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公爵令嬢の婚約者  作者: よしの
第一話 アリクレット男爵家
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第一話 アリクレット男爵家

・・・長い夢を見ている様だ、生まれた時から六歳児までの記憶を追体験している。

目が覚めた時俺はエルレイ・フォン・アリクレット、アリクレット、男爵家の三男としてこの世界に降り立った。

男爵家しかも三男って微妙過ぎるな・・・でも家を継がなくていいから自由に出来るか、下手に長男とか面倒臭いからよかった。

女神様もいい采配してくれた、六歳と言うのもいいね今更オネショとか嫌すぎる。

ベッドから起きて周りを見渡す、記憶の中にある部屋と同じだ。

八畳ほどの広さでベッドに机とクローゼットがあるだけの部屋だ、クローゼットから服を取り出し着替えて鏡を見る。

金色の髪に普通の顔立ちだ、五歳のころから朝食後に剣の訓練をやっているので、意外と筋肉が付いて引き締まってる。

まぁ顔つきは元々普通だったので問題は無いだろう、イケメンになってもどうやって過ごしたらいいのか分からないしな。

朝食の為部屋を出て一階の食堂に向かう、俺の部屋は二階の一番奥だ。

二階には十部屋ほどあり使って無い部屋もある、一階にはエントランス、応接室、客間が三部屋、執務室、書斎、食堂、浴室、使用人部屋などがある、男爵家としては普通らしい。

食堂に入りいつもの席に座る、食事は家族全員で食べるのがこの家での基本だ。

「「「おはようございます」」」

「おはよう、では頂こう」

「「「頂きます」」」

皆が席に着くと父の挨拶で食事が始まる。

朝食のメニューはある程度決まって居てパン、サラダ、野菜のスープ、果物、紅茶といった感じで味もいい。

家族構成は父ゼリクイム・フォン・アリクレット、二十八歳、身長百八十センチ、茶色の髪、ガッチリとした体格をしており顔立ちは普通だ。

母マイリス・フォン・アリクレット、二十七歳、身長百六十センチ、金色の髪が腰まで伸びていて輝いているのが印象的だ、体型は整っており胸は大きくも無く小さくも無い、顔立ちは美人だ。

長男マデラン・フォン・アリクレット、十二歳、身長百五十センチ、茶色の髪にやや細めの体つきに母親似の顔立ちをしていてイケメンだ。

次男ヴァルト・フォン・アリクレット、十一歳、身長百四十五センチ、茶色の髪にガッチリとした体型に父親譲りの顔立ちをしている。

長女アルティナ・フォン・アリクレット、八歳、身長百二十センチ、金髪の美しい髪がツインテールに纏められており可愛らしい顔立ちを引き立てている。

三男エルレイ・フォン・アリクレット、六歳が俺だ。

六人家族で、普通妾が居るのが貴族にとって当たり前なのだが、愛妻家の父には居ない。

長男と次男には許嫁が決まっていて、十五歳の成人と共に結婚する予定だ。

許嫁は親が決め本人に決定権は無いらしい・・・妾は自分で選べるみたいなので変なのが来ても大丈夫だ。

生前、勇者時でも結婚したこと無いから今から楽しみだな、どんな人が来ようと上手くやって行けるだろうと思う。

家族仲は良いが、上の二人の兄達は常日頃から喧嘩は絶えない、喧嘩と言ってもお互い競い合っているのが喧嘩に発展している感じで、いがみ合っている訳では無い様だ。

アリクレット男爵家に仕える使用人は執事のジアール、メイドのリドとヘレネ、料理長のナドス、教育係のアンジェリカだ。

食事を終えるとアンジェリカの指導の下兄達と剣の訓練だ、上の二人の兄達は共に模擬戦を行っている。

俺は六歳なので素振りやランニングと言った基礎訓練、しかし光の勇者として剣も扱ってきた記憶があるので兄達ともいい勝負が出来るのでないだろうか?

