそうにしていた。
「いえ、エミリア様が優秀なだけです」
「そうか、では二人共優秀という事だな」
俺は隣に座っていたエミリアの頭を撫でてやると、エミリアは嬉しそうに微笑んでいた。
ラウラの頭も撫でたかったが正面に座っている為出来ないな、後で抱きしめてやろう。
昼食も終わり後かたずけを済ませた。
「次はエンリーカか?」
「はい、私ですわ」
エンリーカは待ってましたと言わんばかりに俺の所にやって来て手を握って来た。
反対の手はリリーと繋いだ、アルティナ姉さんがリリーに譲ってくれたのだ。
「ではエンリーカ、案内してくれ」
「はい、今日は以前お見せ出来なかった果物畑に行こうと思います、少々歩きますけどよろしいでしょうか?」
「大丈夫だろう、皆これから歩く様だから体調が悪くなったら早めに言ってくれ」
皆日頃から鍛えているから問題無いだろう。
皆で長閑な農道を歩いて行く、エンリーカは畑にどんな野菜が植えてあるのかを教えてくれている。
リリーと俺はエンリーカの説明を真剣に聞いているが、アルティナ姉さんとリゼは興味が無いらしく、二人で話していた。
「エンリーカは俺達との生活離れたのだろうか?」
「皆さん良くしてくださいますので慣れましたわ」
「不便な事があったりしたら遠慮なく言ってくれ、出来る事は改善していくよ」
「そうですわね、特にこれと言ってありませんわね、強いて挙げるならエルレイと仲良く出来る時間が少ない事でしょうか?」
エンリーカはニヤニヤしながらそう答えた、それに関しては申し訳なく思う、これだけの人数がいるとどうしても一人だけ贔屓する訳にも行かない。
「そうですね、私もエルレイさんと仲良くしたいですのにね~」
リリーまで俺を責めて来た・・・と言うよりエンリーカの意見に乗っかって俺をからかって来ている様だな。
「それは本当にすまない、だから今この時間を大切にしよう」
俺はエンリーカとリリーの手を引き寄せ二人が俺に寄り添うような形となった、多少歩きにくいが我慢だな。
「強引ですわね」
「エルレイさん」
エンリーカは文句を言っていたが表情は笑顔だ、リリーはそのまま俺に体を預けて来ていた。
「二人だけずるいです」
「そうね、でも今日は譲っといてあげるわ」
リゼとアルティナ姉さんには申し訳ないが我慢して貰おう、別の機会にでも何かしてやらないといけないな。
長い事歩き、ようやく山の麓へと辿り着いた、俺とリリーは様々な農作物を見られて楽しかったが、他の皆は退屈している様だった。
ここまでずっと畑の風景が続いていたから仕方が無いのだろう、しかしここから見える木々には果物が沢山なっているのが見え、それを物欲しそうに眺めている様だった。
しかし勝手にとる訳には行かないからな。
「エルレイ、もう少し山を登りますよ」
エンリーカは元気よく果物の木々の間に続く道を登って行く。
山の中腹辺りまで来ただろうか、さすがに皆疲れ始めている様だった。
「もう少しですわ」
エンリーカがそう言うと一軒の家が見えて来た。
「インドロはいるかしら?」
エンリーカが大声で声を掛けると、家の中から屈強な男性が出て来た。
「これはエンリーカ王女様、お久しぶりでございます」
「インドロ、久しぶりね、中を見せて貰って構わないかしら?」
「構いませんよ、今作業をしている所で何のもてなしは出来ませんが・・・」
「その作業を見せて貰いたいのだから構わないわ」
「皆さん、狭い所ですが中に入って下さい」
インドロさんに着いて家の中に入って行った、狭いと言ったが中は結構な広さで部屋の中は果物のいい香りに包まれていて、そこで一人の女性が何かの作業をしていた。
「アライア、お邪魔するわね」
「あらエンリーカ王女様、いらっしゃい、今仕上げの所で手が離せないんだよ・・・」
「アライアの邪魔はしないわ、ここで見せて貰うだけだから」
「そうかい」
そう言ってアライアさんは作業に戻った。
「エンリーカ、あれは何をしている所なんだろうか?」
「果物を蜂蜜に浸けている所ね」
「それは美味しそうだな」
「えぇ出来上がりは一か月後になるけど、水で割って飲むととても美味しいのよ」
となるとやはり蜂蜜は欲しいな、何とか教えて貰う事は出来ないだろうか・・・。
蜜蜂自体は俺の領内にもいるのだろうが、養蜂に関しての知識は俺には無いからな・・・。
アライアさんが大きな甕に果物と蜂蜜入れて蓋をすると、それをインドロさんが抱きかかえて奥へと持って行っている。
甕の重さは相当な物だと思うが、インドロさんは軽々と運んでいた、あれだけ筋肉が付いている意味が分かったよ。
二十個くらいの甕に詰め込む作業を終え、アライアさんはこちらへとやって来た。
「皆さんお待たせした様だね、私はアライア、ここで果物を育てているんだよ」
「私はエルレイ、今日は見学に来ました」
「あんたが噂の魔法使いかい、随分と小さいねぇ」
アライアさんはそう言って俺の頭を撫でてくれた、見た目も子供だし頭を撫でられるのは悪い気はしないが、皆が後ろで笑っているから出来れば止めて貰いたい・・・。
「おっとごめんよ、ついいつもの癖で子供を見ると頭を撫でてしまうのさ」
「いえ、構いません、子供ですからね、それより先程やっていた作業ですがどうしてあのような事を?」
「果物全部は食べきれないからね、蜂蜜に浸ける事で長持ちさせるのさ」
「お酒にはしないのですか?」
「おや物知りだねぇ、あの果物はお酒にしないのさ、お酒用の果物は別にあるが、今は時期じゃないねぇ」
アライアさんにまた頭を撫でられた、なるほど、俺の領地で植えている果物でも蜂蜜は無いから、砂糖に浸け込んだりしてみるのもいいかも知れないな。
「せっかくここまで来たんだ、さっきの蜂蜜漬けを飲んで行きな、アンター」
「はいよ、準備は出来ているぜ」
アライアさんが声を掛けると、インドロさんが奥からコップに入った飲み物を持って来て皆に配ってくれた。
「エルレイさん、甘くて美味しいです」
「そうだな、果物の酸味と蜂蜜の甘さが良い感じだ」
「エルレイ、これ買って帰りましょう」
「そうだね、アライアさん、一つ売ってくれないだろうか?」
「すまないねぇ、街に卸しているからそっちで買ってくれないかい?」
「エルレイ、後で案内しますわ」
「分かりました」
皆飲み終えた様でインドロさんにコップを返していた。
「ごちそうさまでした、とても美味しかったです」
「喜んで貰えた様でこちらとしても嬉しいよ、この蜂蜜漬けはエンリーカ王女様のお墨付きだ、子供の頃は良くここまで飲みに来ていたからね」
「アライア、その話はしなくて結構ですわよ」
「そうかい?可愛らしい王女様の話を聞かせた方がより好かれるんじゃないかと思ったんだけどね」
「今でも好かれておりますから大丈夫ですわ」
エンリーカはそう言って顔を赤らめていた、エンリーカの子供の頃の話は聞いて見たいが本人が嫌がっている様なので諦める事にしよう。
「あははは、そいつは良かった、これからもエンリーカ王女様を大事にしてやっておくれよ」
アライアさんはそう言ってまた俺の頭を撫でてくれた。
「はい、長居しても悪いのでここで失礼しますね」
「何のお構いも出来なかったが、こんな所でよければまた来ておくれ」
「アライア、インドロ、元気でね」
「エンリーカ王女様、子供が出来たら見せに来ておくれ」
「エンリーカ王女様もお元気で」
二人に見送られて山を降りる事となった、エンリーカは子供と聞いて顔を真っ赤にしていた、二人にはエンリーカとの子供が出来たら見せに来なくてはいけないな。
「エルレイ、飛んで帰りましょう」
アルティナ姉さんが歩き疲れた様でそう提案して来た、よく見るとユーティア、エルミーヌ、ラウラ辺りも歩き疲れている様だった。
普段あまり運動しない、いや出来ないからな。
しかしリリーやヘルミーネは疲れていない様だな、無理はさせられないから飛んで帰る事となった。
帰りに街によって先程の蜂蜜漬けを一つ買って帰り、お菓子も要求されたのでもう一度買って食べながらキュロクバーラ城へと戻った。
エンリーカが城の衛兵声を掛け、暫くするとマティアスが出て来てくれた。
「エルレイ、お帰り、街の見学は楽しかったか?」
「楽しませて貰ったよ」
「それは良かった、エンリーカに頼まれていた物の準備は出来ている、こちらに来てくれ」
マティアスに着いて行くと俺が転移して来る場所に箱が二つ置かれていた。
「マティアス、これは?」
「中に蜂が入っているから取り扱いは注意してくれ、飼い方はエンリーカが知っているから後で教えて貰うと言い」
「いいのか、これ貰っても」
「これくらい構わないさ、大事に育てて行けばどんどん増えて行くからな」
「マティアス、ありがとう」
「こちらこそ、色々貰って皆喜んでいた」
マティアスは笑顔を見せていた、エンリーカが言ったようにこちらの農作物でも喜ばれたようで良かった。
「ルリアとロゼで箱を浮かせて持ってくれないか?」
「構わないけど、収納すればいいんじゃない?」
「生物は収納できないんだよ」
「そう言えばそうだったわね、分かったわ」
ルリアとロゼが箱を宙に浮かせ手の平に乗せていた、見た目凄い力持ちに見えて変だが仕方が無い。
「マティアス、またな」
「エルレイ、いつでも遊びに来てくれ」
マティアスを握手をして別れ、転移でリアネ城へと戻って来た。
「すみませんが、その箱をこちらに持って来て頂けませんか?」
エンリーカは事前に決めていたのか蜂の巣箱を設置する場所へと移動して行った。
俺が運ぶと言ったのだが、ルリアも興味があったのか自分で運ぶと言ったのでそのまま任せた。
そこは城で使う花を栽培している所で大きな木があり、その木陰へと設置する事となった。
「では蜂を外に出しますのが驚かないで下さいね」
エンリーカはそう言って箱の下の方に詰められていた布を引き出した、するとそこから蜂が飛び出して行った。
「これで大丈夫ですわ」
「何もしなくていいのか?」
「えぇ、余計な事をしてはいけませんのよ」
「分かった、城にいる者たちにも巣箱に触らないように言っておく」
「お願いしますわね」
これで蜂蜜が手に入る訳だな、後はこの巣箱を増やして行けばいいのだろうか?
