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第二話

俺達は顔を見合わせていた。

野沢が質問してきた。

「どういう意味だ?」


「そりゃあ、『願いを叶えてやるから、夜、学校に来い』ってことだろ」


「そんなことわかっとるわ。なんで夜の学校なんだ?別に今だっていいじゃんか」


野沢が真剣に答えてきた。俺はその時は全然信じていなかった。


「お前、本当に願いを叶えてくれると思ってんのか?マンガじゃあるまいし」


「お前は信じていないのか?」


何時になく真剣な顔をしている野沢。

俺はため息をついて


「あのな野沢。この現実世界に願いを叶えてくれるヤツはいないだろ。『ゲーム機が欲しい』とか『新しい家が欲しい』だったら叶えてくれるヤツはいるかもしれないが、『原始時代にタイムスリップさせて』とか『透視能力を下さい』を叶えられるヤツはいるはずないだろ」


「それじゃあ、この折り鶴は?」


「イタズラ。しかも精巧に作られているからよっぽど暇人だな」

俺は正論を言った。始めは、この文章と野沢が持っていたことで驚いたが、真面目に考えるイタズラだと思うだろう。


野沢はしばらく考えていた。そんなに考えなくてもイタズラって気付くだろうに。

あまりにも野沢がダンマリしていたので、俺は折り鶴を元に戻すことにした。

俺のヤツを元に戻し、野沢のヤツのも直そうと取ってみると、薄く、それこそ目を凝らさないと気付かないほど薄くピンク色をしていた。

俺は不思議に思った。

確か、初めて見た時は真っ白だったと思う。俺のヤツと隣会わせても区別がつかなかったからだ。

だけど、今、隣会わせてみると区別がつけれる。さすがに純白と隣会わせたらピンク色が目立つ。

まぁ、俺が気付かなかっただけだろうと思いそれ以上考えることはなかった。



野沢の折り鶴も戻した俺は時計を見た。もう大分時間がたっていたので野沢に帰宅を申し出た。


「おい、帰ろうぜ。腹も減ったしさ」


「あぁ」

はっきりしない返事が返ってきた。










帰り道



「やっぱり願い叶えてもらいに行こうぜ」


「はぁ?」

野沢が急に切り出した。


「なんでだよ。嘘に決まってるだろ」


「なんで嘘って決めつけるんだよ。本当だったらどうすんだよ。お前が変わりに叶えてくれるのかよ」


野沢はちょっと怒った感じになった。


「あぁ、お前には岩崎っていう彼女がいるもんな。そりゃあ願いなんてないよな。でも、オレにはあるんだ。もしかしたらっていうことがあるかもしれない。だから行くんだ」


正気か?と思いながらも、しょうがない、という気持ちになった。

「しょうがねぇ、俺も行くよ」


「無理して行く必要ないぞ。お前、岩崎とか忙しいだろ」


「なんで、そこでアイツがでてくんだよ。まぁ、正直言うと俺にも叶えてもらいたい願いがあるからな。だから俺も行きたい」

嘘だった。本当はコイツと仲が悪くなりたくないからだ。


「そ、そうか。さすが我が親友だ。じゃあ、今日の八時。校門でな」


「なんで今日なんだよ。日時は書いて無いだろ」


「お前、クリスマスプレゼントを買って貰うのを我慢出来たか?」


「無理だな。わかったよ、今日の八時にだな」


「そういうこと!」


「でも何時に叶えてくれるんだ?指定がないからもしかしたらずっと待たなきゃいけないぜ」


「待ちゃ〜いいじゃん」


「へいへい」


決まってしまった。が、一夜犠牲にするだけで親友を貫き通せるなら安いもんだ………安いのか?


その時俺のケータイがバイブした。メールのようだ。送信者は岩崎。内容を見ると………


「わりぃ。一人で帰ってくれ」


「岩崎か?」


「あぁ。『一緒に帰ろ!』だってさ」


「あぁ青春。眩しすぎて直視出来ねぇ」


「それじゃ、そういうことで!」


俺は野沢の言葉をスルーして学校に戻った。

一人になった野沢は黙々と帰っていった。

その時、野沢が持っている折り鶴は薄いピンク色ではなくしっかりとしたピンク色に変わっていた。無論、藤堂は知らなかった。野沢も気付いてはいなかった。












「ごめん、待った?」

俺は校門で待っている岩崎を見つけるとそういった。

「ううん。それより、私が電話したの気付いてなかったの?」


そういえば、と思い、メールの確認をする時に着信アリの知らせがあったのを思いだしチェックしてみた。その相手はもちろん岩崎。時間は放課後になってすぐだった。


「ごめん。本当に気が付かなかった。」


「いいよ、いいよ。私だって気付かない時だってあるしね!」


「サンキュ。んじゃ、帰るか!」


「うん!」


こうして俺達は帰り始めた。

途中、俺は今日部活が中止で岩崎が部活をせず、俺と一緒に帰ろうと電話し、かからなかったから俺のために二時間待っていることに気が付いた。

このことを岩崎に話すと


「そんなことより、藤堂君が私と一緒に帰るために戻ってきてくれたことの方が凄かったよ!」

と言ってくれた。







「それじゃあまた明日ね、藤堂君!」


「明日は部活頑張れよ!」


俺は彼女を家まで送り帰路についた。



家に着き準備をしながら呟いた。

「これから、夜の学校探検か」

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