第三話 紫の悪魔
俺達は今街から出てすぐの所にある草原に来ていた。そしてミズキから聞いたのだがこの街はキルトンと言ってフィーネ王国の最南端の街らしい。
「ここら辺に沢山生えているはずです」
「どれがその薬草なのですか?」
「えっと、これです!これ!」
「へぇ〜見た目は他の草とほとんど変わらないですね」
「そうですかね、慣れると簡単に見つけられますよ」
「そうですか、でははじめますか」
「はい」
そしてアモンは探知魔法を発動した。薬草はもう覚えたので見つけるのは簡単だ。近くに百本くらいあった。
「はい、ミズキこれ、全部薬草ですよ」
「え?これ全部ですか?こんな短時間で…」
「探知魔法を使って探しただけですよ」
「えぇ〜!?探知魔法でそんな事できるんですか?!」
「うん、普通にできるよ」
「教えて下さい!」
「うん、いいよ」
「そんなあっさり?!」
「うん?問題でも?」
「い、いえよろしくお願いします」
「うん、よろしくね」
「でも、明日からでいいかな?」
「はい、構いません」
「了解、じゃあもうちょっと奥に行ってから帰ろうか」
「はい!」
そしてアモン達は森の奥へと入って行った。
『ミズキ、僕達は今囲まれている、声は出さないでね』
ビクッと肩を跳ねるミズキ。そしてアモンの方を見て頷いた。
「おい、そこの兄ちゃんとお嬢ちゃん、止まりなここを通りたければ金目のものを置いていけ」
「断ったら?」
「それは痛い目にと言うか死んでもらう」
「ほう、断る」
「聞いてたのか?お前達は死ぬんだぞ」
「それはどうかな」
「クッやれ!」
アモンは後ろで手を組み、次から次へと迫り来る攻撃を華麗に避けていく。
「す、すごい」
「ハァハァ…こいつ全然当たらないぞ」
「クソッどうなってやがる!」
「おや?この程度ですか?」
「てめぇ!調子に…がぁ…」
アモンは顎に向けて回し蹴りをかました。そして次々に敵を倒していく。その様子はまるで踊りでも踊っているかのように洗礼された動きだった。
「いやぁ〜凄く強いね君」
「誰ですか?」
「こいつらの大将だよ、ここで名乗っても君達は死ぬから意味ないよね」
「そうですか…」
「フフフ…悪魔召喚!」
「ほう…悪魔ですか…」
「アモンさん!悪魔は流石に無理です!逃げましょう!」
「大丈夫ですよ」
「で、でも…」
「おい、悪魔目の前の二人を殺せ!」
「承知」
「ほう…君は誰に殺すといっているのかな?悪魔くん」
「っ!これ程の殺気と重圧は…まさか!原初の悪魔、し、失礼しました是非とも貴方様のお名前を」
「うん、僕の名前はアモン・デーモンロード、原初の黒だよ」
「やはり原初様でしたか」
「おい!どう言う事だ!さっさと殺せ!」
「貴様!アモン様に失礼だぞ!」
そう言うと相手の首が宙に舞った。
「「え?」」
首を切られた本人とミズキは何が起きたのか理解できなかった。それもそのはず先程の悪魔の動きが見えなかったからだ。気づけば首が飛んでいた。二人の目にはそう映っていた。そして絶命した。
「最後に君の所属を聞いてもいいかな?」
「はい、紫で御座います」
「そうか、もう帰ってもいいよ」
「失礼します」
そうして悪魔は冥府へと帰って行った。
「アモンさん…?どういう事ですか?原初の悪魔?黒?何言ってるんですか…?」
「ごめんね、この事は誰にも言わないでくれるかな」
「分かりました、でも質問には答えて下さい」
「わかったよ、さっきの悪魔が言った通り僕は悪魔だ、それも原初の悪魔だ、この人間界には旅がしたくて来たんだ」
「そ、そうですか、相当強いので只者では無いと思っていましたがまさか原初の悪魔だったなんて」
「提案があるのですがいいですか?」
「提案ですか?」
「はい、簡単に言うと私と契約しませんかと言うものです」
「契約ですか?!わ、わたしが?!そんな」
「ダメですか?」
「い、いえお願いします」
「では決まりですね」
「で、でも契約には死体が必要では無いんですか?原初となれば尚更」
「それなら必要ありません」
「え?」
「血をちょっと貰いますけどね」
「あ、どうぞ」
「ありがとう御座います、では始めます」
そういうと、周りに赤い魔法陣が描かれる。そして手の甲に悪魔のような姿をした生き物の絵が現れた。
「これで完了です」
「は、はぁ」
「では帰りましょう」
「……っ!はい!」
ミズキはまだ知らない。原初の悪魔の中でも超越したアモンの力を。そしてこの契約はただの契約ではないと。