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6 冒険者ギルド


 冒険者ギルドの建物は想像通りの堅牢なたたずまいをしていた。


 周囲の民家からはあきらかに浮いている石造りの建物だ。チラホラと出入りするおっさんやおっさんやおっさんたち……おっさんばっかだなおい!


 ともかく頑丈そうな鎧を着た厳つい顔のムキムキのおっさんたちが出入りしていていかにも冒険者ギルドっぽい。


 こんなところに入るなんて俺なら躊躇うところだが、アンのやつはあっさりと入って行った。ほんと怖いモノしらずだな……。


 ちなみにスマホは胸ポケットに入っている。底が浅いので丁度カメラの部分が外に出るかたちでいたって自然だ。


 あと自転車は厩舎のような場所においてきた。なんかモンスターっぽいのもいたので壊されないか不安だがいたしかたない。


『ふわー……おっきい剣とか斧とか持ってる強そうな人がいっぱいいるねー。みんーな強そうー』

「おい、あんまキョロキョロするなよ……絡まれたら面倒だからな」


 ガチムチ重装備のおっさんたちの中を夏服の女子高生が通る姿はさぞ異様なことだろう。嫌でも人目をひいている。


『みてみてあのお爺さん魔法使いかなぁー? 大きな帽子や杖が雰囲気あるよねー』

「指差すなってば!」


 怖いモノ知らずにもほどがある。浮かれるのもほどほどにしてほしい。


「ほら、さっさと受付に行けって」

『みーくんももっと楽しもうよー。せっかく観光に来たんだしさぁー』

「仕事探しにきたんだよ!」


 アホを言い聞かせて受付に行かせる。受付は若い女性だったのでホッとした。おっさんはもうお腹いっぱいです……。


『こんにちはーお姉さん。わたし冒険者になりたいでーす!』

『……』

『お姉さん?』

『あ、はい、失礼しました。冒険者登録ですね』


 アンに面食らっていたようだ。まあ気持ちはわかる。ほんとこの子なんでこんなに元気なんだろう?


『えっと……この用紙に必要事項を記入していただけますか? あ、文字が書けなければ代筆いたしますが?』

『大丈夫でーす!』

「待て待てほんとに大丈夫か?」

『大丈夫だよー。ほらー』


 スマホを取り出して用紙を見せつけてくる。たしかに読め……なくもない。しかしこれはいったいどういうことだ?


 ひらがなとカタカナと漢字と英語っぽいアルファベットがゴチャゴチャに混ざった奇妙な文章だった。それでもなんとか読めはする。読みづらいけどな……。


 アンはそんなことお構いなしに万根筆のようなものを手に取ると、さらさらと記入していく。


『できましたー!』

「はえーよ! ちょっと見せてみろ。お前のことだから余計なことを……それいぜんだったわ!」


 いったいどこからつっこもうか悩むほどだ。


「まずはジョブが女子高生ってなんだよ?」

『JKって書き直した方がいーい?』

「そーいう意味じゃねーよ! なんでわざわざその他にまるをつけて書き込んでややこしくしてんだよ。無ければ戦士にまるつけろって欄外に書いてあるだろ?」

『戦士ってなんかパッとしないんだよねー』

「戦士の方にあやまれ!」


 だがこのあたりは序の口だ。


「次はスキル欄のそれな……消せ無駄だから」

『えええーなんでー? レアな特技だと思うよこれー』

「なぁ……円周率を百桁言えることが冒険にどー役立つんだよ?」

『じゃあ肩を自在に外せるのはー?』

「それは気持ち悪いから消せ」


 ともかく役に立ちそうな特技は何一つなかったので全部消させた。だってバカだと思われるだろ? もう遅いかもしれないが……。


『あーあーまっしろになっちゃったー。なんだかラノベみたーい』

「突然冴えた例え言うのやめろよな!」


 ぶーぶーと文句を口にしながらも無事に提出。したのだが、受付のお姉さんが受け取ってくれなかった。何故だ?


「あのぅ……不備とかありますか?」

『え? え! あ、いえ、だ、大丈夫ですよこれで』


 しまった。うっかり話しかけてしまった。やはりスマホなんてものがない世界ででしゃばるべきじゃなかったか?


 村長の息子の反応を見てからなるべくアンには話しかけないようにしていたのだが……つっこまずにはいられなかったのだ。全部アンが悪い。


 すっごい見られているわ……。しかしお姉さんも聞いていいのかどうか迷っているようだ。できれば聞かないでほしいね。


『みーくん……急に黙ってどーしたのー?』

「…………」

『ねぇーねぇーみーくん?』

「話しかけるな!」


 ほらお姉さんがびっくとした……。もう好奇心に負けそうな顔だよこれ?


『め、珍しい魔道具ですね』

『まどうぐぅー? スマホのことぉー?』

『すまほと言うのですか……。聞いたことがありませんが喋る石版なんてはじめて目にしました』


 そりゃそうだろう。この世界にはないものだ。しかしこれは好都合だ。珍しい魔道具とやらと間違えてくれるなら怪しまれずにすみそうだ。しかし実際どれぐらい珍しいものなのだろうか? 盗難にあうレベルだと今後は人前のでの通信はひかえた方がいいのかもしれない……。


 お姉さんの胸につけられたバッジを見て名前を確認すると穏やかな声で語りかけた。


「こんにちはエリスさん。いかにも俺は魔道具ですが、エリスさんから見て俺の印象はどーなのでしょう?」

『え……印象ですか? そうですねぇ……その……黒くて硬そうで立派だと思います!』

「いや……外見の話しじゃなくて喋る石版なんて変じゃないかと……」

『あ、あ、そうですよね。失礼しました!』


 頭を下げたときにぶつけた額を赤くした残念なお姉さんが言うには、珍しいけど喋る武器などが存在するらしいの変ではないらしい。


『高ランクの冒険者さんの中には言葉を発する魔剣をお持ちの方もいらっしゃいますので……石版というのは初めて見ましたが』

『魔剣だってみーくん! あーし装備してみたーい!』

「興奮するな。お前には縁のないものだから諦めろ」


 アンは無視して話しを進めよう。まずは依頼について……。


『ええっとですね……受けられる依頼は一つ上のランクまでになります。アンさんは登録してたてでFランクになりますからEランクまでが可能です』

「なるほど……ランクは依頼をこなせば上がるんですか?」

『はい。ランクアップするに相応しい依頼をこなして頂ければすぐにもで上がります』


 依頼リストを見せてもらうとランクアップ依頼というのがあるようだ。進級試験のようなものだろう。


『みーんくん頑張――』

「頑張らなくていいぞ」

『えええー……』


 頑張ってランクなんて上がれば危険な仕事が増えるということだ。路銀さえ貯まればいいので頑張らない方向でいこう。


 とはいえ金はいる。


「なるべく危なくない仕事ってあります?」

『そうですねぇ……採取系でしたら』


 やはり採取系になるか。いくつか依頼書を見せてもらったが……。


「やっす……」

『Eランクまでですとこのあたりが相場ですから……』


 野生でもポーションになる薬草は一束で銅貨五枚が相場らしい。相当数をこなさないといけないようだ。見つけづらいとか村長の息子も言っていたし、群生地でも発見しないと割にあいそうにないな……。


「もう少し割いい仕事はありませんか?」

『う~ん……それですと少し危険ではありますが配達系はどうでしょう?』

「配達?」


 冒険者ギルドで請け負う仕事としては聞き慣れない依頼だった。おつかいクエスト的なあれだろうか? 


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