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…ごめんね?
ユーレンが、わたしに謝った?
いやいや。違うでしょう。ここは、王族への無礼がどうとか、今までの行いが、とか、ユフィーを傷つけたからどうだの言うところでしょう。
少なくとも、ゲームでユーレンがミリアリアに謝る場面ではない。
もちろん、わたしはユフィーをいじめた覚えもなければ、幼馴染みでもあるユーレンに今更不敬だとか言われる謂われもないけれども。
私が前世の記憶持ちだと分かったのは、7歳の時だった。その頃にはユーレンに出逢っていたし、婚約者になるのはほぼ決まっているようなものだった。悪役令嬢にとってバッドエンドしか存在しないことは分かっていたから、その頃から最悪のエンドにだけはならないように頑張った。
斬首刑と、おじさんとの結婚。この二つだけは、必ず避けたかった。避けられれば、後はどうにか生きていける。だから、私は7歳から庶民の暮らしを学び、流刑になっても生きていけるように農業の知識を得た。それでも、今までぬくぬくと貴族令嬢の暮らしをしていた私が簡単に庶民になって生きていけるとは思えないけれど…。
「ミリー?気になることは何でも言って。全部改めるから」
ユーレンの前で固まってしまった私を覗きこんで、彼はそう言った。あ、然り気無くユフィーの手を振り払った。ユフィーが、あり得ないものを見るような目でユーレンを見ている。
…ユーレン、間違いなく気付いてるでしょう。
いや、私もあり得ないと思う。
もしかして、罵倒がたりなかった?まだ、言えと?
あれでも、考えて考えてだしたわるくちだったのに?
ユーレンに対して悪口なんて出てこないから、一生懸命考えたのに。
「…っ、婚約者である私をおいて、そんな男爵家の令嬢なんかと仲良くなって、貴方のことが信用できませんわ!」
出てこなすぎて、最後は本音がでてきてしまった。
わたしの大きな薄紫色の瞳は、すごめば悪役令嬢にお似合いの迫力がでるのだ。ユーレンにむかって、思いっきり凄んでやった。




