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天地創生  作者: 未優
3/6

ぼく

挨拶を噛んだからなのか、完全にぼくも相手も固まってしまった。扉を開けた少女も、その後ろに立っている少女より更に小さい白い服のひとも、完全に固まっている。


「あ、あの……」


耐えきれずぼくから口を開いた。開いてみたのはいいものの、先に続ける言葉が見つからない。ぼくにはなにがどうなっているかわからないのだ、口を開いてたった3文字で後悔するしかなかった。


「おはよう、ございます」


しかたがないので、もう一度挨拶をした。絶対に噛まないように細心の注意を払って。


すると、ぼくの言葉を聞いた少女は、扉に手をかけたまま表情を歪めて……あろう事か瞳からぼろぼろと涙をこぼしはじめた。なんということだ。ぼくは確かにモテた事はない気がするが、挨拶をするだけで相手を泣かせてしまうほどの残念な存在だったのか。


少しの悲しみを背負いながら、後ろのちみっこいのをみた。ちみっこいのは目を皿のように見開き、こちらをじっと見ている。そんなに挨拶だけで人を泣かす種族が珍しいのか。ぼくは更に深い悲しみを負った。


「……かった」


ぼくが悲しんでいると、少女が口を開いた。しかし、その音はか細く、ぼくの耳にはちゃんと届かなかった。どんな罵声を浴びせてきたのだろうか。


「よかっ……た。目が……覚め……たんですね」


よかった。目が覚めたんですね。ぼくにはそう聞こえた。きっと勘違いだ。ぼくはモテるタイプではない。思い出せなくてもこれははっきりと言える。したがって、ぼくを心配してくれる女の子なんていないはずだ。一体どんな罵声をそう聞き違えたのだろうか。


「よかった! 目が覚めたんですね!」


今度ははっきりと聞こえた。涙を浮かべた両目でめいいっぱいの笑顔で、きっとぼくにそう言ったのだと思う。


いえ、人違いです。と言おうとしたが、それを言う前に、少女は走って近寄ってきた。


室内です。ベッドがあります。そんなに広くないです。走ってきています。多分結構全力です。


そして、少女はベッドで寝ているぼくにのしかかるようにして抱きついてきた。動けないし、何もできなかったぼくは、上半身の比較的顔に近いあたりでその衝撃をすべて受け止めることになった。


よく見るとめちゃくちゃ可愛い女の子に抱きしめられ、意識が途絶えそうになる。この子は小柄で可愛い顔しているのに、案外力があって、正直危ないかもしれない。


ぼくの人生、何も覚えていないけれども。最期はこんなに可愛い女の子の腕の中で逝くことができて……幸せでした。


「これ、クドピリカ。やめなさい、相手は病人だぞ」


ぼくの意識が途絶える寸前に、ずっと固まっていたちみっこいのが声をあげた。その声に反応するように、クドピリカと呼ばれた少女は、ぼくから手を離した。


「うわっ! すみみゃせん!」


噛むと言うネタはぼくが先にやった。残念、二番煎じだったな。ついに来るか、人違いでした発言。と思ったが、クドピリカの両腕は、ぼくの身体を抱き上げるようにして、起こしてくれた。


「すみません、私ったら嬉しくて、つい騒いじゃいました……大丈夫ですか?」


「痛いよ」


頭で考える前に、口が動いてしまった。しかも素っ気ない感じになってしまい、遅れて後悔がどっとのしかかってくる。


それにしても、大丈夫ですか。と聞かれたのは何故だろうか。ぼくは一体どうしてここにいるのだろうか。


「さて、気が付いたかね君。まずは私から幾つか話をしよう。君の話はその後に聞こう」


ぼくが口を開こうとしたのを察したのか、ちみっこいのはそう言った。やけに偉そうだと思ったが、彼が持っていたカバンから、たくさんの医療機器が出てきた事から、本当に偉いタイプの方で、しかもぼくの治療をしていてくれたことを知った。


「まず、私だな。私は、バビロン。鼠族のビーバーで、医者をやっている。どんな種族でもどんな悪者でも助けられる命は助ける。それが私のモットーだ」


自己紹介は色々な器具を出しながら雑に行われた。そして、まだ器用に口を動かしながら、バビロンはぼくにたくさんの検査用であろう器具をつけていく。


「まぁ、検診みたいなものだ。まずは血圧や筋肉量をはからせてくれ。目覚めた以上は患者に合わせた治療をしないとな。それで、君は覚えてるかわからないがな。この村の端で倒れていたんだ。そこを、その、クドピリカが助けてくれた。まず私よりも先に彼女に感謝しなさい」


そう言われたので、ぼくは彼女の方に顔を向けた。ぼくと目が合うと、彼女はにっこりと笑った。なんと、彼女はこんな笑顔をぼくに向けながら、ぼくの身体を片手で支えている、恐ろしい力持ちさんのようだ。


「ふむ、血圧は正常。筋肉量は著しく低下しているな。これは、歩行訓練が必要になるだろう。まぁ、2ヶ月も寝たきりだったんだ。当然かな」


メモを取るペンで頭をかきながら、バビロンはそう言った。


「2ヶ月?」


「あぁ、そうだよ。君はクドピリカに発見されてからここで2ヶ月間寝たきりだった。だから間違いない。さぁ、今度は君の番だ自己紹介したまえ」


バビロンはカルテによくわからない文字でメモを取り、器材を片付けながらぼくに自己紹介を促してきた。


「あ、はい……えっと、ぼくは」


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