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通常ではありえない力を持った人々

完璧少女のおとぎ話

作者: 矢木 翔

第十一作ですね。

読んでやっていただけると幸いです。

 あるところに、成績性格容姿すべてがそろった女の子がおりました。その白すぎる性格故に沢山の友達を持ち、その清すぎる性格故に男は誰も彼女を振り回すことが出来ません。それが彼女にとっては紛れもない日常だったのです。


 しかし、ある日彼女は思ってしまいました。

「なんか、つまらないな……」


 そう思い立って幾日か経ったのち、天と地の創造主であり人間の行動の抑制者と名乗るじいさんが、彼女の前に現れました。要するに神です。神は周りから見て人間の鏡となり得る彼女が居ることにとてもご満悦。彼女が居ることで、一部の人間の抑制が不必要となったことから、彼女にお礼がしたい、何でも一つ、願いを叶えよう、と思い立ってやってきたのだそう。

 条件は一つ。願いを叶えるのは人間制御の力の利用がいるので、人に関するお願いだと言うこと。

 それを聞いた彼女は、せっかくなら面白い日常を求めようとして悩み、悩んだ結果こう願いました。

「とても、そんな人だとは思えない人に黒い面を」

 自分を取り巻く環境に波乱があれば面白かろうと思ったのです。


 次の日から彼女の思惑通り、彼女を取り巻く環境は大きく変化しました。

 友達として話していた相手が、私に嫉妬し、羨望の眼差しを向けてくる。なんと気持ちのいいことではないか。

 そして彼女は考えました。

 このまま、嫉妬をエスカレートさせれば、それが反面教師となり、私はもっといい子でいることができる。もっと、もっと嫉妬されてやらないと。


 数日後

 彼女の周りから人がいなくなりました。

 こんなはずじゃなかった。集団で動いている人々が、完全に私を避け始めたのだ。

 そう、彼女は感じ始めました。周りにいる人に話しかけても、だーれも彼女に言葉を返しません。彼女は完全に孤立してしまいました。今まで、人に囲まれて生活してきた彼女からしたら、この出来事でのショックは量りきれません。彼女は周りすべての人の性格が変わってしまったかのように思いました。

 あの神はとても沢山の人の性格を、私に不利になるように変えやがったんだ……

 やがて、そう考えるようになり、彼女は激昂し始めます。それが要因となってか、だんだんに彼女は荒れていき、更に人を寄せ付けなくなりました。


 そんなある日、彼女の願いを叶えた神が再び彼女のもとに現れました。神は尋ねます。

「願いが叶って、楽しい日々を送っているかい?」

 彼女は答えます。

「楽しいわけねぇだろ、このくそじじい! あの日以来、全く日常が楽しくなくなったわ! 一体、何人の性格を変えやがったんだ!」

 神は、ため息を一つつき、やはりこうなったか、と呟いて、彼女に答えを言い聞かせます。


「僕が性格を変えたのは、一人だけ。君の性格だけだよ」


 言葉が出ませんでした。彼女は、変わってしまったのが自分だという事実を、素直に受け入れられませんでした。でも、そう考えると、辻褄が合うのです。彼女の目からは自然と涙がこぼれ、彼女の体は力なく崩れ落ちました。

 神は言葉を続けます。

「一度変わってしまったものは、もう元には戻らないんだ。もしも、元に戻りたいと願うなら、君自身が努力するしかないよ?」

 その言葉を聞いて彼女は、力なくではありますが、確かに頷いていました。


 その日から、彼女は努力しました。積極的に他人に話しかけ始め、人に優しくし始めました。そのことばかりに気を取られていて、勉学の方にはあまり身が入らなくなっていましたが、彼女の努力の結果、また何人かの友達が、彼女を支えてくれるようになりました。それでも、あの人気者だった時とは大違いです。あの時は自分がどんなに良い思いをしていたのか、彼女は改めて思い知ったのです。


 自分は愚かだった。

 彼女は、そのことを素直に受け入れられるようになりました。それは、自らの非を認め、改善出来るようになることです。完璧であるが故に生じた欠点を、神は見抜いていました。


 少人数ではありますが、本当の意味で「友達」となった仲間とともに日常を送る彼女を眺め、神は空で微笑んでいましたとさ。


 めでたしめでたし。

他作品も読んでやっていただけると幸いです。

感想お待ちしてます。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 話の流れが分かりやすかったです。 [一言] 私は、この物語の主人公と似ても似つかぬ人間なのですが、もしも、才色兼備でありながら、それを真の意味で理解して、現実的に世の中に適応している人がい…
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