表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
5/7

5



隣に座っているユーレンに近付かれて、つい身をひいてしまった。そんなに大きくないソファーだ。背中はもう行き止まりで、これ以上さがれない。


「…まずは、少し離れない?」


エメラルドの瞳が、なんだか今は少し苦手だ。私を逃がさないと言うように、鈍く光っている。


「ミリーはさ。今日、あんな風に皆に詰め寄られるって知っていたよね?それも、あの男爵令嬢に」


…なぜ、それが分かったんだろう。怪しい行動はしていないし、私は誰にもゲームのことを話したりしていない。

どう答えればいいのか考えているうちに、ユーレンは目を細めた。嘘を考えているのがばれてる…そんな気がする。


「…そんなの、知っているわけないでしょう。別に呼びされたわけでもなく、あの方たちが教室にとび込んできたのだから」


先程の断罪は、ただの昼休みに行われたものだ。

別に昼休みに自分の教室にいるのはおかしくないはず。

ユーレンが私を見てくるため、視線をそらさないようにする。私は見かけからして悪役令嬢面だ。絶世の美女と呼ばれるくらいに美しいけれども、似合うのは淡いピンクではなく、毒々しい赤。自分自身でも引くくらいに、私には赤のドレスが似合う。

反対にユフィーはいつもパステルカラーのドレスばかりだった。


「ふーん、そう」


適当な相槌は、間違いなく私を信じていない様子。ユーレンの明らかな王子様顔が好きだ。前世でも、私はこの大好きな顔と大好きな声で王子様ルートを選んでいたような覚えがある。


それでも、こんなに近寄られてこられると恐怖以外の何物でもない。


これ以上後ずされない私の身体はソファーに倒れ込んでしまい、それを幸いにとユーレンが上に乗るように近付いてくる。


この体勢、すごくまずい。



「ちょっと、レン!何を疑ってるか知らないけれど、こんな体勢じゃ話もできないじゃない!」


「これくらい近寄ったほうが、ミリーは素直になるよ。8歳の時から急に僕と距離おきはじめたよね?そして、学園に入学して…あの男爵令嬢が現れたくらいからは王宮にもこないし、話し掛けても素っ気なくなった。気付いてないとでも思ってた?」


顔の横にユーレンの手をおかれ、囲われる。

うっと、つい息を詰めてしまったのが気付かれただろうか。

言う通りの行いをしてきた自覚があるからこそ、返事ができない。はっきり言って、気付かれていないだろうと思っていた。なんの確信があったわけでとないが、気付かれていないだろうと。


頬をスルリと撫でられ、硬い手の感触に身体が震えた。その姿を見たユーレンが、唇だけで笑む。


恐いのに、綺麗なその姿に、顔が赤くなっていくのが分かる。こんな近くまで近寄ったなんて、いつ以来だろうか。



「王太子妃なんて、嫌になった?あの男爵令嬢に譲ってしまおうと、そう思ってたの?」


「ちがっ、うけど…」


自信をもって違うとは言いきれない。

視線に耐えられなくなって、横を向いた。頬に責めるような視線が突き刺さる。


だって、私は悪役令嬢だから。ユフィーに断罪され、バッドエンドに向かうことは決定事項だったはずなのだ。

男爵令嬢を虐めた覚えはないけれど、私が虐めていると噂がとびかい、王子とユフィーが街中を歩いている姿を見たと噂される。最近の学園のネタは、この二つだけだった。だから、私はやっぱりこの世界は乙女ゲームの世界なのだと、シナリオは変えられないのだと思ったのだ。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