「エンリーカ、すまないが蜂の飼い方、蜂蜜の収穫方法、巣箱の作り方等本にまとめて貰えないだろうか?」
「分かりましたわ、暇な時間に書いておきますわね」
「頼んだよ、急ぐ必要は無いからな」
「はい」
無事休日を終える事となった、全然休めてはいないが皆と楽しく過ごせているから正しい休日の過ごし方だろう。
翌日からまた道を作る作業へと移り、この週で王都までの道が完成し、俺の領土との行き来が楽になる事となった。
まだルノフェノの領地が残っている、こちらは王都とは直接接していないが俺の領地とは接しているので、そちらを繋げる予定だ。
そして次の休みの日、ルフトル王国へ行く事となった。
俺はエルフの事がばれる危険が増えるので行かなくていいと言ったのだが、ロレーナが皆を信用しているからと、女王様にお願いしてしまった。
勿論俺も皆を信用しているが、秘密を持った者は出来るだけ少なくしておいた方が良いと思ったのだが、女王様もあっさり許可をくださった訳だ。
それで俺はルフトル王国に出掛ける前夜、皆に説明し確認を取る事にした。
「明日はルフトル王国に行く訳だが、そこで皆には守って貰う事がある、知ってる者もいるかも知れないがルフトル王国の王都は結界に守られていて普通の人は結界内に入れない事になっている、今回ロレーナが女王様に許可を頂いては入れる様になった訳だが、中で見た事は絶対に誰にも話してはいけない!
エンリーカ、エレオノラ、リディア、エミリア、ユーティア、エルミーヌ、絶対に話さないと約束してくれ」
俺が真剣に話すと皆も真剣に考えてくれるようでしばらく沈黙が続いた。
「・・・分かりました、絶対に話さないとお約束しますわ」
「私も約束します」
「約束します」
「私は約束は守るわよ」
「エルレイ様、私も話さないと約束致します」
皆約束してくれたが、リディアだけ沈黙したままだった。
「リディアは約束できないのか?」
「・・・正直私は隠し事が苦手だから自信がない、でも一人だけ置いていかれるのは嫌だから努力するよ!駄目かな?」
俺もリディアを連れて行きたいが、約束できないのであれば連れて行く訳には行かない、これはエルフ全体の安全に関わる話だから許していい事では無い。
「分かった、明日のルフトル王国行きは中止にしよう、リディアだけ置いて行く訳には行かないからな」
俺の言葉を聞いてリディアは凄く落ち込んでいた、正直に話してくれた事は嬉しく思う、リディアの所に行き優しく抱きしめてやった。
「リディア、正直に話してくれてありがとう、ルフトル王国に行けなくなったが、嘘をつかなかったリディアを誰も責める事は無いからな」
「・・・エルレイありがとう」
リディアを優しくなだめていると、ロレーナから声が掛かった。
「エルレイ、明日はルフトル王国に行くのじゃ、女王様も私達の事が露見しても構わないと言ってくれているのじゃ」
「ロレーナ、それは許されないだろう、ロレーナの仲間が危険に晒される可能性が高くなるのだぞ」
「そんなの心配ないのじゃ、エルレイが守ってくれればいいだけの話じゃ」
「それは当然守るけど、俺は何時までも生きてはいないぞ」
エルフの様に長生きは出来ないからな、俺が死んだ後もロレーナも生きているだろうし、他のエルフも当然生きている訳だ、今は安全でも将来どうなるかは分からないからな。
「そんな心配いらないのじゃ、エルレイが死んでも私との子供が守ってくれるのじゃ」
「そうね、ロレーナの言う通りだわ、エルレイ、明日は予定通りルフトル王国に行きましょう、私との子供・・・いえ、ここにいる皆の子供でこの領地とルフトル王国を守って行きましょう」
「ルリア・・・分かったよ、明日は予定通りルフトル王国に遊びに行こう」
「いいのだろうか?」
「リディア、皆がこう言ってくれているからいいんだよ、でも出来るだけ話さない様にして欲しいかな」
「分かったよ、私もルフトル王国を守る事に決めたー」
リディアがいつものような元気に戻ってくれた。
「もしリディアが話した時には私も責任を取りますわ」
「私も責任を取ります」
「私も取ります」
三人の姉妹も相変わらず仲がいい様でリディアを庇ってくれるようだな。
仲が良いと言えば、以前は四姉妹で食事や部屋で休憩する際並んで座っていたが、最近は皆バラバラに座っている、遊びに行く際組み合わせを色々変えた結果皆と仲が良くなったようで、誰とでも話すようになっていて非常に良かった。
という事で俺はリディアから離れて明日の組み合わせをどうすか悩んでいた。
「エルレイ、もう組み分けは必要ないんじゃない?」
ルリアは俺がどの様な意図で組み分けをしていたのか分かっているのだろう。
「そうだが、俺と手を繋ぐ順番が必要では無いかと思ったのだが・・・」
「その順番だけ決めればいいじゃない、組み分けにすると手を繋げない者が出て来るのよ」
確かにルリアの言う通りだな、リゼ、ロゼ、ラウラ、エルミーヌとは手を繋いでいない気がする・・・。
「ルリア、分かったよ、しかし繋ぐ時間が短くなるな」
「それはエルレイのせいでしょ、次から次へと婚約者を増やしたからこうなったのよ」
「それについては申し訳ないのだが、自分から増やした事は無いと思うぞ・・・」
多分無いよな?
