表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
公爵令嬢の婚約者  作者: よしの
第一話 アリクレット男爵家
15/27

第十四話 再びルフトル王国へ

ソフィアさんから連絡を受け、リアネ城へ戻った俺はアドルフがいる執務室へ来ていた。

「エルレイ様、お帰りなさいませ、ベッドは出来上がっておりましたでしょうか?」

「出来上がっていて後二十台注文してきた、出来上がり次第こちらに運んでくれるそうだから受け取りを頼む」

「承知しました」

「それとルフトル王国から連絡があり、明朝向かわなければならなくなった」

「急な話でございますね、皆様お連れになるのでしょうか?」

「いや明日はリゼだけ連れて行く、状況が分かり次第連絡する、それともし戦争に参加する事になっても、ヘルミーネとアルティナ姉さんとラウラは置いて行く」

「賢明なご判断でございます」

「あの子達の世話もあるしな、アドルフは食材の準備を頼む」

「畏まりました」

昼食時皆集まったので明日の事を説明する。

「今朝ルフトル王国のソフィアさんから連絡があり、明朝ルフトル王国に行かなくてはならなくなった」

「エルレイ、私達も一緒に行くのかしら?」

「いや、明日はリゼと二人で行って状況を聞いてくる」

「分かったわ、私達は準備をしておくわね」

「ルリア、頼んだ、それと戦争になった場合、ヘルミーネとアルティナ姉さんとラウラは留守番して子供達の世話を頼む」

「エル、私も戦争に行きたいぞ!」

ヘルミーネは置いて行かれることが嫌なのだろう、席を立って俺に詰め寄ってきた。

「ヘルミーネ、戦争は楽しい場所ではないし命の危険がある、分かってくれないだろうか?」

ヘルミーネの頭を撫でてやる。

「・・・分かった」

ヘルミーネは一応分かってくれたのだろうか?とぼとぼと席へ戻って行った。

「エルレイ、私も留守番なの?」

「アルティナ姉さんには子供達を見ていて貰いたいんだ、教育を途中で止める訳にはいかないだろう」

「そうね・・・分かったわ、その代わり必ず帰って来ること!!」

「アルティナ姉さん、約束するよ」

「ラウラには面倒を掛けるが留守の間の事頼む」

「はい、承知しました」

昼食後訓練場へと向かった。

「アンナ、エレン、マリー、俺達は明日から仕事で街を離れる事になった、それで魔法の先生を新たに紹介する。

ヘルミーネ先生とアルティナ先生とラウラ先生だ」

「「「よろしくお願いします」」」

「エルレイ様、お仕事は遠い所へ行くの?」

「そうだ、隣の国まで行ってくる」

「そうなんだ・・・」

マリーは寂しそうに俯いた。

「でも、行き来は魔法で一瞬だからな、すぐ戻って来るよ」

「うん、わかった」

俺がそう言うとマリーは笑顔を取り戻してくれた。

「ヘルミーネ先生、アルティナ先生、ラウラ先生、お願いするよ」

「うむ、任せておけ、一人前の魔法使いにして見せよう」

ヘルミーネは張り切って子供たちに魔法を教えに行った。

「二人ともヘルミーネが暴走しない様見張っていてくれ」

「お姉ちゃんに任せておきなさい」

「はい」

子供達の事は三人に任せて、リゼとロゼに声をかけた。

「リゼ、ロゼ俺達が居ない間の子供達の体力作りのメニューを教えてくれ、俺が紙に書きだして三人の先生にやらせることにするから」

「「はい」」

リゼとロゼに話を聞きながら体力作りのメニューを作成していく、ここ一週間でアンナはすっかり元気になり他の二人と同じメニューをこなせる様になったそうだ。

「こんなものだな、これを三人の先生に渡して今日から指導して貰おう、リゼとロゼは今日は無理をさせないか見ていてくれ」

「「承知しました」」

これで俺が留守中あの子達の指導は問題なく行われるだろう、男子の方はトリステンに任せているから安心だしな。

この後俺は、自分の訓練をしならが三人の先生の指導を見ていたが問題はなさそうだった。


翌朝俺はリゼを連れてルフトル王国の結界の前に転移でやって来た。

『ソフィアさん、結界の前に着きました』

『エルレイ様、少々お待ちください迎えに参ります』

ソフィアさんは結界の近くにいたのだろう、すぐに出て来て俺達を迎えてくれた。

「エルレイ様、ようこそおいで下さいました、本日はお二人だけでしょうか?」

「急なな話でしたから準備が間に合わなかったので、後で連れてきます」

「そうでしたか、申し訳ありません、女王様がお待ちですので中に入りましょう」

ソフィアさんの後に続いて結界内に入る。

「城へ向かいますね、ミル、城まで運んで頂戴」

「りょうかーい、いっくよー」

ミルによって城まで運んで貰い、女王様の下へ案内された。

「女王様、お久しぶりです」

「エルレイ、急に呼び出してごめんなさい」

「いえ、構いません、それで女王様、戦争が始まるのでしょうか?」

「それはまだですが、エルレイには戦争に向けての準備を手伝って貰いたいのです」

準備を手伝う?砦でも作ったりするのだろうか?

「はい、何なりとお申し付けください」

「エルレイ、ありがとう、やって貰いたい事は二つあります。

一つ目は、私達の隊長達と、今後予想される戦いで連携が取れる様に仲良くなって欲しい事。

二つ目は、このルフトル王国には城壁や砦と言った防御施設はありません、エルレイが戦う際必要と思われる物を作って置いて貰おうかと思ったのです」

確かに前回ソートマス王国からこの国は来た際、その様な施設は見かけなかったな、強力な精霊の魔法を見たから必要ないのは分かるし、こう言っては悪いかも知れないが、多分この結界内さえ守れれば良かったのだろう。

今回防御施設が必要と言う事は、リースレイア王国の戦力はかなり脅威だと女王様は思っているのだろう。

「承知しました」

「ではエルレイに隊長達を紹介します、貴方達、こちらに来なさい」

女王様が声を掛けると四人のエルフが王女様の前に来て片膝をつき礼をした。

「「「はっ」」」

「エルレイ紹介します、マルギット、ワルテ、カーメラ、ロレーナ」

女王様が名前を告げつと四人のエルフは立ち上がりこちらへ振り向いた。

「私の名はマルギット、風精霊部隊隊長だ」

マルギットと名乗ったエルフは、エルフらしい細身の体つきに、きりっと締まった格好いい顔立ちでこちらを睨んできた。

「私の名はワルテ、土精霊部隊隊長です」

ワルテと名乗るエルフは、若干背が小さいが顔はやはり整っている、こちらはマルギットと違い笑顔だ。

「私の名はカーメラよ、水精霊部隊隊長、よろしくね」

カーメラの名乗った女のエルフはとても美しく、これまで見たエルフにはいなかった巨乳だ、エルフは胸が慎ましい女性ばかりだと思っていたがそうでは無かった様だ。

「私の名はロレーナじゃ、火精霊部隊隊長、よろしくなのじゃ」

ロレーナの名乗ったエルフ?は背がとても低く、俺と同じくらいじゃないだろうか、それに耳が短い、本当にエルフなのだろうか?

髪はエルフの特徴であるエメラルドグリーンで、精霊部隊の隊長だからエルフなのだろうけど・・・。

「私はエルレイ、よろしくお願いします」

「ソフィア、後の事よろしくね」

「はい、皆様こちらへお越しください」

ソフィアさんに連れられ女王様の下を後にし、隊長達と共に部屋に案内された。

部屋にはテーブルと複数の椅子が置いてあり各自席に座った。

「では皆さん、戦争に向けた意見交換、いえ仲良くなって頂きます」

そう言えば女王様も仲良くなって欲しいと言われたな、つまり俺はエルフに受け入れられてないという事か。

「いくら女王様の命令とは言え、人と協力して戦うなど必要ない、今までも我らだけで敵を退けて来たのだからな!」

マルギットさんは俺を睨みつけそう言い放った。

「マルギット、私はそうは思わない、エルレイ君の力が必要だと女王様がおっしゃったのだ、それをお前は否定するのか?」

ワルテさんは先程からずっと笑顔を崩さないで、諭すようマルギットさんに問いかけた。

「ぐむむむ・・・」

マルギットさんは女王様の命令を否定する事は出来ない様だ。

「まぁ、マルギットの気持ちは分かるわ、この子供に私達以上の力があるとは思えませんからね」

巨乳のエルフ、いや、カーメラさんは俺を見てため息交じりにそう言って来た、今まで会う人達から同じように思われてきたから今更子供扱いされても何とも思わないが・・・さて、巨乳のエルフと仲良くなるためにはどうすればいいだろうか?

「いくら話した所で仲良くなれないのじゃ、いつもの様に勝負すればいいだけの事じゃ」

「やはりそうなりますか・・・皆さん、エルレイ様と勝負をすると言う事でよろしいでしょうか?」

ソフィアさんが問いかけると皆頷き了承した様だった。

「ソフィアさん、勝負とはどの様な物でしょうか?」

俺はエルフの勝負が分からなかったのでソフィアさんに聞いて見た。

「エルレイ様、勝負と言っても直接戦う訳ではありません、精霊・・・いえ魔法の強さを競い合うだけですのでご安心ください」

「分かりました」

「では皆様、場所を移しましょう」

ソフィアさんの後に続き皆と城の外へ出た、そこからミルで運ばれ広い空地へ降り立った。

「では、どなたから勝負致しますか?」

「もちろん俺からだ!」

ソフィアさんが問いかけるとマルギットさんが名乗り出た。

「俺が勝ったらお前は必要無いという事だ」

マルギットさんは腕を組み俺を睨みつけて来た。

「エルレイ様、マルギットとの勝負は飛行能力を競って頂きます、コースは今から作ります、ワルテお願いします」

「分かった、モル、いつもの様に作ってくれ」

「はい、ご主人様」

ワルテさんがモルと言う精霊に命令すると、小人が出て来て土を盛り上げて柱をいくつも作り始めた、ウィルやミルとは随分違った姿だ。

「エルレイ様、ルールをご説明します、柱は二種類あり細い柱が内側、太い柱が外側になりその間を飛んでいただきます。

間を通れなかった場合は戻って通りなおしてください、これを五周して頂き、先にゴールした方の勝ちと致します。

なお魔法による妨害や、直接攻撃する事は禁止です」

ルールは簡単だな、問題はこのコースに俺が慣れていない事だろうか。

「分かりました」

「ふふん、俺は連戦連勝だからな、ハンデをくれてやろうか?」

マルギットさんは俺を見下しそう言って来た、そう言うのなら遠慮なく貰ってみよう。

「そうですね、ハンデを頂けますか?」

俺がそう言うのが意外だったのか、マルギットさんは目を見開いたがすぐに戻り睨みつけて来た。

「よかろう、弱者と認めるその潔さに免じてハンデをやろう、カーメラ来い」

「いやよ、あなたの飛び方雑なのよ、ソフィアを見習いなさい」

「ぐぬぬ、ではワルテ」

「仕方が無い、ゆっくり飛んでくれよ」

「勝負だからそれは出来ん」

二人で飛ぶのがハンデか、それなら俺も二人で飛ぶか、折角もらったハンデだがその方が戦闘時の練習になるし面白そうだ。

「リゼ、一緒にくるか?」

「はい、あのエルフに一泡吹かせてやりましょう」

リゼは喜んで俺の下へやって来た、それを抱きかかえマルギットさんを挑発した。

「では私も二人で飛ぶ事にしますね」

「なんだと!!」

マルギットさんは顔を真っ赤にして怒った様だ。

「エルレイ様、よろしいのでしょうか?ああ見えてマルギットは早いですよ」

「いつもこのように抱えて飛んでいるから問題ありません」

「エルレイ様がよろしいのなら構いませんが・・・」

「えー、マルギットはいつも私に負けてるから遅いんだよー」

ミルが出て来て自慢げにそう言った。

「ソフィアさん、そうなのですか?」

「えぇ、しかし私達以外には勝っていますので・・・」

ソフィアさんは申し訳なさそうにマルギットさんを見てそう言った、マルギットさんも事実だったのか悔しそうにソフィアさんを睨んでいた。

「では、お二人共勝負を始めましょう、位置についてください」

俺はリゼを抱き、マルギットさんはワルテさんを横に連れて並び位置に着いた。

「メル、出てこい」

「はい」

マルギットさんは風の精霊を呼び出し準備出来た様だ。

「では、私が手を下ろしたら飛び立ってください」

ソフィアさんが手を振り上げて素早く振り下ろした。

「メル、行くぞ」

「はい、飛びます」

マルギットさんは勢いよく飛び出し、俺はそれを追いかける様飛び出した。

コースは結構きつく曲がらなければいけない様に作られており、速度を出す事が難しかった。

「リゼ、しっかりと掴まっていてくれ」

「はい、結構難しくできていますね」

「そうだな、速度を出して行くのは厳しそうだ」

俺はマルギットさんの後ろを追尾して飛んでいた、まずはコースを覚えないと何処で速度を上げていいか分からないからな、最後の一周まではマルギットさんにコースを教えて貰う事にした。

それに後ろから離れず追いかけられるのは、前を行く者にとってかなりのプレッシャーになるはずだ。

マルギットさんは柱を通過するたびこちらの様子を振り返って見ていた、精霊が飛ばしているから前を見ていなくていいのだろう・・・。

一周目が終わり大体のコースが分かった、速度を出せる所は二か所ほど、コースの中頃の直線とゴール手前の直線だけだ、抜くとしたらそこだろう。

「エルレイ様、抜かないのですか?」

「最後辺りまで抜かないよ、前を飛ぶのは疲れるんだ」

「なるほど、しかし相手は速度を上げたようです」

「速度は余裕がある、何時も飛んでいる時より遅いだろ」

「そうですね、ではエルレイ様、後ろから追い立ててやりましょう」

リゼの言葉通り、俺は速度を出せと言わんばかりにマルギットさんの背後にぴったりつく様に迫った。

マルギットさんは俺が背後にいる事に気付いて驚き、メルにもっと速度を出せと命令している様だった、流石に声までは聞こえないからな。

「メル、もっと早く飛ばないと追い抜かれるぞ」

「これ以上早く飛ぶとコースを外れてしまいます」

「マルギット、相手はまだ余裕の様だぞ」

「ぐぬぬぬ」

「マルギット、提案だが速度を落としてはどうかな?」

「ワルテ、なぜ落とす必要があるのだ?」

「多分だが、彼は最後まで抜いて来ないぞ」

「何故そう思う?」

「マルギットはソフィアにいつも最後で抜かれて負けてるよな?」

「そうだが、なぜ今その事が関係するのだ?」

「いや、同じ事をされるだろうと思ってな」

「何だと、抜けるなら早く抜けばいいものを、なぜそのような事をする!」

「いくら精霊でも、全力で最初から最後まで飛ばしていれば疲れるものさ、なのにお前は考えも無く最初から最後まで全力で飛ばしているからソフィアに勝てないんだよ」

「ぐぬぬ、分かったメル、速度を落としてくれ」

「はい」

おっと危ない、マルギットさんに追突してしまう所だった、急に速度を落としたな、三周過ぎたから疲れたのだろうか?

