第1話 爆発する好奇心
「機巧」と書いて「からくり」と読むんだ。
新連載、千年機巧都市考。
短い文章で不定期に更新する。
初めての異世界スチームパンクファンタジー。
是非お楽しみください。
「あ、それはそこじゃn」
ムレミニア機巧都市にひっそりと佇む一軒の整備店の老舗。機巧の時空を刻む音に混じって爆発を何回も起こす不可解な整備店だ。
爆発音を覆うように湧いていた煙が晴れると、そこには灰に塗れる1人の少年が頭を抱えていた。爆発を起こした張本人である少女は笑い転げている。
「もー、だからギアは順番通りに嵌め込まないとこうなるんだって!」
少年の名前はパル。ムレミニア機巧都市では有名なラウル整備士一族の跡取り息子だ。自称世界に蔓延する機巧の仕組みは全て把握している。普段は穏便で喧嘩が好きなわけではないが、整備士としての仕事をしている時は豹変とした態度に成り変わる。
「アッハハハハハ!ごめん、ごめん、間違えちゃった。G5ギアよりF-H7ギアの方が先だったね!」
少女の名前はマライカ。快活で楽観でトラブルメイカーなパルの助手。今の爆発も彼女が起こしたものだ。
「パルもマライカに重要な役割を任せるのがいけないんだム」
爆発を工具箱に隠れ間一髪凌いでいた小さな緑っぽいドラゴン、アゴラ。自称スーパー凄いドラゴンらしいがパルには聡明、マライカには丈夫としか言われたことがない。
「うっせ、俺も今翼部のL49ギアを調整したり排気口の取り替えやらやってるんだよ!」
「だからって何もマライカに蒸気機関って機巧の心臓部を任せることはないんだム!」
「何をー!?機巧の整備に一切携わらねぇ癖に指揮官みたいに威張りやがって!」
「僕という指揮官がいたって爆発起こすのは何処の何奴だム!」
この整備店はパルの祖父が遺した評判の良い整備店だった。しかし、爆発を毎日のように起こすことが仇となり、今では限られた常連客しか利用しない事態に陥っている。他の客足は新しい整備店「チェヌセム整備店」に流れる。今回の依頼は飛空挺の修理。久々の仕事に闘士を燃やしていたが、またもや爆発が起こしてしまった。その苛立ちが行く宛なく仲間同士に打つかっている。
マライカが2人の視線の火花を心配そうに眺めていると、入口の方から入店時のベルが鳴り響いた。カランカランと乾いた鉄の音。
「あーあ、またド派手に爆発したね、パル君。これだから君の整備店の客足が僕の方に流れるんだ」
「チェヌセム、俺の整備店に何の用だ?」
聞き慣れた声がパルの耳を劈く。マライカやアゴラに軽く手で挨拶を交わしたチェヌセムはパルにゆっくりと話し始める。
「今日は別に君に自慢話を持ってきたわけじゃないんだ。ただ少し面白い話があってね」
「いつも自慢話は持ってくるんじゃねぇよ!で、話ってのは?」
「フフフ。それじゃあ早速話の内容なんだが、ムレミニア機巧都市にムレミニア城があるだろう?そこのダラミダ王が千年歯車サウンドギアの整備を頼みたいのだそうだという噂が出回っている。どうだ?一緒に立候補に行かないか?」
「千年歯車だと、だム?」
アゴラの反応にパルが聞くとアゴラが千年歯車について話し始めた。
「千年歯車って言うとムレミニア機巧都市の動作を司るこの街の心臓部だム。今日の飛空挺とは比べ物にはならないくらい複雑な機巧だと思うんだム。パルやマライカには扱えない代物だム」
少し重い空気が室内に籠る。
「えいっ!」
ドムッ!
「何やってんだよ、マライカ!」
「だって変な空気になっちゃってたじゃん!私ああいう空気嫌なの!アッハハハハハッ!」
わざと蒸気機関の管に小さいS2ギアを入れ込む。小さい爆発と共にチェヌセムの顔を燻みが覆う。
「あーもぉ!チェヌセム、すまないが今日は帰ってくれ!飛空挺の修理も間に合ってねぇんだ!返事はまた今度する!」
「なんだか知らないが分かった、また後日だね」
顔に付いた燻みを拭いながらチェヌセムはパルの整備店を後にする。
アゴラが口を開く。
「で、どうするんだム?千年歯車の件」
「どうするって言ったって俺には扱えない代物なんだろっ!」
雑巾で金属の輝きを探しながら拭う。
「今のパルではダメだって意味だム。修行をすれば問題ないんだム。お前のじいちゃんもやったことなんだム」
「じいちゃんが?」
「そうだム。千年歯車は凄い凄いって言い触らしてたんだム」
そんな様子を見ていたマライカも辺りの掃除をしながら口を挟む。
「私もその歯車見てみたいぞ!パル、連れてけ!」
「あー!分かった、分かった!分かったから蒸気機関の周りで暴れるな!そこで暴れたr」
爆発が日常になった整備店、「ラウル整備店」は今日もいつも通り。
こんな感じで物語は進みまs
ドムッ!
パラパラ……。