「嘘おっしゃい、リゼ、ロゼ、ラウラ、エルミーヌは貴方が増やしたのでしょう、ユーティアも一緒に踊っていたしエルレイから声を掛けたんじゃないのかしら?」
「うっ・・・確かにその通りだが、ユーティアに関しては・・・」
そこでユーティアがこちらを見て泣きそうな表情を見せていた・・・ユーティアには俺から声を掛けた事は一度も無いのだが、ここで正直に言ってしまうとユーティアに泣かれてしまいそうだな。
「はい、私がユーティアに声を掛けました・・・」
「ふんっ!」
ルリアに殴られるかと覚悟を決めていたが怒っただけで殴られる事は無かった、ユーティアは笑顔を見せていたからこれでよかったのだろう。
翌日皆を連れてルフトル王国の結界の前に転移でやって来た。
『ソフィアさん、結界前に到着しました』
『エルレイ様、少々お待ちくださいね』
ソフィアさんが来るまでもう一度言っておいた方が良いかな。
「今から結界内に入れて貰うが中で見た事は秘密にしてくれよ」
「エルレイ、くどいわよ、それは昨日もう話し終えた事じゃない」
「そうじゃな、エルレイは心配し過ぎじゃ」
「そうだが、この結界内に住む人たちの安全を考えるとだな・・・」
皆から非難を浴びる事になったが、ここが襲われる事になっては大変だからな。
「エルレイ様、皆様お待たせいたしました」
そうしていると結界無いからソフィアさんが姿を現してくれた。
「ソフィアさん、お久しぶりです」
「エルレイ様、お久しぶりです、中に入ってゆっくりとお話致しましょう」
「はい、お願いします」
ソフィアさんに続いて結界内に入って行く。
「ではお城までお送りしますね」
「人数が増えましたが大丈夫でしょうか?」
「大丈夫ですよ、ミル、お願いね」
「は~い、ミル様参上!」
ミルは相変わらず元気いっぱいだな、ミルは俺達全員を一気に浮き上がらせ勢いよく飛び出した。
「ソフィアさん、ミルの飛ぶ速度早くなって無いですか?」
「えぇ、エルレイ様の魔法を見てからミルも訓練に力を入れてくれるようになってくれました」
「どうよ~、凄いでしょう~」
ミルはドヤ顔で俺の前を飛んでいた。
「ミル、凄いぞ!」
「そうでしょう~」
ミルのおかげであっという間に城へと辿り着いた、そこでソフィアさんが外に出る為にしていた変装を解いて緑の美しい髪と長い耳が姿を見せた。
「皆様、エルフの街にようこそ」
ソフィアさんは少しおどけた感じで軽く会釈をした。
「エルフですって!確かにこれは秘密しないといけませんわね・・・」
「驚きました」
「エルフ!さすがの私もこれは他人に話したりしないよー」
「エルフ綺麗」
皆非常に驚いている様子だ、ユーティアも声は出ていないがが口がぽかんと開いている。
「では皆様、女王様がお待ちですのでこちらへどうぞ」
ソフィアさんは俺達を城の中へと案内してくれた。
「ソフィアさん、領内で採れた農作物を持って来ているんだけど、何処に置いたらいいだろうか?」
「エルレイ様、いつもありがとうございます、ではこちらへ」
ソフィアさんに指定された所に収納から取り出して置いて行き、女王様の部屋へと向かった。
「エルレイ、久しぶりですね」
「女王様、お久しぶりです、本日は私の我儘を聞いてくださりありがとうございました」
「ここにはいつでも遊びに来て貰って構いませんよ、ロレーナも楽しく過ごしている様ですね」
「皆と楽しく暮らしているのじゃ」
女王様はロレーナの表情を見て優しく微笑んでいた。
「女王様、こちらは何か変わった事はございませんでしたでしょうか?」
「えぇ、平和そのものでした、ただお隣は戦力を集めている様子ですね」
「お隣と言うとリースレイア王国でしょうか?」
「そうです、しかしその戦力はこちらにではなく、ミスクール帝国とキュロクバーラ王国に向けられている様ですね」
「なるほど、戦争を終えたばかりで疲弊しているキュロクバーラ王国に攻め込むか、北のミスクール帝国に進軍して自分たちが守りやすい領土を増やす方向に向かうかですね」
「でも、余程の馬鹿で無い限りキュロクバーラ王国に攻め込む事は無いでしょう」
女王様はそう言って俺の後ろにいるエンリーカ達を見ていた。
「そうですね、キュロクバーラ王国から四人の王女を頂きましたので、攻め込んできた場合は全力でキュロクバーラ王国を支えるつもりです」
「ふふふっ、エルレイも大変ですわね」
「全くです・・・」
「あまり引き留めても悪いわね、今日は楽しんで行ってくださいね」
「はい、ありがとうございます」
女王様の部屋を出て城の廊下を歩いている。
「ロレーナ、今日は何処に案内してくれるんだ?」
今日一日ロレーナが案内すると昨日から張り切っていた。
「まずは美味しい物を食べに行くのじゃ」
ソートマス王都とキュロクバーラ王国で美味しい物を食べて来たからな、ここで食べた美味しい物と言えば大樹の実が真っ先に思い出された。
ただあれは余程の事が無いと食べられない様だから別の物があるのだろう。
「ウィル、今日一日ここにいるから遊んできていいぞ」
「わ~い、行ってきま~す」
「ソルも行って来るのじゃ」
「「行って来るワン」」
ソルは飛んで行ったウィルを走って追いかけて行った、ソルは犬の形をしているが空を駆けるように飛ぶ事が出来るんだよな・・・精霊とは不思議なものだ。
「では今日一日の移動は私がお手伝いいたします」
「ソフィアさん、俺達自分で飛んで行けるようになったので大丈夫ですよ」
「いえ、私も皆様と遊びたいのでお気になさらないで下さい」
「そう言う事ならお願いします」
ソフィアさんはにっこりと微笑んでいたが、それを聞いたミルが表情を歪めていた。
「え~、私もウィルとソルの様に遊びに行きたかった~」
「ミルは何時も遊んでいるじゃないですか、今日は私に付き合って貰います」
「・・・は~い、じゃぁいっくよ~」
ロレーナが耳打ちでソフィアさんに行先を伝え、ミルによって飛び立ち何処に行くか分からないまま運ばれていく。
辿り着いた先はロレーナの母親であるカミーユさんの家だった、確か美味しい物を食べに行くって言っていたと思うのだが・・・。
「お母様、ただいま帰ったのじゃ」
ロレーナが声を掛けると家の中からカミーユさんが出て来てくれた。
「ロレーナ、お帰りなさい、準備は出来ていますからロレーナ手伝ってください」
「ありがとうなのじゃ」
二人は家の中へと消えて行った、さすがにこの人数で入るのは無理だな、大人しく外で待つ事にしよう。
暫くするとバスケットと水筒を抱えた二人が家から出て来た。
「お待たせなのじゃ」
「カミーユさん、お持ちしますよ」
「あらエルレイさん、ありがとう、お願いしますね」
カミーユさんが持っていたバスケットを受け取ると中から美味しそうな匂いが漂って来る。
「皆さんロレーナの母カミーユです、何時もロレーナがお世話になっています」
「お母様、挨拶はいいから行くのじゃ、皆着いて来るのじゃ」
挨拶をしていたカミーユさんの手を引っ張ってロレーナが歩き始めた。
「皆着いて行こう」
ロレーナの後へ着いて森の中を歩いて行くとやがて景色が開けて一面の花畑になっていた。
「綺麗ですね」
「あの木陰に座るのじゃ」
ロレーナはそう言って地面の草の上にそのまま座った、そうだな俺もロレーナの隣に腰を下ろした。
皆地面にそのまま座る事に抵抗がある様だが、ルリアは気にせず俺の横に座って来た、それを見て他の皆も周りに座り始めた。
「花のいい匂いがしてくるわね、たまにはこう言うのもいいわね」
「そうだな」
「エルレイ、バスケットの中身を皆に配るのじゃ」
ロレーナに言われてバスケットのに被されていた布をめくると中には、木の葉っぱに包まれている物が入っていた。
俺はそれを皆に配って行くと、カミーユさんは木のコップにお茶を入れて皆に配ってくれていた。
「こうやって食べるのじゃ」
ロレーナは手本にと木の葉っぱを半分めくって口に入れていた。
「お母様のは何時も美味いのじゃ」
皆もロレーナと同じようにして食べていた、俺も一口食べるともちもちとした食感で優しい甘さの食べ物だった。
「美味しいわね」
