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公爵令嬢の婚約者  作者: よしの
第一話 アリクレット男爵家
10/27

第九話 領地運営

馬車はラノフェリア公爵別邸に着き、俺とヘルミーネは応接室へと通された、そこには既にラノフェリア公爵様、父上、ヴァルト兄さんが話をしていた。

「ただいま戻りました」

「エルレイ君、丁度いい所に来た、かけたまえ」

「失礼します」

俺とヘルミーネは席に着いた。

「エルレイ君、改めておめでとう」

「ありがとうございます、これも偏にラノフェリア公爵様のおかげです」

「いや、今回はそこまで関わってはいないよ、エルレイ君の活躍とヘルミーネ様によるところが大きい」

やはり、この我儘娘が陛下に無理を言ったのか。

「そうなのですか?」

俺はヘルミーネを見なさがそう問いかけた。

「い、いや、そんな事は無いぞ・・・」

ヘルミーネの目が泳いでいる。

「お父様にはエルが家族を大切にする、と言っただけだ!」

あー確か、ヘルミーネに捕まらない様にそんなことを言った気がするな、それを陛下が聞いて危害が及ばぬよう、ヘルミーネを俺に与え家族となったか・・・。

「ラノフェリア公爵様、私は陛下から脅威に思われているのでしょうか?」

「そこまでは無いと思うが、不安は取り除いておきたいと思ったのではないかな、それとエルレイ君、私の事はロイジェルクと呼んでくれ」

「分かりました、ロイジェルク様」

「うむ、さて、エルレイ君の領地の分配だが、まだ決まってはいない、領地の平定が終わり次第順次決めて行く予定だ、エルレイ君には人員の輸送と頼むよ」

今後人員と物資の搬送が増えるな、収納の容量をもう少し増やしておくか。

「分かりました、今後、空間転移を隠す必要が無いのですよね?」

「そうだな、もうエルレイ君を使えるのは、陛下と私だけだろう」

「はい」

ロイジェルク様と俺は笑顔でそう答えた、忙しくなりそうだが、自分の領地の為だと思うと苦では無いな。

領地なんて要らなかったが、すでに手に入れてしまった頑張るしかない。

「エルレイ君に仕える家宰を紹介するよ、今後君の領地を管理してくれる」

ロイジェルク様はベルを鳴らすと、執事が一人やってきた。

歳は二十歳くらいだろうか、どこかで見かけたような気がする。

「彼の名はアドルフ、ヴァイスの息子で、ずっとここで働いて来たから安心してくれ」

ロイジェルク様に紹介されたアドルフは、こちらを見ると一礼して挨拶してくれた、言われて見ればヴァイスさんによく似ている、どうりて見た事があると思ったわけだ。

「私の名はアドルフ、エルレイ様に今後お仕え致します、どうぞよろしくお願いします」

「アドルフ、私はまだ子供で至らぬことが多い、よろしく頼むよ」

「こんな所かな、ゼリクイム伯爵とヴァルト子爵は先ほど言った通り引っ越しの準備をしておいてくれ、場所が決まり次第エルレイ君に運んでもらおう」

父上も伯爵になったから領地が変わるのか、今までのままとは行かないか、俺が住むところはどこなんだろう?

