X'day. ~Ⅰ~
12月24日、午前6時30分。
三国家。
朝から家族みんなが揃って食卓を囲み、ケーキを食べている。
「ねえ、なんでケーキなの?」
精悍なガタイのいい美男子(・・・や、美カマ?)助三郎が当然のごとく疑問を口にした。
ちなみに彼は三国家の血縁ではない。が、家族である。
「今日がクリスマスだからよ」
美人の三国ママが優しく言った。
「助ちゃんたらホントおっちょこちょいね」
そう言ったのは、蝶子さん。グラマラスで艶やかな美人。
彼女も三国家の血縁ではない。が、家族である。
「だって蝶子。今、何時だと思ってるのよ」
「午前6時31分ね」
「そうよ。午前なのよ。なんでケーキが朝?」
「助ちゃんは分からず屋ね、もう」
蝶子さんは妖艶にため息を吐いた。
「分からず屋さんには、教えてア・ゲ・ナ・イ」
ぷいっと横を向く蝶子さん。
「まあまあ蝶子さん。助くん、今日はママもボクもグランパもグランマもみんな退治が入っちゃってね。家族がイブだというのに揃わんのだよ。一と助くんだけなんだよ。寂しいだろ?やっぱりケーキだろ、クリスマスと言えば」
そう親切に説明してくれたのは三国パパである。柔和なナイスダディ。
「お前は相変わらず物わかりが悪いな、助」
眼鏡越しに冷たい視線をよこしたのは綱由である。知的階級的な雰囲気の陰険ジェントルメン。
ちなみに彼も三国家の血縁ではない。が、家族である。
「少し考えれば分かることだ」
「アンタに言われたくないわッ!アタシが言いたいのは何も朝食前にケーキじゃなくたっていいんじゃないのって言ってるのよ!ご飯前にケーキってどうよ?めちゃくちゃ重いじゃないの」
ケーキの平らげられた空の皿をむんずと持ち、助三郎は喧嘩腰で綱由に食ってかかった。ぷいと無視する綱由。
「これこれ助さんや、アタシのケーキを分けてあげるから怒らない怒らない」
小さいグランマが助三郎と綱由の仲裁に入った。
「まったくじゃ。綱由の冷たい視線もいかんぞ」
やっぱり小さいグランパも相づちをうつ。
「これじゃから若いモンはのう・・・」
「なァ・・・」
どうみても子供のなりをした市子と古矢があきれて言った。双子的な感じの可愛い顔で、見分け方はお洋服と髪型。
この子供らもまた三国家の血縁ではない。が、家族である。
さすがに一家の長老に意見されて、助三郎も綱由も少し決まりが悪そうに黙り込んだ。
「はい、助さん」
グランマが大きな固まりを助三郎の皿にのせてくれた。
「グランマ・・・、ありがとぉ」
ケーキを分けてもらいつつ、助三郎は寂しそうな微笑みを浮かべる。綱由はそれをちょっぴり羨ましそうに眺めつつ、最後までとっておいたイチゴを口にいれた。
つまるところ助三郎は、朝のクリスマスにケーキには異存がないようであった。
朝食『前』のケーキ。それが納得いかなかったようである。
「それはやっぱり、クリスマスだからだよ助三郎」
突然三国一が茫洋と言った。この家の美少年一人息子である。
「朝食後じゃ普通のデザートになるから」
一の至極もっともな意見に家族はやはり揃ってうなずいた。
『そうそう』
「あ、そういうコト」
助三郎もやっと納得した。
やっと疑問が解消して、助三郎はグランマに分けてもらったケーキを食べた。
総勢10名のクリスマスは、10分で終わりを告げた・・・。
そして、朝食が始まったのである。
end.
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words.
助三郎
綱由
蝶子
市子
古矢
三国一