「美味い、甘さもいい感じだし何個でも食べられそうな感じだな」
「ふふっ、皆さんありがとうございます、こんな物でよければいつでも作って差し上げますよ」
カミーユさんは俺達が食べている姿を見て優しく微笑んでいた。
こんな美しい景色を見ながら美味しい食べ物を食べる、贅沢な事だ、ずっとこのような日々が続いてくれる事を願うばかりだな。
カミーユさんが作ったお菓子を食べ終え、お茶を頂いているとエンリーカがロレーナに話を聞いていた。
「ロレーナもエルフという事なのかしら?」
「私はハーフエルフじゃからな、ほれ耳が短いじゃろ」
ロレーナは耳が見える様に髪を後ろに手で束ねてくれていた。
「ごめんなさい、失礼な事を聞いてしまったわね・・・」
「気にしておらんのじゃ、ハーフエルフじゃからエルレイと婚約出来た訳じゃからな、むしろ良かったと思っているのじゃ」
「そうですわね、私もエルレイと婚約出来て良かったと思いますわ」
ロレーナとエンリーカは仲良く笑い合っていた。
「エルレイさんの婚約者が増えたようですね」
カミーユさんはにこやかにそう言って来た、ロレーナの恋敵が出増えたと怒っているのだろうか・・・。
怒られても正直にに話すしか無いか。
「キュロクバーラ王国の戦争に手助けをしたらこの様な事になってしまい、申し訳ございません」
「あらエルレイさんが謝る事では無いのですよ、ロレーナも皆さんと上手くやって行けている様ですしね」
「それはもう、ロレーナはお姉さんとして皆を纏めてくれています」
「ふふふっ、ロレーナがお姉さん?」
「ロレーナがお姉さんと言うのは間違いないわね、私から見てもロレーナを中心に皆が纏まっていると思うわ」
カミーユさんは俺が言った事を信じていない様だったが、ルリアが補ってくれた事で信じてくれた様だ。
「そう、ロレーナも大人になったという事なのですね」
ロレーナは俺が皆のお姉さんと言った事で、積極的に皆と会話をしているからな、あの笑顔で話しかけられれば誰も無視する事は出来ないだろうし、ロレーナと話をしていると楽しくなるんだよな。
ユーティアともロレーナは最近よく話をしているのを見かける。
そのロレーナは今皆の中心となりエルフの事を話している。
「エルレイさんにロレーナを預けて正解でした、これからもよろしくお願いしますね」
「はい」
カミーユさんはその光景を見て安心してくれた様だった、俺もロレーナがいてくれて本当に良かったと思っている。
ロレーナの笑顔をずっと守って行かなければならないと心に誓った。
「そろそろ次の場所に行くのじゃ」
ロレーナが立ち上がり俺達にも早く立つように言って来た、俺としてはもう少しここでゆっくりしていたがったが仕方が無い。
「カミーユさん、美味しい食べ物をありがとうございました」
「またいらしてくださいね」
「お母様、またなのじゃ」
「ロレーナも元気でね」
カミーユさんと別れの挨拶を済ませると、ソフィアさんとミルの手によって運ばれる事となった。
次の訪れたのはエルフの街だった。
「街を見て回るのじゃ」
「そうか、では皆自由に見て回って貰った方が良いだろうか?」
「それが良いのじゃ」
唯一エルフの街だけは安全で自由に歩き回れる場所だからな、個人個人好きに行動させた方が良いだろう。
「では皆ここは自由行動にする、お金を渡すから少し待っていてくれ」
俺は一人銀貨十枚づつ渡して行く、前回来た時に見た商品の値段からすると十枚あれば十分足りる筈だ、
ロイジェルク様が買った机なんかは別だが、あんなもの買う人はいないだろう・・・。
「その金額で足りなかった場合は俺に念話で伝えてくれ」
「「「はーい」」」
皆それぞれ行動を開始していた、俺はラウラとすでに手を繋いでいる、ここはラウラと共に行動するつもりだ。
「ラウラが行きたい所に付いて行くぞ」
俺がそう言うとラウラは少し考えてから行先を告げてくれた。
「・・・エルレイ様、ではあのお店に行きましょう」
ラウラと向かった先は装飾店だった、そう言えばラウラには櫛を買ってやっただけで髪飾りは買ってやって無かったな、それにエンリーカ達とユーティア、エルミーヌにも買ってやらないといけないな。
ラウラはそれを考え俺をここに連れて来てくれたのだろう。
「ラウラはどんな装飾品が欲しいのだ?」
「櫛が欲しいのです、この前頂いた櫛はとても素晴らしく髪が綺麗になるので、皆様の分も購入できたらと思いまして」
「なるほど、それならば櫛は俺が買う事にするから、ラウラは他に欲しい物を買っていいぞ」
「ですが私は特にほしい物など・・・」
「そうか?ではラウラに髪飾りを買ってやるから気に入ったのを選んでもらえるか?それとエンリーカ達にも買ってやらないといけないから選ぶのを手伝ってくれ」
「はい」
取り合えず櫛を選ぶ事にするか、と言っても同じ形の櫛が十個ほど並べて置いてある。
人数を考えると全部欲しいが、この櫛は貴重な大樹の枝から出来ているから買い占める訳には行かないだろうな。
「店主、この櫛は何個までなら買っていいだろうか?」
「そうだな、せっかく買いに来てくれたから全部と言いたい所だが、大樹の枝が貴重で手に入れる為には女王様の許可が必要でね、すまないが三個までにしてくれないか?」
「分かった、では櫛は三個買う事にしよう」
「毎度あり、その代わりほかの商品はいくら買って行っても構わないぜ、嫁さんいっぱいいただろう?」
「そうだが、こういう物は沢山あげると価値が無くなるんじゃないのか?」
「そうだな、一、二個あげるのが一番喜ばれるだろうな」
「そう言う訳で多くは買って行けないな」
「そりゃ残念だ」
店主は全く残念そうでは無く笑っていた、さて髪飾りを選んでいるラウラの所へ行くとしよう。
「ラウラ、決まったかい?」
「エルレイ様、決められません、選んでいただけないでしょうか?」
「そうだな・・・これなんかどうだろう?」
俺は精霊を模った髪飾りをラウラに見せた。
「エルレイ様、これは私に似合わないのではないでしょうか?」
「そんな事は無いぞ、綺麗なラウラにぴったりだと思う」
俺は背伸びをしてラウラに髪飾りを付けてやった。
「ラウラ、良く似合っているよ」
ラウラは鏡で俺が付けてやった髪飾りを角度を色々変えて見ていた。
「エルレイ様、ありがとうございます、これに決めます」
ラウラも気に入ってくれたのかにっこりと微笑んでくれた。
その後ラウラと共にエンリーカ達の髪飾りを選んで購入し店を出た。
まだ皆買い物している様だな、俺はラウラと共に皆の買い物の様子を見て回った。
「次は昼食じゃ」
買い物を終え皆が集まった所で昼食という事になった、カミーユさんの所でお菓子を頂いたのであまりお腹はすいていないが食べないといけないよな。
「昼食はお城で用意していますので向かいますね」
ソフィアさんが城まで運んでくれて食堂まで案内してくれた。
昼食はユーティアとエルミーヌと一緒に食べる事にしよう、二人の手を取り席へと座った。
席に座ると料理が運ばれてきた、例によって野菜や果物が中心のメニューだ。
ロレーナに聞いた所、肉を食べる事は無いのだと、そもそも食用に飼育している動物がいないので食肉自体が無い。
とは言え肉を食べられない訳では無く、生まれた時から食べなれていないから気にならないのだと言う事だった。
「頂きます」
「「「頂きます」」」
俺はこのエルフの料理をかなり気に入っているが、初めて食べるユーティアとエルミーヌは少し表情を歪めていた。
それに比べエンリーカ達は美味しそうに食べていた、キュロクバーラ王国も似たような感じだったかだろうか。
「ユーティア、エルミーヌ、苦手な様だったら無理して食べる事は無いぞ」
誰しも苦手な食べ物と言うのはある物だ、食べ物を残す事は良く無いが、苦手な物まで無理やり食べさせようとは思わない。
「(フルフル)」
「エルレイ様大丈夫です、食べられます」
食べられるとは言ったが美味しい訳では無いのだな・・・。
確かに癖があり最初は食べにくいかも知れないが、慣れると美味しく感じられる。
その証拠に最初は苦手にしていたルリアやヘルミーネも美味しそうに食べているからな。