「ロイジェルク様、私が住む場所は決まっているのでしょうか?」

「それは決まっている、旧アイロス城だ、中はエルレイ君の好きなように変更して構わない」

あーそーなんですね、広すぎて不便としか思えない、変更していいなら使いやすいようにして行けるな。

「分かりました、父上、ヴァルト兄さん帰りましょうか」

「うむ、エルレイのおかげで伯爵になれた、感謝している」

「エルレイ、俺も子爵になったが正直自信が無い、しかし出来る限りお前を支えて行く」

父上もヴァルト兄さんもまだ爵位に戸惑っている様子だ、巻き込んでしまって申し訳なく思う。

「父上、ヴァルト兄さん、ありがとうございます、ではロイジェルク様失礼します」

応接室を出て玄関へと向かう、ルリアとリリーはメイドさんに呼びに行ってもらった。

玄関を出ると、更に馬車の数と執事やメイドと言った使用人が増えていた。

「アドルフ、これ全て運ぶのか?」

「エルレイ様、その通りでございます」

「分かった、やるしかないか、父上、ヴァルト兄さん、先に送って行くよ」

「うむ、エルレイ頼む」

父上とヴァルト兄さんを家に送り届け、その後はアドルフ達使用人と馬車をピンストン輸送で次々とアイロス城前に送り届けた。

最後にルリア達を城へ送り届け、その日の輸送は終わった。

「アドルフ、輸送は全て終わったと思うが大丈夫か?」

「エルレイ様、今日の分は全て終わりました、後の整理はお任せを」

「頼んだ」

「エルレイ様、今日中にこの城の名前と街の名前を決めてください、それで今日のエルレイ様のお仕事は終わりです」

名前か、急に言われても思いつかないな。

「アドルフ、皆で話し合って決めてもいいのか?」

「はい、構いません、よろしくお願いします、それと、私も念話が使えますので用事がございましたらお呼び付けください」

「分かった」

アドルフと別れ、ルリア達の元へいく。

「ルリア、リリー、ヘルミーネ、中に入ろう」

「分かったわ」

「はい、エルレイさん」

「エル、ここがアイロス城なのか、本当にあっという間につくのだな」

ヘルミーネは城から出た事が一度だけと言ってたからな、何を見ても珍しいのだろうけど、ここも同じ城だと思うのだが・・・。

興奮気味のヘルミーネを連れて、城の中の部屋に入る。

ソファーに着くと、ラウラさんが連れて来たメイド達がお茶を入れてくれていた。

「リゼ、ロゼ、それからラウラさんも座ってくれ」

「「はい」」

リゼとロゼは慣れた感じで座ったが、ラウラさんは戸惑っている。

「ラウラさん、気にせず座ってくれ」

「承知しました、それとエルレイ様、私の事はラウラと呼び捨てでお願いします」

「分かった」

ラウラが席に着いた所で話を始める。

「皆知ってると思うが俺は侯爵となった、そしてヘルミーナと婚約した」

「私の予想どうりだったって事ね」

ルリアは予想が当たって複雑な表情をしていた。

「これから皆仲良くしてくれ」

「分かったわ、ヘルミーネよろしくね」

「ルリア、よろしくしてやらん事も無い」

「相変わらずね・・・」

ルリアは怒るかと思いきや表情は普通だ、以外と仲良くできそうかな。

「私はリリーと言います、ヘルミーネさんよろしくね」

「うむ、リリーよろしく頼む」

ヘルミーネはリリーの笑顔に負けたのか、素直に受け入れたな。

「ヘルミーネ、ここにいるリゼとロゼはメイドだが俺の大切な家族だ、ルリアやリリーと同じに扱ってくれ、そして俺はラウラも大切にすることを約束する」

「エル、分かった、ラウラは私も大切だ、だから私もリゼとロゼを大切にすると約束する」

「ヘルミーネ、ありがとう」

「うむ」

「ラウラ、そう言う事だから皆でゆっくりする時は一緒に座って話をしてくれ」

「エルレイ様、ありがとうございます」

ラウラは少し泣いていた、ヘルミーネが大切だと言った事が嬉しかったのだろう。

「ところで城と街の名前を今日決めないといけないのだが、何かいい名前は無いだろうか?」

「そうね、エルレイ城でいいんじゃない?」

自分の名前を付けるとか自慢しているみたいで嫌だな。

「恥ずかしいから却下、それならルリア城にするぞ」

「いやよ、恥ずかしいじゃない」

ルリアも嫌なんじゃないか。

「ふふん、ヘルミーネ城でいいぞ」

ヘルミーネはこれで決まりだろうと言わんばかりに胸を張ってそう言った。

「私が嫌だから却下よ」

ルリアがそれに反対した、俺も反対だ。

「むっ、ではルリア他にいい名前があるのか?」

「今考えている所よ」

ルリアは腕を組み考え込んでしまった、いい名前を出してくれればいいが。

「エルレイさん、アルティナ城ではいかがでしょうか?」

アルティナ城、いい名前だきっとアルティナ姉さんも喜んでくれるはず。

「リリー、それはいいね」

「エルレイ、それは駄目よ」

「なんでだ?とても良いと思うんだが・・・」

「アルティナ城にしたらあの人の事だからずっとここに住み着くわよ」

「あ~そうですね、エルレイさん、アルティナ城は無しでお願いします」

確かにアルティナ姉さんは喜んでここに住むだろう・・・いい名前だと思ったが残念だ。

「ルリアは反対してばかりだな」

ヘルミーネは不満そうにルリアを睨んだ。

「分かったわよ、じゃぁそうね、三人から一文字ずつ取って、リアネ城ってのはどう?」

リアネ城、リアネの街か響きもいいな。

「ルリア、俺はそれでいいと思う」

「ルリア、とてもいい名前です」

リリーも気に入ったようで喜んでいる、ヘルミーネは何か考えている様だが。

「・・・私の名前が最後なのが気に入らないが、いいだろう」

ヘルミーネはそこが気になっていたのか、多分どうにか自分の名前が一番最初にくるのを考えていたのだろうが、いいのが思い浮かばなかったのかな。

「リアネ城、リアネの町で決まりだ」

名前が決まった所でメイドの一人が声を掛けて来た。

「エルレイ様、夕食の準備が整ったとの事です」

「もうそんな時間か、食堂に行こう」

「ええ、お腹が減ったわ」

「うむ、行こう」

ヘルミーネは楽しそうだ、同年代と何か一緒にやる事が今まで無かったからだろう。

そうだ、リリーも、もしかしたら同じだったのかも知れないな、リリーに小声で相談してみた。

「リリー、ヘルミーネは今まで同年代と一緒に過ごしたことが無いようなんだ、仲良くしてやってくれないか?」

「エルレイさん、私も同じでしたからよく分かります」

「リリー頼んだ」

「はい」

食堂に付き長いテーブルの横に座ろうとすると、ルリアからダメ出しを食らった。

「エルレイはここの主人なんだから席はあっちよ」

いつも父上が座っている席だな、上座とかよく分からないが皆を見れる位置だ。

そうか、この城の主人か、と言う事はある程度自由に出来る?

「ルリア、一つ聞くが俺の好きなように出来るのだろうか?」

「何をやりたいのか分からないけど、皆が納得すればいいんじゃない?」

ふむ、多分納得してくれると思うから今まで出来なかった事を実行しよう。

「そうか、一つ提案がある、こんなに大きなテーブルがあるから使用人とも一緒に食事をしたいと思うが、どうだろう?」

「そうね、私はいいと思うわ」

「エルレイさん、とても良い事です」

「エル、それはラウラと一緒に食事が出来るという事だな」

「そうだぞ、ヘルミーネ」

「うむ、是非やろう」

皆快く受け入れてくれた様だ。

「エルレイ様、お待ちください、それは承服しかねます」

アドルフが厳しい表情で異を唱えて来た。

「そうれはどうしてだ?」

「エルレイ様は侯爵家、その様な事をされては身分に傷が付きます」

「そうか?流石にお客がいる時は無理だが、家族だけの時は構わないと思うが?」

「いえ、普段からきっちり線引きをしておかないと駄目なのです」

アドルフは譲ってくれない様だ、どうしたら納得してくれるのか・・・。

「アドルフ、エルレイの身分にその事で傷がつく事は無いわ、それをネタに貶めて来る貴族がいても問題無いわよ、そんな貴族私が潰してやるわ」

ルリアが胸を張ってアドルフに言い放った、まぁルリアなら貴族を潰す事も簡単に思えてしまう。

「うむ、その時は私も一緒に潰してやろう」

ヘルミーネも同調した、あぁ、この二人が組めば怖いもの無しだな、流石にアドルフもこの二人には逆らえなかった様だ。

「承知しました、確かにヘルミーネ様やルリア様のおっしゃる通りです、エルレイ様に逆らえる貴族などおりません、しかし今日は準備が出来ておりませんので、明日からでよろしいでしょうか?」

「構わない、一度に全員は無理だろうから、数人ずつ日替わりで全員が必ず一緒に食事を出来る様にしてくれ」

「承知しました」

「今日の所はアドルフ、リゼ、ロゼ、ラウラの分くらいはあるだろう?待っているから準備させてくれ」

「畏まりました」

すぐに準備が整った、貴族用の料理って、何があってもいい様に普段から大目に作られているんだよな、残った分は使用人で食べているから問題は無い。

「では頂きます」

「「「頂きます」」」

楽しい食事が始まった、貴族と使用人が同じテーブルで食事をするのはこの王国ではありえない話だ。

「エル、私はずっとラウラと一緒に食事がしたかった、しかしそれは一生叶わない物だと思っていたが、今こうやって一緒に食事が出来てとても嬉しい、エル、感謝する」

ヘルミーネはラウラの隣に座って楽しそうに食事をしている、席も決まった位置では無く自由に座れる様にしないとな。

「その気持ちはよくわかるぞ、俺もリゼとロゼと食事をしたかったからな」

そう言えば名前の事をアドルフに伝えて無かったな。

「アドルフ、名前はリアネに決まったぞ、問題無いだろうか?」

「エルレイ様、リアネ城、リアネの街ですね、承知しました」

アドルフは素直に承知したな、変な名前じゃないしなよかった。

「アドルフ、明日からの俺の仕事は決まっているのだろうか?」

「はい、エルレイ様は城壁をお作りになったと伺っております、それを生かして、当面の間道路の整備をお願いしたいのです」

道はここまで来る時あったけど、新しく作るのだろうか?