しかし今は体力差で押し負ける可能性が高い、それに変に勝ってしまっても兄達の立つ瀬が無いのでやらないが。

何故剣の訓練をしているのかと言うと、貴族だからと言うのもある。

しかし本当の理由はこの世界の国同士が領土を巡って争っているからだ。

記憶を読み解いていくと、俺がいるのはソートマス王国と言って大陸の最南端に位置している。

西側に隣接している国がルフトル王国、東に隣接している国がアイロス王国。

アリクレット男爵領はソートマス王国の東に当たり、アイロス王国に隣接していて最前線となっている。

国境沿いに砦で城壁を築いて、アイロス王国の進行を防いでいる状態だ。

アイロス王国も西にルフトル王国、北にラウニスカ王国があり、膠着状態に陥っていて今の所うちの領に対して攻撃は無い。

とはいえ安心できる状況ではないのも実情だ、三男なので成人すれば戦場に出なければいけないだろう。

剣の訓練を終え次は兄弟四人食堂に集まり、アンジェリカの指導の下読み書き計算の勉強だ。

読み書きは基本的な所は出来る様になっていた、六歳までのエルレイは真面目に勉強していた様で感謝しかない。

計算は簡単な四則演算程度だから問題はない、マテラン兄さんとアルティナ姉さんは勉強できている様だが、ヴァルト兄さんは計算が苦手の様だ。

勉強が終わると昼食で、昼食を摂る時間は皆バラバラだ。

昼食後の俺は自由時間で、マデラン兄さんとヴァルト兄さんは父ゼリクリムに付き添い領土経営の勉強、アルティナ姉さんは母に付き添い女性としての立ち振る舞い等の勉強となる。

俺はこの自由時間を使って魔法を思えよう、書斎に向かい魔法書を探す。

あったこれだ初級魔法書、貴族の家には魔法書が常備されており、誰しも一度は魔法に挑戦する様だ。

この世界の魔法使いは十人に一人の割合しかいない、誰でも使える物では無いらしい。

ちなみにアリクレット家で魔法が使えるのは今の所誰もいない様だ。

ドキドキしながら本をめくり読み始める。


魔法を使うためには己の体内にある魔力を感じ取れなければならない、目を瞑り魔力を感じ取れるようであれば魔法使いとしての素質がある。

全く感じ取れなかった場合は、魔法使いとしての素養が無いので諦めるのがよかろう。


投げやりな説明だがやってみよう、目を瞑って魔力を感じる・・・光の勇者として魔法を使ってきたので体内に巡る魔力を感じ取る事が出来た。

よし行ける次に進もう。


魔力を感じ取る事に成功したなら、魔法使いとしての素養が認められる。

初級魔法の呪文を唱え、魔法が発動すれば魔法使いとして一歩を踏み出した事となる、もし魔法が発動しなかった場合は魔力量が足りておらず、魔法使いには成れないので諦めるのがよかろう。


・・・ずいぶん簡単に諦めさせる本だな、魔力は増えないのか?

それとも、体内の魔力を全体に巡らせてとか何も書いて無いが必要ないんだろうか?

取り合えず初級魔法を唱えてみよう、室内だから訓練場まで出るか。

訓練場に行き誰もいない事を確認、何かあっては困るしな。

「大地を潤す恵みの水よ、我が魔力を糧として水球を作り出し給え、ウォーターボール」

目の前にテニスボール大の水球が出来地面に落ちた・・・。

出来た!!よかったぁ、魔法使えなかったら転生した意味無かった所だ。

ほっと胸を撫で下ろす、しかしこの恥ずかしい呪文の詠唱はどうにかならないのか、無詠唱とか出来るのではないだろうか?

イメージ、イメージだ、先程のテニスボールほどの水球をイメージ、むむむむっ出た!!

先程と同じように目の前にテニスボール大の水球が出来地面に落ちた。

出来る、詠唱する時間も無く時間短縮にも繋がるな、恥ずかしい呪文を唱える必要が無くなっていい感じだ。

続けてファイヤーアロー行って見よう、的に向けて火の矢をイメージして・・・出ないぞ、イメージが足りないのか。

一度呪文を唱える必要がありそうだな、使えばイメージしやすいだろうし。

「全てを焼き尽くす炎よ、我が魔力を糧として火の矢に変え敵を撃ち抜け、ファイヤーアロー」

火の矢が出来、的に向かって飛んで行って命中した、出来る、出来るぞ、魔法使いとしてやって行ける!

今のでイメージ出来たから、火の矢をイメージして、的に向かって撃つ!!

