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プロローグ
貴族の女性、って言われたら、なんとなく上品な人を思い浮かべると思う。少なくとも、部屋に引きこもって食事もせずに2次元の世界に没頭するような女性を想像はしないだろう。
明日から夏期講習が始まるので、付け焼き刃の予習をしてみたのだけれど、配布された教材の題材がよりにもよってオタク女子の話だった。一度受験に失敗した僕らとしては、文章の中の彼女の行動には憧れる。というか妬ましいね。
去年の反省を活かして、やや苦手意識のある古文の講習を受けることにした。翌日からの四日間、みっちり古文を鍛えるつもりだ。でも、この道楽女を見てると羨ましくて苛々してくる。僕もラブコメを読みまくりたい。
なんとか設問を解き終えると、僕は明日の準備をすることにした。普段通っている予備校とは別の、ちょっと遠くの校舎に行くので、忘れ物をしても取りに帰る時間の余裕はないだろうから、いつもより念入りに持ち物の確認をした。
「ふぅ……」
荷造りを完了した僕は軽く溜め息を吐いた。苦手ということもあって、古文ばかりの四日間を思うと憂鬱になる。
「せめて、近くに可愛い女の子が来ますように……」
僕は無宗教なので、神だか仏だかに適当に祈り、床に着いた。
そして、神だか仏だかはいるらしい。