「道はすでにあると思うが?」

「はい、ございます、しかし整備されておらず、曲がりくねった道も多いので出来るだけ真っすぐで広い道をお願いしたいのです」

なるほど、確かに街中は石畳だが、外に出ると砂利道だし確かに曲がりくねっていたな。

「分かった、道は大事だな、整備する場所とか決まっているのか?」

「はい、明日地図をお渡ししますので、よろしくお願いします」

なんか俺侯爵なのにアドルフにいい様に使われてないか?地図が用意されてるって事は、ずっと前から計画していたって事だよな、まぁ、自分の領地だから頑張るけどさ、ロゼと二人でやれば道路整備とか苦でもないか。

「分かった、ロゼ、手伝ってくれるか?」

「承知しました」

「エル、私も地の魔法は得意だから手伝うぞ」

ヘルミーネがここは私の出番だといった感じで手伝うと言ってくれたが、圧縮が使えないと無理なんだよな。

「ヘルミーネ、それはありがたいが無詠唱でないと出来ない作業なんだ、リリーが教えてくれるから無詠唱の訓練をしていてくれないか?」

「そうなのか、残念だが無詠唱も習いたい、リリーお願いする」

「ヘルミーネさん、よろしくね」

訓練を通じてリリーと仲良くなってくれればいいな。

夕食を終え、無駄に豪華で広い風呂でリゼに体を洗ってもらい、寝室もリゼと同じ部屋で就寝した。


翌日、アドルフから道路整備のための地図を受け取ったのだが、現代のような詳細が書かれた物ではなく、おおざっぱな街の位置と山や川が書かれている物だった。

「アドルフ、この線が道路整備用だと思っていいのか?」

「はい、その通りです」

「山や川を通っているように見えるが・・・」

「はい、山は切り開いて、川には橋をお願いします」

無茶苦茶だな、確かに街と街を繋ぐように書かれている線は真っ直ぐで、この通り道が出来たら便利だろうが・・・。

「・・・橋とか作った事無いぞ」

「私はエルレイ様なら出来ると信じております、これまでも誰も使えたことが無い無詠唱と言う魔法を成し遂げ、城壁を作って敵を追い払い、魔法が効かないゴーレムまで倒しました、これだけの偉業を成しえたエルレイ様なら、橋の一つや二つ作れるでしょう」

作れるかどうかやってみないと分からないか。

「分かった、やってみるよ」

「お願い致します」

アドルフにうまく丸め込まれた感じがするが、頑張ろう。

ロゼと二人でリアネの街の城門の外へと来た。

「ロゼ、まずはソートマス王国へ続く道の整備だが、どの様にやって行こうか」

「そうですね、道路一面を固めるのではなく、石畳の様にブロックを敷き詰めて行くのがよろしいのではないでしょうか?」

「分かった、道幅は余裕をもって十ートル位あればいいだろう」

「承知しました」

土を固め平たい板状を何個も作り、道路を平らにしてから敷き詰めていく。

邪魔な岩や木を切り倒し、時折上空から道を確認しながら真っ直ぐ整備していく。

単純で辛い作業かと思っていたが、出来上がっていく道を見ていると楽しくなってきた。

「エルレイ様、そろそろ昼食に致しましょう」

「ロゼ、分かった」

俺は簡単なテーブルと日除けにぷよぷよの椅子を作る、ロゼはテーブルクロスを敷き、バスケットより昼食のサンドイッチと飲み物を取り出し並べ、二人で昼食を楽しむ。

「ロゼ、戦争よりこういう作業をしている方が楽しくていいな」

「そうですね、私も争いごとは好みません」

「落ち着いたら皆で、山や海に行ってゆっくり過ごしたいな」

「はい、皆さん喜ぶと思います」

ロゼはにこやかに微笑んでいた、ロゼは普段あまり感情を表に出さないが、二人でいる時は表情豊かだ。

ロゼとの昼食をゆっくり楽しんだ後、また道路整備の再開だ。

暫く作業を続けていると最初の川が見えてきた、川幅は五メートルと小さいが、どうするか。

取りあえず小さい模型の橋を記憶を辿りながら作ってみる、両脇に柱を立てその上に道を乗せただけの物、両脇から半円を描くようなアーチ橋、両脇の柱を高くした吊り橋等作ってみた。

「ロゼ、模型を作ってみたが、どれがいいだろう?」

「そうですねこれがよろしいかと」

ロゼが指さしたのはアーチ橋だった、確かに一番無難だな。

「では、これを作ってみよう」

「エルレイ様、その前に川岸の強化が先かと思います」

「そうだな、橋を支える場所を整えないとな、ロゼ、頼めるだろうか、俺は橋を作るよ」

「はい」

ロゼに護岸強化を任せ、少し離れたと事で橋を作る、模型のイメージで大きさを変えていき作り上げた、橋を収納しロゼが強化してくれた護岸に設置して動かないように固定すると、アーチ橋の完成だ。

「壊れないとは思うが、試しておきたいな」

「それでしたら、家を置いてみてはいかがでしょう?」

家は常に収納に入っている、外で寝泊まりする事があるかも知れないと思い、処分できずにいた。

「それはいいな、あの家結構重いからちょうどいいだろう」

家を橋の中央に置いたが橋はびくともしなかった、壊れたらどうしようとかと、ちょっとドキドキしてたが無事で良かった。

「問題ないな」

「はい、よく出来ております」

ロゼも橋の出来栄えに満足した様子だ、ロゼが不安に思ってなければ大丈夫だろう。

その後も道路整備を夕暮れ近くまで続けて、城に戻った。

夕食時は、前日言ったようにガチガチに緊張した使用人達も席に座っていた、無理も無いか、俺が陛下と一緒に食事するような感じかも知れないな。

「今日から使用人とも食事をする事になった訳だが、皆ここにいるのは家族だ、食事のマナーとかは気にせず食べてくれ、では頂きます」

「「「頂きます」」」

使用人たちはまだ緊張した様子で食事をしていた、そのうち慣れてくれればいいだろう。

「エルレイ、道は出来たの?」

「実際に馬車を走らせたわけでは無いが、ちゃんと出来てると思うぞ」

「そう、楽しそうね」

ルリアは羨ましそうにこちらを眺めて来た。

「ルリアは今日何していたんだ?」

「いつも通り剣と魔法の訓練をしていたわ」

「そうか、ルリアも何かやりたいのか?」

「やりたいけど、私に何が出来るのか分からないわ」

リリーがヘルミーネに魔法を教えてるから、ルリアも何かやりたいんだろうけど、公爵令嬢にやれる事って何かあるんだろうか?