「そう言えばユーティアとエルミーヌは何を買ったのだろうか?」
先程購入した物を皆から預かったが中身は見て無いんだよな、二人が何を買ったのか興味があったので聞いて見た。
「・・・」
「エルレイ様秘密です・・・」
少しでも気を紛らせようと思って話をしてみたが秘密と言われてしまった、秘密と言われては無理に聞き出す訳には行かないな。
「そうか、では買い物は楽しかっただろうか?」
「(コクン)」
「はい、お金を自分で支払って買い物した事がありませんでしたので楽しかったです」
「ここでしか皆に自由に行動させてやる事が出来ないが楽しめたのなら良かった」
ユーティアとエルミーヌは笑顔になり食事も楽しく食べてくれるようになって良かった。
食事を終えお茶を頂いていると、ロレーナが立ち上がり申し訳なさそうにしていた。
「皆すまんのじゃ、午後から行く場所が無いのじゃ・・・」
エルフの街はそう広くないからな、後行く所と言ったら森と畑くらいだろうか・・・。
「それでしたら飛んでいる時に見えた畑を見に行きたいですわ」
エンリーカとしてはエルフが育て散る畑が気になるのだろう、しかしエルフの畑は精霊が管理しているからあまり参考人にならないんだよな。
精霊が畑を耕したり、成長を促したりしているのを見ると、流石の俺もずるいと思ってしまったくらいだからな。
「えーそれはつまんないー」
リディアは当然畑など見たく無い様だな。
「そうだな、畑を見に行く者と城や街を見学する者に分かれる事にしようか」
「それはいい案なのじゃ」
「ではお城の案内は私は引き受けますね」
ソフィアさんがお城の案内を買って出てくれた。
「俺は畑の見学に行く事にしよう」
二手に分かれる事になったが、畑の見学に行く者はエンリーカ、リリー、ロレーナ、ロゼだけだった、こんな物だろうな。
「ルリア、そちらの管理は任せた」
「分かったわ」
迷惑をかける事は無いと思うがルリアがいれば大丈夫だろう、俺達は城を出て俺が全員を運んで畑へとやって来た。
午後という事もあり畑仕事をしている人はほとんどいない様だ、暑い時間帯に畑仕事をする人はどこでもいないよな。
「変わった畑ですわね」
エンリーカは畑を一目見てそう言った、俺にはどこが変わっているのか分からない。
「どの辺りが変なのだろうか?」
「エルレイは見て分からないのですか?水路が見当たりませんわ」
そう言えば、俺も畑を作る時は真っ先に水路から作る様ヘンリクさんに教わったな、しかし必要無いんだよな・・・。
「水は精霊でかけてあげるから水路は必要無いのじゃ」
俺の代わりにロレーナが答えてくれた。
「そうなのですね・・・もしかして肥料も必要無いのでしょうか?」
「そうなのじゃ、精霊が土に栄養を与えてくれるのじゃ」
「・・・エルレイ、これでは見学に来た意味がありませんわね」
エンリーカは畑を見て残念そうにしていた。
「そうなんだけどさ、そう言えばエルミーヌは街で服を見たかい?」
「ルリアに勧められて服は買いましたわ、肌触りがとても良かったですわ」
「そうだろう、俺の領内でも作り始めているんだがまだ出来上がって無いんだよな、良かったら作っている所を見に行くか?」
「勿論見に行きますわ、あの布地を量産する事が出来れば、毎日気持ちよく過ごせそうですわ」
「リリー、ロレーナ、ロゼ、シルクを作っている所に行くが大丈夫か?」
虫が嫌いな人もいるだろうからな・・・。
「エルレイさん、私は大丈夫です」
「大丈夫なのじゃ」
「エルレイ様、問題ございません」
「では向かうとしよう」
場所は覚えているので歩いてそこまで辿り着いた。
「すみませーん、どなたかいらっしゃいませんかー!」
小屋の中に声を掛けると中から作業をしていた人が出て来てくれた。
「エルレイ君、久しぶりだね」
「ワルテさん、お久しぶりです」
「何か用なのかな?」
「中を見学させて貰えませんか?」
「構わないよ、今丁度餌をやった所だ」
「ありがとうございます、では中に入ろうか」
小屋の中に入るとワルテさんが言ったように餌である葉っぱが台の上に敷き詰められていて、ブルーモスの幼虫が元気よく食べている所だった。
「ひっ!」
エンリーカはそれを見て驚いている様子だった、
「エンリーカ、大丈夫か?」
「だ、大丈夫ですわ、虫には慣れております・・・ただこの様に大量にいるのには驚きました」
「まぁ確かに少し数が多いが、服を作るためだからな」
「えっ!この虫から先程の服が作られているのですか?」
「その通り、この虫ブルーモスと言うのだが、このブルーモスの繭から作られている」
「それであのような手触りの服が作られるのですね」
エンリーカは熱心にブルーモスを観察していた、もっと嫌がる反応を期待していたのだが残念だ。
「私達の所でも早く作れるようになるといいですね」
「そうだな、帰ったらアドルフに確認してみるとするか」
「エルレイ、糸を作っている所を見て見たいわ」
「そうだな、行って見よう」
エンリーカを連れ繭から糸を作っている所と糸に色を付けている所の見学をして城へと戻った。
「今日は勉強になりましたわ」
エンリーカはシルク作りが大変気に入った様子で作業している人たちに色々聞いて回っていた。
「エンリーカ、帰ったらシルク作りを本に纏まてくれないか?」
「それは構いませんが、実際に作業をやったわけではありませんから正確な情報では無いですわよ」
「それでもかまわないよ、それを実際にやっている人に渡して参考にして貰うだけだから」
「その方達は文字が読めるのでしょうか?」
「あっ・・・」
そうだ、農家の人達は文字を読む事が出来ない人がほとんどだな・・・。
「私が直接行って指導しますわ」
「そうして貰うと助かるが、いいのか?」
「構いませんわ、私も実際にやってみたいですし」
「そうだな、何事もやってみないといけないな」
「そうですわ、その後で正確な作り方を本にまとめた方が良いと思いますわ」
「エンリーカ、お願いするよ」
「エルレイさん、私もやってはいけないでしょうか?」
「私も少しは知ってるから手伝うのじゃ」
「リリーとロレーナもやってくれるなら助かるよ」
「はい、エンリーカさんロレーナさん一緒に頑張りましょう」
「リリー、ロレーナよろしくお願いしますわ」
「よろしくなのじゃ」
リリーは仕事が出来る事が嬉しいのかとても喜んでくれていた、リリーはロゼの様に俺の手伝いが出来ないと嘆いていたからな。
しかしリリーには魔法の教育を任せていて大変助かっているのだが、リリーはそれを仕事だとは思ってくれなかった。
今回シルクの作りに関われること良かったのかもしれないな。
城の玄関で待っているとソフィアさんが皆を連れて上空から飛んで来た。
「エルレイ様、お待たせしました」
「ソフィアさん、案内ありがとうございました、ミルもありがとう」
「お気になさらないで下さい」
「今日は頑張ったよ~」
「ではこれで失礼しますね」
「そうですか、では結界までお送りいたしますね」
ソフィアさんに結界まで送って貰い別れを告げてリアネ城へと戻って来た・・・。
≪ラウラ視点≫
時はアドルフさんに子供達を使用人としての教育の許可を頂いた所まで遡ります。
エリオット達男性の教育には、アドルフさんがフォルクさんを寄こしてくれました。
フォルクさんは城の玄関を担当する責任者で、アドルフさんが信頼している人でもあります。
城の玄関はエルレイ様やお客様の対応など、最も失礼があってはならない場所です、そこの責任者を寄こして下さったと言う事はアドルフさんもこの子達に期待しているという事でしょう、頑張って貰わなければなりませんね。
私はエレン、アンナ、マリーの三人の担当です、ヘルミーネ様とアルティナ様には練習相手をお願いした所、快く受けてくださいました。
実際に朝の支度や紅茶の入れ方など、お嬢様が不自由なく暮らせるように指導していきます。
彼女達は私が教えた事を文句も言わずに必死に覚えようと努力してくれます、そのせいでついつい教え方が厳しくなってしまいますが、アルティナ様が優しく彼女たちに接してくれている為、くじけず私の指導に着いて来てくれます。
