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収容所


今日ここに着任する新人看守の書類を眺めている私の耳にドアがノックされる音が響く。


ノックされたドアが通路側から開けられベテランの看守が若い男を伴って入室して来た。


「所長、新人を連れて来ました」


「ご苦労さん」


ベテランの看守は私の返事に敬礼を返し若い男を残して部屋から出て行く。


連れてこられた新人の看守が挨拶しようとするのを私は手で制止して此方から声をかける。


「自己紹介は結構だ、書類に全て載っているからね」


そう言いながらデスクの上の書類を指差さした。


「私が此処の収容所の所長を務めている寺島だ」


自己紹介をしながらの壁の時計を見る。


「丁度良い時間だ、これから囚人と荷物が届くから収容所を案内しながら業務を教えてあげよう」


通路を歩きながら彼に話しかけた。


「この収容所が出来た訳は知っていると思うが一応教えておこう。


以前から薬物を違法に販売する者や使用者に対する罰が甘すぎると言う声があった。


他の国、例えば西の大国や東南アジアの幾つかの国では、薬物を違法に取引する奴等や使用者に対して死刑を含む厳罰で対処しているのに、我が国は執行猶予が付くときがあるくらい甘い罰しか与えていなかったからね。


その為に再犯する者が多数出現する事になる。


芸能人が繰り返し逮捕されるのがその良い例だ。


それに憂慮した政府のお偉方が出した答えがこの収容所なんだよ。


販売を目的として所持していた者や販売を行った者はワンアウト。


使用する為に所持していた者や使用した者はツーアウトで収容される。


どちらも収容されるだけで無く捕まった時点で全財産を没収される」


歩きながらこの収容所が出来た理由を説明している間に防護服ルームに着いた。


防護服一着を彼に渡しながら防護服の説明を行う。


「収容所内で外に出るときはこの防護服を絶対に着用するように。


この防護服を着用する理由は3つある。


一つ目は、この収容所が建てられている場所が事故を起こした原子力発電所の直ぐ傍と言う事。


二つ目は、運び込まれた麻薬類を焼却処分する際に出る煙を吸わないようにする為。


もっとも、最新式の焼却炉を使用しているから煙が焼却炉から漏れ出す心配は殆ど無いけどね。


三つ目は、運び込まれた麻薬類をちょろまかされないようにする為にだ。


外の業務を終えこの建物の中に戻る際に繰り返しチェックされるからね、防護服の外側に付着していた場合は業務中に付着したという事で咎められる事は無い。


しかし、万が一内側に付着していた場合は拘束され徹底的に取り調べが行われるから注意しなさい。


ま、放射能で汚染される可能性が高い場所にいるわけだから、そんな事をする者は今のところ出ていないけどね」


防護服ルームの係官に防護服に隙間が無い事をチェックしてもらってから、私たちは建物の外に足を踏み出した。


建物の外に足を踏み出した私の目に、重武装した警察の四輪駆動車数台に護送された二台の大型トラックと、外が見えないように窓に目張りがされた囚人護送バス一台が映る。


囚人護送バスは警察車両に取り囲まれるように停車。


大型トラック二台は看守に誘導されバックで焼却炉の方へ移動していく。


囚人護送バスから降ろされている囚人の群れを指差し説明する。


「覚えておきなさい青い囚人服の者たちは使用者。


赤い囚人服の者たちは販売に拘わった奴等だ。


赤服の奴等の中には暴れる者がいるから気をつけるように」


暴れる囚人を制圧する為に看守は全員スタンガンと警棒を所持しており、収容所を囲む塀の内側に建っている監視塔からは、狙撃銃を所持した数人の看守が赤い囚人服を着た囚人を中心に狙いを定めている。


囚人の群れは赤服と青服に分けて列を作らせ並ばされた。


赤い囚人服の者が10人青い囚人服の者が20人。


並ばされて人数確認が終わるとそれぞれの囚人の腕に薬剤が注入される。


「赤い囚人服の者たちには暴れるのを防ぐ目的で遅効性の睡眠薬が投与される。


青い囚人服の者たちには麻薬が投与される。


どういう事かってって言うと。


トラックに積み込まれている麻薬類を焼却炉に運び込ませる作業を青服の奴等に行わせる為にだ。


投与してやらないと運び込む麻薬類を勝手に使おうとしたり、麻薬類を求めて暴れる可能性が高いからね。


作業後にまた投与してやると言っておけば大人しく作業に従事してくれるんだよ」


青い囚人服の者たちがトラックの荷台に積まれている麻薬類を次々と焼却炉に運び込む。


作業に従事させていない睡眠薬を投与された赤い囚人服の者たちは青い囚人服の者たちが作業に従事している間に次々と崩れ落ち眠りにつく。


トラックの荷台に積まれている麻薬類が次々と焼却炉に運び込まれあと僅かになったところで、青い囚人服の者たちにまた麻薬が投与された。


此れは短時間に麻薬を摂取させ正常に物を考えさせないようにする為にだ。


麻薬類だけで無く眠りについている赤い囚人服の者たちも焼却炉に運び込まれる。


麻薬類と赤服青服の囚人が全員焼却炉の中に入ったところで焼却炉の扉が閉められ焼却開始のボタンが押された。


「なに血相を変えて狼狽えているんだ?


あ、お前勘違いしているだろう?


この収容所が強制労働収容所だと思っているようだが、此処は絶滅収容所だからな」





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