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知らぬは本人ばかりなり

作者: 井上さん
掲載日:2026/10/30

名前を借りました。


フィクションです

 図書室へ行くと、いつも本を読んでいる女子生徒がいる。


本を見つけられずに困っていると、一緒に探してくれる。

もっと良い本があると、教えてくれる。




 俺エキスカと、彼女との出会いは、ちょっと悪さをして、担任から課題が出された時だ。答えが分からなくて図書室でウンウン唸ってたら、心配して声を掛けてくれた。


 彼女は、同学年らしい。ほとんどの生徒と話した事は無いから、彼女の事も知らなかった。


彼女は、分かりやすく解説してくれた。やっと課題が終わると、がんばりましたね、と褒めてくれた。


 その時に、彼女を好きになった。




…どうやったら彼女とお近付きになれるだろうか?


私は、側近に相談した。


お礼にお菓子を…と言われて、きちんとお礼を伝えたか、自信がなくなった。


 次の日、側近に用意してもらったお菓子を持ち、図書室に行った。


彼女はいつも通り本を読んでいた。


「昨日はありがとう。助かった」


 緊張しつつも、なんとかお礼を言えた。


「わざわざありがとうございます」


 彼女は微笑んだ。


可愛い。好き。


もっと一緒にいたい。


「そ、それじゃあ…」


 お菓子の存在を思い出し、彼女に押し付け、私は図書室を出ようとした。

私と入れ違いに、男子生徒がやってきた。


「やぁ!前におすすめされた本、面白かったよ。またおすすめを教えてほしいな」


 男子生徒は、親しげに彼女に話し掛けていた。


恋人だろうか?


…おすすめされた本?


私も聞いてみようか?


そこまで考えたところで、名前すら聞いてない事に気付いた。


 明日は名前を聞いて、おすすめの本を聞こう…




彼女の読書の邪魔をしてはいけないと、図書室の隅で本を読む振りをして彼女を伺う。


 彼女は、図書室を利用する生徒達から慕われていた。

勉強の分からない所を聞いたり、おすすめの本を聞いたり。


彼女と話した後の生徒達は、明るい顔をして図書室を出ていった。


 もしかして、彼女目当てで図書室に来ているとか?




彼女といると癒される…




彼女と一緒にいたい…




「あ、あの…」


 俺は思い切って彼女に声を掛けた。


「はい?」


 彼女が首を傾げた。可愛い。


「おすすめの本を…教えてほしい…」


「私のですか?」


「そうだ」


「どんな本をご希望ですか?」


「貴方が1番好きな本を…」


 声が小さくなってしまう。恥ずかしい。


「ちょっと待っててください」


 そう言うと、彼女は本棚へ向かった。




彼女おすすめの本を借りて帰ろうとして、まだ名前を聞いていない事を思い出し、お礼を言いつつ名前を聞いた。


彼女の名前はコントラ。

可愛い名前だ。


…俺…名乗ったかな…?




 女の子と仲良くなるには、相談をするのが良いと側近が言っていたので、実行する。


「相談に乗ってほしいんだ」


「相談?」


 コントラ嬢が首を傾げた。可愛い。


「女の子と仲良くなるには、どうしたら良い?」


 ついウッカリ、本音を言ってしまった。


「女の子と…?」


 彼女がまた首を傾げた。可愛い。


「そうだ」


「好きな子ですか?」


 ドキッとした。


「…それは…まだ分からない」


 尻すぼみになってしまう。


「分からない?」


「恋かは…分からないんだ…ただ…近付きたいだけで…」


「…う〜ん…そうですねぇ…」


 彼女は、しばらく考えていたが


「正直に、仲良くしたいって、言うのは?」


 コントラ嬢が言った。


「言ったら仲良くしてくれるか?」


「ちゃんと、友だちになってくださいって言えますか?」


「友だちになってください…」


 思わず食い気味に言ってしまった。


「…私で練習ですか?」


 彼女がまた首を傾げた。可愛い。


「違う。君と友だちになりたいんだ」


「…え?」


 驚いた顔も可愛い。

あれ?もしかして、嫌がられている?


「…嫌だったか?」


「嫌ではないですが…」


「迷惑か?」


「迷惑ではないです。相手が私とは思わなくて」


 まぁ、普通は本人に相談しないか?


「そうか?」


「普通、本人に相談しないと思います」


 やっぱり。


「そうか?でも、仲良くしたいのも、相談できる相手も、君しかいないし」


 つい、正直に言ってしまった。


「私と友だちになりたいんですか?」


「そうだ」


「分かりました。よろしくお願いします」


 コントラ嬢は笑って受け入れてくれた。嬉しい。


「ありがとう!これからよろしく!」


 どうにか友だちになれた。


もっとお互いを知って、もっと近付くぞ!親友くらいにはなれるだろうか?




