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第二次世界平和 ~2周目の世界に前進した我々はハッタリスキル〈デモ活動〉で世界平和を要求します~  作者: 水山天気
第2章 ウラキア vs. 一夜城

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仮面

 俺たちが小屋に入ると、ロージャンは虚ろな顔をこちらに向けた。

 動きが鈍い。

 この短時間で一気に老けこんだようにも見える。

 なんかすまない。


 ジャッジは空いている椅子を動かして、ロージャンの正面に座った。

 そして彼に言う。

「ロージャンさん。あなた、この町を出たらメトロ・ポタリンに殺されますよ」

「え……」

「だってそうでしょう? 考えてみてください。あなたは仕事をしくじって、ウラキア兄弟会に捕まった人間です。そんな人が無傷で町を出たことを、もしポタリンが知ったら……いえ、必ず知ることになるでしょう。奴の情報網は、実に恐るべきものです。ねえ」

 ラグーと俺はうなずいた。

 ジャッジは続ける。

「我々としては、あなたがたに薬草を奪われた被害者への()び料さえ回収できればそれでいい。しかし、ポタリンは残忍なやつです。ごぞんじでしょう。ほとぼりがさめるまでは、この町で被害者のために働くことをおすすめします。詫びがすんだら、正式にこの町の住民になってもらってもいい。この町にはヤブサワ・エイチャとウラキア兄弟会がいます。ポタリンが住民に手出しをできるような町ではありません」


 そう言ってからジャッジは、ラグーに眼をやり、自分の左腰を叩いた。

 ラグーが腰から刀を抜き、ロージャンを椅子に縛りつけていたロープを切る。

 ジャッジは立ち上がり、ロージャンに尋ねた。

「ロージャンさん、家族はいますか?」

「……おりません」

「でしたら、迷うことはありません。この町で働きましょう、ロージャンさん。被害者への詫びがすむまでは、やや厳しい暮らしをしてもらうことになりますが、そのあとは自由です。住む場所も提供します。イヤですか?」

「いえ、あの……お願いします」

「じゃあ決まりですね。行きましょう」


 力なく立ち上がったロージャンを連れ、ジャッジは小屋を出た。

 俺とラグーもついていく。外はもうすっかり暗くなっていた。

 ウラキアの夜。

 ジャッジは服の内側から小さな笛の束を取り出し、その中の一つを口に当てて短く鳴らした。

 闇の向こう——町の外れのあたりから同じような音が返ってくる。

 しばらくすると、北東からこちらへランタンの明かりが近づいてきた。

 先頭を歩いているのは巨体の男。ハッピーだ。

 そして、様々な仮面をつけた者たち。大股で歩くハッピーの後ろから、小走りでついてくる。ちょっと怖い。彩色された仮面の紋様(もんよう)にも迫力があるが、むしろ、面でおおわれていない部分——人間の眼と唇が生々しい。


「あれ? 今夜の当番はサラリーだよね?」

「サボリだアイツ。帰ってこねえんだよ」

 ジャッジの問いかけに、ハッピーは忌々しげに答えた。

 ジャッジは言う。

「悪いけど、一名追加。いろいろ教えてあげて」

「また盗賊かよ」

「そこは言いっこなし。明日話すよ。まだ仮面のストックはあるよね」

「おう。じゃあ連れてくわ」

「頼む」


 ハッピーたちはロージャンを連れて、来た方角へ引き返していった。


 ——この町、こういうことがよくあるのか?


 マイルドな懲役刑のような仕組みがあるのだろうか。

 ジャッジが俺のほうを向いて言う。

「ああいうワケアリの人たちには、しばらく仮面をつけて働いてもらうことになってる。お互いに素性を話すことも、まあ、いちおう禁止はしている。管理できるもんじゃないけどね」

「あの仮面……」

「ん?」

「俺も、アレにしようかな。いちいち化粧するより、あっちのほうが手早いし、威圧感も充分あるだろ」

「……ああ。サラリーが言ってた、〈デモ活動〉用の仮装のことか。たしかに、そのほうが手軽ではあるよね。職人に頼んでおくよ。紋様の希望はある?」

「そこはサラリーに訊いたほうがいいだろ。せめて、そこくらいは」

「わかってきたねー。うん、楽しんでくれると思うよ」

「どんな物が出てきても、吾輩は受けいれる」


 そのあと、俺とラグーとジャッジは酒場に戻った。

 店は満席。繁盛しているようだ。にぎやかな店内では、大勢の人たちが酒をくみかわしている。

 ジャッジはそのまま、「まだ仕事が終わってないから」と言い残して二階へ上がっていった。


「じゃあメシは、おれんちで食おうぜ」

 とラグーが言った。

 彼は酒場の店長にパンとスープを注文し、葉物野菜と干し肉のスープが入った鍋を受けとった。テイクアウトか。俺もパンの籠を持ってラグーの家に向かう。

 ラグーの家には、部屋の広さのわりにはずいぶんと大きなテーブルがあった。

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