私一人で教えていたのであれば彼女達は挫けていたかも知れません、アルティナ様に感謝ですね。
私は彼女達に恨まれるかもしれませんが仕方ないでしょう、エルレイ様に仕えられるように成る為に私は喜んで彼女達に恨まれる事になりましょう。
エルレイ様は武闘大会の準備でお忙しいようですね、私も武闘大会には興味があります、勿論参加する方では無く見るほうです。
他のメイドさん達は護身術の訓練を毎日行っているようなので戦えると思うのですが、私には無理ですね。
私が兵士達の戦う姿を見たのは陛下にお見せするための御前試合で、手に汗握る戦いに興奮したのを覚えています。
あのような素晴らしい戦いが見られると良いですね。
さて昼食後、ヘルミーネ様はエルレイ様が出掛けていると決まって鏡の魔道具でエルレイ様のお顔を確認しています、勿論私も隣で拝見させて頂いております。
ある日ヘルミーネ様、アルティナ様、私の三人しか食堂にはいらっしゃらなく、私達に黙って出かけたのだとヘルミーネ様とアルティナ様が怒っていらっしゃいました。
ヘルミーネ様が鏡の魔道具でエルレイ様を確認すると、どうやら街で何かされていらっしゃるようですね。
ヘルミーネ様はエルレイ様に文句を言おうとしておりましたが、アルティナ様が鏡の魔導具で見ている事がばれると止めてくださいました。
私としましても置いていかれた事は残念に思いますが、着いて行った所で私が何か出来る訳ではありませんからね、今は教育に専念しておいた方がエルレイ様の為にもなりますから我慢です。
彼女達の教育は順調に進んでおります、順調とは言え、全て上手く覚えられているのかと言えばそうでもありません。
エレンは身の回りのお世話は上手に出来ますが、テーブルマナーが苦手です。
アンナはテーブルマナーは完璧ですが、その他がいまいちです。
マリーは紅茶の入れ方がとても上手ですが、その他の事が全然覚えきれていません。
最初は誰しも得手不得手がある物だろうと思っておりましたが、どうやら三人で覚える物を分担していた様です。
確かに短期間で全ての事を覚えられる事は難しいでしょう、私も全ての事を覚えるまで数年かかりましたからね。
それを午後の魔法と体力作りが終わった後、三人で教え合っていた様なのです。
それにより日に日に出来る事が増えて行き、最後には三人とも同じように仕事が出来る様になっていました。
彼女達は本当に素晴らしいです、私が同じ立場だとしたら間違いなく途中で挫折していたでしょう。
自分でもそう思うくらい厳しく教えましたからね・・・これでアドルフさんに認められることは間違いないでしょう。
子供達の教育の日々は過ぎ、エルレイ様に仕えるべく使用人としての試験を受ける事となりました。
試験官はアドルフさんとメイド長のカリナさんです、お二人共大変厳しい方ですので頑張って貰いたい物です。
まず最初の試験は歩き方やお辞儀の仕方と言った基本からです、ここから一つでも駄目だと言われればそこで不合格となり、使用人として働く事は出来ません。
なんだか私の方がドキドキして参りました、私の隣で同じように見守っているフォルクさんも私と同じような心境なのでしょう。
いえ、アドルフさんの部下ですから、エリオット君たちが不合格ともなれば教えが悪かったフォルクさんの責任という事になりかねないですね。
フォルクさんも真剣な表情で見守っておりますからそうなのでしょう。
試験は開始され、一人ずつアドルフさんとカリナさんの前まで歩いて行きお辞儀をしてまた元の位置に戻る、と言うだけの簡単な物です。
いえ、簡単ではありませんね、私も幼い頃毎日やらされて覚えましたから、彼らは短期間しか与えられなかったのですからね。
しかし一人、また一人とアドルフさんから合格を言い渡されていきます、やがて全員合格を頂く事が出来ました。
しかしまだ試験は始まったばかりなのです、次は挨拶の仕方、給仕の仕方等へ移行していき、そのすべて全員合格する事が出来ました。
ここから男女に分かれて試験内容が変わります。
男性の方は主や来客への対応、護衛等等の試験となり、女性はお嬢様への対応の試験となります。
それぞれ他の執事やメイドが、主役、客役、お嬢様役となり、試験を受ける者に色々な要求をしてくると言う意地悪なものです。
しかしそれはごく普通の日常で起こりうる事ばかりなので意地悪とは言えませんね、それに対応できない様では使用人としてやって行く事は難しいでしょう。
私も今目の前で試験管の使用人がやってる事以上の意地悪な事をソートマス城にいるころ散々やられましたし、ちょっと思い出しただけでも気分が悪くなりますね。
でもエルレイ様やルリア様達はその様な事は一切なさらないので、ここにいる分には必要無いのかも知れません。
しかし彼らはエルレイ様に近い所での仕事を任されるでしょうから必要ですね、エルレイ様は良く外出される方ですから外でどの様な要求をされるか分かりませんからね。
多少危なげない場面もありましたが、カリナさんは女性三人に合格を出してくださいました。
男性の方はあまり見ていなかったのですが無事合格を貰えたようですね。
最後に一人ずつ紅茶を入れて終わりです、しかしこれが一番難しいかも知れません。
少なくとも私は両親から合格を貰えるまで三年かかりました・・・あれは苦い思い出ですね。
その日の気温や天候によって蒸らす時間が微妙に変わります。
今日は良く晴れていて暖かいですので多少短めでしょうか、ポットに茶葉とお湯を注いで蒸らすために蓋をします。
事前にポットを温めて置く事も必要ですね、蓋をしてからが勝負です、微かに香って来る紅茶の香りを感じながらティーカップに注ぐ時間を判断します。
注ぐ判断は人それぞれの様です、私は紅茶の香りが広がる一歩手前で注ぎます。
ロゼはポットを触った時の微妙な温度の変化で判断しているとの事でした、私も試しに触ってみましたがただ熱いだけでよく分かりませんでした。
リゼは感覚で何となく今かなと言う事でした、しかし二人共美味しい紅茶を入れるのですからね、ですからやはり紅茶を入れる試験が最後であり最難関であるのでしょう。
先ずはエレンからの様ですがかなり緊張している様です、あれでは正しい判断は出来ないでしょう。
『エレン、落ち着きなさい、いつもの様にやれば大丈夫ですからね』
『はい、ラウラ先生、ありがとうございます』
エレンは紅茶を入れるのが苦手で遅くまで練習していた様ですから、頑張って欲しいものです。
助言はしない様にと言われておりましたが、念話で気持ちを落ち着かせただけなので大丈夫でしょう。
エレンが落ち着きを取り戻し紅茶を入れ始めました、私も自分が入れる時のような気分で見ておりました。
少し早い様に思えましたが、エレンは入れた紅茶を運んで座っているアドルフさんとカリナさんの前にお出ししました。
お二人は香りを確認して一口飲みティーカップを置きます、それをお下げして試験は終了です。
お二人は頷き合ってカリナさんが発表しました。
「ギリギリ合格です、しかしこの紅茶をお出しする事は許可致しません、これからも精進なさい」
「はい、ありがとうございます」
エレンは無事合格しました、アドルフさんとカリナさんも紅茶を上手に入れるまでかなりの時間を要する事は分かっていらっしゃるでしょうからこの判断なのでしょう。
続いてアンナもギリギリの合格を頂きました。
最後マリーですが、彼女は合格を頂き紅茶をお出しする許可も頂きました。
マリーは私が教えた様に紅茶の香りで判断しており、そのマリーが紅茶をお出しする許可を頂けたことは自分の事の様に嬉しい物でした。
男性の方も全員ギリギリ合格を貰い、八名全員エルレイ様の使用人として働ける事が出来る様になりました。
皆に何かご褒美をと思ったのですが、残念な事に私はお金を持っておりませんし買いに行く事も出来ません。
私に出来る事となれば簡単なお菓子を作ってやる事くらいですので、後で作って差し上げる事にしました。
