海に見える
はくちょう座 あれはひび割れと教えてくれた魔女が空を指差して
楽園の黒色で描く星空は海に見えるとけものは言った
吸い上げる口吻を持ついきものが蜜を持たないわたしから去る
ありふれた夜にふたりきりだから好きじゃない色の話をしよう
真夏のみ正気を保つ亡霊の呪詛を知らず蠢く唇
「愛してる」は啜り泣きが牽き連れる むかしは「だいすき」で済んだのに
プールサイドの少女たちは不透明を甘受する 永遠として
海の絵の白いところが手招きをしていてここは寝不足のくに
こぼれる前に挿し込むスプーンはかがやく 昨日も今日も満月
薔薇の棘を矯めた指で祈る「あなたが時々は泣けますように」