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第七〇話 宣戦布告・上

『スカアハ』と『ディオーネ』が王都ラダナイヤに戻ってきて、ラストラとフィチはベルティナ空中艦隊本部の会議室で、艦隊本部の高官とエゼルベシアの駐在武官から質問――と言うより詰問攻めにあっていた。


 それはフィチの補佐として着いてきた俺も閉口するほどだった。


 まあ仕方ないだろう。俺の作った報告書と戦闘詳報、そして『ディオーネ』艦長の作ったそれは余りに現実離れしているのだから。


「九パーム地点に突然現れて、一一パーム地点で突然消えたなど怠慢や戦闘回避の口裏合わせにしては随分と荒唐無稽過ぎやしないですかな? 四将」


「貴様はその場に居ないからそう言えたのであろう! 確かにあの艦は突然現れ、消えたのだ! あれは確かに何らかの装備を用いていた!」


 軽薄な印象を持たせる駐在武官の訝しげな質問に、ラストラの銅鑼声が反論する。


「では新生アウストムネシア帝国と言うのは? アウストムネシア民主共和国と違うのか?」


「わたくしも解りかねます。ですが間違いなくその内容の通信文を受け取りました」


「必要とあらば通信文の紙テープも用意出来ます。通信室に保管を命じましたので」


 胡乱げな目を向ける艦隊本部の猫人族ケット・シーの将官に、俺たちもそう答える。


 結局あの場に立っているもの以外、誰もあの出来事を現実だと認められ無いのであろう。


 現に俺だって報告書を作りながら、あれは疲労が生んだ白昼夢であったのでは無いかなどと思ってしまったのだから。


「埒があかんな。とにかく君たちはその所属不明の重戦艦の言う通りにし、火薬の密輸船を逃した。哨戒の任を果たせなかった。それで良いのだな」


「それで間違いありません」


 細かい部分を取り除いて、大枠を説明すればそうなる。


 隻数は二倍近くとも、護衛の『ブロッサム』らはあの場で戦力として数えるには頼りなく、『ディオーネ』『セレナ』も重戦艦を相手どるには条件を整えないと難しい軽巡空艦。


 しかも全てが臨検停船中に遭遇してしまったからには戦っても全滅は必至だった。


 ディレン自身が現れたが、追撃も出来なかった時点で哨戒の任を果たせなかったのは確かだ。


「しかし今回の哨戒で唯一はっきりしたことがある」


 ラストラは獅子髭の下の口をゆっくりと開く。


「マーカス=ディレン一佐は新生アウストムネシア帝国を名乗る帝国残党――恐らく

ヴィルフリート=ナグヴィッツの『消えた艦隊』に合流したと言うことと、『消えた艦隊』は戦力をかなり増していると言うこと。そしてこれは我が国やベルティナにとって由々しき自体になりうると言うことだ」


 ラストラの重い調子の声に、駐在武官も艦隊本部の将官も黙り込む。


 エデルトルート帝の忠臣であり戦力を保持したまま姿を消したナグヴィッツが生きており、エゼルベアシア空中艦隊内部でもナグヴィッツに感化され、離反するものが出た。


 恐らくまだナグヴィッツに賛同するものやリクルーターたちはエゼルベシア空中艦隊内部に残っているだろうし、ベルティナにも同様の考えを持つものも居るはずだ。


 ナグヴィッツに関して想像しうる中で最悪のシナリオが今進んでいる。


 そのことに関しては誰も異論を挟まなかった。


 何やら外が騒めきだし、会議室の扉が突然開かれたのは、そんな時だった。


「皆さん! 外へ! 外へ出て下さい! 大変なんです!」


 若い士官が息も絶え絶えにそう叫ぶ。


「何があった!」


 猫人族の将官が士官を詰問すると、士官は切羽詰まった青い顔で答える。


「アウストムネシア帝国の国旗が、空に映し出されています!」


 俺も含め、全員が目を見開いて己が耳を疑ったのは当然だろうか。


「とにかく外へ!」

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