「エルレイ様、危なかったですね、精霊は疲れてしまったのでしょうか?」

「そうかも知れないな」

「エルレイ様、追い越しましょう!!」

「何故だ?」

「この遅い速度は飽きました、もっと早く飛んでくださいよ」

リゼは楽しそうにそう言って来た。

「まぁいいか、コースも分かったし本気で飛ぶぞ、しっかり掴まっていろよ」

「はい!」

リゼは首に回している腕に力を入れ体を密着させ固定してきた、それを確認して速度を上げ、一気にマルギットさんを追い越した。

「エルレイ様、最高に気持ちいいですね!」

リゼはご機嫌だ、かなり振り回して飛んでいる、その衝撃はジェットコースターの比では無いだろう。

「あぁ気持ちいいな、それにこの様なコースを飛ぶのは初めてだから楽しいな」

「はい」

「リゼ、マルギットさんの様子はどうだ?」

俺は速い速度で飛んでいて後ろを振り向く余裕は流石にない。

「どんどん離れて行ってますよ、この様子だともう追い付かれる事は無いでしょう」

「そうか、残り一周だ、もう少し速度を上げるぞ」

「はい、どんどん行きましょう!!」

俺とリゼは楽しみながら最後の一周を飛び終え、ソフィアさんの所に降り立った。

「エルレイ様の勝利です!」

ソフィアさんが宣言し俺の勝ちとなった、マルギットさんもコースを外れこちらに戻り降りて来た。

「ワルテ、貴様のせいで負けてしまったではないか!!」

「いや、あの速度はお前に出せないだろ・・・」

何やら二人で喧嘩をしている様だった。

「お二人とも静かにしてください、この勝負エルレイ様の勝ちです、次はどなたが勝負しますか?」

「ええい、ワルテ、お前が行って来い」

「私は別にやらなくても構わないのですが・・・」

「次はワルテで構いませんか?」

「はい、やるからには頑張ってみましょうかね」

どうやら次はワルテさんの様だ、どのような勝負になるのか楽しくなってきた。

「エルレイさんが作った橋を拝見させていただきました、とても見事な出来で後で作り方を教えてくれませんか?」

ワルテは笑みを浮かべてそう言ってきた、この国に来た時作った橋を見たのか、教えるのは問題ないな。

「分かりました、時間がある時に教えますよ」

「エルレイ様、ワルテとの勝負の方法ですが、双方土の壁を作って貰い、それを先に壊した方の勝ちとなります。

壁の大きさは自由ですが、厚みは十センチまでとさせて頂きます」

なるほど、壁の大きさは小さ過ぎても大き過ぎても不利になりそうだな、それに地下に伸ばしてはいけないとは言って無いな、しっかりと地面の中に埋めて固定しないと倒されてしまいそうだ。

「では、壁を作ってください」

「モル、壁を作ってくれ」

「はい、ご主人様」

ワルテさんが命令すると、モルはちょこちょこと歩いて行き地面に手を付けると、土が地面から盛り上がり縦二メートル横二メートルほどの見事な壁が作り出された。

「出来ました!」

モルはまたちょこちょことワルテの下へ歩いて行き褒めてもらっていた。

「えらいぞモル」

あれはすごく可愛いな、っと俺も見とれていないで壁を作らないとな。

地面を掘り固めて、ワルテさんと同じ様に幅二メートル高さ二メートルの壁を作った、地面の下はさらに二メートルほど埋まっていて倒れる事はまずないだろう。

硬さもかなり圧縮したから相当固いはずだ。

「二人とも出来たようですね、では交互に相手の壁を攻撃して貰います、エルレイ様には地属性の魔法でお願いします」

「分かりました」

「ワルテからお願いします」

ワルテさんは俺の壁の方に近づいて行った。

「モル、あの壁壊せそうか?」

「地面にも深く入っていますので難しいです」

「やはりそうか、しかしやれるだけはやってみよう」

「はい、では行きます」

モルは両手を上げると、地面からボコッっと壁より大きな岩が浮かび上がり、勢いよく俺の壁に向け飛んで行った。

「ガーーーン!!!」

岩は大きな音を立て俺の壁に当たり割れてしまった、俺の壁は少し後ろに傾いたが壊れてはいない様だ。

もう少し深く埋めておくべきだったな、次同じのを当てられたら倒れてしまいそうだ。

「次エルレイ様、お願いします」

「分かりました」

俺はワルテさんの壁の前に立った、さて大きな岩を当ててもワルテさんの壁は壊れてはくれないだろう。

俺は岩を圧縮固めて先を尖らせ五センチほどの砲弾を作った、それを回転させ高速で打ち出した。

「バン!」

余り大きくは無い音を立て、砲弾はワルテさんの壁を貫通した、大きくは壊れてはない、ただ穴が開いただけだ。

地属性で大きく壊そうとすると、先程モルがやったように大きな岩を当てて壊さないといけない、火属性だと楽に壊せるのだけどな。

「えーと、穴が開いていますが壊れてはいませんね・・・」

「ソフィア、私の負けだ」

「しかし・・・」

「あれだけ見事に穴が開いているのだ、私とモルでは彼の攻撃を防げないという事だよ」

「分かりました、この勝負エルレイ様の勝利と致します」

「ワルテさん、よろしかったのでしょうか?次同じ攻撃を受けると私の壁は倒れてしまうでしょう」

「それでもエルレイ君の壁は壊れないだろう?」

壁は壊れないとは思う、この勝負の目的は仲良くなることで勝敗はどうでもいいから、俺が負けても構わなかった。

ワルテさんは最初から俺に対して悪い感じじゃ無い様だしな、他の三人には勝たないといけない様だが・・・。

「そうですね、ではありがたく勝ちを頂く事にします」

「では、次はどちらが勝負しますか?」

「私がお相手しましょう」

俺の前に巨乳が・・・カーメラさんがやって来た、歩くたびに揺れるので目のやり場に困ってしまう。

「エルレイ様、私に勝負させてください」

リゼが俺の前に出て来てそう言った、リゼは水属性が得意だからやらせてあげるのは問題無いが・・・。

「ソフィアさん、リゼが勝負を受けたいとの事ですが構わないでしょうか?」

「カーメラ、構いませんか?」

「ええ、構いませんよ、どちらと勝負しても私が勝つのですから」

カーメラさんは余程自信があるのだろう、どの様な勝負なのか気になるな、ここはリゼに任せて巨乳・・・いや勝負を楽しむ事にしよう。

「リゼ、頑張ってくれ」

「はい、やっつけてきますね」

リゼは張り切ってカーメラさんの前に立った。

「では、お二人には氷像を作って頂きます、題材は私とミルで、審判は私、ワルテ、ロレーナの三人で行います」

「ちょっと待て、なぜ俺が入っていない!!」

マルギットさんが審判から外されて文句を言って来た。

「マルギットには公平に判断を下せない上に、美的センスもありませんからね」

「ぐぬぬぬ」

図星だったのかマルギットさんはおずおずと下がって行った。

氷像を作るのか、俺はやった事無いが、リゼは訓練の時俺の氷像を作った事があったな、すぐさま俺が破壊したが・・・。

この勝負はいかに対象をイメージ出来るかにかかっているだろう、魔力の量は関係無いからカーメラさんは強気だったのか。

「では始めてください」

ソフィアさんは開始の宣言をすると、様々なポーズをミルと一緒にとりだした。

リゼとカーメラさんはソフィアさんとミルをよく観察して、どのような氷像を作るか考えている様だ。

「シャル、格好よくソフィアを作りますよ」

「はーい」

シャルと呼ばれた水の精霊は、どう見てもスライムにしか見えなかった・・・カーメラさんの胸と同じくぽよんぽよんと跳ねている。

シャルが作るソフィアさんとミルの氷像は、確かに格好よく作られていた。

リゼも作る段階に入ったようで、水が集まりソフィアさんとミルを形どり、見事の氷像が作られた。

リゼの方は可愛らしく作られていた、俺の目線で言うとどちらも素晴らしい出来で甲乙つけがたい。

この勝負俺がやってたら確実に負けていたな、リゼが変わってくれて助かったと思った。

しかし氷像を作る事はいい訓練になりそうだな、リアネ城に戻ったらやって見る事にしよう。

「お二人とも完成したようですね、ではワルテ、ロレーナ、氷像をよく見て気に入った方を選んでください」

「では拝見させて頂きますね」

「しっかりと見てやるのじゃ」

三人は氷像の周りを見て回りながら意見を言い合っていた、暫くして意見はまとまった様でこちらに戻って来た。

「では審査の結果を発表します、二対一でリゼさんの勝利です」

「エルレイ様、やりましやよ」

リゼは俺に抱き付きとても喜んでいた。

「なんで私が負けなのよ!!」

カーメラは納得いかないのかソフィアさんに言い寄った。

「カーメラ、正直に言ってどちらの氷像の出来も素晴らしかったです、ですが私は可愛いのですよ、決して格好よくありません、お判りいただけましたか?」

ソフィアさんは表情はにこやかにしていたが目は笑っていなかった・・・。

「わ、分かったわ、確かにソフィアは可愛いですわね」

カーメラさんはソフィアさんの迫力に押されて反論する気は無くなった様だ。

「最後は私じゃな」

ロレーナさん・・・ロレーナちゃんと言った方がしっくり来るが、まぁエルフだから見た目以上に歳を取っているだろう。

ロレーナさんは俺の方へ来て腕を組み胸を張ってこちらを睨んできた。

最後は火の精霊かどんな勝負だろう、今までの様に平和的な勝負が出来る様には思えないのだが・・・。

「では勝負内容ですが、今から離れた位置にロウソクをそれぞれ十本ずつ立てますので、倒さない様にこの位置から火球を飛ばして火をつけてください」

ソフィアさんは説明が終わると二十メートルは離れただろうか、その位置にローソクを十本ずつ計二十本のローソクを等間隔に並べて置いた。

この勝負は非常に難しいだろう、特にロウソクを固定した様子話見られなかったから、威力が強すぎると倒れてしまうだろう。

俺は普段威力を上げる事を重視していたから、微妙な加減で魔法を使うのは初めての事だ・・・。

ローソクを並べ終えたソフィアさんがこちらに戻って来た。

「ローソクを倒すと火がついてても数に数えません、制限時間は一分です、準備はよろしいですか?」

練習をしたかったがそう言う訳には行かない様だ。

「大丈夫です」

「いつでもいいのじゃ、ソル、出てまいれ」

ソルと呼ばれた火の精霊は双頭のケルベロス・・・の様な子犬だった、頭は二つあるがサイズは室内犬の様に小さくケロべロスとは呼ぶには可愛すぎる。

「「我らの力を見せてやるワン」」

ワンとか言ってるしお手とかしたくなるな。

「手を振り下ろしたら始めてください」

ソフィアさんは手を上げ素早く振り下ろした。

「ソル、慌てる出ないぞ、ゆっくり一つずつ点けて行くのじゃ」

「「任せるワン」」

やばいソルが可愛すぎて思わず見てしまう・・・俺は気合を入れなおして目の前のロウソクに集中する。

拳大の火球を作りゆっくりとロウソクに向け飛ばした、火球はロウソクの上を通過し上手く火が付いたが倒れてしまった。

横を見るとソルは一個目のロウソクに上手く火を点けていた、俺はもう一度同じ火球を作り、今度は先程よも更に遅く火球を飛ばした。

あまりにも遅かったため風に流されてロウソクに当たらなかった・・・。

ふと横を見ると、そんな俺をにやにやとロレーナが見て笑っていた、くそー、やってやろうじゃないか今度は火力を上げ青白い火球を作りロウソクの少し離れた上を通過させ火を点ける事に成功した。

その後も何本か倒しながら火を点けて行き、六本のロウソクに火を灯した所で時間切れとなった。

「そこまで、この勝負ロレーナの勝利です」

「ふふん、どうじゃ参ったか?」

ロレーナはにやにやとこちらを見下げ、いや身長は俺の方が高いから見上げて来ていた。

結果はロレーナは十本全部に火を点けたからな、ぐうの音も出ない位の敗北だ。

「参りました」

俺は素直に負けを認めた。

「そうか、ではエルレイは私の配下じゃな」

配下って何ですか?仲良くなるための勝負では無かったのだろうか?

「エルレイ様、その様になりますのでよろしくお願いします」

俺が配下になるのは決定の様だ・・・。

「分かりました、それでソフィアさん、配下とは具体的に何かあるのでしょうか?」

「特に何もありません、ただの名だけです」

「違うのじゃ、私の言う事は聞いて貰うのじゃ」

ソフィアさんは何も無いと言っているが、ロレーナさんは違うと言っているな、まぁ負けたのだから言う事くらい聞かないといけないな。

「ロレーナさん、私に出来る事なら言う事をお聞きしましょう」

俺がそう言うとロレーナさんはぱぁっと笑顔になった。

「そうか、ではエルレイ、私と結婚してくれなのじゃ」

えっ?結婚ってなんですか?どうせ結婚するならカーメラさんの方がいいけど・・・いやいや、そんな事じゃなくなんで?俺は疑問を解消すべくソフィアさんの方を見た。

「ロレーナ、エルレイ様が困っているではありませんか、いきなり結婚では無く、まずお付き合いしてからでしょう」

ソフィアさんも特に結婚を反対する様子では無かった・・・。

「俺はエルフとは違って寿命が短いので結婚するのはどうかと・・・」

俺はどうにか断ろうと思案した、やはり寿命の違いは大きいだろう、どう頑張ってもエルフの様に長生きは出来ないのだから。

「それなら心配ないのじゃ、私はハーフエルフじゃからな、今百五十歳で後百五十年ほどしか生きられないのじゃ」

なるほど、ハーフエルフだから背も低く耳も短かったわけか、しかしそれでも後百五十年は生きるのか。

「分かりました、しかし私にはすでに四人の婚約者がおります、それに女王様に許可を頂かないといけないのではないでしょうか?」

「勿論なのじゃ、すでに女王様には許可を貰ったのじゃ」

既に許可をもらったって・・・最初から俺と結婚するつもりだったという事か?