試験の翌日、エルレイ様に仕える事を報告する事となりました。
普段使っていない城の謁見室ですので私もかなり緊張しております、雰囲気にのまれると言う奴でしょうか。
この様な場所にはソートマス城にいた頃も入った事はありませんでしたし、そもそも使用人が入れる場所では無いのです。
だからこそアドルフさんはこの場所を選んだのかも知れません、お前達はエルレイ様にとって特別だと言う事を知らしめるためでしょうか。
あくまで私の憶測ですので正確な所は分かりません。
エルレイ様らしい優しい言葉を掛けられ、彼らは正式にエルレイ様の使用人として認められました。
その後男性たちに剣をエルレイ様が購入して下さると言う事で街へと出かける事となりました。
今回も美味しい物が食べられると良いですねと、ひそかに期待をします。
私の隣にはルリア様が並んで歩いて頂きとても安心致します。
ヘルミーネ様が早速エルレイ様にお菓子をねだっております、ヘルミーネ様頑張って下さい、心の中で応援します、その甲斐あってか素直にエルレイ様は買って頂く約束をヘルミーネ様に致しました。
エリオット君達は剣を選びに行った所でエルレイ様がアドルフさんにお菓子を買って来るようお願いしました、私に言ってくださればよかったのですが残念です。
しかしお菓子は食べられるのですからね、少しの我慢です。
アドルフさんは意外と早くお菓子を購入して来てくださいました、しかしまだ店内からエルレイ様達がお戻りになりません。
アドルフさんもエルレイ様を置いてお菓子を配るような事をは致しませんから、早く出て来てもらいたい物です。
やがてエルレイ様達が店内から出て来てお菓子が配られ食べる事が出来ました。
美味しいですね、私は幸せを感じているとエリオット君たちが泣いていました、そうですね私とは違った意味でこのお菓子を食べる事が出来なかったのですね。
お菓子を食べた後はスラム街へと向かいました、以前とは違いエルレイ様の手によって綺麗な場所となっていました。
ヘルミーネ様の鏡の魔道具で少しだけ見えて知っていたのですが、実際に見ると本当に以前ここがスラム街だったのだと誰も思わない事でしょう。
そのくらい綺麗な住宅街へと変わっていたのです。
次に貴族街へと向かい、親がいない子供達の保護施設と教育施設を見せて貰いました。
これなら私はもう誰かに読み書きを教える事は無くなりそうですね、少し寂しい気も致しますがこれからは自分の訓練に精を出す事に致しましょう。
教育係から解放されたヘルミーネ様とアルティナ様と私は魔法の訓練に集中する事に致しました。
ルリア様とロゼは遠くの方で飛行魔法の訓練をしている様です。
「アルティナ様、ルリア様達はどの様な訓練をしていらっしゃるのでしょうか?」
「あれね、私もやっているけどルフトル王国でソフィアのミルがやっていた様に、複数人同時に飛行魔法で運べるように訓練しているのよ」
「そうなのですね、それは難しいのでしょうか?」
「そうねぇ、今やっている方法だと難しいわね」
アルティナ様は今やっている方法を私に教えてくれた、確かに難しそうですね。
私も変化、強化、圧縮の全てを習得しましたので出来るはずです、やってみましょう。
先ずは一緒に飛んで運ぶ物を作らないといけませんね。
私が使えるのは風と水ですから、ヘルミーネ様の氷像を作ります、リゼの様に可愛く作る事はまだまだ私には無理の様です・・・。
先程アルティナ様に教えられた通りの方法を試してみましょう・・・なるほど難しいですね。
私は一度地上へ降り氷像の横に立ちます、アルティナ様が今やっている方法では難しいとおっしゃっていた様に、他の方法を考えている様でした。
そうですね、ソフィアさんのミルはどの様に飛んでいたのでしょう、あの時の光景を思い出します・・・。
全体を包み込むような感じで飛んでいた様に思います。
そうですね、個別にかけるのではなく私を中心とした範囲に飛行魔法が掛けられればいいのですよね・・・。
これは魔法の変化を使えばいいのでしょうか?
他の魔法でも範囲を変える事は出来ますので、飛行魔法も自分にかけている魔法の範囲を広げれば良い訳ですよね。
やってみましょう、私は自分に飛行魔法を掛けその範囲を隣の氷像まで広げていきます。
上手く自分と氷像を範囲に捕らえた感じがします、行けそうですね!
私は少し浮かび上がると氷像も同じ様に浮かび上がり、ゆっくりと前後左右上下に移動して見て一度降り立ちました。
うまく行きました、今度はいつもの様に自分の思うままに空の散歩を楽しむ事にしましょう。
氷像と共に空の散歩を楽しんで訓練場に降りると、ルリア様、アルティナ様、ロゼが駆け寄って来てどうやったのかを聞いてきました。
私が皆様に教えると、早速訓練に向かい上手く飛んでおり、複数同時に飛べることが確認できた所でまた戻って来られました。
「皆いい、この事はエルレイには内緒にするわよ」
「ルリア、どうして内緒にするのかしら?」
「それは勿論エルレイに貸しを作るためよ」
「それはいいわね」
ルリア様とアルティナ様がよからぬ相談をしておりますが、エルレイ様に貸しを作って美味しい物を要求するのはいいかも知れません。
「承知しました」
私とロゼもエルレイ様に内緒にすることに同意致しました。
「しかし、こんな基本的な事で出来たなんてね、ラウラ凄いわよ」
「いえ、私は皆様と違って基本しか出来ないですので・・・」
「私も他の方法を考えていたけれど、難しく考えていたわね」
「私も同じです」
「ラウラ、これからも貴方の考えで何か出来たらエルレイより先に教えて頂戴ね」
「分かりました」
この先何か思いつくかは分かりませんが、美味しい食べ物の為に考えて見るのもいいですね。
武闘大会が近づくという事で、エルレイ様にはダンスの練習に励んで貰う事にしました。
ダンスの練習は楽しいですね、エルレイ様と二人っきりで踊り続けられるのですから・・・。
そう思ったのも最初だけで、ルリア様とロレーナ様の練習もしなければならない様で、リゼとロゼで交代しながらやる事となりました。
エルレイ様とロレーナ様は呑み込みが早く直ぐに覚えられましたが、何でも出来ると思われていたルリア様が苦戦なされております。
武闘大会前夜、リアネ城で領内の貴族様をご招待してのパーティが開かれました、皆様エルレイ様と楽しそうにダンスを踊っていらっしゃいます。
私もいつかあの場所でエルレイ様と踊りたいものですね。
翌日武闘大会開幕です、エルレイ様の席の後方で見させてもらえます、特等席ですよ。
私は座る事は出来ませんが、それはいつもの事ですので気になりません、エルレイ様の所に来てからは座る機会が多くなりましたが、本来私の立場では座る事など許されないのですからね。
男性と女性に分かれているのですね、詳しいルール等は先程知りましたからね。
女性部門にはルリア様、カリナさん、ニーナさんが出場されており、男性部門にはエリオット君、ラルフ君、オスカル君、トーマ君、フリスト君の五人が出場している様です。
全員本戦出場して欲しい物です。
戦いは私が思ってた以上の迫力と流血で少し血の気が引きましたが、すぐに治療されている様なので安心しました。
以前見た御前試合では全身鎧に包まれており更に寸止めしておりましたから、流血する事は無かったので驚きました。
女性部門で本戦出場を果たしたのはルリア様、カリナさん、ニーナさんの三人。
男性部門で本戦出場を果たしたのはオスカル君、ラルフ君、トーマ君でした。
この中から誰が優勝するのか予想するのだそうです。
エルレイ様がリゼと私も券を購入していいとの事で買って見る事にしました。
皆様はルリア様を予想しましたが、私はカリナさんに致します。
私くらいはメイド長であるカリナさんを立ててあげないといけないでしょう。
さて男性部門の方はラルフ君にしましょう、狂人ラルフ!
良い響きですね。
本人は嫌がっている様なので心の中でだけそう呼ばせて貰う事にしましょう。
試合は進み、女性部門の決勝は予想通りルリア様とカリナさんに決まりました。
男性部門の決勝は狂人ラルフ、来ました!