「アドルフ、ルリアにも出来る仕事ってあるか?」

「本来であれば、ルリア様にお仕事をさせるとか有ってはならない事ですが、丁度いい仕事がございます、今日城の宝物庫を発見したのですが、鍵が無くて開けられませんでした、ルリア様に開けて頂けないかと思いまして」

「分かったわ、それは楽しそうね」

ルリアは仕事がもらえて嬉しそうだ、中の宝まで壊さなければいいが・・・。

「ではルリア様、明日お願いいたします」

「ルリア、俺も着いて行くぞ、中に魔法書があれば欲しい」

「私も付いて行くぞ、何があるのか見てみたい」

ヘルミーネも付いてきたい様だ。

「ヘルミーネは城の宝物庫とか、見慣れてるんじゃないのか?」

「宝物庫の鍵はお父様が管理していて、一度も入ったことは無いぞ」

そう言う物なのか、アイロス王はゴーレムと一緒に戦死したから誰も開けられなかったのかも?

「そうなのか、という事はここの宝物庫も、王族に持ち出されていない可能性が高いのか」

「そうかもね、エルレイが欲しい魔法書が出てくるといいわね」

ちょっと期待してきた。


翌朝、結局全員で城の地下にあった宝物庫の前にやって来た。

「ここを開ければいいのね」

ルリアは宝物庫の扉の前に立ち、何処を吹き飛ばすか考えている様だ。

「ルリア、扉を吹き飛ばしたら中の宝に傷がつくからな」

「分かってるわよ、ちょっと黙ってなさい」

「はい・・・」

ルリアは真剣な表情で扉を睨んでいた。

「行くわよ!」

ルリアはそう言って、鍵の部分だけ丸く焼き落した、ルリアが扉を押すと、ゆっくりと開き中の宝が見えた。

「ルリア、凄いぞ」

ヘルミーネは大喜びだ。

「ルリア様お見事です、皆さん中へお入りください」

アドルフが促すと我先にと皆入って行った、俺も遅れず中に入ると、そこには様々な武具や置物が所狭しと並べられていた。

「エル、色々あるぞ」

ヘルミーネは興奮気味に見て回っている。

「珍しい物はあるけど、これと言って欲しい物は無いわね」

ルリアは冷静に良い物が無いか見て回っている。

「エルレイさん、これ綺麗です」

リリーはきれいな絵が描かれた花瓶を物欲しそうに見ていた。

「アドルフ、ここにある物は貰っていいのか?」

「はい、全てエルレイ様の物です、しかし領地運営の財源としたいので、お一つずつくらいなら構いません」

「分かった、一つなら好きなの持って行っていいそうだぞ」

俺がそう言うと、皆目を輝かせてどれを持って行くか吟味し始めた。

俺も何か選ぼうと見て回っていると、壁に折れて錆びた剣と鞘が立掛けてあった、近くにいたリゼに声を掛け聞いてみる。

「リゼ、あの剣何でこんな所にあるんだ?」

「何でしょうね、でもあの剣を見ていると嫌な感じがしますね」

「リゼもそう思うか、俺も嫌な感じはするんだが目が離せないんだよな」

俺は剣を見つけた時から何故か目が離せないでいた。

近づいてよく見ると、柄の部分に血の様に赤い宝石が埋め込まれていて、剣は錆び付いているのに宝石だけ新品の様だった。

俺が剣を触ろうとしたら、リゼに止められた。

「エルレイ様、その剣に触れるのはお止め下さい」

「リゼ、どうしてだ?」

「もしかすると、その剣は魔剣かも知れません」

魔剣とか初めて聞くな、剣と魔法の世界だから在って当然か、しかしそう聞くと余計持ってみたくなるよな。

「リゼ、魔剣の事を知っているのか?」

「詳しくは存じませんが、魔剣はリースレイア王国で選ばれた鍛冶職人のみ作る事が可能だと、そして魔剣は一度主を決めると死ぬまで離れないと聞いた事があります」

契約みたいな感じだろうか?特に危険な事は無さそうだが。

「触ったら死ぬとかあるのか?」

「そう言った事は無いと思います、魔剣はそれぞれ別々の能力があり性能にも差があるそうです、しかしその剣、どうやら私が触れる事は出来ない様ですね」

「それはどうしてだ?」

「魔剣は触れる者を選ぶようです、私が近づくとその剣を見ていられなくなります」

俺はそんなことは無いな、むしろ触りたくなる感じがする。

「エルレイ様はそう言う事が無いのなら、その魔剣に選ばれたのかも知れません、しかし危険が無いとも言えないので、触ってほしくは無いのですが・・・」

リゼは申し訳なさそうに俺に言ってきたが、俺は完全に触りたくてたまらなくなっていた。

「リゼ、すまない、どうやら俺はこの剣を触らずにはいられない様だ」

「分かりました、もしエルレイ様に危険がある様でしたらその剣を破壊します」

俺はゆっくりと剣を掴んだ、その時大量の魔力を剣に吸われた。

剣に埋め込まれた血の様に赤い宝石が輝き、錆びて折れた剣がその輝きに包まれた。

輝きが失われると、今まで折れていた剣は元通りになり、錆びも取れ新品の様になっていた。

「ヒャッハー!!久々のシャバだぜ!!」

剣がいきなりしゃべりだした、俺とリゼは驚きで声が出せない。

「てめぇが新しいマスターか?俺の名はグール!全てを食らいつくす者だ!!」

グールと名乗る剣はそう言い放った、言葉遣いが汚いな・・・。

「グール、お前は魔剣なのか?」

「おうよ、作られてから千五百年は経っている、すげぇだろ!!」

凄いかも知れないが、剣の見た目は普通のロングソードだ、本当に千五百年経っているのか?