「エルレイ様、ロレーナはここにいても結婚出来ないのです、かと言って外の世界で一人で暮らす事も出来ません、どうか貰っては頂けないでしょうか?」

ソフィアさんは申し訳なさそうに俺を見て来た、確かにこの容姿で後百五十年外の世界で暮らすのは難しいだろう。

他の人が老いて行く中で、ずっと子供の姿では周囲から奇異な目で見られるだろうからな。

その点俺と一緒なら誤魔化す事は出来なくても権力でどうにでも出来るか。

『リゼ、どう思う?』

『エルレイ様が良いと思えば誰も反対する者はいませんよ』

『そうか・・・』

『それにワンちゃん可愛かったですし』

『・・・確かに可愛かったが』

リゼ、結婚に精霊は関係ないと思うぞ・・・となると俺の気持ち次第か。

ロレーナさんを見ると、エルフの特徴であるエメラルドグリーンの髪が美しく顔立ちは可愛いいな、背は小さいがこれで百五十歳なのだから結婚するのには問題ない。

「分かりました、しかし私はまだ十一歳なので十五歳になるまで結婚は出来ません、ですので婚約と言う形でよろしいでしょうか?」

「問題無いのじゃ、エルレイ、よろしく頼むのじゃ」

ロレーナさんはにっこりと微笑みとても喜んでくれた。

「ロレーナ、良かったですね」

「ロレーナ、おめでとう」

ソフィアさんとカーメラさんはロレーナさんの所へ行き祝福していた、そしてワルテさんはなぜか俺の所へやって来た。

「エルレイ君、ロレーナの事よろしく頼む、ロレーナはハーフと言う事で肩身の狭い思いをして来た、勿論私達はその事は気にはしていないのだが、彼女の方が気を使ってね、結婚出来ないのも自分が先に亡くなるからと断り続けて来ていたからなのだよ」

なるほど、エルフと結婚した場合でも寿命の問題があるのか・・・苦労してきたのだろうな。

「今回の勝負も私達がエルレイ君にロレーナの事を任せられるか見るための物だったのだよ、マルギットはああ見えて仲間思いの所があるからな」

「そうだったのですね、でも私はロレーナさんに負けてしまいました・・・」

「勝負の内容はどうでも良かったのだよ、ロレーナにエルレイ君が負けたのは意外だったけどね」

ワルテさんはニヤリを笑いそう言って来た。

「私はこれまで魔法の威力を高める事に重点を置いてきました、ですので、あのような繊細な動きの訓練を怠って来たという事でしょう、今日はいい勉強になりました」

「そうか、あの勝負の方法を考えたのはロレーナだ、火の精霊だとどうしても威力にばかり目が行きがちで、森で生活する私達の中で火の精霊は嫌われていのだ、それを変えたのはロレーナと言う事だよ」

確かにこの森の中で火の精霊を使えば大惨事となるだろう、あの繊細な動きを必要とする勝負で火の精霊を上手く制御し、周りに被害を出さない様訓練したという事か。

「とても素晴らしいですね、私もこれから繊細な制御が出来る様努力したいと思います」

「はははっ、エルレイ君はこれ以上強くなってどうするつもりだい?」

「どうもしませんよ、私の周りにいる人達に被害が出ないよう守るだけです」

「そうか、女王様が信頼するわけだ」

ワルテさんと話しているとこちらへソフィアさんがやって来た。

「エルレイ様、一度城に戻って昼食に致しましょう」

確かにお腹がすいて来たな。

「分かりました」

ソフィアさんに運ばれて城まで戻り昼食となり、その後女王様へ報告に訪れた。

「エルレイ、皆とは仲良くなれたようですね」

「はい」

「ロレーナもエルレイに受け入れられたようですね、おめでとう」

「女王様、ありがとうなのじゃ」

女王様はロレーナにやさしく微笑みかけていた。

「エルレイ、ロレーナは外の世界での生活が長く、言葉使いが多少おかしいですが可愛がってあげてくださいね」

「はい、分かりました」

「女王様、この話し方はちゃんとおばばに習ったのじゃ、おかしくは無いのじゃ・・・」

「はいはい、そうでしたね、ごめんなさい」

ロレーナさんは少し怒ったような感じだ、ロレーナさんのおばあさんに言葉を習ってあのような言葉使いなのか、しかしロレーナさんは愛されていた様だな、その事を大切に思っているから女王様に対して怒ったのだろう。

「ではソフィア、リースレイア王国を迎え撃つ予定の場所にエルレイを案内してあげてください」

「承知しました」

俺達はソフィアさんに連れられて女王様の下を後にし結界の外に出た。

マルギットさんは訓練に行くと言って着いて来なかった、俺の負けたのがよほど悔しかったのだろう。

カーメラさんも仕事があると言って来なかった、今いるのは俺、リゼ、ソフィアさん、ワルテさん、ロレーナさんの五人。

「ではミル、お願いね」

「はーい、とっばすよー」

ミルの元気な声と共に俺達は空へと飛び立った、五人運んでいるのにこの速さはすごい、マルギットさんに勝てるのも納得だな。

暫く空の旅を楽しんだ後ソフィアさんは何もない草原へと降り立った。

「とーちゃーく」

「ミル、ありがとう、エルレイ様この場所で敵を迎え撃つ予定なのです」

ソフィアさんはそう言うが、こんな何もない所で敵を迎え撃つのは、こちらにも被害が及ぶのではないだろうか?

「今までもこの場所で迎え撃っていたのでしょうか?」

「はい、上空から攻撃を打ち込んでおりました」

なるほど、それならばこのような場所が確かに有利か、空からの攻撃ではこの遮蔽物が無い場所で逃げ場は無いからな。

「マルギットさんの部隊以外は出ていなかったという事でしょうか?」

「その通りです、しかし、今回女王様がそれだけで守る事は出来ないと仰ったのです」

「分かりました、ではここに砦と城壁を作る事にしましょう」

「エルレイ様、お願い致します」

「リゼ、ロゼと交代だ」

「そんなぁ~」

俺がそう言うとリゼはがっくりと肩を落としていた、気持ちは分かるが、ロゼがいないと俺一人で作るのは大変だからな。

「リゼは戻った後、皆に説明を頼む」

「・・・分かりました」

リゼは渋々納得してくれた。

『ロゼ、今何処にいる?』

『皆さんと一緒に訓練場におります』

『砦を作る事になったから今からロゼを迎えに行く、そちらにはリゼを連れて行くから交代してくれ』

『承知しました』

「ソフィアさん、一度戻って砦を作るのが得意な者を連れてきます、すぐ戻りますのでお待ちください」

「承知しました」

リゼを連れてリアネ城の訓練場へと転移した、事前に連絡しておいたからロゼがこちらへ駆けつけてくれた。

他の皆は子供たちの魔法の訓練をしている様だった。

「エルレイ様、お帰りなさいませ」

「ロゼ、急がせてしまった様だな」

「いえ、構いません」

「リゼ、後の事頼む、今夜には戻ってくるつもりだ、後子供達には説明しなくていいからな」

「承知しております」

「ロゼ、行こうか」

「はい」

ロゼと手を繋ぎ先程いた場所へ転移で戻った。

「ソフィアさん、お待たせしました」

「いえ、待ったと言うほどではありません」

「なんじゃ、代りを連れて来るのじゃ無かったか?」

ロレーナさんがロゼを見てそう問いかけて来た、俺はリゼとロゼが同じように見えないからな、気にしていなかったが確かに代わって無いように見えるよな。

「ロレーナさん、彼女はロゼ、先の程いたリゼと双子なんだよ」

「そうなのか、全く見分けがつかないのじゃ」

「慣れると違いが分かる様になるよ、では作業を始めます」

「エルレイ君、見学させて貰うよ」

「勿論構いませんよ、参考になるかは分かりませんがね」

ワルテさんはモルを連れて見学する様だ。

今回の敵は魔剣を使ってくるそうだから、少し高めに作った方が良いかな。

俺は魔力を籠め高さ五メートル、幅二メートルの城壁を作り上げた、城壁の向こう側は、城壁を作った土を掘りだした二メートルほどの深さの堀が出来ている。

「ロゼ、こんな感じで右側に伸ばして行ってくれ」

「承知しました」

俺は左側へ城壁を伸ばして行く。

「凄い物だな、モルよく見て覚えてくれ」

「はい、ご主人様、しかし同じ物を作るとなると、とても疲れそうです・・・」

「そうだな、エルレイ君とロゼさんは、どれだけの魔力を持っているのだろう?」

「そうじゃな、午前中も我々との勝負でかなりの魔力を使っておったじゃろうに」

「そうですね、少なくとも私達以上の魔力を持っている事は間違いないでしょう」

後ろの三人が何やら話をしている様だが気にしない様にしよう、魔力自体はかなり増えて来ていて、いまだに毎日の訓練で増え続けている、それにグールへ毎日魔力を貯め込んでいるのもある、余程の事が無い限り魔力切れになることは無いだろう。

横二百メートルほど進んだところで止まる。

『ロゼ、そこから四角に囲う様に作ろう』

『そうですね、あまり大きすぎても守るのが大変になります』

角度を九十度変え四角く囲う様に城壁を作って行き、二時間ほどで二百メートル四方の四角い砦が完成した。

「エルレイ君、素晴らしい物を見せて貰った」

「ワルテさん、まだ完成ではありません、塔と内側から砦に上る階段を付けないといけません」

「分かった、では階段は私達に作らせてくれないか?」

「分かりました、ワルテさんお願いします」

「ありがとう、モル頑張ろう」

「はい、ご主人様」

俺とロゼは城壁の内側に五十メートル間隔で塔を作って行き、ワルテさんとモルが階段を作ってくれて砦が完成した。

「ワルテさん、ありがとうございました」

「いや、大したことはしていないよ、しかし数時間でこれだけの物を作り上げるとは驚きだ」

「まぁ、今まで何度か作ってきましたからね、慣れたものです」

「しかし、この砦で敵の攻撃を防ぐのは分かるが、その後どうするつもりなのだろうか?」

「そうですね、この砦は私達の被害を抑える為と、敵の視線をこの砦に向ける事でしょうか」

「確かに、これだけの物を無視して通過することは無いだろう」

「はい、敵がこの砦に目を向け攻撃して来たら、マルギットさん達に敵の横か後ろから攻撃して貰うと言うのはどうでしょうかね」

「なるほど、それならば有利に戦えそうだ」

「あくまでそうなればいいという話で、相手の戦力次第ではどうなるかは分かりません」

「そうだな、幾つか作戦を立てて置く必要があるな」

「はい、今回敵は魔剣と言う未知の戦力ですからね」

「では戻って考えるとしよう、ソフィア、お願いするよ」

「はい、皆様お集まりください」

ソフィアさんが飛んで帰ろうとしていたが、俺が送った方が早いだろう。

「ソフィアさん、私が結界前まで送りますよ」

「そうでしたね、エルレイ様お願いします」

「エルレイ、なぜ行きは飛んできたのじゃ?」

ロレーナさんが素朴な疑問を投げかけて来た。

「ロレーナさん、転移魔法は自分が一度行った場所でないと行けないのですよ」

「そうじゃったか、便利な魔法じゃと思ったがそうでもないのじゃな」

「そうですね、でも一度行けば次からは一瞬で行けますから楽ですよ」

「そうじゃな、ではお願いするのじゃ」

「はい、皆さん手を繋いでください」

全員が手を繋いだことを確認して結界前に転移した。

「確かにこれは楽じゃな」

「そうだな、敵が来た時も運んで貰えるのだろうか?」

「ワルテさん、それは出来ません、人数が増えるにつれ使用魔力も増えるので、その時は飛んで行って貰う事になります」

「それはそうか、無理を言ってすまなかった」

「いえ、では私達は今日はこれで帰りますね、また明日こちらに伺います」

「はい、エルレイ様、ありがとうございました」

「エルレイ君、作戦を考えておくよ」

「はい、よろしくお願いします」

そう言えばロレーナさんはこちらに来るのだろうか?

「ロレーナさんはどうしますか?」

「私は戦争が終わるまでここに残るのじゃ」

ロレーナさんは少し寂しそうにそう言った。

「ロレーナ、隊長の事は気にしなくていいのよ」

「いや、皆には世話になったのじゃ、隊長としての責任を果たさないと私の気が済まないのじゃ」

ソフィアさんが優しくロレーナさんに言葉を掛けたがそれを断った。

なるほど、ロレーナさんがそう思っているのなら俺はそれを尊重するだけだな。

「分かりました、ではロレーナさん戦争が終わったら正式に婚約いたしましょう」

「分かったのじゃ」

若干フラグが立っている様な気がするが、俺には女神の加護が付いているから大丈夫・・・だと思いたい。

「では、また明日」

俺とロゼは三人に見送られてリアネ城の玄関へと転移した。

「ロゼ、俺はアドルフの所へ行って来る」

「エルレイ様、婚約とはどういう事でしょうか?」

そう言えばロゼには何も説明していなかったな・・・。

「先ほど言ったようにロレーナさんと婚約する事になった、詳しい事は部屋に戻ってから皆に話すよ」

「分かりました、では部屋でお待ちしております」

ロゼは怒ってはいない様だが困惑していたな、事前に説明しておくべきだった。

ロゼと別れてアドルフがいる執務室に入り自分の席に座る。

「エルレイ様、お帰りなさいませ」

「アドルフ、ただいま、ルフトル王国と戦争に向けての準備だったよ」

「そうでございますか、では近いうちに?」

「いつかは敵次第だから分からないが、何時でも行ける様準備をしておかなければならないな」

「承知しました」

「それと戦争とは関係無いが、女王様から一人婚約者を与えられた」

アドルフは一瞬目を見開いたが直ぐに元に戻り、平静を保とうとしていた。

「正式な婚約は戦争の後となる、断る事は出来ないからアドルフもそのつもりでいてくれ」

「畏まりました」

同盟国の女王様からだと言えばアドルフも異を唱える事は出来ないだろう、それとエルフだという事はアドルフにも伏せて置かなければならない、いずれ説明しなければいけないだろうが、それはずっと先の事だな。