先程と同じように火の矢が放たれ的に命中した、どうやらイメージを固めるために一度は詠唱しないといけない様だな。

その後地、風の初級魔法を覚え所で眩暈がして、立っていられなくなった・・・これは魔力が切れたのだろうか?

魔力を増やす訓練とか本には書いて無かったな、魔力は増えないのだろうか?となると、初級魔法八回しか使えないって事になるんだけど、増えるよね・・・。

三十分ほど座っていただろうか、ようやく眩暈も収まり歩けるようになった、魔力を増やせないか調べない事には、このままだと魔法を十分楽しめない・・・。

目を瞑り自分の魔力を感じ取る、僅かだが魔力があるのが分かるな、書斎で感じた魔力からすると減っている、そして時間と共に魔力が回復するのも分かった。

書斎に戻り何かないか調べたが、魔法関連の書物は一冊のみで、今まで誰も使えなかったからそれで充分だった訳だ、夕食時にでも聞いてみよう。

初級魔法書を読み返してみたが、魔力を増やすことに関しての記述は無かった。

夕食のため食堂へ向かう、夕食も基本家族全員で食べる事になっている。

「皆揃ったな、では頂こう」

「「「頂きます」」」

父の挨拶と共に食事が始まり、そこで魔法の事を尋ねる事にした。

父親と言うか、家族との会話が勇者時代に無かったことなので、ちょっとドキドキする。

「父上、報告と相談があります」

「エルレイ何かね?」

「はい、今日魔法の練習をしたところ、初級魔法を使う事が出来ました」

俺がそう言うと、全員驚いた表情を見せている。

「それは本当かね?」

「はい、父上に嘘は申しません」

「それは素晴らしい、我が家にも遂に魔法使いが生まれた、とても喜ばしい事だ」

「エルレイ凄いじゃないか」

皆喜んでくれている様だ、家族からの暖かい祝福は素直にうれしい。

「それでエルレイ、相談とは何だね?」

父はにこやかな表情で訪ねてきた、これなら多少無理言っても大丈夫かな?

