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第二次世界平和 ~2周目の世界に前進した我々はハッタリスキル〈デモ活動〉で世界平和を要求します~  作者: 水山天気
第1章 デモの精霊デモンス・レーション

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ウラキア兄弟会

 酒場の裏にある広い空地で、バーベキューパーティー的なことが始まった。


 バカみたいに大きな肉の塊が、弱火でじっくりと焼かれていく。

 きのう食べたのも、たぶんこれだ。

 もともとこの広場の一角は、ふだんから使われている調理場でもあるのだろう。

 そういえば、昨夜はほとんど肉しか食べていない。

 早くこの町の食材で、完全栄養食ゴーヤーチャンプルーやけんちん汁に匹敵するものを作れるようになりたいと思った。


 レンガで作られた焼き台の近くにテーブルと椅子をならべ、俺たちは豆とビールをやりながら、肉が焼けるのを待つ。

  サラリーは椅子に座りもせずに、テーブルの上のジョッキを次から次へと空にしていく。

 ハッピーもすぐに椅子から離れ、生肉を削って口にほうりこんだ。

 この暴飲暴食っぽい二人が棲息(せいそく)しているこの町は、本当に豊かな町なのだろう。


「最後に全員で集まったのは、いつだったかな」

 とジャッジが言った。

「おれたち兄弟は今、あちこちに分かれて暮らしてる。そうしないと、外の様子がわからなくなるからね。この町をずっと12人で守っているより安全なんだ」

「安全……か」

 俺にもなんとなくわかる。

 このウラキアの町は、かなりややこしい場所にあるようだ。現に今、東の帝都を占領したアブナガ軍が、この町へ手をのばしている。外部との関係と情報が命だ。


 ——東と西の間にある緩衝地帯。


 それまでのお約束でやっていたバランスは、東から来たアブナガの力によって破壊され、東と西の超大国が直接ぶつかりあう時代が始まったのだろう。

 バランスの維持がもう限界になっていた時代だからこそ、それを破壊しようとする者に力が集まったのかもしれない。

 似たような話は、マブい女から聞いたことがある。

 その時はピンとこない話だったが、この町にほうりこまれてジャッジの緊張感を近くで浴びているうちに、頭に気合が入ってきたのか、昔の記憶の意味がわかるようになってきた。


 肩がこわばってきた俺とは逆に、ジャッジはさっきよりも少しくつろいだ様子で続けた。

「この町の子供たちも元気に育って、普通の盗賊くらいならなんとかしてくれるようになってね。そのころからおれたちは、少しずつ分かれて住むようになったんだよ。それで、その1年後くらいかな。外の人たちから、ウラキア兄弟会と呼ばれるようになったのは」

「他の兄弟は、どこに住んでるの?」

 と俺は尋ねた。

 ジャッジが、頭の上まで上げた指をくるくる回しながら答える。

「東西南北。それぞれの場所で、それぞれの適性に合ったことをしている」

「適性——か。ならジャッジはやっぱり、この町を守る指揮官みたいな感じ?」

 ジャッジは笑った。

「指揮はできてないでしょ。サラリーとかハッピーとか」

「まあ、あれは、ムリ」

「だよね。おれたちの中で、そういう感じのことができるのは、やっぱりライトしかいない。おれにはムリだ」

「ライト?」

「うん。兄弟の名前」ジャッジは自分の左側——西を指した。「ライトは今、ハルマニア公国の首都で学校に通ってる」

「学校? どんな学校なの?」

「貴族の家の次男三男とか、貴族じゃなくてもハルマニア公爵軍やダーヌ王直属軍の軍人になろうとしている人たちが通う学校。学生同士が強いつながりを作っておく場にもなっている。ウラキアの中立宣言がハルマニアやダーヌ王国に許されるかどうかは、ライトの根回しにかかってる」

「この世界の学生、すげえな……」

 俺が知らないだけで、1周目の世界にもそんな世界があったのかもしれないが。


「北にもね」と言ってジャッジは前方に指をのばす。「北にも一人、兄弟が行ってた。名前はジョイン。北の騎士団の客分あつかいで置いてもらってた」

「今はちがうの?」

「今は、北よりも東だから。ジョインは、おれたちの中で一番目か二番目くらいに乗馬が得意で」

「一番はおれかもしれない」

 とラグーが言った。笑っている。酒場の二階で話をした時から、少し暗い顔をしていたので心配だったが。

 ジャッジは一度うなずいてから言った。

「ジョインは今、ウラキアとネオイーサの間を、情報持って往復してる。連絡係だよ」

「たいへんそうだな」

「グチや弱音を吐いてくれない奴だから、ちょっと心配。まあ馬に乗ったジョインなら、一人でも盗賊にやられることはないだろうけど」

 そう言ってジャッジは、南東を指した。

「今、アブナガ軍がいるネオイーサに住んでるのは3人。プレイズと、ゼネラと、ヒア。ヒアだけは、ネオイーサの防壁の外で潜伏(せんぷく)してる」

「潜伏……」

「そういうのが得意な奴なんだよ。ヒアはずっと、この町のまわりの森で森番をしてた。今は臨時でネオイーサに行っているから、ウラキアの森は少しずつ荒れてきているみたいだね。なにか手を打たないと……」


 ジャッジの話が途切れた。

 俺は、ここまでの話の中に出てきた名前を思い出しながら指で数える。

「ヒア。ゼネラ。プレイズ。ジョイン。ライト。あと3人か」

「うん。あとの3人は、南の城にいる。ラッキーと、クレセントと、ルック」

「城?」

 俺は南を親指で指した。昨日見せてもらった地図では、山っぽい絵が雑に描かれていた方角だ。

「あっちにも誰か、偉い人がいるの?」

「親父の城だ」

 とラグーが言った。

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