「明日もまたルフトル王国へ向かう、日帰りは出来そうだからその都度報告するよ」

「はい、よろしくお願いします」

「こちらからは以上だ」

「私からは一つ御座います、こちらをご覧ください」

アドルフに渡された書類を受け取り読み始める、それは闘技場の建設場所や運営方法等だった。

あれからそう何日も立っていないがここまで資料をまとめたのか、アドルフには頭が下がる思いだ。

「最初はこれでいいだろう、その後参加者に順位を付けて、腕前ごとに幾つかの組みに分ける必要があるだろう」

「なるほど、強者だけがいつも勝つようでは、参加者が増えませんね」

「例えば、上級者の組、中級車の組、初心者の組と分けた場合、賞金に差をつける必要がある」

「承知しました、エルレイ様には時間が空き次第、建設予定地の整備をお願いします」

「分かった、それと闘技場自体も大まかな形なら俺とロゼで作る事が出来るぞ、その後の装飾は無理だが」

「図面はまだ準備中ですので、書きあがり次第そちらもお願いいたします」

アドルフとの会話が終わり部屋に戻った、中に入ると皆の視線が俺に刺さってきた。

「ただいま」

「エルレイ、聞きたい事があるのだけど、こちらに来て座りなさい」

ルリアに命令され俺は素直にソファーに座った、十中八九ロレーナさんの事だろう。

「新しい婚約者が出来たそうじゃない、今日は連れてこなかったの?」

「うん、正式な婚約はルフトル王国の戦争が終わってからになった、その時に皆に紹介するよ」

「そう、それで婚約者はエルフなんじゃないの?」

「彼女、名前はロレーナさんと言うのだけど、ハーフエルフで見た目は人と変わらない」

「そうなのね、それなら問題無いかしら」

俺に新しい婚約者が出来た事は問題じゃなかったのか・・・。

「しかし、ハーフエルフだという事は誰にも話してはいけない」

「分かっているわよ」

「それと戦争だがいつ始まるかは分からない、いつでも行ける様準備しておいてくれ」

「分かったわ」

「分かりました」

「明日はまたルフトル王国に行く、ルリア達も来て貰えないか?戦略の話をしに行く事になっている」

「構わないわ、日帰りできるのでしょう?」

「そうなるだろう」

「それなら問題無いわ」

「ヘルミーネ、アルティナ姉さん、ラウラ、留守の間の事頼む」

「うむ、任せるのだ」

「お姉ちゃんに任せなさい」

「承知しました」

「では夕食にしようか」

「エルレイ様は先にお風呂です」

リゼが置いていかれた事を根に持っているのだろうか、俺の手を引き風呂へと連行された。


翌朝ルフトル王国へ行くため部屋に集まっていた。

「では転移するから手を繋いでくれ」

そう言えば先に砦を見せていた方が話をしやすいだろう。

「先に昨日作った砦に転移する」

「分かったわ」

皆が手を繋いだことを確認して砦の塔の上に転移した。

「エルレイ、びっくりしたじゃない、いきなりこんな高い所に転移しないで頂戴」

確かに塔の上にいきなり転移したのはまずかったな。

「私もびっくりしました」

「皆すまない、ここからが全体を見れていいかと思ったのだ」

「なんだ?嬢ちゃんは高い所がこわいのかよ」

「怖い訳無いわよ、いきなりだったから驚いただけよ」

グールがルリアを挑発している様だったが、今回は俺が悪かったからな。

「グール、今のは俺もやられたら驚くと思う」

「そうかよ、俺様何とも思わなかったけどな!」

俺は懐からグールを取り出し下に投げ落とした、次の瞬間俺の手元にグールが戻って来た。

「てめー何してんだよ、落ちると痛いだろうがよ!」

「グールも痛いと思う事があるのか?」

「いや、ねーけど・・・何となく気分的にそう思うんだよ!」

そうだよな、剣が痛みを感じていたら斬り付ける度に痛いと騒ぎだすよな・・・。

「エルレイ、グールの事はほっときましょう、それよりこの砦で敵を迎え撃つ事になるのね」

「そのつもりだ、後は他の皆と連携をいくつか考えて置くだけだな」

「分かったわ、それなら結界の所に行きましょうか」

「もう一度転移するぞ」

手は繋いだままだったのでそのまま結界の前に転移した。

『ソフィアさん、結界の前に着きました』

『エルレイ様、少々お待ちください』

暫くしてソフィアさんが結界より出てきて俺達を結界内部へ迎え入れてくれた。

「皆様お待たせしました、では城まで送ります」

ソフィアさんに城まで運んで貰い、城内の部屋に通された、そこには既に皆が揃っていた。

「皆さん、お待たせしました」

「いや構わない、座ってくれ」

ワルテさんに促されて席へ座る。

「では皆様、初めて見る方もいらっしゃるようなので自己紹介をお願いします、マルギット」

ソフィアさんがマルギットさんの方を見た。

「私はマルギット、風精霊部隊隊長だ」

「私はワルテ、土精霊部隊隊長です」

「私はカーメラ、水精霊部隊隊長よ」

「私はロレーナ、火精霊部隊隊長じゃ」

エルフ側の自己紹介が終わり今度はこちら側だ。

「私はルリア、火属性魔法と風属性魔法を使うわ」

「私はリリーです、回復魔法と水属性魔法を使います」

「私はロゼです、地属性魔法と風属性魔法を使います」

「私はリゼです、水属性魔法と火属性魔法を使います」

俺以外の自己紹介が一通り終わった。

「昨日も見たのじゃが、そっくりじゃな」

ロレーナさんはリゼとロゼを見比べていた、見た目で判断するのは難しいだろう、俺は雰囲気ですぐ分かるようになったのだが、遠くから見ただけでは判断できないからな。

「では皆様の紹介が終わりましたので話を始めましょうか」

「いや、まだ一人終わっておらんぞ」

ソフィアさんが会議を始めようとしたらマルギットさんが俺を見てそう言って来た、確かに使える魔法とかは言って無いが既に知っているのでは・・・まぁ隠している訳では無いからきちんと説明するか。

「皆さん知っているものとばかり思っておりました、では改めて私はエルレイ、全属性の魔法と空間魔法、それと光の精霊とこの前契約しました」

「ふむ、女王様から聞いていたが恐ろしい者だな、光の精霊を見せて貰えないか?」

「分かりました、ウィル、出て来てくれないか?」

「うん」

ウィルは出て来てくれたが少し怯えているような気がした、マルギットさんはそんなウィルを観察して話してくれた。

「まだこちらの世界に慣れて無い様だな、メル出てこい」

「はい」

「そこにいるウィルと遊んでやってくれ」

「分かりました、ウィル遊ぼう!」

メルはウィルに近づきの手を取った、マルギットさんは立ち上がり部屋の窓を開けると、メルはウィルを連れて飛んで行ってしまった。

「あの、ウィルをどこへ連れて行ったのでしょう?」

「さてな、メルの好きな所にでも行ったのだろう、精霊は遊ばせてやる事でこの世界に馴染んでいく物だ、ただ会話するだけでは無くたまには遊んでやることも必要だ、しかし結界の外では精霊もゆっくり出来ないだろう、たまにここに連れて来て遊ばせるといい」

そうなのか、その様な説明されなかった様な・・・。

「分かりました、マルギットさん、ありがとうございます」

「すみません失念しておりました、ミル、貴方も一緒に遊んできなさい」

「はーい」

ソフィアさん俺への説明忘れていた様だ・・・ミルはソフィアさんに言われると勢い良く飛び出して行った。

「お前もやって来た事だろう、忘れてどうする」

「いえ、ミルは最初から全然怖がっていませんでしたので・・・」

ミルは最初からあのように元気だったのか、少し羨ましいと思ってしまった。

「まぁその事はもういいでしょう、会議を始めましょう」

「そうしよう」

ワルテさんが話を先に進めてくれて会議が始まる事になった。

「では始めましょう、昨日エルレイ様に砦を作って頂きました、基本その砦を拠点として敵を迎え撃つという事でよろしいでしょうか?」

「あの砦は丈夫に出来ていたからね、守るのには問題無いよ」

「そうじゃな、あの塔の上からなら敵を攻撃し放題じゃ」

ワルテさんとロレーナさんは昨日砦は見ているから納得している様だ。

「私の部隊は遊撃と言う事で構わないのか?」

「はい敵の出方次第ですが、マルギットさんには遊撃をお願いします」

「分かった」

「私の部隊はその砦で攻撃するだけでいいのかしら?」

「カーメラさんの部隊もそうなります、ただ敵が砦を無視してきた場合は変わってくると思います」

「分かりました、動くのは苦手ですから助かりますね」

あの胸では動くのは確かに大変だろう・・・。

「ソフィアさん、質問よろしいでしょうか?」

「エルレイ様、なんでしょうか?」

「敵が攻めて来た場合、敵を殲滅するのが目的でしょうか?それとも追い返すだけなのでしょうか?」

「敵は殲滅致します、追い返すとまたやって来ますからね」

なるほど厳しいが攻められた方としては当然だな。

俺はルリア、リリー、リゼ、ロゼを見渡すと皆頷いてくれた。

「分かりました、私達もそのつもりで戦います」

「はい、よろしくお願いします」

「それで皆さん、今回敵は全員が魔剣を装備している様なのですが、魔剣をご存知でしょうか?」

「いや、知らないな」

エルフの皆は一応に首を横に振っていた、俺は懐からグールを取り出しテーブルに置いた。

「これはかつて英雄が持っていたグールと言う魔剣で会話する事が出来ます、今から話させますが驚かないようお願いします」

「ほう」

「このナイフが魔剣ですか」

「魔剣とは随分小さい物なのですね」

「これが魔剣、強そうに見えないのじゃ」

皆はグールを見て感想を言い合っていた。

「グール話していいから魔剣の事を説明してくれ」

「おっ、話していいのか?俺様の名はグール、エルフの皆よろしくな!!」

「本当に話したな・・・」

「これは興味深い」

「魔剣とはうるさい物なのですね」

「どこから声を出しているのじゃ」

皆は話す魔剣に興味津々と言った様子だ、その後グールは魔剣の事を皆に無事説明し終えた。

「とまぁ、こんなもんだな!」

「グール、説明ありがとう、もう喋らなくていいぞ」

「えーまたかよ、もっと喋らせろよ!!」

「後でいくらでも話していいから今は黙っていてくれ」

「わーったよ」

グールはようやく黙ってくれた、こいつが話していると皆との会話が先に進まない。

「つまり敵は魔法を全員使ってくる、という事なのだな」

「そう言う事です、下手の近づくと流石に危険だと思います」

「上空から攻撃すれば関係ないのではないか?」

「そうですね、これは最悪な予想ですが、魔剣に飛行魔法が付いていた場合、空の優位が無くなるかも知れません」

「その場合、近づいて斬りかかってくる前に撃ち落とせばいいだろう?」

「そうなのですが、ただ魔剣が一本だけとは限りませんし、飛行魔法を使える魔法使いが魔剣を持っているかも知れません」

「分かった、私達も仲間を失いたくない、魔剣には十分気を付けるとしよう」

マルギットさんは魔剣の説明を受けて、その危険性を理解してくれた様だ、俺も出来るだけエルフに犠牲を出させたくないからな。

「他に何かありませんかね?」

「エルレイ、一ついいかしら?

「ルリア、何だい?」

「全体を纏める指揮官は誰なのかしら?」

そう言えば俺も知らないな、ソフィアさんだろうか?

「ソフィアさんでしょうか?」

俺はソフィアさんを見たが思いっ切り首を横に振っていた。

「私じゃありませんよ、私は女王様のお世話係ですから!」

ソフィアさん女王様のお世話係だったのか、それにしてはずっと俺達に付いて回っているような気がするが・・・。

「ではマルギットさんですか?」

「今回の戦争ではエルレイが指揮官だ」

俺が指揮官?部外者なんだけど・・・他の三人を見回すと皆頷いていた、マジか、指揮とかやった事無いんだけど・・・。

「エルレイ君以外にいないだろう、砦を作ったのも君だし、任せるよ」

「そうですわね、指揮官なんて今まで決めた事無かったですから、私達には出来ませんし」

「そうじゃな、エルレイ任せたのじゃ」

三人も納得している様だ、と言うか指揮官今までいなかったんですね、まぁ精霊が強いから要らなかったのは分かるけど・・・。

「エルレイ、頑張りなさい」

「エルレイさんなら出来ます」

ルリアとリリーに応援されてはやるしかないか。

「分かりました、正直指揮官とかやった事無いですが、皆さんに被害が出ない様頑張ります」

「「「パチパチパチ」」」

拍手が巻き起こる、引き受けたからには全力で頑張ろう。

「では皆様、昼食に致しましょう」

ソフィアさんがそう言うと、エルフの四人は立ち上がり食堂に向かって行った、俺達もそれに遅れない様についていき皆で昼食となった。

「マルギットさん、精霊達戻って来ませんが、どうしたらいいのでしょうか?」

「今日一日遊ばせてやるといい、特に何か用事でもあるのか?」

「いえ、ありませんが・・・」

「それならば遊ばせておけばいい、一応呼べば来るが、遊んでいるのを邪魔すると機嫌が悪くなるぞ」

精霊が機嫌が悪くなるとどうなるのか分からないが、良い事は無いだろう。

「そうなのですね、分かりました、そうすると午後は暇になりますね・・・」

「エルレイ、それなら街に買い物に行きましょう」

「エルレイさん、私も買い物に行きたいです」

この前も買い物したのにまだ買いたいのか、しかし俺達がエルフの街で買い物しても問題無いのだろうか?エルフが必要な物しか作られて無いと言っていたし。

「ソフィアさん、街で買い物して構わないでしょうか?」

「勿論構いませんよ、店の方もこの前買い物して頂いてとても喜んでいましたから」

「そうなのですね、しかしここにあるお店はエルフの為の物ですよね、私達が買っては迷惑になったりしないのでしょうか?」

「そんな事はありません、実はこの街でお金は使われていないのですよ、普段は物々交換でお金を得る機会がありません、エルレイ様達がお金を使って頂くとそれを使って外の物が買える訳です」