「父上、中級や上級の魔法書と、他にも魔法に関しての書物があれば欲しいです」

「魔法書か・・・勿論それは揃えてやるが、直ぐには無理だ、出来るだけ早く用意しよう」

「ありがとうございます、それと魔力を増やす方法を父上はご存じありませんか?」

「魔力を増やす方法か、一般的な知識として、魔力は生まれ持ったもので増えないとされている、しかし増える説を唱える魔法使いもいる。

魔法が使えない我々には確認の方法が無い、だから分からないというのが現状だ」

やはり分からないか、父上の言う事は当然だな、自分で努力するしか無い様だ、でもそう言った事も楽しみだな。

「そうですか、分かりました、魔力に関しては自分で調べてみます」

「うむ、今後他に何か必要なものがあれば遠慮なく言うといい、出来る限り協力しよう」

「はい、ありがとうございます」

「ところでエルレイよ、今この場で使える魔法はあるか?あれば見せて欲しい」

目を瞑り魔力を確認してみる、先程より多くなっているな、これなら一回くらい使えるだろう。

「分かりました、では危険が無いウォーターボールを使います」

コップを掴み、中身を飲み干してテーブルに置き、コップに入る様に水球をイメージする。

イメージ通りにコップに水球が入り、コップを満たしていく。

「「「おおおお」」」

皆から驚きの声が上がった。

「エルレイ見事だ、今呪文を唱えていない様だったがどうやったのだ?」

「はい、無詠唱で魔法を使いました」

「無詠唱など聞いたことが無いぞ、その様な事が・・・」

無詠唱は一般的では無いのか、あまり人前でやらない方が良いんだろうか、でも今更だな・・・。

「はい、今日練習してみたら出来ました、うまく説明出来ないのですが・・・」

「なるほど、魔法に関しては分かった、今後修練を積むように、それとは別に、剣の修練も手を抜くことが無い様にすること」

「はい、これまでと同じように剣の修練も怠らない様に致します」

食事を終え食堂を出ると、兄弟達が寄ってきて話しかけてきた。

「エルレイ凄いじゃないか」

「エルレイ、今度他の魔法も見せてくれよ」

「流石私の可愛い弟だわ」

兄達二人は褒めてくれて、アルティナ姉さんは抱きしめてきた。

アルティナ姉さんは、事あるごとに俺に抱きついてくる、ブラコンってやつなんだろうか・・・。

嫌な感じは全くない、年が近いこともあって、アルティナ姉さんには可愛がられていて嬉しく思う。

「兄さん達ありがとうございます、明日剣の訓練が終わった後にでもお見せしますよ」

「そうか楽しみにしている」

ヴァルト兄さんはそう言うと頭を撫でてきた。

部屋に戻り、ベッドの上に座って目を瞑り瞑想する、魔力を感じ取り、魔力が増えないか色々試してみる。

魔力を動かそうと試してみたが上手くいかない、魔力が増える様に、力を込めてみても増えたような感じはしない。

勇者の時はどうだっただろう?ステータスとレベルがあったから、魔法を使っていればレベルアップとともに増えていた。

魔法を使い、魔力を消費する事で増えるのかな?筋力と同じように魔力も使って鍛えるのだろうか・・・。

明日から魔力が続く限り魔法を使って行ってみよう、それで増えなければまた違う方法を考えるしかないな。

まだ早い時間だが眠い、この体では長く起きてはいられない様だ、そのままベッドに倒れこみ眠りについた。


翌朝、起きて魔力を確認する、昨日と同じ感じの魔力量だろうか?

一日で急激に増えたりはしないか、その日も昨日と同じように剣の訓練をし、午後から魔法の訓練を行った。

そんな日々を一週間ほど繰り返した頃、魔力が増えているのを実感出来るようになった。

魔力の確認も目を瞑らなくても出来る様になってきて、体内の魔力をなんとなく動かせるようになってきた。

勇者の時とは違って、スキルを覚えれば魔法が使えるのと違い、やり込めばやり込んだだけ魔法を使うのが上達していき、すごく楽しい。

その日の夕食時、父上より中級魔法書、上級魔法書、回復魔法書の三冊の魔法書を手渡された。

俺が思っていたより早く魔法書を手に入れて貰えたようだ、とても嬉しい。

「父上ありがとうございます」

「うむ、エルレイ、魔力は増えているのか?」

「はい、少しずつですが日々増えている様です」

「そうか、それはよかった、これからも頑張って立派な魔法使いになってくれ」

「はい、期待にそえるようがんばります」

父上に感謝し、期待にそえるよう、より一層頑張らなければ。

部屋に戻り中級魔法書を読みふける。

中級魔法は、初級魔法より多くの魔力を消費するという事らしい、まぁ当然だな、威力もそれにつれ上がって行くと書いてある。

面倒な呪文だが、読んでいると呪文が似ている事に気が付く。

例えば初級のファイヤーボールと、中級のファイヤーストーム並べてみるとこうだ。

全てを焼き尽くす炎よ、我が魔力を糧として火の玉を作り敵を焼き払え、ファイヤーボール

全てを焼き尽くす炎よ、我が大いなる魔力を糧とし炎の嵐で敵を焼き尽くせ、ファイヤーストーム

区切ってみると。

全てを焼き尽くす炎よ、我が魔力を糧として、火の玉を作り敵を焼き払え、ファイヤーボール

全てを焼き尽くす炎よ、我が大いなる魔力を糧とし、炎の嵐で敵を焼き尽くせ、ファイヤーストーム

こんな感じだろう、最初の一文は使う魔法の属性を決める文章だろう。

次の一文が使用する魔力の量。

次の一文が形成される魔法の形

最後は何だろう単純に魔法の名前だろうか?

ファイヤーボールの二節目、『我が魔力を糧として』を『我が大いなる魔力を糧として』に変更すると、威力が強いファイヤーボールが打てたりするんだろうか?

翌日それを試すと間違ってはいなかった様で、通常より大きめのファイヤーボールが撃てた。

では最後のファイヤーボールは何かと言うと、魔力の動きを見ていて分かった、ファイヤーボールが形成されてから、最後に飛ばすための魔力を使っているのが分かった。

つまり最後のファイヤーボールの詠唱は、飛ばすための魔力を掛けられれば何でもいいって事だ。

魔法のプロセスは属性を決め、使用する魔力の量を決め、魔法の形を形成し、発射する。

この行程さえ守っていれば、ファイヤーボールを二個同時にとかも出来た、魔力量が少ないから、そんなに色々な事はまだできない。

こうして魔法使いとしての楽しく、充実した日々を過ごしていった。

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