第十四話 悪魔召喚
「零くん、生きてたんだね」
「いや、死んだ、転生ってやつだ」
「て、転生…すごいね…人間…?ちょっと違うような…」
「まぁそんなところだ、ところでなんで廃棄されそうになってたんだ?」
「実は…僕、歴代の勇者の中でも最弱なんだ、勇者にはそれぞれ固有スキルと言われるものがあるんだけど僕のは〈悪魔召喚〉なんだ」
「悪魔を召喚出来るなんて凄いじゃないか」
「それが…一度も召喚出来た事がないんだ、どうも僕が弱いからみたいなんだ」
「なるほど、でも勇者はいくら才能がなくてもB級相当の力は持ってるんだろ?」
「そうなんだけど、いざ戦闘になると怖くて動けないんだ」
「ふむ、それこそ悪魔を召喚すべきなんだろうができないんだよなぁ、B級と同等以上なら下等悪魔なら召喚出来そうなんだけど、もしかするとそいつは上位もしくは原初のみなんじゃないか?」
「げ、原初…?」
「あぁ、原初と呼ばれる悪魔は今のところ七色とされている。赤、青、黄、緑、紫、白、黒。この七色だ。」
(まぁ紫は俺が殺してるんだけどな)
「その原初の悪魔はどれくらい強いの?」
「ん〜階級では極級〜絶級とされてるが、一部終焉級の者もいる。」
「へぇ〜詳しいんだね、じゃあ奏多くんが召喚できるようになったらものすごく心さん強くなるね!」
「う、うん。ありがとう香織さん」
「前から思ってたけど、私がくん付けで呼んでるのにそっちはさん付けっておかしくない?」
「ご、ごめん。か、香織ちゃん。これでいいかな…?」
「うん!」
「よし、じゃあ訓練を始めるぞ。他のやつもついてこい」
「「「「「「「は、はい」」」」」」」
それからアモン達によるしごきが始まった。当初はアモンが厳しすぎてついてくるのがやっとの者が多かったが日を重ねていくうちに余裕でついて来れる者が増えていた。その中でも一際頑張っていたのが奏多だった。奏多の成長ぶりはアモンの想定をとうに超えていた。そして今日は奏多のスキルを試す日だ。
「ここまでよく頑張ったな。奏多」
「ありがとう。ここまで来れたのもアモンのおかげだよ」
「頑張ってね!奏多」
「お主はよく頑張った。私が保証しよう」
「ミズキさんもマリンさんもありがとうございます。」
「それじゃあやってみろ」
「う、うん」
〈悪魔召喚〉
そう奏多が唱えると禍々しい見た目をした門が奏多の目の前に現れた。そしてその重苦しい扉がゆっくりと開いていく。中から一人の悪魔が出てくる。アモンまでとはいかないが相当な実力を持っている。間違いなく原初の悪魔だろう。そして、アモンはこの気配をしっている。その悪魔とは原初の赤、クレアだった。
「ん?なんだ?ここはどこだ?」
「ほ、ほんとに悪魔が出てきた…」
「ん?お前か、俺を呼んだのは…ってアモンじゃねぇか」
「できれば知り合いって事を隠しておきたかったんだけどな」
「おっと、それはすまねぇ。それにしてもこの俺を呼ぶとはこいつは何者だ?」
「俺の友達だ」
「そうか…それにしてもこのスキルはすげぇな。原初の悪魔限定なんてよ」
「やっぱり原初だけか…となると俺やマリンも呼べるのか…?」
「ちょ、ちょっと待って!アモンはこの悪魔と知り合いなの?」
「ん?香織か。あぁそうだ。できればもっと後に話したかったんだが仕方ない。まず俺は人間ではない、俺の種族は悪魔だ。それもただの悪魔じゃなく原初の悪魔だ。こいつは原初の赤、クレアだ。俺の師匠兼親友だ。マリンも一応原初の悪魔だ。」
「うぇぇ?!原初の悪魔が三人も…それにしてもアモンとマリンさんが原初の悪魔だっただなんて」
「僕も驚きだよ。」
「召喚できた悪魔がクレアでよかったな。他の原初だと争いになってたかもしれない」
「ったく…お前は誰が来ようと片手で捻り潰せるだろうが」
「え?原初の悪魔達は全員仲間同士じゃないの?」
「それは違うな。俺達原初の悪魔は極力過度な干渉を避けてるんだよ。集団で群れるのが嫌いだからな。ここにいる俺含め三人はそうでもないがな」
「なるほど…よくわかりました。ありがとうございます」
「いいってことよ」
「今日は試しでスキルを使ってお前を呼び出したがどうする?このままついてきてもいいが」
「いや、俺は帰るよ。ここに残ってちゃスキルの意味がねぇからな」
「確かにそうだな。今日はありがとう」
「ふん、礼には及ばねぇよ。じゃな」
「あぁ」
クレアが門をくぐり冥界へ帰ると禍々しい門は姿を消した。