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回りくどい男と察しの悪い女のお味噌汁

作者: 鈴木かくひと

 とあるマンションの一室に男女が二人。

 一人はスーツを着た男、一人はワンピースの上にジャケットのカジュアルな格好をした女。

 男は座卓の前で正座をしており、女はベッドの上で寝っ転がって本を読んでいた。

(おかしい・・・・・・)

 男は心の中で首をかしげていた。

(休日の自宅でスーツ姿で出迎えたら、もうちょっとかしこまってくれるかと思ったけど・・・・・・)

 男はプロポーズをするつもりだった。しかし女は完全にくつろいでいた。

(仕方が無い。ドラマのプロポーズのシーンの話題から、そういうムードに持って行こう)

 男はこういう事態も想定していた。できるだけ何気ない感じで、寝転んだままの女に話しかける。

「なあ」

「んー?」

 彼女は本を読んだままこちらに見向きもしない。男は構わず話題を切り出す。

「昨日のドラマ観た?」

「菅田将暉のやつ?」

「そうそう。あのシーン良かったよね」

「どのシーン?」

「一番盛り上がったシーンだよ」

「ああ、菅田将暉がチョークスリーパーかけられて白目剥いてるシーン?」

(いや、ちげーよ。盛り上がったけど)

「もっと重要なシーンあっただろ? ほら、菅田将暉がヒロインに・・・・・・」

「チョークスリーパーかけるシーン?」

(どんなドラマだよ! 確かにそんなシーンあったけど)

 埒が明かないので別のアプローチを試みることにする。

「あー、この前さ、知美の、け、結婚式行ったじゃん?」

「うん。良かったよねー。あれ泣いちゃったわ」

「付き合ってちょうど一年でプロポーズしたんだよね」

「ねー。ロマンチックでいいよねー」

「俺たちもさ、そろそろ付き合って一年だよね・・・・・・」

「あー、そうだね」

「・・・・・・」

「・・・・・・」

 話は終わる。彼女は本を読んでいる。

(いや、嘘でしょ? 察し悪すぎだろ、流石に!)

 もう直接言葉で言うしかないと判断し、意を決する。

「ちょっとここに座ってくれ、話がある」

 神妙な面持ちで、座卓の反対側を指さす。声のトーンで流石に何かを察したのか、彼女も本を読むのを止め、すんなり男の正面に座る。

「あー、俺もそろそろ三〇になる。貯金も結構貯まってきて、いろんな準備もできてる。だから・・・・・・」

 一呼吸置いて、言う。

「俺のために味噌汁を作ってくれ」

 女はスクっと立ち上がる。

 キッチンで鍋に水を入れ、出汁、豆腐、わかめを入れ、煮立たせる。

 火を止めて味噌を溶き、お椀によそって完成。


「へい、おまち!」


バァーン!!!!

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