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第二次世界平和 ~2周目の世界に前進した我々はハッタリスキル〈デモ活動〉で世界平和を要求します~  作者: 水山天気
第2章 ウラキア vs. 一夜城

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法律

 夕食のあと、

「もう泊まっていけよ」

 とラグーが言ったので、そうすることにした。

 室内には木製のベッドが二つあり、片方には武器や道具が置かれている。

 ラグーはそれを床に移してベッドを空け、

「おれ、ステラを連れてくから」と言って外へ出ていった。

 ウラキアの町の南東区画には共同の馬小屋があり、町民の馬はその小屋で飼育されている。ラグーも、自分が町内の仕事で忙しい時や、逆にゆっくりと睡眠をとれそうな夜には、そこに馬を預けているようだ。


 この町の人間にとって、馬は家族のようなものらしいが、よその悪人から見ても価値のある〈財産〉でもある。

 ウラキアの町自体の治安はとても良さそうだが、


 ——町の防壁の外には、ふつうに殺しにくる盗賊がいるような土地なんだよな。


 20分も経たないうちにラグーは戻ってきた。

 二人で歯を磨き水を浴びてから、ランプの火を消してベッドに横たわる。

 ラグーは、なかなか眠れないようだった。

 何度も身を起こし、体の筋を伸ばしたりしているような気配がする。


「エイチャ、まだ起きてるの?」と彼は言った。「うるさくしてごめんな。昼にちょっと寝たからさあ」

「気にすんなよ。つか、ちょっと話してもいい?」

「おう」

「この町、っていうかハルマニア公国? この国の法律ってどうなってんの?」

「法律……?」

「……ゼノだった?」

「や、法律はわかるよ。国が約束するやつだろ。盗賊は必ず捕まえて殺すから安心しろとかいうやつだよな」

「まあ、そんな感じの」

「けど、ウラキアは関係ないんだよ。何かあったら、おれたちが決める。ハルマニア公国も、この町には口を出さないことになってる」

「まじか。つえー」


「親父の代から、ずっとそうだよ」とラグーは言う。「ちょっと危なかった時もあるけどな。エイチャの住んでたとこは、どうしてた?」

「ふつうに法律があったよ。なんかやったら牢屋に何年とか、これをやったら殺すかもとか、そういう値段表みたいなやつは見たことある」

「法律なあ……。あるのが普通、なのかな。こっちだと、北と南はゴチャゴチャしてるけど、西と東にはだいたい法律があるっぽいよな。もし行く時あったら、ジャッジに訊いといたほうがいいよ」

「わかった。西はダーヌ王国で、東は、ネオイーサか。今は行きたくねえな」

「ああ。アブナガ軍に占領されて、もう昔の法律とか全部終わってるだろ」

「……アブナガがいた、もっと東の、スールア帝国だっけ? そことか今、どうなってんの?」

「あ、それだ。それも法律だ」

「ん? それも、ってなに?」

「なんかスールア帝国な、すごい奴が皇帝になって、すごい法律を作ったっぽい。ジャッジが驚いてた」

「え、それわりと最近の話?」

「5年くらい前かな」

「ちょっと気になる。どんな法律?」

「おれは知らない。つうかごめん、もう関係ないかも。その皇帝、アブナガに負けて殺されて、全部ナシになったから」

「やべえな……」


 ——つまり東は、丸ごと無法地帯かもしれないのか?


 1周目の世界の人間が生きていける環境なのだろうか?

 法律がしっかり決まっていないなら、まわりの人間関係とか運とかで暴力が決まる可能性が高くなる。


「ここは、いい町だよな」

 と俺は言った。

 マブい女も、こういう場所に運よくたどりついていてほしいと思いながら。

 ラグーがこちらを向く気配がした。

「おれな」とラグーは言う。「みんなに帰ってきてほしいんだよ。この町に」


「……ああ」

 俺の口から声が漏れた。

 ラグーが言っているのは、東西南北に分かれて暮らしている兄弟たちのことなのだろう。

 各地を流れている情報を聞き逃がさないため。そして、ハルマニア公国やダーヌ王国の貴族に根回しをしておくために、あえてバラバラに散らばっているという。

 そして今は、誰も彼もが全力で動かなければならない時だ。


「もうずっと会ってない奴いるよ」ラグーは少し、涙声になっている。「あと何回、メシ食えるんだよ」

「ウラキア、守っとくしかないだろ。ぜんぶ落ちついたら、俺もいっしょに食いたい」

「エイチャは兄弟いるの?」

「いない。子供のころからの仲間はいるけど、法律で牢屋に入れられてる奴とかいるし、全員そろったのはすっげー昔。だし、これからもなー」

「……ごめんな。エイチャのほうが辛いよな」

「いや、俺はいきなりこんなだから、辛いとかまだよくわからないんだよ。べつに、みんなでメシ食ったのがなくなったわけじゃないし」

「……そうか。そうだよな」

「ああ、あと親父がいるけど、その親父も、ちまちま実家に帰ってくるより、マブい女を見つけて連れてこいしか言わねえ親だから、見つけるとこまではお言葉どおりにしてやるよって感じ」

「そっか。絶対、見つけような」

「こっちが見つけてもらうんだけどな」

「おう。有名になれよ」

「けど今は、戦争をよけるのが最優先だな。もっかい死んだらたぶんそこまでだし、俺、戦争の中で生きてく自信ねーし」

「……おれだって、ないよ。……けど、死んでも、そこまでのことが全部、ナシになるわけじゃないよな……」

「そらそうだろ。そこだけは曲がらねえよ、って親父が言ってた」

「……うちの親父も…………」

「おう」

「……なんか、言ってた気がする……あの…………ジゲンのやつ……」

「え、いま、次元とか言った?」

「あれ……言った…………悪い……どっかに、おぼえて……なんだっけ…………」

「寝言かよ」

「むう……」

 それっきり、ラグーは何も言わなくなってしまった。

 寝息だけが聴こえてくる。

 俺もよく眠れそうだ。


 アブナガ軍の部将——西部方面軍のトップのテヤトミ・ヒデオがウラキアの町に来たのは、その1週間後のことだった。

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