「グール、お前に何か能力があるのか?」

「もちろんあるが、秘密だ!!」

ちょっとイラッと来た。

「リゼ、この魔剣破壊出来ると思うか?」

「そうですね、ここでは危険ですから外で破壊しましょう」

「わかった」

「チョーーット待て、いや待ってください、教える、教えますから壊さないで」

グール打たれ弱いな、グールと騒いでいると皆集まって来た。

「さっきからうるさいわね、何騒いでいるのよ」

「ルリア、ここにあった剣を触ったらしゃべりだしてね」

「あら魔剣だったの?珍しいわね」

「なんだこのガキ、偉そうじゃねぇか」

グールがそう言うと、ルリアもイラッと来た様だ。

「エルレイ、その魔剣貸しなさい、壊してくるわ」

「好きにしてくれ」

ルリアにグールを渡す、するとルリアの手からグールが落ちた。

「なにこれ、持てなかったわ」

「ハーハッハッ、俺様はマスター以外持てないんだよ、分かったかガキ」

ルリアは切れて自分の剣を抜いた。

「ルリア、ちょっと待ってくれ、ここではまずい外に出てから壊そう」

「分かったわよ」

「マスター冷静になろう、俺様壊してもいい事無いぜ」

取り合えずこいつと話していたら時間が勿体ないので、鞘に納めて収納した。

「これで静かになったな」

「本当ね、魔剣があんなにうるさい物だなんて知らなかったわ」

「エルレイ様、体に異変はございませんか?」

リゼは心配そうに尋ねて来た。

「最初に魔力を持って行かれた後は、特に変わったことは無い」

「それはよかったです」

リゼは安心してくれた様だ。

「皆欲しい物は決まったのか?」

「私は特になかったわね」

ルリアは無かった様だ、俺も魔法書らしきものは見当たらなかったから何もいらなかったんだが。

「これを貰うぞ」

ヘルミーネは手鏡の様なものを持ってきた。

「これは鏡?」

「そうだ、一度お父様に見せて貰った事がある、これは魔導具で離れていても望んだ人が見れる物だ」

何それ欲しい、と言うか魔導具ってあるんだ、俺は魔導具の方に興味が行った。

「魔導具って作れるのか?」

「私は知らない」

「エルレイさん、魔導具は北のミスクール帝国で作られている物です、こちらではあまり見かけません」

リリーは知っている様だ、魔導具俺も作ってみたいがミスクール帝国は遠いな・・・。

「ミスクール帝国に行けば魔導具の作り方を教えて貰えたりするんだろうか?」

「難しいと思います、魔導具を作る技術は秘匿されている様です」

ですよね・・・・非常に残念だ。

「エルレイは魔導具が作りたかったの?何でもできる貴方には必要なさそうだけど」

「確かに俺はそうだが、作れたら皆の生活が楽になる様に出来る、例えば水や火を誰でも出せる様に出来れば、料理が楽になるだろう?」

「そうね、エルレイだったらそんなのも作れるかも知れないわね」

「今は魔導具の作り方は分からないから、魔法で皆の生活が良くなるよう考えるしかない」

「そうね、私も何かできないか考えて見るわ」

「リリーはその花瓶にするのか?」

リリーは先程の花瓶を大事そうに抱えている。

「はい、これに花を生けたいと思います」

「それも魔導具だったりするのか?」

「いえ、普通の花瓶だと思います」

「そうなのか、こうして見回してみると、もっと凄いお宝があるのかと思ったが、貰ったけど使わないから仕舞っといた物と、言う感じだな」

「そうでしょうね、うちにある宝物庫も似たような物だったわ」

ルリアも公爵家だから貰い物多そうだな。

「欲しい物も決まったようだから外に出よう、アドルフ後は頼んだ」

「承知しました」

宝物庫を出て道路整備に出掛ける事にする。

「道路整備に出掛けて来るよ」

「エルレイ、頑張りなさい」

「エルレイさん、行ってらっしゃい」

「エル、さぼっていないかこれで見てやるからな」

ヘルミーネは鏡を見ながらニヤニヤしてた、ヘルミーネが使う分には問題無いだろう。

「ほどほどにね、ロゼ、行こうか」

「はい」

ロゼの手を握って昨日の続きの場所へ転移した。

昨日の作業で要領を得たのでテンポよく綺麗な道が整備されていく。

昼食時、ロゼと二人で話しながら楽しんでいたら、ふと魔剣の事を思い出した。

「ロゼ、魔剣に付いて何か知らないか?」

「いえ、特にありませんが、話す魔剣と言うのは聞いた事がありませんね」

「そうか、ちょっとうるさいが魔剣に聞いてみるしかないか」

収納よりグールを取り出す。

「やーっと出られた、折角シャバに出られたのにあんな所に閉じ込めるとか意味わかんねぇぜ」

やっぱりこいつうるせぇ、壊した方が良いように思えて来た。

「グール、少し静かに聞いてくれ、出来ないならまた閉じ込めるぞ」

「オーケー」

「魔剣はお前の様に話す物なのか?」

「・・・・・・」

グールは答えない、こいつ・・・。

「静かに聞いて、答えろ」

「喋っていい訳だな、いやぁ、黙っているとストレスが半端ねーな」

俺は無造作にグールを地面に突き刺し、刀身を強化圧縮したストーンショットで撃ち抜いた。

「チョーーーー、何するんだ!折れたじゃねーかよ!!」

「壊されたくなかったら質問に答えろ」

「分かった、マスター冷静になろう、俺様が知っている分の魔剣で話せるのはいない、とは言えそれは千五百年前俺様を作った鍛冶職人クロームウェルの分だけだ、それ以外の職人が作った奴までは知らねぇ」