なるほど、この閉ざされた世界でお金は必要では無いか・・・。

「それなら遠慮なく買わせて貰いますね」

「はい、お願いします」

「エルレイ、午後は買い物でいいのね」

「あぁそうしよう」

「リリー、何を買おうかしら?」

「服はこの前買いましたので、他の物を見て見ましょう」

ルリアとリリーは楽しそうに買い物の相談を始めた。

「私も着いて行きたいのじゃ」

ロレーナさんも付いて来たいのか、勿論着いて来る事に問題は無いな、それにルリアとリリーは気が付いているだろうが紹介しておこう。

「ロレーナさんも一緒に行こう、ルリア、リリー、こちらが婚約者となったロレーナさんだ、よろしく頼む」

「ロレーナ、よろしくね」

「ロレーナさん、よろしくお願いします」

「よろしくなのじゃ」

ロレーナさんは問題無く二人に受け入れられたようで良かった、食事を終え城の玄関にやって来た。

「エルレイ様、申し訳ありません、ミルを遊びに行かせましたので送って行く事が出来ません」

そう言えばそうだったな、歩いて行けばいいだろう。

「いえ、遊んでもらっているのはこちらですからお気になさらず、歩いて行きますよ」

「すみません、そうしてください、ミルは遊んでいるのを邪魔されると三日は言う事を聞いてくれないので・・・」

やはり精霊の機嫌が悪くなるとその様な影響が出るのか、今の所ウィルは魔法を使えないから機嫌が悪くなっても問題はない?いや折角部屋では出て来てくれて皆とも会話してくれるようになったのに、機嫌を悪くされてはいけないな。

「エルレイ、自分たちで飛んでいけばいいんじゃない?」

確かにそうかも知れないが、魔法を使ってはいけないと言われてたよな。

「ルリア、この中で魔法を使ってはいけないんだよ」

「そうだったわね」

「あぁ、皆様魔法使ってもよろしいそうです、今女王様から許可が下りました、ただし、エルレイ様の転移魔法は結界に影響が出るそうなので使わないで下さいとの事です」

「分かりました、女王様に感謝をお伝えください」

「はい」

飛行魔法で飛んでいけるとなると、ロレーナさんをどうやって運ぶかだな。

「ルリア、ロレーナさんを運んで貰えないだろうか?」

「エルレイが二人運べばいいんじゃない?ロレーナもエルレイに運んで貰った方が嬉しいはずよね?」

どうするか・・・ロレーナさんの方を見るとこちらを見て嬉しそうにしていた、どうやら二人運ばないといけない様だな。

「先に行ってるわね」

ルリアは一人で飛んで行ってしまった。

「ロレーナさん、背負うのでこちらへ来て貰えませんか?」

「分かったのじゃ」

俺は片膝をつき背中を丸めて待っていると、ロレーナさんが背中に乗っかって来た。

「立ちますのでしっかり掴まっていてください」

「大丈夫なのじゃ」

俺は立ち上がって今度はリゼを抱えた。

「二人共落ちない様に掴まっていてくれ、ではソフィアさん行ってきます」

「エルレイ様大変ですね、行ってらっしゃいませ」

ソフィアさんは苦笑いをして俺を見送ってくれた。

飛行魔法の訓練は続けているが、まだ二つの飛行魔法を操作するのが出来ないでいたから、この体制はしょうがない。

前後から柔らかい感触に包まれてとても幸せだが、落としてはいけないからな、慎重に街まで飛んで行った。

「精霊の様に複数人一緒に飛ぶことは出来ないのじゃな」

「そうなんだよ、ソフィアさんのを見てから練習はやっているけど難しくてね」

「しかし、これはこれでいい物じゃな」

「ロレーナ様もそう思いますよね、しかし前は譲りませんよ!」

「それは仕方が無いな、後ろで我慢するのじゃ」

リゼとロレーナさんの間で位置が決まったようだ・・・短距離なら構わないが長距離となると流石にきついな。

そこでふと思った、制御しなくても、こうして離れない様にしていれば飛行魔法をかけて浮かせているだけで楽になるのではないだろうか、今は出来ないが訓練時に試してみよう。

ルリア、リリー、ロゼが待っている場所へ降り立った。

「皆お待たせ」

「エルレイ、今日制限はあるのかしら?」

「そうだな、特に制限は付けないが、無駄な物は買わない様にしてくれればいい」

「分かったわ」

「それと皆で行動しよう、留守番している三人のも買っていかないといけないだろうし」

「そうね、ラウラはともかく後の二人は絶対騒ぐでしょうからね」

ヘルミーネとアルティナ姉さんに何も買っていかなかったらどうなるか、簡単に想像できてしまう。

「じゃ行こうか、ロレーナさんも欲しい物があったら買っていいですからね」

「私も良いのか?欲しい物があったのじゃ」

ロレーナさんはそれは嬉しそうにしていた、それとは別に装飾品を買ってあげないといけないな、皆に買っているから一人だけ貰ってない状態はよろしく無いだろう。

ルリア達に着いて行き次々と店を回って行く。

「ルリア、留守番している三人には何を買ってやったらいいと思う?」

「それは先程服屋で買ったわよ」

確かにさっき入った服屋で色々服は買っていたな、俺は最後に渡されて収納しただけだからどんな見た目の服を買ったのかは知らない。

「俺が選ばなくて良かったのだろうか?」

「それは大丈夫よ、買ったのは見せる為の服じゃないから」

見せない服・・・下着か、それなら俺が選ぶ必要は無いな。

「エルレイ様、このティーセット買って頂けませんか?」

ロゼが選んだのは木製のティーセットだった、城で出される料理にも木製の器が使われていて、軽くて美しいく使いやすかったのを覚えている。

「これで飲むお茶は美味しそうだな、よし買って行こう」

「はい、ありがとうございます」

こうした細々とした物をいくつか買いながら装飾品の店へやって来た、勿論ロレーナさんに贈る物を買うためだ。

俺がロレーナさんへの贈り物を選んでいると、ロレーナさんが一つ商品を手に持って俺の所へやって来た。

「エルレイ、この櫛を買って欲しいのじゃ」

その櫛はこの前ラウラに買ってあげた大樹の枝で作った櫛だった。

「それは構わないが、ロレーナさんには装飾品を贈ろうと思っていたのだけど・・・」

「この櫛はお母様に贈りたいのじゃ、お母様は外で結婚したためこの櫛を持っていないのじゃ」

櫛を持っていない?ここで買えばいいのではないのだろうか?それとも外で結婚したから売って貰えないとかだろうか・・・。

「買うのは問題無いが、ロレーナさんのお母さんは買えない理由でもあるのだろうか?」

「この大樹の櫛は結婚する時に男性から女性に贈られる物なのじゃ」

なるほど、結婚指輪みたいな物だろうか、しかしそれを俺が買って贈るのもどうなのだろうか。

「それは俺が買って贈るのは問題がありそうな気がするが・・・」

「大丈夫なのじゃ、エルレイと私が婚約したからお母様に贈るのは良い事なのじゃ」

詳しい仕来りとか分からないが、ロレーナさんが良いと言っているから問題無いのだろう。

「分かった、ロレーナさんのお母様にこの櫛を贈る事にしよう」

「エルレイ、ありがとうなのじゃ」

櫛とは別にロレーナさんへ贈るペンダントも買い、ついでにアンナ、エレン、マリー用に髪飾りも買った、あの子達は装飾品一つも持っていないからな、男の方は別にいいだろう。

そうしてようやく長い買い物が終わった。

「ロレーナさん、お母様を紹介して貰えないだろうか?挨拶もしておきたいし櫛も渡さないといけない」

「勿論なのじゃ、少し遠いから送ってくれなのじゃ」

ロレーナさんはそう言うと俺の背後に回り、背中にしがみついて来た。

「皆も付いて来てくれ」

「分かったわ」

「はい、エルレイさん」

リゼを抱えて飛び上がり、ロレーナさんの案内で街を離れて森の奥にある家へとやって来た。

「ここがお母様の家じゃ、お母様ただいまなのじゃ」

「失礼します」

ロレーナさんはそう言うと家の中に入って行った、俺達も遅れないよう中に入って行く。

「ロレーナお帰りなさい、その方達はもしかしてロレーナの婚約者になった人かしら??」

ロレーナさんのお母様?どう見てもお姉さんにしか見えないが、エルフとは皆若い容姿をしているからな。

「そうなのじゃ、私の婚約者となったエルレイじゃ」

「まぁそうなのね、私はロレーナの母カミーユと申します、立ち話もなんですからこちらへお掛け下さい」

カミーユさんは俺達をテーブルの席へ座るよう言ってくれた。

「失礼します」

「今お茶を入れますから、少し待ってくださいね」

カミーユさんはそう言うと奥の厨房へと消えて行った。

「ロレーナ、エルフとは皆あんなに若い見た目なのかしら?」

ルリアも俺と同じようにお母様には見えなかったのだろう。

「そうなのじゃ、いつまでも若く美しいのじゃ」

「羨ましいわね、どう見てもお姉さんにしか見えなかったわ」

そうしているとカミーユさんがお茶を携えて戻って来た。

「あらまぁ、見た目は若くてもかなりのおばあさんなのよ」

カミーユさんはそう言って笑っていた、お茶からは爽やかな木の香りが漂って来た。

「冷めない内にどうぞ」

カミーユさんに勧められお茶を頂く事にする、それはほのかに甘くすっきりとした味わいでとても美味しかった。

「このお茶とても美味しいわね」

「そうだな、今まで飲んだことが無い味だがとても飲みやすく美味しい」

「あらありがとう、それは私が栽培している物なのよ、帰りに茶葉を包んであげるわね」

「ありがとうございます、それと自己紹介がまだでしたね、私はエルレイ・フォン・アリクレット、この度縁あってロレーナさんの婚約者となりました、よろしくお願いします」

「はい、よろしくお願いしますね」

俺が自己紹介をするとカミーユさんはにこやかに微笑んでくれた。

「それと、こちらが私の婚約者のルリア、リリー、リゼ、ロゼです、それと領地で留守をしているのが後三人おります」

「まぁエルレイさんはおもてになるのですね」

エルフは一夫一妻の様だからあまりいい印象に受け取られないだろうが、嘘を言う訳には行かないので正直に話した。

「エルレイさん、私は人の世で生活していましたからね、多くの妻を娶る事は理解していますよ、ロレーナも可愛がってくださいね」

「はい、お約束致します」

そうかカミーユさんは人の男性と結婚したから外の事は知っているのか、しかし今更ながら俺の婚約者多いよな・・・。

リゼ、ロゼ、ラウラは婚約者では無いがまぁ似たような物だろう、三人とも家族だと言ったからな、ずっと守って行くつもりだ。

「お母様、渡したい物があるのじゃ」

ロレーナはそう言うと俺の方を見て来た、そうだった櫛を渡さないといけなかった。

「カミーユさん、ロレーナさんを可愛がるお約束の品としてこちらをお贈りします」

俺は大樹の櫛をカミーユさんに差し出した、するとカミーユさんはそれを受け取り微笑んでくれた。

「まぁこれを私に?エルレイさんありがとうございます、ふふっ、櫛を贈られるなんて私がエルレイさんと婚約したみたいね」

カミーユさんはとても喜んでくれていた、その姿は少女の様でとても可愛らしく見えた。

「お母様、エルレイは私の婚約者じゃ、譲る訳には行かないのじゃ!」

「勿論わかっていますよ、私が愛した人はロレーナのお父様だけですからね」

そう言うとカミーユさんは少し寂しげな表情を見せた。

「それと、こっちはロレーナさんに」

俺はロレーナさんに先程買ったペンダントを渡した。

「私にもあるのか、エルレイ、ありがとうなのじゃ」

ロレーナさんは早速ペンダントを着け、何度も見て喜んでいた。

「エルレイさん、私が人を愛した事でロレーナには苦労をさせてしまっています、どうかロレーナを幸せにしてあげてください」

「お母様、私は別に苦労などしていないのじゃ、お父様とお母様の子供でよかったのじゃ、エルレイともこうして出会う事が出来たから何も問題無いのじゃ」

「そうでしたね、ロレーナありがとう」

カミーユさんは隣に座っていたロレーナさんを抱きしめ泣き出してしまった、ロレーナさんがなだめてカミーユさんが泣き止むまで待つ事しか出来なかった。

「皆さん恥ずかしいとこをお見せしてしまって、ごめんなさいね・・・」

「いえ構いません、私達はこれで失礼しますね」

「またいつでもいらしてくださいね」

カミーユさんは茶葉を包んで渡してくれた後、俺達が飛び去るまで見送ってくれた。

城の前に降り立つとソフィアさんが出迎えてくれた。

「皆様お帰りなさいませ、精霊が戻ってきております」

ソフィアさんの上にミルとウィルが仲良く飛んでいた。

「ウィル、お帰り」

「うん、ご主人様ただいま、いっぱい遊んでもらったよ」

「それは良かった、では帰るとしようか」

「うん、分かった」

ウィルはそう言うと姿を消した、ウィルは今までにないくらい元気になっていたな、ここに来た時は遊ばせてやる事にしよう。

「ソフィアさん、それとミル、ありがとう」

「ミルも喜んでいる様なので、こちらとしても良かったです」

「久しぶりに遊んだからねー、とーっても楽しかったよ」

「ソフィアさん、今日はこれで帰ります、用事は特に無いですよね?」

「はい、ありがとうございました、何かあった時にはこちらから連絡いたします」

「はい、お願いします」

「ではミル、皆様を贈りますよ」

「はーい」

「ロレーナさん、また来ますので」

「いつでも来るといいのじゃ」

ロレーナさんと別れソフィアさんに結界前まで見送って貰いリアネ城へと戻って来た。

「俺はアドルフに報告に行って来るよ」

「行ってらっしゃい」

ルリア達と別れてアドルフがいる執務室に入り席に着く。

「エルレイ様、お帰りなさいませ」

「アドルフただいま、変わりは無かっただろうか?」

「はい、ございません、エルレイ様の方はどの様になりましたでしょうか?」

「戦争に向けた準備は一通り終わった、後は連絡を待つだけだ」

「承知致しました、それでルフトル王国へは通わなくてよろしいのでしょうか?」

「そうだ、やる事があれば今の内に言ってくれ」

「はい、では昨日申し上げた、闘技場の建設予定地の整備をお願いいたします」

「分かった」

「それとブルーモスの件ですが、以前開拓した農地の一部を使って試験的に行う事に致しました」

「そうか、ありがとう」

「孤児たちを集め教育する場所に関してですが、現在貴族街の一部の建物を改装して準備している所です、人員に関してはまだ探している段階です」

「それに関してだが、教育する対象を一般の子供にまで拡大できないだろうか?」

「それは以前話していた、お金を頂いて教育するという事でしょうか?」

「いや、あれから考えたのだがお金を払ってまで子供に教育をする余裕が無いだろうと思ってな、無料で読み書き計算まで教える事は出来ないだろうか?」

「そうですね、孤児達を集めて教育するわけですから、同じ場所で教えれば手間はかかりませんので可能かと思います、ただ今用意している施設では手狭になるかも知れません」

「その場所は孤児の生活の場所として、教育する建物を分けてはどうだろうか?」

「それならば可能かと思います」

「そうしてくれ、それとは別に魔法と剣術を教える所は有料で出来るかどうか検討して見てくれ」

「剣術もでしょうか?」

「闘技場を作る訳だから剣術を習いたい子供も出て来るだろう」

「確かにその通りでございますね、承知しました」

「他に何かあるだろうか?」

「ございません、エルレイ様、今日はお休みいただいて結構です」

「そうか、では休ませて貰う事にするよ」

「はい、お疲れ様でございました」

アドルフが優秀で助かるな、俺が意見を言うだけでそれをすべて実現してくれる、俺一人でやろうとするととてもじゃないが出来ないな。

俺が出来る事と言ったら土木作業だけだ、明日はしっかりとやる事にしよう。

夕食後部屋で寛ごうとしているとルリアに呼ばれた。

「エルレイ、こちらに来て座りなさい」

何か気に障る事でもしただろうか?全く身に覚えが無いな、あっ今日買った物を渡していなかったな。

俺は座る前に収納より今日買った物をテーブルに並べた。

「ルリア、すまない、忘れていたよ」

「これもだけどそうじゃないのよ、とにかく座りなさい」

「はい」

俺はルリアに言われるがままソファーに座った。

「今日カミーユさんに紹介する時リゼとロゼも婚約者として紹介したわよね、いつから婚約者になったのかしら?」

あー確かにメイドとしてではなく婚約者として紹介したな、ルリアが怒るくらい不味い事だったのだろうか?

