第四話
俺達は屋上にたどり着いた。星空満天で満月だ。ちょっと寒いけど、それらしいムードが出ていた。
当然のことながら、屋上には誰もいなかった。まぁいるとしたら、巡回の先生だけどろうけど。
俺は呆然と立ち尽くしている野沢の肩に手を置き
「残念だったな。だけど、お前だったらこんなのに頼らなくてもキット自分の力で………」
俺が野沢に慰めの言葉をかけている時、ポケットの中に入っている折り鶴が白く光りだした。
野沢の折り鶴も光りだした。だけど、その色は赤かった。
俺達はポケットから折り鶴を取り出した。俺のは白いままだが、野沢のは赤だった。
「お前のって、赤かったか?」
「白だったと思うが、そんなことよりこれで願いが叶うんじゃないのか?」
野沢は俺の質問を流した。無理もない。
今、ホントに非現実的なことが起こっており、折り鶴に書いてあった通りに、願いが叶うかもしれないからだ。
俺も信じなければならないようだ。この現実を。
俺は、手の上にのっている折り鶴を見た。
白い輝いている――野沢のは赤く輝いているが――それは、紙全体が光っているみたいだ。
折り鶴を解体してみた。
依然として紙は輝いているが、前に書いてあった『この折り鶴を拾った人は願いを叶えてあげます。もし叶えてもらいたいならば、夜、学校の屋上に来てください』という文が無くなっていた。
その変わりに、『三つ願いを』という文に変わっていた。
「おい、見てみろよ。『願いをいえ』ってことだろ?これ」
俺は野沢に紙を見せながら言った。
すると、野沢は自分のを見ればいいものの、俺のを取り上げてはしゃぎはじめた。
「オレ達って選ばれたんだろーな!スゲェ!んじゃ、早速願いを…………」
「ちょっと待て」
「なんだよ?」
「まず、俺から言ってみよう。ここまで手の凝んだイタズラはないだろうが、確かめるだけだ。」
「そう言って、岩崎との仲のことを願うんだろ?」
「ちげーよ。寒いからコートを俺とお前の分をだしてもらうんだよ。しかも高級なヤツをな。これなら安全に調べれる」
そういうと俺は折り紙を握りしめて発声した。別に発声すれば叶うかどうかはわからないが。
「オレ達二人に高級ブランドのコートをくれ!!」
言い終わると、オレ達の背後で『ドサッ』という音が聞こえた。
振り向いてみるとコートが二着おちていた。
さっきの音はこれだろうな。
「スゲェ……本当に願いが叶うんだな……」
「女性ものの高級ブランドだけどな。さぁ野沢、お前のばんだ。チャンスもらってこい。そして、最後はあの実験でいいな」
「あぁ、オッケーだ。今日、付き合ってもらったしな。んじゃオレの願いは………」
野沢は一呼吸ついていた。
「藤堂と岩崎を別れさせて、岩崎の中学時代の藤堂に関する記憶を消してくれ」
俺の手からコートが落ちた、が折り紙はおちなかった。