そうかクロームウェルもこいつを作った事を後悔したのだろう。

「先程聞きそびれたグールの能力を教えてくれ」

「俺様の能力は三つ、一つ、斬った相手の魔力を吸収する、二つ、形を自由に変えられる、三つ、敵意ある者を察知する」

こいつ意外と高性能じゃないか、その能力が魅力的に映らない位うるさいが・・・。

「という事は、今折れたのも元に戻るのか?」

「勿論と言いたいが、魔力が足りねぇ、マスターの魔力を寄こしな!!」

グールがそう言うと強引に俺の魔力を持って行き、刀身が元通りになった。

「グール、勝手に魔力を持って行くな」

「折れたままじゃ、俺様活躍出来ねーじゃん」

「いや、俺魔法使いだからお前が活躍することは無いと思うぞ」

「マジで?」

「マジだ」

「いやいやいや、魔法詠唱するより俺を使った方が速いって!」

「さっきお前を撃ち抜いたの見てなかったのか?俺は詠唱必要無いぞ」

「・・・・・・」

グールの刀身から冷や汗が流れ落ちていた、器用だなこいつ。

「俺様要らない子?」

「あぁ、要らないな、また宝物庫に置いて来るか」

「マスター残念だがそれは出来ねぇ、俺様と魔力で繫がっているから、マスターが死ぬまで離れられねぇぜ」

今度は俺が聞き返した。

「マジで?」

「マジだ」

「そうか、俺が死ぬまで収納しておく」

「マスターそれは勘弁してくれ、いや勘弁してください」

グールは俺に懇願してきた、収納の中相当嫌だったのか。

「分かった、但し条件がある、俺が許可しない限り話すのを禁ずる」

「・・・俺様に死ねと!!」

「その条件が飲めないなら収納する」

「オーケーマイマスター、俺様に話さないよう条件を付けて来たのはクロームウェル以来だぜ・・・」

もしかしてこいつ、クロームウェルが作った失敗作なのでは?グールを鞘に戻し腰に下げる。

「エルレイ様、壊した方がよろしいのでは?」

「俺もそう思うんだが・・・」

「俺様役に立つから、壊さないでくれると助かるなぁ」

「暫く様子見るよ」

「承知しました」

グールと話していて少し長くなった昼食を終え、道路整備を再開し、夕暮れ前に城へ戻った。

それから約一ヶ月、ロゼと領地内の道路整備を成し遂げた。

「ロゼ、終わった~!」

「はい、エルレイ様やり遂げました」

二人で抱き合って喜びあった、ロゼの柔らかい感触で疲れが癒されていく・・・。

「しかし、もうしばらく道路整備は遠慮したいな」

「そうですね、今度は違った事をやりたいですね」

流石にロゼも飽きた様だ、しかしこれで我が領内の移動は早くなるだろう。

ロゼと城に戻ってきて、アドルフに報告する。

「アドルフ、道路整備終わったぞ」

「エルレイ様お疲れ様です、この短期間で整備を終えるとは流石です、それでエルレイ様には次の仕事のお願いがございます」

アドルフはにこやかにそう告げて来た、今日くらい休んでもいいのでは無いだろうか・・・。

「次の仕事は構わないが、今日はもう休んでもいいか?」

「はい、今日はもう休んで頂いて構いません、明朝から領地に来て頂く貴族の方々の輸送をお願い致します」

道も出来たから次の段階か、ようやく領地として動き出す訳だな。

「分かった」


翌朝、ロイジェルク様の屋敷に各地から集まった男爵の皆さんを迎えに行き、馬車と人員の輸送に明け暮れ。

ヴァルト兄さんの家族を迎えに行き、最後に父上達を迎えに行った。

折角なので、今日は家族全員城に泊まって貰う事にした。

「ここが旧アイロス城か」

「凄いなエルレイ」

父上とマデラン兄さんは城を見上げて感心していた。

「父上、今はリアネ城と言います」

「そうか、リアネ城、いい名前だ」

「皆さん中へどうぞ、部屋に案内します」

「うむ」

皆で城内に入ろうとすると、アルティナ姉さんに抱きつかれた。

「エルレイ、今日から私もここに住むことにしたから、よろしくね」

「アルティナ姉さん、どうしたの?」

「私はエルレイとずっと一緒にいると決めたの!」

えっ、ずっと一緒にいるって結婚は?婚約者決まってたよね?

「エルレイ、済まないがアルティナもここに住まわせてやってくれ」

父上まで何を言っているのでしょう・・・。

「エルレイ、私は婚約破棄されたのよ、だから安心してね」

アルティナ姉さんを婚約破棄って、俺から見てもとても綺麗なのに・・・俺が困惑の表情をしていると、父上が説明してくれた。

「私が伯爵になったから相手の婚約者と釣り合わなくなってな、それで相手が気を利かして破棄してくれたわけだ」

あぁなるほど、つまりそれは俺のせいで、アルティナ姉さんの婚約が破棄されてしまったって事か・・・。

「分かりました、アルティナ姉さんの新しい婚約者が見つかるまで、ここに住んでいいですよ」

「エルレイ、ありがとう」

アルティナ姉さんはさらに力強く抱きしめて来た。

「エルレイ、そう言う事だからアルティナを頼む」

「エルレイ、アルティナの事頼みましたよ」

父上と母上は真剣な表情で頼んできた、婚約者が決まるまで姉さんの事は見守って行かないといけないな。

「父上、母上、アルティナ姉さんは必ずお守りします」

「うむ」

「アルティナ姉さん、先に部屋に行きましょう」

「そうね、エルレイ行きましょう」

アルティナ姉さんはにこやかに微笑み、自然な感じで俺の手を取って歩き出した。

部屋はメイドさんに聞かないと分からないんだが、まぁいいか、皆を部屋に送り届け、報告のため執務室へと向かった。

部屋の中にはルリアとアドルフ、数人の執事が作業をしていた。

「アドルフ、貴族の移動は終わったぞ」

「エルレイ様、お疲れさまでした」

「エルレイ、こっちに来て変わりなさい」

ルリアが手招きをして執務室の奥にある席から立ち、隣の席に座った、俺は言われるがままにルリアが座っていた席に着く。

「ルリアはここで何をしていたんだ?」

「エルレイの代わりよ、今まで貴方が外で仕事してたから、私がずっとここで仕事してたのよ」

そうだったのか、それは悪い事をしたな。

「ルリアありがとう、それで俺は何をすればいいんだ?」

「ここに置いてある書類に目を通して、決済の判子を押すだけよ」

なるほど、しかし数が多いな・・・もしかしてこれ全部読むのか?

「これ全部目を通すのか?」

「そうよ、私も手伝うからさっさと始めましょう」

「分かった」

俺は書類を眺め、判子を押す作業に移った、書類自体は予算の申請と経費の支払いがほとんどだ。

数字を見るのも久々だったが、意外と何とかなる物だな、サクサクと書類に判子を押していく。

その中で目を引いた書類があった、警備隊予算の申請書だった。

「アドルフ、警備隊の申請書が出てるが目処があるのか?」

「はい、そろそろ正規軍が帰還するそうなので、交渉しておりました」

「交渉?」

「旧アイロス王国軍第二軍団長トリステン様に打診したところ、快く受けてくださいました」

一度会ったあの人か、しかし敵軍だったのを警備隊にして大丈夫なんだろうか?

