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喫煙


コンビニで一番安い煙草を5000円で購入。


店を出てコンビニの駐車場の脇に数室設置されている有料喫煙所の前に行き、紙幣投入口に金を入れて喫煙所の中に入る。


喫煙所内の椅子に腰掛け購入した煙草をポケットから取り出し、封を切り1本取り出す。


両切りの片方を灰皿が置かれているテーブルに軽く2~3度叩きつけ1センチ位の隙間を作りその部分を捻る、捻った所を口にくわえ火を点け胸一杯に煙を吸い込んだ。


あぁ……美味い。


24時間ぶりに身体に取り込むニコチンで手の指が微かに震える。


煙草の吸い口ギリギリを摘む指が火傷する寸前まで煙草の香りを楽しみ、灰皿に吸い殻を放り込む。


最後に胸一杯吸い込んだ煙を吐き出している俺の耳に、有料喫煙所の天井に設置されているスピーカーから流れ出た使用時間終了間近の警告音声が入る。


「あと1分で使用時間が終了します。


喫煙を続けるのなら追加の支払いをお願い致します。


なお支払いが無いまま中に留まった場合、支払いが行われるまで扉が閉め切られますのでご注意ください」


それを聞き俺は紙幣投入口の脇にある退出のボタンを押す。


スピーカーから流れ出ていた音声が別な物に変わると共に、喫煙所内の空気の入れ替えが行われ喫煙所内の煙草の香りが無くなった。


「喫煙所内の空気の入れ替えが済みましたら扉のロックが外れます。


ご利用ありがとうございました。


またのご利用をお待ちしています」


指に残る煙草の香りを嗅ぎながら喫煙所を出て車に乗る。


車のエンジンを掛けようとした時、煙草の煙に刺激された俺の喉の奥から咳が飛び出し数分咳き込み続けた。


咳が収まってから車の窓を細めに開けて2~3度深呼吸を行い、身体を運転席の背もたれに預ける。


暫く車の中で休んでから目的地の病院に向かった。


病院に着き窓口に国保の保険証を差し出す。


窓口の受付係がアンケート用紙を差し出しながら質問してきた。


「三木様は煙草をお吸いになりますか?」


「ああ」


「何年位お吸いになっていますか? あと本数は?」


「中学の頃から吸い始めたから、50年近く吸っているな。


昔は1日に40本以上吸っていたけど最近は1日1本か2本」


俺の返事を聞いた受付係は気の毒そうな表情で返事を返してくる。


「三木様、煙草を嗜む方はこの国保の保険証を使う事はできません」


「え? 嘘! 何時から?」


「今月からです。


民間の保険には加入されていないのですか?


加入されていない場合なのですが、最初に30万円を前払いで入金頂き診察後何らかの治療が必要な場合は、追加で100万円入金頂けないと治療を施す事は出来ません」


「そんな……何とかなりませんか?」


「申し訳ありません、規則ですので」


民間の保険に加入しておらず、30万円もの金を持ち合わせていない俺は仕方なく病院を出て車に乗り込んだ。


咳の原因を見て貰えなかっただけでなく薬を手に入れる事も出来なかった俺は、ムシャクシャした気持ちを晴らすため煙草を1本取り出しハンドルに軽く叩きつけ口にくわえ火を点ける。


病院の駐車場に出入りする車の運転手や駐車場脇の歩道を歩く人たちが、顔をしかめ俺の方を睨んでいるのに気が付かずに俺は煙草を吸い続けた。


煙草の灰を灰皿に落としたときパトカーが俺の車の前に停車。


防毒マスクを装着した警官が2人降りてきて、拳銃の銃口を俺の方へ向けて車から降りるようジェスチャーで指示して来た。


俺は煙草を灰皿に置き両手が警官達に見えるようにしながら車から降りる。


車から降り両手を挙げ抵抗する意志が無い事を警官達に示す。


拳銃を構え続ける警官の援護の下、もう1人の警官が拳銃をホルスターに戻し手錠を取り出した。


手錠を取り出した警官は手を挙げている俺を車のボンネットに押し付けるようにして、後ろ手に手錠をかけて逮捕理由を話す。


「煙草の副流煙による無差別殺人未遂で逮捕する」


「自家用車の中で煙草を吸う事は、犯罪にはならない筈では?」


俺が抗議すると警官は運転席の窓を指差し返事を返して来る。


「窓が細めに開いているだろうが! 」


先程コンビニで細めに開けた後閉め忘れた窓を見ながら俺は言い訳の言葉を口にした。


「あれは……閉め忘れただけなんです、勘弁してください」


「フン、言い訳は弁護士に言え」


後ろ手に手錠をかけられたまま俺はパトカーの後部座席に放り込まれる。


俺を担当してくれる公選弁護士によると検察は過去50年の間に俺が吸った煙草の副流煙により、死亡したり健康を害したりした人がいないか捜査中との事。


死亡したり健康を害したりした人がいなくても、大抵被害を受けたと訴え出る者が現れると言う。


煙草の喫煙が今程厳しく無かった頃、俺の歩き煙草の所為で服に煙草の匂いが付いて1日嫌な思いをしたとか、すれ違った時に煙草の匂いで連れていた子供が嘔吐したとかと言って来るのだと教えてくれた。


もしそれらの被害が本当に俺の吸っていた煙草の所為だと証明された場合、俺の有罪は確定し最低でも10年間の強制労働が課せられるらしい……。






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