俺としてはリゼもロゼもラウラも婚約者だと思っていたのだが・・・。

「ルリア、駄目だったのだろうか?俺としてはリゼもロゼもラウラも大切な家族で婚約者だと思っていたのだが・・・」

「それはエルレイが思っていた事でしょ、ちゃんとリゼ、ロゼ、ラウラにその事を伝えたのかと言ってるのよ」

なるほど、確かに家族だとは言ったが婚約してくれとは言って無いな・・・。

リゼは期待の眼差しを俺に向けて来ている、ロゼはいつも通りに見えるがやや顔が引きつっているな、ラウラは俺が何を言うか不安そうな表情をしている。

ここは真剣に答えないと駄目だな、冗談を言う余裕は無い。

「リゼ・・・ロゼ・・・ラウラ・・・俺と婚約してくれるか?」

俺は一人ずつゆっくり目を見つめてから名前を呼んだ。

「「「はい、ありがとうございます」」」

三人とも目に涙を浮かべて喜んでくれた。

「リゼ、ロゼ、ラウラ、おめでとう」

祝福するルリアの目にも涙が浮かんでいた。

「リゼ、ロゼ、ラウラ、おめでとうございます」

リリーはそう言うとリゼとロゼを抱きしめて共に泣いていた。

「うむ、ラウラおめでとう」

ヘルミーネはラウラを抱きしめていた。

「リゼ、ロゼ、ラウラ、おめでとう」

アルティナ姉さんは祝福した後なぜか俺の所にやってきて隣に座った。

「エルレイ、お姉ちゃんも言われて無いんだけどなぁ~」

アルティナ姉さんはそう言って体を寄せて来た、アルティナ姉さんに婚約してくれと言って無かっただろうか?

よく覚えて無いな・・・まぁ二度言った事になっても構わないか。

「アルティナ姉さん、俺と婚約してください」

「エルレイ嬉しい!」

アルティナ姉さんは横から俺を抱きしめて来た。

「エルレイ、今日から私の事は姉さんと呼ばないでね」

「いや、でもそれは・・・」

アルティナ姉さんを姉さんと呼ばなくなるのは姉弟では無くなった様で寂しい気がする。

「婚約したのだからお姉ちゃんじゃないのよ」

「それはそうかも知れないけど、アルティナ姉さんとは姉弟のままでいたいのだけど・・・」

「もうしょうがないわね、じゃぁエルレイと結婚するまではお姉ちゃんでいてあげるわ」

「アルティナ姉さん、ありがとう」

俺はアルティナ姉さんを強く抱きしめた。

「エルレイ、アルティナと抱き合ってるところ悪いけど他にも婚約した人がいるのよ!」

ルリアに言われて気が付いた・・・そっとアルティナ姉さんを離す。

「エルレイ、三人の所に行ってあげなさい」

アルティナ姉さんも俺の事を離してそう言ってくれた。

「アルティナ姉さん、行って来るよ」

リゼ、ロゼ、ラウラの三人を一人ずつゆっくり時間をかけて抱きしめた。

その後ルリア、リリー、ヘルミーネも抱きしめてあげた。

「ところでリゼ、ロゼ、ラウラの三人はメイドをやめて貰った方が良いのだろうか?」

俺と婚約した訳だから今まで通りメイドのままと言う訳には行かないよな。

「エルレイ様、私はこのままで構いません」

「私も今のままで良いです」

ロゼとリゼはメイドのままがいいのか・・・。

「エルレイ様、私も使用人のままで構いません」

ラウラもそうなのか。

「エルレイ、結婚するまでは今のままがいいのよ、結婚後は流石に使用人のままと言う訳には行かないけど」

「そうなのか、俺としては三人も同じようにした方が良いと思ったのだが?」

「エルレイ、こう言うのは嫌なのだけれども、三人はエルレイと身分が合わないのよ、だから対外向けに今のままで行かないと問題が起こるのよ、結婚も三人とは出来ないの、妾として受け入れるしか無いわ」

ルリアは三人を大事に思っているから本当はこんなこと言いたくなかったのだろう。

「ルリア、すまない、嫌な事を言わせてしまった・・・リゼ、ロゼ、ラウラ、すまないが今のままでお願いする、しかし三人を他の皆と同じように大切に思っている事は俺の本心だから覚えていてくれ」

「「「はい」」」

「しかし、今はいいが将来信用できるメイドを雇う必要があるな」

「そうね、しかしそう簡単には見つからないわよ」

俺達には秘密が多いからな、今度来るロレーナさんの事もあるし信用出来る人となるとかなり難しいな。

「エルレイ様、それにはご心配御座いません、私が信用できる使用人を連れてまいります」

ラウラさんがそう言ってくれた、ラウラさんはソートマス王城で勤めていたから信頼できる人に伝手があるのだろう。

「分かった、ラウラにお願いするよ」

「はい、すぐには無理ですが近い将来には必ず」

「結婚するまでにはまだ三年以上あるから焦る必要は無いよ」

「承知しました」

「さて、明日皆は特に出かける用事は無いが、いつでも戦争に行けるよう準備だけはしておいてくれ、それとロゼは明日俺と闘技場の用地整備だ」

「承知しました」

「では寝ようか」

「「「おやすみなさい」」」


翌朝俺は出かける前、久しぶりに子供たちの様子を見る為に、ヘルミーネ、アルティナ姉さん、ラウラ、それにロゼを連れて子供たちの部屋を訪れた。

「皆元気にしていたか?」

「「「はい」」」

皆は以前のガリガリに痩せていた頃とは違い、顔にはつやが出て身長も伸びている様だった。

「アンナ、エレン、マリーにお土産だ」

俺は髪飾りを一人ずつ渡して行った。

「綺麗~」

「エルレイ、ありがとう」

「エルレイ様、ありがとうございます」

三人とも嬉しそうに受け取ってくれた。

「俺達には何か無いのかよ?」

「エルレイ俺には~?」

「エルレイ何かくれよ~」

「俺にも~」

「俺も~」

五人の男どもが俺に寄ってたかって来た。

「何も無いぞ、お前たち男から何か貰って嬉しいのか?」

「それはそうかも知れないけど・・・」

「けど貰えるものは何でも貰う」

「そうだそうだ」

「なんかくれ~」

「よこせ~」

これは何か上げないと収まりそうに無いな・・・。

「分かった、何か買ってやるが今は無いからな、お前たち何か欲しいものあるのか?」

「それならエルレイ、剣をくれ!」

「俺も剣が欲しい」

「何でも切れる剣が欲しい」

「剣をくれ~」

「剣、剣」

皆剣が欲しいのか、しかしそれは簡単にはあげられないな、ついこの前まで孤児だったこの子達が剣を正しく扱えるとは思えない。

「分かった、剣は買ってやろう、但し条件がある、トリステンが帯剣してもいいと許可を出した時に買ってやることにする」

「「「え~」」」

「お前たちは剣を習い始めたばかりだろう、そんな奴に剣を持たせても危ないだけだ」

「「「そんな~」」」

「では、この中で誰が一番剣が上手いのか?」

皆は顔を見合わせるとオスカルが一歩俺の前に出て来た。

「俺です」

「そうか、オスカル、今から俺を殴る事が出来たら剣を買ってやろう」

「本当にいいのか?俺は喧嘩じゃ誰にも負けないぞ」

「あぁ構わないぞ、その代わり殴れなかったら先程の条件を飲んでもらう」

「分かった、じゃぁ行くぞ!!」

オスカルはいきなり俺に大振りで殴りかかって来た、俺はそれを軽く避け少し離れる。

オスカルは空振りした事を気にせず次々と殴りかかって来た、なるほど、喧嘩が強いというのはその通りなのだろう、場慣れしている感じだ。

しかし喧嘩の領域は出ていない、つまり足元が疎かで上半身だけで殴りかかってきているから、俺は足を使って避けるだけで済む。

攻撃が当たらない事に焦りだしたオスカルは、俺を捕まえようと両手を伸ばし体当たりをして来た、俺はその手を掴んで引き込み足払いをしてオスカルを転ばせた。

オスカルは体当たりの勢いのまま転がって行き、壁に当たって止まった。

「痛たたたたっ」

「オスカル、まだやるか?」

オスカルはゆっくりと立ち上がって来た。

「いや、降参する」

「と言う事でやはりお前達に剣を買ってやることは出来ない、トリステンに許可を貰った時良い剣を買ってやろう」

「エルレイすげー、魔法使いじゃなかったのかよ」

「エルレイすごい」

「エルレイ様格好いい」

「俺は確かに魔法使いだが、剣の訓練も仕事が無ければ毎日やっているぞ」

「そうなのか・・・」

「そう言う事でお前達仕事を頑張ってくれ、ロゼ、行こうか」

「はい」

「では先生方後よろしく」

「任せるのだ」

「お姉ちゃん、エルレイの格好いい所見せて貰ったから頑張っちゃうからね」

「お任せください」

俺はロゼを連れて部屋を出て闘技場の建設予定地に向けて飛んで行った、もちろんロゼは抱きかかえている。

現場近くへ降り立つとそこは開けた場所だったが、草木が一面に生い茂っていた。

「整地する前に刈り取らないといけないな」

「そうですね、どの様に致しましょう」

「まず根元を切り放し、ある程度切り取ったら、風で一か所に集めて燃やす事にしよう」

「分かりました、私はこちらからやって行きます」

俺はリゼと反対側の草木を切り倒して行き、ある程度したら竜巻を使い集めて、ロゼが集めた分と合わせて高温で一気に燃やした。

その作業は思っていたより手間が掛かっていた、刈り取らないで燃やした方が早いのだが、それをやると一気に燃え広がる可能性が高くて出来ない。

予定の半分ほど終わった所で昼食の為休憩する事になった、いつもの様にテーブルと長椅子を作りそれにロゼがテーブルクロスを掛け食事の準備をしてくれた。

そして二人でゆっくりと昼食を楽しむ。

「作業はきついが、ロゼと二人で摂る昼食は良い物だな」

「そうですね、ですが皆様に悪いような気が致します」

「まぁそうだな、他の皆も遊んでいる訳では無いからな、しかしこう言うのは楽しんだ方が良いんだよ」

「そうですね、私も楽しむ事にします」

俺とロゼは昼食の時間を楽しんでいた、周りは草木ばかりであまり良い物では無かったが、ロゼと二人で過ごす事は少ないからな。

昼食も終わり食後のお茶を楽しんでいると、誰かが馬に乗って近づいて来た。

「エルレイ様」

「誰だろう、グールが何も言わない所を見ると敵では無い様だが」

『あぁ、敵意は全く無いぜ』

『そうか、ありがとう』

その人は年老いた男性で馬を降りてこちらへやって来た。

「すみません、わしは近くの村に住むブリスと言う者じゃが、ここに魔法使いがいると聞いてやって来たのじゃ」

「えぇ、私は魔法使いですが、どうかなされましたか?」

「わしの村に酷い怪我人がおってな、それを治療して貰えないじゃろうかと思って来たのじゃ」

「構いませんよ、怪我が酷いのなら今から向かいましょう」

「おぉ、それは助かります、では馬で運びますから載って貰えないじゃろうか」

「いえ、私は飛んでいきますので、ブリスさん案内お願いします」

「流石魔法使い様じゃ、では急いで向かいます」

ブリスさんは馬へ乗り込み、元気よく馬を走らせた。

俺はロゼを抱えてそれを追いかける、結構お年に見えたが元気に馬を走らせる姿はとても若々しかった。

しばらく行くと村が見えて来て、ブリスさんは一軒の家の前で馬を止めて降り、俺もそこへ降り立った。

『マスター、以前襲われた時に感じた魔力の持ち主が家の中にいるぜ』

グールがとんでもない事を念話で言って来た。

『ロゼ、障壁を張り最大限の注意を!!』

『はい、エルレイ様どうしたのでしょう?』

『以前俺を襲って来た奴が家の中にいるとグールが言っている』

『承知しました』

ロゼはいつもにも増して真剣な表情で身構えした、それもそうだろう、相手はラウニスカ王国の暗殺者なのだから、俺も障壁を最大限強化して張った。

「魔法使い様、怪我人は家の中ですのでお願いします」

ブリスさんはそう言って俺達を家の中へ招いていた。

『グール、本当にブリスさんは敵意は無いのか?』

『あぁ全く無いぜ、家の中からも敵意は感じられねぇ』

『そうか、周囲にもいないんだな』

『いねえな、来たら教えるぜ』

『頼んだ』

『ロゼ、周りに敵意ある人物はいない様だ、家の中に入るが警戒は怠らない様にしてくれ』

『はい』

「分かりました」

俺は警戒しながら家の中へと入って行った。

部屋の奥へ行くとベッドに一人の若い女性が横になっていて、目は閉じていて、とても苦しそうにしていた。

「今朝わしの畑の近くで怪我をして倒れておったのを、ここに運んできて寝かせておったのじゃ、この村には治療出来る魔法使いがいないから街まで行く所じゃったのだ」

なるほど、俺は怪我人を見ようとしたがグールの念話でためらってしまった。

『マスターを襲ったのはこいつだぜ』

『リゼ、こいつが俺を襲った犯人だ』

リゼはとても驚いた表情をしていた。

「ニナ・・・」

「ロゼ、知り合いか?」

「はい」

『詳しい事は後でお話致しますが、まずは彼女を確保する事が先です』

『そうだが、治療しないといけないだろう』

『いえ、治療は危険です、彼女は暗殺者ですからこのまま拘束致しましょう』

『分かった』

「ブリスさん、私は新しくこの地の領主となったエルレイ・フォン・アリクレットです、私では彼女の怪我を治療する事が出来ないので、それが出来る人の所に連れて行きたいと思うのですがよろしいでしょうか?」