 私は図書室で勉強したり、読書したりした。


彼女と出会った事で、勉強が捗った。

彼女に無様な姿は見せられない。

良いところを見せて、好きになってほしい。


今まで不真面目だったから、真面目に勉強するようになり、両親は喜んだ。




 俺より弟のほうが優秀なのに。


俺より、弟が跡を継いだ方が良いのに…


「どうしました?」


 コントラ嬢が話し掛けて来た。

図書室で本を読んでいたのだ。

が、考え事をしていて心配させてしまったらしい。優しいな。


「俺より、弟の方が優秀だから弟が跡を継げば良いのにと思っているんだが…」


 やっぱり、話を真剣に聞いてくれる人は、ありがたい。つい、甘えて話してしまう。


「両親は、貴方に継いでほしいの?」


 コントラ嬢が言った。


「長男だからな…期待されている」


「それなら、貴方にも継げるんじゃない?」


「弟の方が器用だし、勉強もできるし、剣も強い。友人も多い。社交的だし。弟が跡を継いだ方が良いに決まってる。俺よりも領地を繁栄させられると思うんだ」


 俺が領主になるよりも。


「エキスカは、何か他にやりたい事があるの?」


 名前を呼ばれてドキッとしてしまう。


えっと…やりたい事?やりたい事…?


「…何も無い」


 他にやりたい事があるわけではない。


「跡を継ぎたくないの?」


 継ぎたくない、と言う程ではないが…


「私より、弟が優秀だから…弟が領主になった方が良いんじゃないかなって…」


「ご両親や弟さんと話してみたの?」


「いや…」


「話してみたら?ご両親の考えも分かるかもよ」


 コントラ嬢が言う。


「そうかな?」


 俺は、コントラ嬢を不安気に見た。聞いてもらえるだろうか?


「話してみなければ分からないわ」


「…そうか…そうだな。ありがとう。話してみる」


「がんばってね」


「ありがとう」


 コントラ嬢に励まされて、両親と話し合ってみる事にした。






両親と話した。

弟の方が優秀だから、弟が継いだ方が良いと思う、と。


両親と弟は、俺が長男だから継ぐべきと考えているらしい。


 でも、俺より弟の方が器用だし勉強できるし剣も強い。人当たりも良い。友人も多い。社交的だし。人を見る目もある。


 俺は不器用だし、1人でいるのが好きだから、友人は少ない。


長男だからと流されて私が継ぐより、弟が継いだ方が良い。

だから、一度、弟が継ぐ事も考えてほしい。


 上手く言えなかったが、思っていることは言えた気がする。




…コントラ嬢に相談して良かった。


コントラ嬢が友人でいてくれる。そばにいられて嬉しい。




 図書室に来るやつらには、俺の気持ちはバレているようで。


黙って見守ってくれている。

たまに、生温かい目で見られるのは…ちょっと恥ずかしい。


でも。


 コントラ嬢は…普通に友人として振る舞っている。

まぁ、婚約者でもないから、余り近付けない、というのも、勿論ある。


 他の生徒達への態度と変わらないから、俺は男として意識されてないんだろうなぁ…




 こら、そこの男。

可哀想…という目で見るな。

情けなくなるだろ。


 こちらをチラチラ見ながら、本棚の前で本を探している男子生徒を睨みつけた。






 他の生徒がいなくなってから、彼女に声を掛けた。


「コントラ嬢。この前はありがとう。両親と弟と話した。一度、考えてくれる事になった」


「良かったね」


 コントラ嬢は笑顔で言った。可愛い。


「本当にありがとう。…それで、お礼に…あの…一緒にカフェにでも行かないか?」


「カフェ?」


 首を傾げた。可愛い。


「流行りのカフェがあるらしい。美味しいケーキがあるんだとか」


 側近に、お礼にデートに誘えと言われたのだ。


「ケーキですか?」


 令嬢は、ケーキが好きらしい。


「良ければ、一緒に行かないか?」


「私で良ければ」


「コントラ嬢のお陰で両親に思っている事を言えたんだ。お礼がしたい」


「分かりました」


「今度の休みに、迎えに行く」



 約束を取り付けた。

デートだ!!

俺は浮かれた。




 少しでも、俺の事を見てほしい。男として意識されたい。


その為にも、デートの日は、がんばるぞ!



読んでいただきありがとうございます

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