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◆厨二病高校生イルのおはなし


  ったく、みんなは良いよな。

世界滅亡だとか、また地球崩壊だー、だとか、そんなこと気軽に言えちゃって、古代文明の予言っつーの?


 あーいうのを特に信じもせず、騒ぐだけ騒いで気楽に生きていられるんだからよ。何度も世界を救わなきゃならないコッチの身にもなってくれっつーの。


 この世界が、こうして呑気にクルクル回っていられるのも、誰かが回してくれてるから、って考えつかないもんですかねえ。一人で勝手に無限回転するエネルギーがあってたまるかっての、そんなの地球の自転でタービン回せば電気は今ごろバリバリだ。


  ……フゥ、やれやれ。

 今度は何だ、未来から? それとも宇宙から? 

それとも流行りの異世界からのダンジョンとかですか? 誰でも何でもどうでもいい。


 とっとと俺に斬り伏せられて、降伏するなり消滅するなりしちゃってくださいよ。


 ……さーてと、世界、救っちゃいますか。



 天草(あまくさ)()()。高校生。帰宅部。彼女ナシ、友達は居るが親友は居ない。

 成績は中の中の平々凡々、ちょっと珍しい名前をしただけの顔立ちもパッとしない男子高生。それが俺。


 そんでこっちは『月夜(フルムーン)宵闇穿(ダーク)魔剣(キャリバー)』。

 月の魔力を宿し解放する魔剣であり聖剣、暗い闇を照らし、あらゆる脅威を断つ静寂たる写し鏡。俺の相棒だ。

 そういうマンガだかゲームだかあるでしょう?

あーいうのに憧れて、俺が中学二年生の頃にダンボールと木材でDIYったこの大剣さんは、千の夜の間月夜に照らし、自作の詠唱を重ねてうっとりしていた内に、何やらクソヤバい魔術術式として覚醒してしまい、所有者である俺に力を与えたのだ。


 この世界に生きる人々は誰も知りはしない、この世界は何度も滅亡の危機を迎えていることを。


 恐怖の大魔王、古代文明の残した滅亡の魔神、超巨大隕石、銀河を統べる権力者からの制裁などなど、数えればキリが無いほど脅威達がこの地球やら宇宙に襲いかかっている。

  それらに立ち向かい、世界を救ってきたのは他でも無い、この俺と相棒だ。


 とはいえ、そう毎日のように脅威が押し寄せるわけでもない、そうともなれば所詮はただの日本高校生。

 気づけば次の春には、もう俺も三年生になる。世界を救ってるんですよー、なんて人に言っても信じてもらえるはずもなく、世間は冷たく人当たりは厳しい。


「進路……、どうするかなー……」


 進学してまでやりたいことなど微塵も思いつかないし、就職したところで世界を救うために三日から十日程休ませてくれる企業などあるだろうか。

 ……かといって世界を救わなきゃ世界は滅びちゃうし、とはいえ働き口が無くては日々の生活に苦悩する。

  はー……、ヤダヤダ。なんて可哀想な俺。

次の春までには、何かやること決めておかなくちゃな。


  もしもこの世界が退屈だとか窮屈だとか、儚いものか何かだと勘違いしてるお馬鹿さんが居たのだとしたら、一度俺のところに来て頭を下げてもらいたいものだ。

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