「領主様!!、ええ、それは構いませんのじゃ、よろしくお願いします」

『アドルフ、緊急事態だ』

『エルレイ様、何事でしょう』

『暗殺者を拘束した、そちらに連れて行くから牢屋の準備を頼む』

『畏まりました、では玄関へお越しください』

『分かった』

「ブリスさん、私達は魔法で一瞬で城まで向かいます、どうか今日見た事と彼女の事は忘れてください」

俺は金貨を数枚ブリスさんに渡して口止めをした、魔法の事はどうでも良かったのだが、暗殺者の事でブリスさんが被害を受ける可能性がある。

ブリスさんは何度も首を縦に振っていた。

暗殺者の手足と体をストーンウォールを変形させて拘束してから転移で城の玄関へ移動した。

転移後、暗殺者が落ちない様飛行魔法を掛け浮かせてある。

『リリー、今何処にいる?』

『エルレイさん、今訓練場にいます』

『分かった、ロゼを迎えにやるから待っていてくれ』

「ロゼ、訓練場にいるリリーを連れて来てくれないか?」

「承知しました」

ロゼは飛び上がりリリーを迎えに行ってくれた、暗殺者は目を閉じたまま苦しんでいるが起きてはいない。

そこにアドルフと連絡を受けたのだろう、トリステンも数名の部下を連れてやって来た。

「はぁはぁ、エルレイ様・・・お待たせしました」

「アドルフ、急がせてすまなかった」

アドルフは走って来たのだろう息を切らせていた、

「いえ・・・それでそちらが暗殺者ですか」

「そうだ、今魔法で拘束しているし、どうやら意識も無い様だ、このまま牢屋まで運ぶから案内してくれ」

「畏まりました、トリステン頼みます」

「承知しました、エルレイ様こちらです」

トリステンが歩き出した所、リリーを連れたロゼもやって来た。

「エルレイさん、お待たせしました」

「リリーも付いて来てくれ」

「はい、分かりました」

「エルレイ様、もうしばらくしてルリア様とリゼもこちらにやって来ます」

「そうか、トリステン少し待ってくれないか」

「承知しました」

暫くするとルリアがリゼを重そうに抱えて飛んできた。

「エルレイお待たせ、リゼはこんなに重かったのね」

「ルリア様、申し訳ございません、しかし重くは無いですよ」

リゼが何やら言っているが今はそんな暇は無い。

「トリステン、行ってくれ」

「はい」

トリステンの後を付けて行く。

「リゼ、この顔覚えていますか?」

ロゼがリゼに暗殺者の顔を見せて聞いていた。

「ニナ!」

リゼも知っている様だな。

「リゼ、グールの話によるとこの暗殺者が俺とリゼを襲った犯人だという事だ」

「そんな・・・」

リゼは落ち込んだ表情をしている、しかし今はこの暗殺者を優先しリゼとロゼには後で話を聞く事にしよう。

トリステンと共に警備隊の詰め所の地下にある牢屋へ辿り着き、暗殺者を中に入れベッドの上に寝かせた。

「ロゼ、彼女が危険な物を持っていないか調べてくれないか?」

「承知しました」

「エルレイ様、それでしたら私達が行います」

トリステンがそう言ってくれるが彼女は身体強化を使うから、拘束しているとはいえ安心できない。

「トリステン、この暗殺者はラウニスカ王国の者でとても危険だ」

俺がそう言うとトリステンは目を見開き驚いていた、流石にお隣の国だから知っているのだろう。

「承知しました、この暗殺者の取り扱いは細心の注意を払います」

ロゼが彼女の体を調べてナイフや小さな瓶等取り出して来た。

「エルレイ様、これですべてです」

「ロゼありがとう、トリステン、これを調べて貰えないだろうか?」

「分かりました、お預かりします」

トリステンは押収品を受け取りそれを部下に預けて指示を出していた

「鍵を閉めてくれ」

「はっ」

俺がそう言うとトリステンの部下が牢屋の前に来て鍵をかけた。

「ではリリー、彼女の治療を行ってくれ」

「エルレイさん、分かりました」

リリーが前に出て治療しようとした所アドルフが止めた。

「お待ちください、暗殺者を治療してやる必要はございません」

「俺もそう思うが彼女から情報を聞き出さないといけない、それに治療をしないとこのまま死んでしまうだろう」

彼女はここに連れてくるまで苦しんでいるが意識を取り戻してはいない、多分だが毒に侵されているのでは無いだろうか?

「そうれはそうなのですが・・・」

「アドルフ、すでに牢屋の中に閉じ込めている、彼女が暴れ出したとしても殺す事は容易だ」

「・・・承知しました、情報は必要です、お止めして申し訳ございません」

「いや、構わない、リリーお願いするよ」

「はい」

リリーは彼女の魔力を見て状態を把握すると水球を作り、それに治癒の魔法を掛けて彼女の上に移動させ、浸透させるようゆっくりと水球を彼女の体に落として行った。

「エルレイさん、終わりました」

「リリーありがとう、下がっていてくれないか?」

「はい、分かりました」

「ロゼ、リリーの事頼む」

「承知しました」

リリーはラウニスカ王国の元王族だ、この暗殺者にリリーの事に気が付かれると不味い、それにこの事はアドルフも知らない事だろう出来るだけ秘密にしておきたい。

リリーの治療が効いたのだろう、暗殺者はもう苦しんでいる様子は無く安らかな寝息を立てている。

本来であれば怪我人だったから寝かせていてあげたいが、彼女は暗殺者だ、無理にでも起きて貰おう、俺は水弾を彼女の顔に当てて起こす事にした。

「おい、起きろ!!」

水弾を数発当てようやく彼女は目を覚ました。

「ここは・・・はっ!!」

彼女は目を覚ますと自分の状況を認識して動こうと体を動かそうとしていた、しかし手足を拘束されていて動く事は出来ない。

「お前は拘束されて牢屋へ入れられている、無駄な抵抗はせず、こちらの質問に答えてくれ」

彼女は拘束から抜け出せないと理解したのか、力を抜いてベッドに横たわったまま顔をこちらに向け周囲を見渡した。

「リゼ!あたいだ、助けてくれないか!」

彼女はリゼを見つけるとそう懇願してきた。

「リゼを知っているという事は、お前はラウニスカ王国の暗殺者で間違いないな?」

「・・・そうだ、だが今は違う!」

彼女は暫く考えたのちそう答えた。

「どう違うのだ?それとなぜこの地にいたのだ?」

「・・・それは」

彼女は俺の事を見て話すのをためらっている様だ、そうだろうな俺の事を殺しに来たのだからな。

「お前が俺をラノフェリア公爵邸で殺しに来たことは知っている、だから隠さず全て話してくれ」

俺がその事を告げると彼女は驚きの表情を見せた、それはそうだろう、彼女は暗殺に来た時布を巻いていて顔を見られているとは思っていないのだから。

もちろん顔は見ていないし、グールの魔力が同じだという証言のみだけど、グールが嘘をつくとは思えない。

「・・・分かった、あたいが知っている事すべて話すから助けてくれ!」

「助けるかどうかはお前が話した内容による」

彼女は暫く考え答えを出した。

「・・・それで構わない、あたいはラウニスカ王国の暗殺者で、以前お前の暗殺を依頼され使用人として屋敷に入り込み、結婚式の時にお前の顔を確認した。

その時リゼとロゼがお前の使用人としている事を知った、その上で深夜暗殺に向かった訳だが、お前も知っての通り見事に返り討ちに合い任務は失敗。

ラウニスカ王国の暗殺者の任務失敗は死を意味する、あたいは死にたくないから必死にその場から逃げ出したのだが昨夜追ってに見つかり何とか振り切った物の、毒を受け今に至る訳さね・・・」

なるほど、彼女が嘘をついていないとすると、彼女を追っているラウニスカ王国の暗殺者がまだこの領内にいるという事か。

「お前を追って来た暗殺者は何人いる?」

「それは分からないさね、でも昨夜あたいを襲ってきたのは一人だった、二人以上なら逃げきれないからね・・・」

確かリゼも二人が相手だと厳しいと言っていたな。

「その追手は誰だか分かるか?」

「それは分からない、あたい達暗殺者は常に布を顔に巻き、仲間内でも顔を見た事がある奴はいないさね」

「そうか、それでなぜこの地に来たのだ?ここはラウニスカ王国から近い、逃げ込む場所として適切では無いと思うが」

「それはリゼとロゼに助けて貰おうと思ってここに来たのさね・・・」

・・・それは虫が良すぎるのでは無いだろうか?

「一度殺しに来た相手に助けを求めるのは無理だと思わないのか?」

「殺しに来たのはそうだけど、それは任務であって今はお前を殺す理由は無いのさね!」

彼女にしてみればそうなのだろうが、俺としては彼女をすんなり受け入れる訳には行かない。

「お前がここに来た理由は分かった、それとは別に俺を殺す依頼をしたやつの事を教えてくれ」

「それは知らない、あたい達は上から命令されて実行するだけで、依頼者から直接受けることは無いのさね」

まぁそうだろうとは思っていたが。

「それは分かった、ではお前を屋敷に引き入れたやつの事は分かるか?」

「名前は分からない、顔は覚えているがあたいが毒殺したからもう生きてはいないさね」

「そうか、それも上からの命令に含まれていたのか?」

「そうだ、お前の暗殺とあたいを引き入れた者の毒殺がその時の命令だったのさね」

やはり引き入れた男爵の上の存在が居る訳だな。

「分かった、それでお前を追って来た者はここに来ると思うか?」

「間違いなく来ると思う、あたいの死体を確認するまで諦めない、さっきも言ったように任務失敗はその者にとって死を意味するさね」

という事は追手をどうにかしないと俺達も安心できないな、ブリスの村で消息を絶った訳だから追手はそこを中心に探すだろう、転移でここに来ているとは思わないだろうからな、しかしそうなると追手を捕らえる事は難しくなるな・・・。

「ところでお前の名前はニナで合っているのか?」

「そうさね」

「それではニナ取引をしよう」

「取引の内容は何さね?」

「ニナの安全は俺が保証してやるし仕事も住む場所も提供しよう、その代わりニナには追手を誘き寄せる囮になって貰う」

ニナは暫く考えてから俺に聞いて来た。

「・・・命の保証はしてくれるのさね?」

「もちろん追ってからも守ってやる」

「断る事は出来るのさね?」

「もちろん断って貰っても構わない、その場合お前を殺して倒れていた場所に置いて来るだけだ」

酷いとは思うが暗殺者に情けを掛けてやるつもりは無い。

「・・・分かった、あたいに選択肢は無いんだ、囮にでもなんでもなってやるよ、その代わり命の保証だけはしてくれさね!」

「もちろん保証してやる、ではこれから拘束を解いてやる、暴れたり逃げようとしたらその時は遠慮なく殺すからな!」

俺は威圧を込めてニナに言った、これからニナには逃げられない様常に飛行魔法を掛けて置こう。

「エルレイ様、お待ちください、もしかしてエルレイ様自ら追手を捕らえに行くおつもりですか?」

アドルフは俺がそうすると分かった上で聞いて来ている様だった。

「他に誰が捕まえられると言うのだ?トリステンやれるか?」

「そうですね、捕まえろと命令されれば全部隊を投入しなければならないでしょう、しかしそうすれば敵に逃げられる可能性が高くなります、それでよろしければいつでもご命令ください」