「それは大丈夫なのか?武装蜂起されたら面倒なんだが・・・」

「その心配はございません、エルレイ様の元で働ける事を喜んでおりましたよ」

「エルレイ、心配することは無いわ、大体エルレイと戦いたく無いから降伏したのよ、今更反旗を翻るはずが無いわ」

なるほど、ルリアの言う通りかも知れないな。

「分かったよルリア」

「さっさと判子押して、今日の分終わらせましょう」

ルリアと席を並べての書類作業は思ったより楽しい物だった、一人でこの作業をやってたら辛かっただろう。

夕食前に書類仕事を終え、久々の家族全員での食事となった。

父上に席を譲ろうとしたら、お前の席だと断られてしまった、両親の前でこの席に座るのには抵抗があったのだが仕方がない、諦めて席に着いた。

「家族揃っての食事は久しぶりです、今日はゆっくりと楽しんでください、頂きます」

「「「頂きます」」」

家族全員が揃うのは王都観光以来だろう、皆楽しそうに会話しながら食事している。

「皆顔を合わせるのは初めてだろうから紹介します、私の婚約者となったヘルミーネです」

ヘルミーネを紹介して目配せをすると、やや緊張した感じでヘルミーネが自己紹介をしてくれた。

「ヘルミーネ・ファリクス・ド・ソートマスです、皆さんよろしくお願いします」

こういう時ヘルミーネは丁寧に挨拶してくれる、普段もこの感じでいてくれればいいのだが・・・。

「ヘルミーネさん、エルレイの母です、エルレイの事よろしくお願いしますね」

「はい」

その後一通り家族の紹介をして食事を終え、ヘルミーネは名前を覚える為か、真面目な表情で話を聞いていた。

翌朝、父上達とヴァルト兄さん達を見送るために玄関へと皆集まっていた。

「父上、ヴァルト兄さん、苦労掛けると思いますがよろしくお願いします」

「お前が気にする事では無い、陛下から頂いた使命を果たすだけだ」

「そうだぞエルレイ、しかし俺達もお前に守られてばかりではいられないからな、心配する必要は無いぞ」

ヴァルト兄さんが笑顔で俺の頭を撫でてくれた、ヴァルト兄さんから頭を撫でられるのはなぜか嫌いじゃないんだよな。

「はい、ありがとうございます」

父上達を乗せた馬車と、ヴァルト兄さん達を乗せた馬車が、それぞれの領地に向けて出発して行った。

どちらもリアネの街から馬車で半日程度の位置にある、父上がソートマス王国側、ヴァルト兄さんがラウニスカ王国側が主な領地だ。

まぁ、ラウニスカ王国と接している領地は新しい男爵たちの領地だから、ヴァルト兄さんが直接戦場に立つ事は無いだろう。

敵が攻めてきたら俺が真っ先に向かって行って、出来るだけヴァルト兄さんに負担を掛けないようにしたいと思う。

「エルレイ、ちょっと話があるんだけど?」

ルリアがちょっと怒ったような表情で話しかけて来た。

「ルリア、何かな?」

「アルティナがここにいるんだけど、どういう事なのかしら?」

俺の隣にはアルティナ姉さんが立っている、そう言えば皆に説明して無かったな。

「すまない、昨日説明し忘れていた、アルティナ姉さんも今日からここに住む事になった、皆よろしく頼む」

「なんでそうなるのよ」

ルリアにはちゃんと説明しないと駄目か、俺が話そうとしたらアルティナ姉さんに腕を掴まれて止められた。

「アルティナ姉さん?」

「エルレイ、私が説明するから安心して」

「分かりました、お願いします」

アルティナ姉さんに任せるか、ルリア今にも殴り掛かってきそうな感じで俺を睨み付けてるからな。

「ルリア、今日から私もあなたと同じ立場になったから、よろしくね」

同じ立場って?ルリアも俺もアルティナ姉さんを驚いた表情で見つめた。

「えっ?同じ立場って・・・エルレイ?」

「いや、俺に聞かれても・・・」

「私もエルレイの婚約者になったのよ」

アルティナ姉さんは満面の笑みを浮かべてそう宣言した。

「アルティナ姉さん、婚約って聞いてないけど・・・」

「エルレイ、昨日お父さんとお母さんに頼まれたでしょう?」

確かに頼まれたけど、あれがそうなの?いや流石に違うのではないのかな・・・。

「あれはここに住む、という事だったのでは・・・」

「そうよ、ずっと一緒にいるって言ったじゃない」

確かにアルティナ姉さんがそう言っていたような、でも姉弟だし・・・、俺が悩んでいるとアルティナ姉さんは皆と和解してしまった。

「そういう訳だからルリア、リリーちゃん、ヘルミーネちゃん、よろしくね」

「はぁ、分かったわよ、アルティナよろしく」

ルリアは観念したように肩を落とした。

「アルティナさん、よろしくお願いします」

リリーは笑顔で受け入れている、元々仲良かったからな。

「うむ、アルティナ、よろしく頼む」

ヘルミーネも笑顔だ、友達が増えて喜んでいるみたいな感じなのだろうか。

俺だけ反対しても意味無いな、そもそもアルティナ姉さんの事は大好きだし、姉弟って事を除けば気持ち的には問題ない。

姉弟って言うのが最大の問題だと思うのだが、ここは異世界、俺の常識が間違っているかも知れない。

「えーっと、ルリア、姉弟で婚約しても問題無いのだろうか?」

「問題無いわよ、王族では結構ある事だし、貴族でもたまにいるわよ、それにエルレイはアルティナの事好きでしょ」

異世界だからそう言う物なのだろう、それならば話は簡単だな、両親にもアルティナ姉さんを守ると言ったから実行するだけだ。

「アルティナ姉さんの事は勿論好きだ」

俺がそう言うとアルティナ姉さんはこちらに振り向き抱きしめて来た、俺も抱きしめかえす。

「エルレイ、私も大好きよ、これからずっと一緒にいましょうね」

「はい、アルティナ姉さん」

アルティナ姉さんとの幸せな時間を堪能していると、ルリアに引き剥がされた。

「場所を考えなさい」

あー確かに、城の玄関前で衛兵の方々がこちらを羨ましそうな目で見ているな・・・。

「ルリア、すまない」

「エルレイ、剣の訓練に行くわよ、付き合いなさい」

「わかった、アルティナ姉さんまた後で」

「いってらっしゃい」

俺はルリアに手を引っ張られていった。

「リリー、私達も魔法の訓練に行こう」

「はい、ヘルミーネさん」

「私も付いて行こうかしら」

「アルティナも魔法使えるのか、それなら一緒に訓練しよう」

リリー、ヘルミーネ、アルティナは仲良く魔法の訓練を、俺とルリアは激しい剣の訓練を午前中いっぱい行った。

午後はルリアと一緒に書類仕事のため執務室に向かった、中に入ると書類と格闘していたアドルフに声を掛けられた。

「エルレイ様、警備隊の件で少々問題が発生しました」

「問題とは、やはり反発されたのか?」

「いえ、採用人数の事です、旧アイロス王国軍を全員受け入れる訳にもいかないので、希望退職を募ったのですが、人数が多く、このままでは職に溢れる者が多く出る可能性が出てまいりました」

無職の者が溢れかえると犯罪が多くなるだろう、その不満は管理者、つまり俺に向かられるわけだな。

「それは確かに不味いな、何か対策案があるのか?」

「はい、ございます」

アドルフはにこやかにそう言うと、地図を俺の前に出してきた、このパターンは俺が作業をする事になるのか?

地図を見ると、俺とロゼで作った道が描かれており、道沿いの空き地に何か所か線で囲ってる所がある。

「アドルフ、この地図は?」

「はい、線で囲っている場所を開墾して、農地をエルレイ様に作って頂きたいのです」

なるほど、新たな農地を作ってそこで働させるわけか、農業の事はよく分からないが、土を柔らかくし囲うだけでいいのだろうか?

