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満期


俺は刑務所に続く田圃に囲まれた田舎道を走る護送バスに揺られながら、流れ去る風景をなんとなく眺めていた。


クソ! これらの風景を自由に眺める事が出来るのは当分お預けだ。


17の時に強盗殺人事件を起こし、その後10年間逃げ回っていたのに捕まっちまった。


俺自身は注意に注意を重ね捕まらないように生活していた、それなのに、働いていた会社の送迎バスが速度違反で捕まり、ネズミ捕りを行っていた警官たちの1人がバスの座席で縮こまっていた俺に気が付き捕まったって訳。


その所為で8年の実刑を食らっちまった。


まあ爺婆2人殺して、10年間逃げ回っていたにしては軽い方だと思うけどな。


8年後出所したら送迎バスを運転していたクソ野郎を山に埋めてやろうと思っている、それだけが楽しみだ。


刑務所に到着し定数4人の部屋に放り込まれる。


俺を部屋に放り込んだ刑務官が立ち去ると、同房のもろヤクザって顔の奴が声を掛けて来た。


「お前、何をやって何年食らったんだ?」


「強盗殺人をやって10年程逃亡してましたが捕まっちまいましてね、8年食らいました」


「え? 8年?」


「はいそうです、それが何か?」


「ここは長期の刑を受けた奴が収容される刑務所だぞ。


最低でも20年以上の刑を受けた奴が収容される所だ。


8年なんて短すぎないか?


因みに俺は殺人で26年食らい、満期まで後15年だ」


「8年だって? 執行猶予取り消しとかが付いているんじゃないのか?」


二段ベッドの上段に寝転んでいた奴が話しに加わって来た。


「イエ、8年だけですけど……」


「親父さんに聞いてみようぜ」


俺と俺に話しかけて来た奴の脇で、ベッドに腰掛け黙って俺たちの話しを聞いていた初老の男が口を挟む。


初老の男はベッドから立ち上がり、通路を巡回していた刑務官に声をかける。


「親父さん、チョット教えて欲しい事があるんだけど良いかな?」


「何だ?」


「今日入ってきた新入り刑期が8年って言うんだけど、おかしくないかい? この刑務所は長期刑囚が集められている所だろ」


刑務官は通路と部屋を隔てている鉄格子がはめられている窓から部屋の中を覗き込み、俺の顔をジロジロと眺め胸ポケットから手帳を取り出して手帳の中を見てから返事を返して来た。


「そいつの満期は8年じゃない、58年だ」


「何だとー、どういう事だ?」


俺は思わず刑務官を怒鳴る。


刑務官は俺の怒声を気に留める事も無く説明を続けた。


「お前、罪を犯してから逃げ回っていただろう?」


「ああ、10年逃亡していたよ」


「それが原因だ」


「クソ野郎どういう事だー!」


刑務官に罵声を浴びせながら俺は鉄格子越しに刑務官に掴み掛かる。


しかし直ぐに同房の3人に取り押さえられて、部屋のコンクリートが剥き出しの床に抑えつけられた。


初老の男が刑務官にまた声をかける。


「もう少し詳しく教えて貰えますか? お願いします」


「まあ良いだろう、教えてやるよ。


お前らも凶悪犯罪の時効が、20数年程前から無期限になったのは知っているよな?」


俺を押さえつけたまま3人の男は無言で頷く。


「長い逃亡生活を続けたあと捕まっても、場合によってはそいつみたく10年以内の刑で済む奴が偶に出てくる。


これに対してそれはおかしい、短すぎるって声が出てきたのだ。


それはそうだろ犯人が逃亡を続けている間、被害者本人やその家族は安眠出来ない程悔しい思いをしながら生活してきていたのだからな。


それで5年程前に法律が改正され、逃亡していた年月に5を掛けた年月を自動的に加算するようになったのさ。


そいつは10年逃亡していたから5を掛けて50年加算されている。


だからそいつの満期は58年って訳だな。


そしてだなこの加算された年月は仮釈放の対象にならない、つまり、50年服役した後ようやく仮釈放の対象となる本来の服役が始まるって訳だ。


ただ58年で満期って言うのは絶対では無いのさ。


今さっき此奴は私に罵声を浴びせ掴みかかった、当然私はこの事を報告書に記載する。


その報告書を50年後、私はとっくの昔に引退しているだろうが50年後の担当官が見て、此奴が反省していないと判断すればあと10年加算されるかも知れない。


そういう訳でお前は、最低50年間は良い子にしていなければならないって事だ、分かったか?」


「50年って、そんなに長く服役していたらその前に死んじまうだろうが!」


「大丈夫、大丈夫。


この刑務所内には墓場が併設されているから、死んだらそこに入れてもらえるよ。


但し、そこに入れられたら満期になっても刑務所から出られないけどな。


ハハハハハハ」


刑務官は押さえ込まれたまま呆然としている俺や、俺を抑え込んだまま聞かなければ良かったという顔をしている3人の同房者を残し、笑いながら去って行った。







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