優勝はどちらも激しい戦いののち、カリナさんと狂人ラルフに決まりました。
どうしましょう、両方とも当たってしまいました。
ルリア様の券を購入していない事がばれてしまいます、私は手に持っていた券を慌てて隠しました。
二人を予想していた人は少なく、結構な金額を頂けるようですが、お金に換える訳には行きません、部屋に持ち帰り自分のクローゼットの中に隠す事にしましょう。
翌日武闘大会の反省会と言うのが行われ。その結果私はヘルミーネ様と共に道を広げる作業の為に出掛ける事になりました。
私は地属性魔法が使えないのでヘルミーネ様の付き添いという事ですね。
そう思っておりましたが意外な事にエルレイ様と二人きりになる好機が訪れました、以前からリゼの様にエルレイ様と二人で出かけたいと思っておりましたからお願いしたところ、快く受け入れてくださり、更にリゼの様に抱きかかえて空を飛んでくださいました。
夢心地の様です、私は思わず我を忘れてエルレイ様にしがみついてしまいましたが、エルレイ様は嫌に思ってはいない様で飛ぶ速度も落としてくださいました。
しかし目的地は近く幸せな時間は短い物でした、毎日でもご一緒したいですので、道を作るお仕事沢山来ますように・・・。
外での作業は数日で終わり平穏な日常が訪れる事になりました。
エレン、アンナ、マリーの三人も朝と夜は部屋に来て皆様の支度の準備を手伝ってくれるようになり、私とロゼの負担が減り助かりました。
お世話に関してはヘルミーネ様とアルティナ様で練習していたので問題なくやれている様です。
毎日赤い髪のお手入れを気にしているルリア様も、彼女達の世話に満足していらっしゃるようですので良かったと思います。
ただ、リゼとマリーがエルレイ様のお世話を巡って口論となりましたが、リリー様の仲裁により、このままリゼがエルレイ様のお世話をする事で決着が付きました。
しかしマリーはエルレイ様のお世話をやりたいらしく策を練っている様ですが、リゼにことごとく潰されている様ですね。
出来れば喧嘩しないで仲良くして欲しいものですが、こればかりは難しい事なのでしょう。
喧嘩と言う事であればより大きな喧嘩がお隣の国で起こっている様ですね、そのせいでエルレイ様の領内に戦火を逃れた人達が押し寄せて来ていてとても迷惑な事です。
普通であれば追い返す所でしょうが、エルレイ様はその人達を受け入れ食料に家と畑を提供すると言うのですから、エルレイ様の優しさに心打たれるばかりです。
おかげで私は再びエルレイ様のお傍にいる事が出来、幸せな時を過ごす事が出来ました。
それと飛行魔法の事をエルレイ様に褒めて頂き大変嬉しく思います、これからもお役に立てるよう頑張って行かなくてはなりませんね。
とは言え私に考えつく様な事は皆様が既にやっているのでしょうし、頭を悩ませる日々が続く事になりました。
エルレイ様は戦争に向かわれました、留守を任されたルリア様は再び領内に難民が訪れたとの報告を受け皆で対応に向かうと言いました。
私達も反対する者はいません、ヘルミーネ様も張り切っておいでです、暴走しない様に私が押さえておかないといけない様ですね。
アドルフさんには反対されたようですが、その程度でルリア様が屈する事はありません、エルレイ様より頑固ですからね。
アドルフさんは護衛にとカリナさんとニーナさんを付けてくださいました、お二人がいてくれれば何も心配する事はありませんね。
エルレイ様とは違い私達には転移が使えませんので、空を飛んで行く必要があります。
私はまだ魔力量が少ないという事で一人だけで飛ぶ事になりました、この様な長距離を飛んだ事はありませんので、ルリア様の提案をありがたく受け入れました。
皆様とお喋りしながらの空の旅は素敵な物ですね、エルレイ様の転移魔法は便利ですが、たまにはこう言うのも悪くないかも知れません。
現場に着くとルリア様の指示の下皆様手際よく作業を開始しました、私はヘルミーネ様の移動の補佐という事でいつもと同じですね。
作業は前回やっていた事なので問題なく終了いたしました、しかし今まで住んでいた住民との問題が起こりましたが、ルリア様が行って解決なされたようです、ルリア様素晴らしいですね。
私達はお隣の国の戦争が終結したとの知らせを受けリアネ城へと戻りました、後はエルレイ様とリゼが無事帰って来る事を祈るばかりです。
数日後エルレイ様とリゼが無事帰ってきてくださいました、連絡を受け無事だったのは知っておりましたがお顔を見て安心致しました。
今回の戦争ではリリー様、リゼ、ロゼが関係していた様です、エルレイ様から話を聞いて泣いていらっしゃいました。
エルレイ様からご説明がありリリー様が王女様であったことや、リゼとロゼの強さの秘密を知る事が出来ました。
私も同じ王女様のお付きのメイドですから強くないと行けなかったのでしょうか・・・今からでもカリナさんに教えを請えば強くなれるかもしれませんが、魔法が使える様になった今ではその必要は無いかも知れませんね。
翌日エルレイ様は陛下からお預かりした親書を携え再びキュロクバーラ王国へと向かわれました、その日はすぐに戻って来るとの事でしたので心配はしておりませんでした。
しかし戻って来たエルレイ様は四人の婚約者を連れて来ました。
エルレイ様が戦争に行っている間皆様で話をして、一人は連れて帰って来るのではないかと予想はしておりましたが、四人とは驚きです。
四人共良い方達だったので良かったのですが、余り増えすぎるとエルレイ様と接する時間が減ってしまい悲しくなりますね。
ルリア様がエルレイ様がお見合いパーティへ出かけられた際に、皆様を集めて緊急会議を開く事となりました。
「皆、これ以上エルレイに婚約者が増えない様に対策を話し合うわよ」
ルリア様の提案に皆様同意しておりました。
「ルリア、対策と言ってもどの様な事を施せばいいのでしょう?」
「そうよねぇ、戦争の褒美として婚約者を貰って来ている訳だし、対策の取りようが無いわよ」
リリー様とアルティナ様の言う通り、ヘルミーネ様、ロレーナ様、エンリーカ様、エレオノラ様、リディア様、エミリア様は戦争の褒美としてエルレイ様に与えられた方達です、エルレイ様としても断れない事でしょう。
「それに関して今後、戦争には私も着いて行く事にして、褒美を断る事にするわ」
確かにルリア様なら王様の意見でも平気で断る事が出来そうですね。
「ルリアが戦争に行くのは心配ですが、その時は私も着いて行く事にします」
「私は戦争に着いて行っては邪魔になるだけだから行かないわよ」
「えぇ、アルティナにはリアネ城を守って貰う事にするわ」
「それならば任せて置いてちょうだい」
「私も戦争には行けないからな、アルティナと留守番しておく」
ヘルミーネ様が素直に留守番を申し出るとは意外でした、これで私も戦争に着いて行く事が無くなり安堵しました。
私もアルティナ様と同様に戦争では邪魔にしかならないでしょうからね・・・。
「褒美に関してはこれでいいとして、城内でエルレイの婚約者になりそうな人物はいないわよね?」
ルリア様の質問に皆様考えております、私は一人知っておりますので話しておかないといけないでしょう。
「ルリア様、私に一人心当たりが御座います、マリーがエルレイ様の事を想っている様です」
「エルレイが腕を治療してあげた子ね・・・」
「はい」
ルリア様は考え込んでしまいました、私としては頑張っているマリーを応援してあげたいのですが、皆様がどの様な判断をくださるのか分かりません。
「マリーの事は迎え入れてあげていいんじゃないかしら?」
「うむ、マリーは良く働いてくれておるしな」
「ルリア、どうしますか?」
「分かったわよ、受け入れる事にするわ、ただしエルレイがマリーの事を受け入れるまではこちらから招き入れない様にして頂戴」
「それが妥当かもね」
「承知しました」
これでマリーの努力次第では受け入れられる事が決まりました、マリー良かったですね、私は影ながら応援する事に致しましょう。
その他の城内の女性は結婚しているか恋人がいると言う事でしたので、会議は終了する事になりました。
昨日エルレイ様の婚約者が増えない様にと会議を開いたばかりなのに、パーティから戻られたエルレイ様が婚約者を連れてまいりました・・・。
ルリア様もこれには非常に怒っておりました、そもそも今回のパーティではエルレイ様の婚約者は見付けないという話でしたのに・・・。
しかもお相手はルリア様のお姉様に当たる方ですから、ルリア様が怒るのも当然の事でしょう。
今回新しく婚約者となられたユーティア様は変わったお方でお部屋でしかお話になりません、外では首を振るだけですのでお付きのメイド、エルミーヌと常に一緒です。
お付きのメイドと言う事で私と同じようにエルミーヌもエルレイ様の婚約者となる事でしょう、という事で新たに二人の婚約者が増えました。
しかもこのエルミーヌは巨乳です、エルレイ様も他の男性と同じように大きい物がお好きの様ですから、皆様危機感を持たれている様ですね。
今までは私が一番大きかったのですが、それでも普通よりやや大きい程度でしたので、羨ましがれていましたが敵では無かったのです。
しかしこのエルミーヌは皆様の敵となった様です、敵と言っても嫌がらせをしたりは致しませんよ、ただエルレイ様の目に極力入らないようにしたりするくらいですね。
エルミーヌに対して少し可哀そうに思いますが、エルレイ様の視線を独り占めさせないためには仕方のない事ですね。
一体どこまでエルレイ様の婚約者は増えるのでしょうか・・・ルリア様にこれ以上増えないように頑張って貰うしかなさそうですね・・・。




