第六話 勇者召喚
「そう言えばローランドが脅しに貴方の家族をだしていましたが会いに行きますか?」
「そうですね、お願いします」
アモンは転移魔法で屋敷に転移した。転移魔法は視界内ならどこでも移動することができる。しかし、アモンは魔力感知など索敵系の魔法を使い視界外でも転移できるようになっている。
「お母さん!お父さん!」
「おぉ…ミズキ…」
しばらくの間抱き合って泣いていた。
「すみません、改めましてミズキの父のグレンと言います」
「母のカレラです、今回は娘を助けていただきありがとうございました」
「いえ、とんでもないです」
「私達のせいでこの子が辛い目に合っていると知っていても何もする事が出来なかったので本当に助かりました」
「そうですか、力になれて光栄です、それに私のパートナーですからね」
「これからもこの子の事をよろしくお願いします」
「ちょっとお父さん!け、結婚するみたいじゃん!」
「ん?確かにそれもいいな」
「えぇそうね」
「お母さんまで?!」
「ハハハ、その時はよろしくお願いします」
「はわわわ…」
「では、そろそろ修行に行く時間なので失礼します」
「また来てくださいね」
「はい、また今度」
◆ ◆ ◆ ◆ ◆
「お〜い、匠、放課後遊ぼうぜ」
「おう、カラオケでも行くか」
「いいね!行こ行こ」
「奏多くぅ〜ん?お前も来るよね?」
「う、うん」
「よし、じゃあ四時に集合な、遅れるなよ〜」
今日も断れなかった。まぁ断った時にはボコボコにされるんだけどね。皆んなはすっかり忘れているけれど俺を庇ってくれた人がつい三週間前に居たんだ。その人は匠にボコされて亡くなった。その人の為にも俺はどんなに辛くても生きていかなければならない。そんな事を考えていると教室が白く光り始めた。
「な、なんだ!」
「キャャャャ」
「なんだよこれ?!」
そして、気がつくとクラス全員がどこかへとばされていた。
「ここは…?」
「ようこそ!勇者の皆様、私はこの国の重臣、ガブリエルと申します」
「おい!ここはどこなんだ!」
「まぁまぁ落ち着いて下さい、ここはフィーネ王国の王都フィリアでございます」
「ちょっと待てどう言う事だ?」
「貴方達は異世界から勇者として召喚されたのです、ささ、お疲れでしょうからどうぞなかへ」
ほとんどのものが状況を理解できていないまま中へと入って行った。
「うわ、デケェ!」
「広ーい!」
「さぁこちらで食事でもどうぞ」
案内された部屋には縦に伸びたテーブルと人数分の椅子が用意されてあった。
「そろそろ陛下もいらっしゃいますので椅子に座ってお待ち下さい」
各々椅子に座っていく。椅子の座り心地は最高以外の何でもなかった。
「お待たせした、この我がこの国の王、ガランだ」
「王様か…」
「おぉすげぇな」
そして、王から魔族の殲滅、悪魔の殲滅を理由に召喚されたこと、明日から最低でも一年は修行することなどを聞かされた。
「楽しみだな!」
「魔族…悪魔…」
「異世界転移かぁ憧れてたんだよね」
そしてあっという間に一年が過ぎた。
◆ ◆ ◆ ◆ ◆
アモン達は今零等級の魔物の討伐依頼を受けていた。この一年でミズキは物凄いペースで成長していった。アモン達は無事零等級冒険者になる事ができた。
「ハァァァ!…ふぅ…こんなもんですかね」
「ミズキもこの一年ですごい成長したね」
「えへへ、アモンのお陰だよ」
「それは嬉しいな」
「ねぇねぇ、あれって一年前に来たって言う勇者達じゃない?」
「おっ!可愛い子はっけ〜ん!」
「行こうか」
「うん」
「ちょっと、無視?傷つくなぁ」
「「……」」
「チッ」
アモン達は転移魔法でさっさと王都へと帰った。
「王都の方が何かと便利かと思って来たけど間違いだったかなぁ」
「しょうがないよ、我慢しよ?」
「う〜ん、僕は問題ないけどミズキはどうなの?」
「手を出してくる訳じゃないし大丈夫だよ」
「絶対何かしてくるよ」
(だって匠だもんなぁ)
「まぁ考えてもしょうがないか、おやすみ!」
「フフ、おやすみ」
ミズキは自分の部屋へと帰って行った。そして連れ去られたのは言うまでもない。
「ミズキ?お〜い」
(返事がないしもう寝たのかな?)
〈感覚共有〉
「っ!匠か!」
アモンは即座に転移した。姿を悪魔にして。
「解いてよ!」
「残念、そのロープは力が強い者ほど抜け出せないんだよ」
「そ、そんな…」
(助けて!アモン!)
「クフフフフ、誰ですか?私のパートナーを拐った人は」
「誰だ?お前」
「お、おい、匠!こいつ悪魔だぞ!」
「悪魔?ふん、それがどうした?」
「こいつは少なくとも悪魔の中でも上位の個体だ、いくら匠が強くても勝てない!」
「あ?何言ってんの?お前、殺すぞ?」
「ひぃ…」
「殺されるのは貴方の方ですよ」
「んだと…テメェ!」
匠は剣を当てようと振っているが全く当たらない。それに余裕の表情だ。
「クソが!調子に乗ってんじゃねぇぞ!」
「クハハハ、その程度で勇者ですか、弱過ぎますね」
「クソがぁぁぁぁ!」
突進してくる匠の頭を鷲掴みにした。
「実力の差を分かっていないようですね?覚悟はいいですか?」
「グハッ…や、やめろ!ヤメロォォォォォォ!」
グシャリ、そんな音と共に匠は絶命した。匠の取り巻き達は匠が瞬殺されるや否や逃げて行った。
アモンはミズキには優しい口調ですが、その他の人や怒っている時は敬語を使っています。悪魔モードのアモンは誰にも止められません。