「それは分かったが、俺は農業の事を知らない、どの様に作っていいのか分からないぞ」

「その点はご心配なく、農業に詳しい者をエルレイ様のサポートにお付けします」

「そうか、それともう一つ、新しい畑で作る作物は決まっているのか?」

「いえ、決まっておりません」

「今現在この領土は食料に困っていたりするのか?」

「必要な分は賄えております」

「それなら、新しい農地で作る作物でお酒を造ろう」

俺はお酒が飲みたかった、今は子供だから飲めないが、生前と勇者の時はお酒が好きでよく飲んでいた。

折角領地があるから自分が好きなお酒を造ってみたかったのだ。

「エルレイ様はお酒の作り方をご存じで?」

「いや、知らない、しかし果実酒なら比較的簡単に出来るのではないか?それか職人を雇ってもいい」

「分かりました、ではそのような方向で進めさせて頂きます」

「エルレイ、この領地の新たな産業ね、凄いじゃない」

ルリアが喜んでいる、俺はただ自分が欲しい者を頼んだだけなので申し訳ないが、うまくお酒が出来て売れれば確かにいいかもな。

「まぁそうだな、ルリアも何かアイディアがあれば遠慮無く言ってくれ」

「そうね、すぐには思い浮かばないけど考えておくわ」

「では、さっそく行こうと思うが、農地に詳しい人はもういるのか?」

「はい、玄関前に呼びますのでよろしくお願いします」

「分かった、ルリア行ってくる」

「いってらっしゃい」

「リゼ、ロゼを連れて行くから代わりにリリーを頼む」

「承知しました」

『ロゼ、領地の開拓に向かう事になったから来てくれないか?』

『新たな仕事ですね、承知しました』

『玄関前で落ち合おう、そっちにはリゼを代わりに向かわせる』

『はい』


玄関前に着くと、ロゼと八十歳位の白髪頭の爺さんがいた。

「エルレイ様、こちらが農業に詳しい者でヘンリクと申します」

「こちらが新しい領主様か、随分と若いのぉ」

「新しく領主になったエルレイと申します、見た目通り子供ですのでよろしくお願いします」

「これはどうもご丁寧に、わしはヘンリクと申します、農家を続けておりましたがこの通り歳でのぉ、迷惑をかけるかも知れんがよろしくお頼み申す」

「アドルフ、行ってくるよ」

「エルレイ様、お気を付けて行ってらっしゃいませ」

ロゼとヘンリクの手を取って現場に転移した、ヘンリクに事前説明して無かったのでとても驚かれてしまった、反省。

「ここは何処じゃ?先程まで城におったと思ったのじゃが・・・」

ヘンリクは辺りを見回している。

「すみません、説明していませんでした、私は魔法使いで、違う場所に一瞬で転移できるのです」

「そうじゃったか、たまげたのぉ、ここが新たに開拓する場所ですかな?」

「そうですね、最初に邪魔な木や岩を取り除くので、その後どの様にすればいいか指示をお願いします」

「それは分かりましたが、まさか一人でやるおつもりかでしょうか?」

「いえ、ロゼと二人で魔法を使ってやります、すぐ終わりますよ」

俺とロゼで開拓予定地の整地を行った、道を作るのと違って平らにするだけなら簡単な作業だった。

「魔法とは凄い物じゃのぉ、これだけの開拓をするのに一時間もかからないとは、おどろきじゃわい・・・」

ヘンリクは驚きのあまり呆然としていた。

「ヘンリクさん、指示をお願いします」

「おぉそうじゃった、まずは水路の確保が先じゃ、その後で畑を作って貰いますじゃ」

「分かりました」

ヘンリクさんの指示のもと水路、畑をロゼと効率よく作って行った、ここからお酒の作物が作られるのかと思うと道路の時よりやる気も出て来て作業も早く進んで、夕暮れ前に城へ戻って来た。

「ヘンリクさん、お疲れさまでした」

「エルレイ様、わしは素晴らしい物を見せて貰いましたわい、エルレイ様が納めるこの領地はこれから発展して行くのでしょうな」

「領地が発展して行くのは、領地に住む皆さんの頑張りの成果です、私はほんの少し手助けできるだけです」

「広い道を作り、広大な土地を開拓していくのが少しのはずがありますまい」

「そうですかね、畑を作ったとしても、そこで作物を作ってくれる農家の方々がいないと意味が無いですからね」

「いえ、エルレイ様はもっと誇っていいのです」

「ロゼ、それを言うならロゼも誇っていいぞ」

「私はエルレイ様のお手伝いをさせて頂いているだけでございます」

「ほっほっほっ、どちらも素晴らしい魔法使いと言う事じゃな」

「まぁ、そう言う事にしておきましょう、ヘンリクさん、また明日もよろしくお願いします」

「老い先短い爺じゃが、エルレイ様のお手伝いを精一杯させていただくつもりじゃ」

ヘンリクさんは笑顔で家路へと帰って行った、俺達も城に戻り今日の疲れを癒した。

それから十日ほどで予定地の開墾作業を終えた、最後の方ではやり方も覚え、ヘンリクさんの指示無くても出来る様になった。

「ヘンリクさん、お疲れさまでした、これで予定地の開墾が終わりました」

「エルレイ様、お疲れさまでしたじゃ」

「これで作物を植えられるのでしょうか?」

「そうじゃの、だがすぐに収穫できるわけでは無い、徐々に土を作って行かねばならぬ、しかしそれは領主様の仕事では無いの」

「そうでしたか、後は農家の方々にお任せします」

「領主様の為にきっちり若い者を指導して行くでな」

「よろしくお願いします」

城に戻りヘンリクさんと別れて執務室へとやって来た。

「エルレイ様、お帰りなさいませ」

「アドルフ予定地の開墾は終えたぞ」

「お疲れさまでした」

「家屋等は建てなくてよかったのか?」

「はい、そちらは職人を手配しております」

俺が何でもやってしまうと、また失業者を出す羽目になるのか・・・。

「そうか、職人の仕事を取ってはいけないな」

「エルレイ様、追加でこの場所をお願いします」

アドルフは地図を俺に差し出してきた、地図を見ると一か所だけ線で囲ってあるな。

「ここも畑を作るのか?」

「いえ、ここは酒造所の建築予定地です」

「なるほど、それは重要だな」

「はい、整地だけで構いませんのでお願い致します、それと一週間後、ネレイト様の結婚式が御座いますので出席をお願いいたします」

ネレイト様、確か十七歳ではなかっただろうか、この世界十五歳で成人となり結婚も成人後早めにやるのが慣例のはず。

「アドルフ、ネレイト様の婚約者が決まるのは遅かったのか?」

「いえ、十歳の頃に第六王女様との婚約が決まっておりました、結婚式が遅れたのはネレイト様が戦争が終わってからと決めておられたため、この時期となりました」

ネレイト様、意外と真面目だよな、魔法に興奮しているのは演技では無いのかと最近思うようになってしまった、ロイジェルク様の跡取りだけあって侮れないんだよな。

俺が呼ばれているって事は当然ルリア達も一緒だよな、侯爵家としては衣装もしっかしした物を着て行かないと不味いよな。

俺は男爵の時に着ていたやつしか持ってないぞ、今から用意して間に合うのだろうか・・・。

「そうだったのか、出席するのは分かったが、俺やルリア達の服は新しいのを用意しないと駄目なのでは無いのか?」

「はい、そちらはすでに用意できております」

えっ、出来ているのか、サイズとか分かったんだろうか・・・。

「俺のサイズとか分かったのか?」

「エルレイ様のサイズはリゼから聞き及んでおります、奥方様のドレスはここへ来てから用意しておりましたので、数着は出来上がっております」

もう数着も出来ているのか、これから色々な機会でドレスは必要だろうから数着では足りないのだろうな。

「分かった、他に準備しておくことはあるのか?」

「全てこちらで準備しております、エルレイ様は結婚式に出席して頂くだけでございます」

「そうか、アドルフありがとう、では酒造所予定地の整地に行ってくる」

「エルレイ様、行ってらっしゃいませ」

執務室を後にし、ロゼと二人で整地に向かった、領地運営は土木工事と書類仕事だったがそれなりに楽しくやって行けている。

それもアドルフにほとんど指示されてやっているだけだが、今はそれでいいだろう、ずっとこの調子でアドルフ頼みのままの気もするが・・・。

そんな日々を過ごし、ネレイト様の結婚式当日を迎える。

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