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第四話

あたしはブルーだ。自分がした人道が裏目にでるとは。

これが俗に言う『飼い猫に足を噛まれる』ってヤツ?



あたしが落ち込んでいると、一緒に罰ゲームを受ける舞が励まして来た。


「ドンマイだよ、恵美ちゃん!結局はゲームなんだから楽しもうよ!わたしはウキウキだよ!」


舞ちゃんがにこーっとして話す。

この子には緊張感がないの?


「あのねぇ舞ちゃん。委員長がなに言ったか覚えてる?」

沈黙。そしてえへへっとした顔が現れた。覚えてないようね。


「委員長はね『では、罰ゲームの知らせは世にも奇妙な方法で知らせるので楽しみに待っていてください』っと言ったの。あたしの今までの経験と女の勘が『こりゃヤバイぜよ!』って知らせてるの!きっと世にも恐ろしいことが始まる〜」


「『虫の知らせ』って言うヤツだよね。でも大げさだよ!常識的に考えて『お持ち帰りの牛丼を頼んで、店の中で食べなさい』とか『ドライブスルーを自転車で頼みなさい』とかだよ」


「舞ちゃん………それって古くない?」


「え〜?そうかなぁ。でも定番は新旧ないから大丈夫だよ」

そしてにこーっと笑った。


「大体、そんな精神的に辛いだけのものじゃないから。それに、悪乗りでクラス全員がグルになって考えるに違いないから相当なものになるはずよ」

これだから世間知らずこお嬢様(かどうかは知らないけど)は!!

「そ、そうなの?」

舞ちゃんの笑顔がひきつる。


「この一学期間、クラスの大体のヤツと話したり、一緒にいたりして思考はわかったつもりでいるからね。舞ちゃんは分からなかったのかな?」


「わたしはクラスの人と話さなかったから」

舞は笑顔になって返事をした。その顔には寂しさなどは感じられなかった。少なくても恵美には。


「恵美ちゃんが初めてで唯一の友達だよ!しかも、本当の!」


この子、なに言ってんだか。恥ずかしいじゃないの!

そのおかげで

「ま、まぁアリガト。」

って、つまんない返事しちゃったじゃないの!

今度からは、『え〜、やだな〜』って言ってやるんだから!



「でもさ、なるようにしかならないよね」

あたしの呟きと本音。

「まぁそうだよ。恵美ちゃん、一緒に頑張ろ!わたし、恵美ちゃんと一緒だったら頑張れる!」

笑顔の舞ちゃん。本音………なのかな?

もしかしたら、舞ちゃんは委員長に頼まれた仕掛け人かもしれないし。だって理由聞いても、『友達だからだよ!』って笑顔で言われたし。

この子、油断できない!

大体、クラスメートと喋ってないなんて有り得ないでしょ!




「とりあえず、帰りましょ。罰ゲーム同士」


「うん!」


あたしと舞ちゃんは一緒に家に帰った。

舞ちゃんはあたしの家の方向に家があるらしく、あたしの家に着くまでずっと喋っていた。

好きな男の人の名前、好きな歌手や俳優、逆に嫌いな歌手など、帰る時はいつも同じ様な話題ではなしている。

いつものあたしなら、『舞ちゃん、また同じ話題でつまんないよ。舞ちゃんってさ、あたしよりつまんない人間だね。』とか軽い冗談を言うんだけど、如何せん、仲良くなってまだ日がたってないから言ってないだよね。

舞ちゃんがクラスメートみたいに、あたしを馬鹿にする言動をしないのも一緒だと思う。

でもそろそろ頃合いかな?




「じゃあね」


「バーイ!」

心の中で『ふるっ!』っと思いながらあたし家に入った。

その時、舞ちゃんはドアを閉めるまで手を振っていた。



その夜、あたしが部屋でくつろいでいると、塾帰りの一つ上の姉(いわゆる受験生ね)がいきなり入ってきて尋ねてきた。

「恵美………夢ってなに?」

突然のことで、意味が分からなかったから枕を投げてやった。

あたしの言いたいことがわかったかな?




そうして、一日が終わった。


次の日



夏休みなのに登校するあたし。なぁんて生徒の鏡なんでしょ!


いやぁ、本当を言うと授業があるだけで登校してるわけで、本音を言うと行きたくはないんだけどね。

それで、登校中はストーカーされることもなく、怖いお兄さんにからまれることもなく、事故にあうこともなく、ケロベロスに噛まれることもなく、タナトスの声を聞くこともなく、ハデスに連れさらわれることもなく、ただただ紫外線を浴びながら登校したってわけ。

出会いかなんかないのかなぁ。

あぁ、あたしの運命の赤い糸は、まだ運命の人の糸と平行になっているのね。

そしていつかその人と結ばれて……………きゃぁぁぁぁ!!


限りなく膨らむ乙女の妄想









場所は生徒昇降口



あたしがいつもの様に自分の下駄箱(下駄はいれてない!)を開けると、白いものが『床に落ちている』ことに気付いた。

それは折り鶴だった。綺麗に作り上げられた真っ白な折り鶴。

その白さといったら、ちょっとした色でも敏感に反応してその色に染まりそうな白さ。

あたしはなんとなく拾い、手に持ったまま立っていた。


何分経ったかな。

舞ちゃんが生徒の波を滝登りをして来た。

そして、あたしが持っている折り鶴を見るなり笑顔で話しかけた。

「恵美ちゃん!恵美ちゃんにも知らせが届いたんだね!」


「え?これって知らせなの?」


「うん、そだよ。だってあたしも拾ったし、ほら!中も見てみて!」


あたしが折り鶴を解体して中を見ると文が書いてあった。


『この折り鶴を拾った人は願いを叶えてあげます。もし叶えてもらいたいならば、夜、学校の屋上に来てください』



なるほどね。これが委員長が考えた『世にも奇妙な方法での知らせ』ってわけね。

確かに、折り鶴で罰ゲームの知らせってのは奇妙で新鮮ね。


「でも恵美ちゃん、これに決行日は書いてないよ」


読み返してみるとそうね。

だけど!


「これは、いつでも来なさいってことに決まってる!」


「自信満々ってこと?」


「そ!ってことで今日、決行ね!」


「善は急げ!ってこと?」

舞ちゃん………それはだいぶ違うよ………



「でもさ、委員長も人が悪いよね。わたし達が罰を受けるのを願いみたいに書いちゃってさ」


「でも、あたし達は願い(罰)を叶える(受ける)のが前世からの宿命なのよ。運命じゃなくてね」


あたしと舞ちゃんは笑った。昇降口だったからちょっと恥ずかしいかったのはご愛敬。







昼休みって言うか放課後、二人は委員長にバレない様(だってなんとなく嫌だから)に折り鶴のことについて話した。

「でも、なんで鶴なんだろね?」


「なんか鶴ってめでたいものだからじゃないかな。鶴は千年、亀は万年って」


「なるほど。そこまでして、委員長はあたしをけなしたいと言うわけね。」

あたしは妙に納得する。

それにしても、まぁ、なんてあたしは悲劇のヒロインなんでしょう。


「にしても、この折り鶴、良く出来てるよね!わたしはこんなに上手くつくれないよ!」

そう言って舞ちゃんは自分の折り鶴を見た。あたしのと違って黄色だった。




確かに良く出来た鶴。一度解体して組み立てても、折り目がキッチリとしていて元の綺麗な折り鶴になった。

なんか………すごい。









学校集合は八時としてあたしは家に帰った。

さぁ、願いを叶えて貰おうじゃないの!!

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