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26 思わぬ大収穫でにっこにこにー


『フ……フハハハハハハハハハハハハハハッッッッッッッ!!!!!!!!!』


 気の触れたような笑い声がダンジョンに木霊した。


『ばれてしまってはしょうがない……いかにも我がこのダンジョンの支配者だ!』


 意外とあっさり認めたな……。


 あれだけ無様に逃げ回っていたのだからもっと抵抗するかと思ったのだが……なにか裏でもあるのだろうか?


『どうした? 恐れをなして声も出せぬか? だがもう遅い! いまこの部屋に我の僕たるモンスターたちが集まってきている!』

「――ッ!」

『くっくっくっ……愚か者どもめ。耳をすまして聞いてみるがいいこの部屋に近づいてくる地響きが止まったときが貴様たちの最後だ!』

『みーくん……』

「ああ……今確認した。モンスターどもが移動をはじめたが――離れて行ってるぞ」

『――ッ!』


 コアのやつがハッタリだとか恐怖で狂ったかと騒いでいたが、地響きは徐々に遠くっていくうちに弱気になりとうとう口を閉じた。


「おい、あてがはずれたな?」

『何故だ……何故……まかさ貴様が何がしたのか!』

「してねーよ……その様子だとまだ気づいてないんだな」

『どういう意味だ!』

「俺たちがさんざん追い回したせいでモンスターの巡回ルートから外れたんだよ」

『なん……だと……?』


 移動するモンスターの動きはマップを見ていてルーチンワークだととっくに気づいていた。なのでこいつを追い立てるさいもブッキングしないように調整していたわけだ。


「お前は隣の空いてる部屋にしか移動できないみたいだからな。タイミングさえ合えばここまで誘導するのも簡単だったよ」


 まあ実際はダンジョンコアの権限でモンスターのルート変更とかできるのかと思い焦ったがそういうこともできないようでホッとしているところだ。


『みーくんすごーい!』

『馬鹿な……馬鹿な……』


 そしてどうやら宝箱から出て捕獲してしまうと移動はできないらしい。だからこれで――。


『チェックメイトだよっ!』

「おい、キメ顔でおいしいとこもってくなよ……」


 なんかダンジョンコアもアンを見ておののいているように見えるし……頑張って頭使って追い込んだの俺だよ?


『と……取引をしよう』

「ん?」

『お前たちもダンジョンに挑む冒険者ならレアな宝を欲しているのだろ?』

「なんだ命乞いか?」

『ち……違う! 我のところまで届いた勇敢な冒険者に敬意を表して宝を授けてやろうと言っておるのだ!』

「ほう……まあいいだろう」


 もともとお宝が目的で追い詰めたわけだしな。まさかダンジョンコアが入っているとは思ってなかったけど。


 コアもあきらかにホッとした様子だしこのへんが落としどころだろう……。


『取引じゃないのー?』

「黙っててやれ。こいつにも威厳とかあるんだろうから」

『ぐぬぬぬぬぬぬぬ!!!!!!』


 なんかいろいろと葛藤でもあるのか呻いていたコアだが、諦めたのか深い溜息をつくと足下に宝箱が出現した。


「アン、離すなよ」

『はーい』

『逃げるわけではない! 貴様たちにこいつをくれてやるだけだ!』


 触れてもないのに宝箱が開くと中には禍々しい雰囲気の鎧が入っていた。


『ふふふふ……どうかな?』

「この鎧のことか?」

『無論だ……このザ・カオス・メイルはあらゆる属性魔法のダメージを軽減するだけでなく状態異常無効化の効果もある。このダンジョン屈指のドロップアイテムと言ってもいい。感謝するがいいぞ』

『ええーいらなーい』

『なんだと!』

「まあこんなもんもらってもかさばるだけだしなぁ……」

『馬鹿な!』


 異様にいかついしたぶん重い。こんなもんカゴに入れてタイヤがパンクでもしたら最悪だ。


「どーせ着ないしこういうのはいいよ」

『正気か? その軽装で戻るつもりなら道中で死ぬぞ? まあ我としてはその方がありがたいのだが……』

「なんだお前気をつかってくれたのか?」

『ふざけるな! ただ高価そうな物を選んだまでだ!』


 勘違いしないでよね! とか言いそうだがちっとも萌えないな。


『えーいこれならばどうだ!』


 次に出てきた宝箱には禍々しい装飾をほどこされた細身の剣が入っていた。


『魔剣ソード・オブ・カオス・ジャッジメント……くっくっくっ……これはさすがに無視できまい。知ってのとおり闇属性にたいして絶大な攻撃力を誇る魔剣だ』

「知らねーけど?」

『なんだとおおおおおおおおっっっっっ!!!! 貴様それでも冒険者か? 対魔族の特攻武器だぞ? このダンジョンにもぐっている連中の大半がこれ目当てだろーが!』

「なんの話だよ? あと魔族とかいんの?」


 ありえんとかブツブツつぶやいて聞いちゃいない……。


「アンどーする? おまえ魔剣がどーのとか言ってたろ?」

『うーん……もっとかわいいのならほしかったけどこれはいらないかなー』

「そもそもかわいい魔剣なんてないだろ……」


 俺としては高値で売れればなんでもいいのでどうでもいいことだが。


「あのさーもっとかさばらないやつ出してくれるか? 装飾品とかあんだろ?」

『あるが……そんなもので本当にいいのか?』

「いいよいいよ指輪とかなら最高だな」

『指輪ー!』


 アンが異様にくいついてきたのでお宝は指輪でということに決まった。


『ならばこの暗黒の指輪ザ・カオス――』

「説明はいいからじゃんじゃん出せよ」

『調子にのるなよ石版風情が!』


 威勢はいいが弱い立場であることにはかわりないので、その後もじゃんじゃん宝箱を出させた。コアがぜいぜいと荒い息を出したあたりでゆるしてやることにした。俺ってば寛大だね。


 アンも両手に指に指輪をはめてご満悦だ。


『十回結婚した気分だよー』

「なに喜んでんだ? それ九回離婚したってことだぞ?」


 これで用はすんだのでコアを離してやる。


「それじゃ戻るか」

『おー!』


 サドルにまたがりペダルに足をのせたアンが振り返る。


『指輪ありがとー。また来るねー!』

『二度と来るな!』


 こうして俺たち大収穫を得てダンジョンを後にするのだった。


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