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第五十八話 禍血の秘密・上

「せっかくの非番にワシのところに来るなど、フィチは怒らぬのか?」


 ぐるる……と唸り声と共に、目の前の四〇シルケはあるであろう翠鱗の賢竜が俺に語りかける。


 ベルティナ賢竜殿。ベルティナを守護する賢竜、ドール・ククラの住処を一人訪れていた俺は、本来巫女や王家の者しか入れぬ賢竜殿の奥へと、彼女自身の許しを得て入るのだった。


 今は俺もミルシェルファ王家に連なる者だから良いらしいのだが、元々異国の将校である人間を入れるのはどうかとも思う。


 尤も俺は空中艦隊内でもドール・ククラ自身に相当信頼されているようなので、特別扱いらしいとのことだが。


 数回会っただけで相当信用されると言うのも中々無いらしい。


「フィチなら今朝方イシュアさんが連れて行きましたよ。王女出席の式のなんとかで……それで俺だけが取り残されて」


「そういうことか。互いに外様の辛いところよの」


 からから、ごろごろと喉を鳴らして笑う彼女に、俺は彼女の発した奇妙な言葉に違和感を覚える。


「貴方はベルティナの賢竜でしょう? 何故に外様などと」


「ワシもぬしと同じゲリルテの島で敗れ、拾われた流れ者だからの」


 ゲリルテの島。


 その地名が大エゼルベシア本島だと気づくまでに、俺は少し時間がかかった。


「征服王エゼルアルブがゲリルテの七つ国を統一するより前、ワシは七つ国が一つ、キルマシアの賢竜であったのよ」


「戦国時代か……」


 酷くスケールの大きな話に圧倒されてしまう。


 賢竜の寿命は五千年という。おおよそ千年前のエゼルベシア統一前の戦国時代など彼女の身からすれば十年前も同じなのだろう。


「エルゼアルブの軍勢がキルマシアを蹴散らし、賢竜ミフォ・タミァクがワシのココを食い破り、ワシは命からがらこの島へと流れた。そしてワシを拾った時の妖精族の女王メイヴに忠誠を誓った。ぬしと同じじゃろう」


 ココ、と彼女は首筋の色の微妙に異なる鱗を巨大な爪で指さした。


 歯形型に色の異なる鱗は、確かに他の竜に牙を突き立てられ、食い破られた痕だ。


「成程、確かに俺たちは似たもの同士かもな」


「じゃろうて。ユフ」


 くるる、と楽しそうに喉を鳴らすドール・ククラに、緊張がほぐれて行く。


「して、何用で尋ねた。ただ茶飲み話をするためにワシの住処を尋ねるほど、ぬしはマメな男ではないだろう」


 そう尋ねる彼女の声は硬質そのものだった。


「ドール・ククラ。飛空艦の竜血機関に通じた賢竜の貴方ならわかると思って聞きに来た」


 俺はここに来た理由――飛空艦に携わる者誰もがきっと知りたがっている疑問を切り込む。


「アウストムネシアの濃縮竜血――貴方が禍血と呼ぶあれは一体何を使っている」


「やはりぬしもそれを聞くか」


 全て見通していたようにドール・ククラは硬質な口調のまま続けた。


「知ってどうする。アレを作るか」


「作らない。それでも知りたいんだ」


「何故に?」


「きっとだが……俺はあれを求める者に目を付けられた」


 俺はディレンが通信した文章を思い返す。


 かつての帝政アウストムネシアの檄文のような、より強くあろうとする、力を追い求めその力で秩序を建設し、世界を支配しようとする者の文章。


 ディレンはきっとそう言う世界を作ることに俺を誘い込み、そして故あればフィチを葬ろうともするだろう。


 だからこそ知りたいのだ。ディレンが、世界中の飛空艦関係者が追い求めた、エデルトルート帝の禍艦の秘密を。

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