トリステンが言う様に部隊で捕らえるとなると大人数を動員しなければ難しいだろう、身体強化を使われては普通の人で捕まえる事は無理な事なのだから。

「アドルフの心配は分かるが、追手を放置したままだと俺達も安心して過ごす事が出来ないからな」

「確かにその通りなのですが・・・分かりました、何度も言いますがエルレイ様がいなくなってはこの領地は終わってしまいます、くれぐれも用心してください」

アドルフも内心では俺が対応するしか無い事は分かっているのだろう、俺を心配してくれるアドルフの為にも無事帰ってこないといけないな。

「分かった、俺はまだ死ぬわけにはいかないからな、必ず戻って来るよ」

「よろしくお願いします」

アドルフも納得してくれた様だしニナの拘束を解いた。

「ニナ治療はしたが動けるだろうか?」

ニナは起き上がり体の調子を確認していた。

「あぁ問題無い、治療してくれてありがとうさね」

「ルリアは皆を連れて戻ってくれ」

「分かったわ、エルレイ気を付けてね」

「リゼ、それとトリステンは数名の部下を連れて着いて来てくれないか?」

「はい」

「承知しました、しかし数名で構わないのですか?」

「あぁ、トリステン達にはニナの護衛を頼みたい」

「承知しました、精鋭を連れてまいります」

トリステンはそう言うと部下に指示を出し、それを聞いた部下が地下から出て行き、暫くすると数名引き連れて戻って来た。

ルリア達もすでにここからいなくなり、ここにいるのは俺とリゼにトリステンと数名の部下それにアドルフだけとなった。

「では牢屋を開けてくれ」

「はっ」

「ニナ、以前戦ったから分かっていると思うが俺にお前の攻撃は効かないし、常にニナに飛行魔法を掛けているから逃げられないぞ」

俺はそう言ってニナを十センチほど浮かせた、ニナはそれに声を出して驚いていた。

「わ、分かった、もう逃げないしお前を襲ったりしないから降ろしてくれさね!」

「では、今から先程いた村まで移動する、アドルフ後の事は頼む」

「はい、エルレイ様お気をつけて」

俺がニナの手を握ろうとするとリゼに止められた。

「エルレイ様、ニナとは私が手を繋ぎます」

「分かったお願いする、トリステン達も手を繋いでくれ」

皆が手を繋いだのを確認して先程いた村まで転移した。

ニナは驚いた様子で辺りを確認していた。

「ニナ、お前が倒れていたのを助けてくれた人の所に連れて行くから、お礼を言ってやってくれ」

「分かったさね・・・」

ニナはしきりに敵がいないか周囲を確認していた。

「大丈夫、敵はこの近くにはいないから安心しろ、それに先程言ったようにニナは守ってやる、トリステンはニナの安全を第一に考え行動してくれ」

「承知しました」

トリステンは部下に指示を出しニナを取り囲む様にした。

「では行こうか」

俺はブリスさんの家に向かって歩き出し、他の皆もそれに着いて来てくれた。

『グール、異常があったらすぐ知らせてくれ』

『マスター分かってるぜ、今の所問題は無い』

ブリスさんの家の前に着き家の中に声を掛けると、ブリスさんが出て来てくれた。

「ブリスさん、先程はお騒がせをして申し訳ありませんでした、ブリスさんに助けて貰った彼女も治療が間に合い元気になる事が出来ました」

「おぉ、それは良かったのじゃ」

「あたいを助けてくれてありがとうさね」

ニナもお礼を言って頭を下げた。

「すっかり元気になった様じゃな、よかったよかった」

「ブリスさん、私達はこれで失礼します、誰か訊ねてきたら私達はブリスさんとお会いした場所にいますのでお知らせください」

「領主様、分かりましたのじゃ」

少し露骨に情報を出した感じはするが構わないだろう、命令を受けた者は任務失敗は死に繋がるのなら罠だと疑っても襲ってくるだろう、それだけの能力もあるしな。

「皆少し遠いが歩いて行く、その方が敵も発見しやすいだろうしな」

俺は笑って言うとトリステンはため息をついていた、俺達は街道をゆっくりと歩いて行った。

「ニナ、敵は夜に襲ってくるのだろうか?」

「多分そうだと思う、あたい達の任務は夜が多かった、しかし昼が全く無いと言う訳では無いのさね」

「そうか、ところでお前の国は今戦争中では無かったか?」

「そうだ、今回お前を殺す任務を与えられていなかったら、あたいも戦争に行ってただろう、正直助かったさね」

「やはり戦争が不利だと言うのは本当の事なのだろうか?」

「詳しい事は分からない、しかし戦いにくい相手であるのは間違いないのさね、あたい達は地上では最強だが相手は空を飛んでいるからね」

空を飛んでいる?敵は全員飛行魔法を使えるという事だろうか?

「敵は魔法で空を飛び攻撃してくるのだろうか?」

「いや、グリフォンと言う魔物を飼育し手なずけているのさね」

「魔物がいるのか!」

「よく分からないが、昔からあの国はグリフォンを飼っているらしいのさね」

魔物はクロームウェルによってこの大陸から排除されたのでは無かったのだろうか?

『グール、魔物はすべて排除したのでは無かったのか?』

『少し違うな、地上にある吸魔石は排除した、生き残っていた魔物を繁殖させることは不可能では無いな』

『そうか、ありがとう』

魔物がいるという前提でいた方が良い様だな、ルフトル王国に攻め込もうとしているリースレイア王国は魔剣をそろえている。

魔剣の材料となる魔石は魔物を倒して手に入る物だからな。

歩くこと数十分、目的の闘技場建設予定地へ辿り着いた。

街道より少し中に入った所で家を取り出し設置した。

「さて、今夜はここで過ごすから皆中に入ってくれ」

俺はそう言ったが皆目の前に現れた家を見て呆然としていた。

「トリステンは俺が収納魔法使える事は知っていなかったか?」

「この前街に出掛けた際見ましたので知っておりましたが・・・これほど大きなものを収納できるとは思っておりませんでした」

この前ルフトル王国に向かい際に作った二棟の家も入っているのだが、黙って置いた方が良さそうだな。

「あたいの攻撃が効かなかった事以上に驚いたさね」

ニナも驚きの声を上げていた。

「とにかく中に入ろう、リゼ、夕食の準備を頼む」

「畏まりました」

夕食の材料を取り出しリゼに渡した。

「皆ソファーに座ってくれ、この家についてと今夜の事を話そう」

「分かりました、お前達も座っていいぞ」

トリステンは遠慮して座らない部下に着席するよう促した。

「ではこの家だが中から施錠する事が出来、通常の攻撃では簡単には壊れない様に出来ている、それとこの人数分のベッドもあるから敵が来るまで交代で休憩してくれ」

「これは私達の兵舎より豪華で安全ですね・・・」

「そうだな、俺達が戦場で安心して眠れるように作った物だからな」

「はぁ・・・」

トリステンは呆れた様子でこちらを見て来た。

「だから夜の警備は家の中から出ないよう行ってくれ」

「承知しました、敵が来た場合はどうされるのでしょう」

「俺とリゼで迎え撃つ、トリステンは家の中にいてニナを守っていてくれ」

「普通逆だと思うのですが、まぁ私達に出来る事はそれくらいですので承知しました」

「後はニナ、決してこの家から出ない様に、約束が出来ないならまた拘束させて貰う」

「分かっている、決して逃げないから拘束しないでほしいのさね!」

ニナは必死だ、あの拘束はきつかったのだろうか?まぁ手足は全く動かないよう固定していたからな。

そうしているとリゼが料理をテーブルに並べ始めた、リゼの料理は豪華では無いが美味い。

全ての料理が並べられてリゼが席についたので頂く事にする。

「頂きます」

ニナはお腹が減っていたのだろう、勢いよく食べ始めた、昨日の夜に倒れてから何も食べていなかったのだろうからな。

トリステンの部下たちも最初遠慮していたものの、それを見て食べ始め、皆口々に美味いと言っていて作ったリゼも喜んでいた。

食事が終わり俺は先に休ませて貰う事にした、徹夜出来ない体だからな・・・。

「トリステン、先に休ませて貰う、皆も交代で休む様に」

「はい、ありがとうございます」

リゼと一緒にベッドに入り休む事にした、トリステン達の前だから一人でと思ったのだが、リゼがそれを許してくれなかった。

今夜は俺を守る意味合いの方が大きいのは間違いないのだろう。

深夜、グールの声で起こされる・・・。

『マスター起きろ!、敵が来たぞ』

『分かった、敵の人数は分かるか?』

『敵は一人だ、周りには他に誰もいねぇ』

「リゼ、起きているか?」

「はい、起きております」

「敵が来た様だ、迎え撃つぞ」

「承知しました」

俺とリゼは起き上がり今に出るとトリステンは起きていた。

「トリステン、敵が来た様だ」

「承知しました、警戒致します」

トリステンは部下に指示を出し休んでいる皆を起こした。

「俺達は外に出たら施錠をしてくれ」

「分かりました、しかし私が危険だと判断した場合助けに行きます」

「頼んだ」

『グール、敵の位置は分かるか?』

『家の正面、百メートル先からこちらの様子を伺っている』

『分かった』

「リゼ、抱えて飛ぶぞ」

「ですが、それでは私が戦えません」

「いや構わない、出来るだけ正面から戦う事はしない」

俺はリゼを抱えて玄関を出て家の上空へ飛び上がった、さて敵はどう動くだろうか、周りは暗く俺達が空に飛んだ事を確認できただろうか?

『マスター、敵は動いたぜ、この家に向かって来ている』

『俺に気が付いたのだろうか?』

『そいつは分からねぇ、だが家の陰に隠れた方がいいんじゃねーのか?』

『そうだな、そうしよう』

グールの指摘を受け家の屋上の裏側に隠れる事にした、ぎりぎり正面が見える位置だが、暗くて敵が何処にいるのかは分からない。

『家の前十メートルまで来て横に回っているぜ、窓から侵入するんじゃねーのか?』

『分かった』

俺は窓がある上空に移動し下を見ると人影を確認する事が出来た、すかさず人影に飛行魔法を掛けて浮かび上がらせると同時に障壁も人影の周りに張り巡らせた。

人影は身体強化を使ってのだろう、凄い勢いで動いてどうにか逃げ出そうと暴れている様だ、しかし飛行魔法で浮かび上がった体は空を切るばかりで逃げる事は出来ない。

俺は十秒数えて人影の前に降りて行った、やはり布を巻き表情を見る事は出来ない。

「お前はラウニスカ王国の暗殺者か?」

俺が問いかけても何も答えず、ナイフを俺に投げて来ていた、それは全て障壁によって遮られ地面に落ちて行く。

空中に浮かび上がった状態では、まともに投げる事も出来ない様だった。

「もうお前は逃げる事は出来ない、素直に俺の問いに答えてくれれば命だけは助けてやろう」

再び問いかけたがやはり返事は無い、しばらく様子を見ていると再び身体強化を使った様で、凄い勢いで暴れ始めたがすぐに動かなくなってしまった。

「マスター、どうやら死んだようだぜ」

「えっ!」

グールの指摘に言葉を失った。

「エルレイ様、身体強化の連続使用で亡くなったのか、それとも毒を飲んだのかも知れません、いずれにしても自殺を止める事は不可能です」

確かに、いくら拘束しても身体強化を連続で使われるのを阻止する事は出来ないな・・・。

一応亡くなった暗殺者の両手足を拘束する、グールを信用していないわけでは無いが念のため拘束した。

そして遺体を玄関前に運び寝かせた。

「トリステン、ニナを連れて出て来てくれないか?」

「しばしお待ちください」

部屋の中からトリステンの声が聞こえ暫くしてニナを連れて出て来た。

「エルレイ様、こいつが暗殺者でしょうか?」

「あぁ拘束したのだが自殺されてしまった、すまないが顔を確認して貰えないか?」

「承知しました」

トリステンは横たわっている暗殺者に近寄り顔に巻いてある布を顔が見える様ずらしてくれた、見た目は男性で苦しんで死んだのか苦悶の表情を浮かべていた。

「リゼ、見覚えはあるか?」

「いえありません」

「ニナはどうだ?」

「ありません」

二人とも知らない様だな。

「トリステン、この遺体はこのまま埋葬して構わないだろうか?」

「エルレイ様、お待ちください、所持品を確認いたします」

「お願いする」

そうだな所持品の確認を忘れていた、トリステンは部下と共に遺体から所持品を取り出し確認していた。

「エルレイ様、確認終わりました、埋葬してください」

この場所は闘技場予定地だから端まで遺体を運び、そこに深く穴を掘り埋葬した。

「ニナ、質問がある、お前たちに命令を下す者が近くに潜んでいたりするのか?」

「分からない、命令はいつも念話が届くだけで、誰かに会って直接命令を受けたことは無いのさね」

「そうか、それならこれ以上ここにいても仕方が無いな、トリステン、帰るとするか」

「承知しました」

俺は家を収納し皆を連れて警備隊の詰め所の前に転移してきた。

「トリステン、ありがとう、皆も明日はゆっくり休んでくれ」

「エルレイ様、ありがとうございます」

「それからニナの面倒はトリステンに任せる、好きなように使ってくれ」

「私がでしょうか?」

トリステンはニナを任せられたことに驚いていた。

「そうだ、ニナを城内に入れる訳にはいかないからな、寝る場所と仕事を与えてやってくれ」

「・・・承知しました」

トリステンは渋々承諾してくれた。

「ニナ、トリステンの命令には従う様に、彼はこう見えてとても部下思いだ、真面目に働けば悪い様にはされないだろう」

「分かった、あたい頑張るからよろしくお願いするさね」

ニナはそう言ってトリステンに頭を下げた。

「リゼ、俺達も帰ろう」

「はい」

『ロゼ、起きているか?』

『はい、エルレイ様どう致しました?』

『問題は解決した、今からリゼと室内に転移するが構わないか?』

『はい、お待ちしております』

リゼを連れ部屋に転移した。

「エルレイ様、お帰りなさいませ」

ロゼが小声で迎えてくれた、皆は気持ちよく寝ている様だ。

「ロゼ、詳しい説明は明日するから寝る事にしよう」

「はい、おやすみなさいませ」

リゼと共にベッドに入るとすぐ眠気が襲って来て意識を失った。


翌朝朝食時、皆揃っているので昨夜の事を説明をする、朝食時にするような話では無いが仕方が無い。

ヘルミーネ、アルティナ姉さん、ラウラの三人はニナの事も知らないから、そこから説明して暗殺者が襲撃、そして撃退した事を告げた。

「エルレイ様、それでニナの処遇はいかがされたのでしょうか?」

アドルフがニナの処遇を尋ねて来た。

「ニナはトリステンに預けて来た、警備隊の方で上手く使ってくれるだろう」

「左様にございますか、それならば安心ですね」

アドルフは俺の返事に心底安堵しているようだった。

「流石に城内に入れる訳には行かないからな」

「エルレイ様なら身辺警護に使うと言い出さないかハラハラしておりました」

「俺はそこまで無謀では無いぞ・・・」

俺がそう言うと皆から白い目で見られた。

「エルレイ、散々危険な事をしておいて誰も信じないと思うわよ」

そこまで危険な事をしてきたつもりは無いのだが・・・。

「まぁニナの事はトリステンに任せたからいいだろう、それでリゼとロゼはニナの事を知っている様だったが、どの様な間柄だったのだ?」

「エルレイ様、ニナとは一緒に訓練を受けた仲です、当時百名程度一緒に訓練を受け、その中から最終的に訓練を乗り越えたのが私とリゼ、それにニナだったのです。

当時は日々減って行く仲間たちを見て怯えて過ごし、生き残ったもので励まし合って過ごしていました。

そんな日々の中、仲良くなったのがニナだったのです、訓練を終え私とリゼはメイドとして仕え、ニナの事はそれ以来知る事が出来ませんでした」

なるほど、しかし百名の中からたった三名しか訓練を乗り越えられないのか、しかもその貴重な人材も任務失敗で始末するとは、やはりラウニスカ王国はまともな国では無いな。

「ロゼ、リゼ、辛い事を思い出せてしまってすまなかった」

「いえ、今幸せですので問題ございません」

「そうです、ニナも生きていましたし気にしないで下さい」

「ロゼ、リゼ、ありがとう」

ロゼとリゼは笑顔でそう言ってくれた。

「アドルフ、この後昨日の続きをやりに行こうと思うが他に何かあるだろうか?」

「いえ、特にございません、整地の方をお願いいたします」

「分かった」

朝食後ロゼを連れて昨日の続きを行い、三日後広大な闘技場を作る平地を作る事が出来た。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