第十三話 再会
〜〜奏多side〜〜
匠くんが悪魔に殺されて数日が過ぎたけど、みんなそんなに気にしてないみたいだね…僕も悲しんでる反面安心しているところもあるから人の事は言えないけどね。だけど、またしても問題が発生した。クラスで一番イケメンで人気な颯太くんと美人な香織さんの二つのグループに別れてしまった。でも不思議なことに男女で別れたわけではなかった。颯太くんの方に数人の女子がいて香織さんの方にも数人男子がいた。ちなみに僕は香織さんのグループにいる。問題なのは颯太くんのグループの方で颯太くんは勇者としての素質があるらしく、どんどん強くなっていった。その為か颯太くんの振る舞いが変わっていき大分傲慢になってしまった。一方で香織さんは、誠実で優しかった。香織さんも勇者としての素質はあるが、その力を誇示したりはしない。二人ともランクで言うと絶級らしい。
「よぉ、E級勇者さん?」
「や、やぁ、佐々木くん」
「あ?佐々木“さん”だろ?」
「ご、ごめんなさい…」
「その辺にしとけよ、このゴミにいちいち構ってる暇はないんだからね」
「はいよーそれにしても颯太はこのゴミと比べれてどんどん強くなっていくよな」
「まぁね、僕こそ王の器に相応しい者はいないよ」
ゲラゲラ笑いながら颯太くん達は去っていった。
「気にしなくていいんだよ?私が守ってあげるから」
「うん、ありがとう、香織さん」
「ふふ、さぁ広間に行こうか」
「うん!」
今日はガブリエルさんから話があると広間に呼ばれているのだ。なんともとても大事な話らしい。
◆ ◆ ◆ ◆ ◆
「よく集まってくれましたね、今日はとても大事な話があってお呼びしました」
「早く話してほしいね、これから僕たちは経験値を稼ぎに行かなくてはいけないんだ」
「まぁまぁそう焦らずに、では、奏多殿前へ来ていただけますか?」
「は、はい」
「貴方は唯一のE級勇者です、皆さんの足手まといになっているのは自覚していますか?」
「……はい」
「おぉ、それは良かったなら、貴方を心置きなく廃棄できますね!」
「え?……廃棄……?」
「えぇ、貴方は正直ここにいられては困るのです、せっかくの勇者がE級など恥でしょう?」
「ハハッ違いねぇな!」
「ちょ、ちょっと待って下さい!どうして廃棄する必要があるのですか!あまりにも悲惨ではありませんか!」
「香織…よく考えてみろ、今後魔族や悪魔と戦うにあたってあのゴミは足手まといになるだけだ、どのみち死ぬ、それが今か、後か、ただそれだけだ」
「そんな…それはあまりにも…」
「香織さん…僕は大丈夫だから、みんなの足手まといになってるってわかってる」
「そんな…私は足手まといなんて…思ってない!」
「それでも、僕が弱いのは変わらないよ、今までありがとう…」
「そんな…いやゃゃぁぁぁぁぁぁ!!!」
零くんもうすぐそっちに行くよ。僕は最後まで不運だったけど君や香織さんのおかげでなんとか乗り越えてこれたけどどうやらここまでみたいだ。でも、最後ぐらいは僕の気持ちを香織さんに伝えたかったな。
ーー好きだってーー
気付いたら目から涙が溢れていた。そして首を切られる寸前広間のドアが開いた。
「なにやら楽しそうな事をしていますね?」
◆ ◆ ◆ ◆ ◆
〜〜アモンside〜〜
「ねぇアモン、今日は依頼受けないの?」
「今日は王に勇者の訓練をしてほしいと頼まれている」
「ん?勇者?アモンはてっきり勇者を嫌ってるのかと」
「勇者って言うよりか現勇者がだけどな」
「じゃあなんで了承したの?」
「実は…」
アモンは自分が転生した事、勇者が元クラスメイトだと言う事、その他諸々全てミズキとマリンに話した。
「で、奏多と香織がどうしてるか気になってな」
「なるほど…グスッ…」
「おいおい、何泣いてるんだよ」
「だって、死んだ理由がいじめられっ子を助けて死んだって…優しすぎるよ…」
「アモンはお人好しだな!」
「うるせぇよ、前世の話だ、今は違う」
「本当かな?ミズキを助けておいてか?」
「……行くぞ」
「ふふ、はーい」
アモン達は王城に向かった。案内されている途中で女性の叫び声が聞こえた。
「ん?香織…か?」
「とりあえず行くよ!」
アモン達は走って声のする方へ向かった。そして扉を開けた。そこには泣き叫んでいる香織と首に剣を当てられ涙を流している奏多の姿が見えた。
「クフフフフ、何やら楽しそうな事をしていますね?」
「あ、貴方は!これはこれはアモン殿ではないですか」
「何をしているのですか?」
「この無能なゴミを処理するところでございます」
アモンは奏多の元まで歩いて行った。奏多はアモンの金色の瞳孔を見て怯えていた。
「ふむ…これが無能ですか…貴方達は見る目がないようですね」
「それはどう言うことでしょうか?」
「この子は磨けば終焉級になれるということです」
「ですが、このゴミはE級ですぞ?」
「えぇ、それが何か?」
「あのさぁ、貴方は一体誰なわけ?僕達は早く経験値稼ぎに行きたいんだけど」
「おっとこれは失礼、私はアモンと申します」
「ふ〜ん、で、あのゴミが終焉級にねぇ〜、お前こそ見る目がないんじゃないのかな?」
「まずはその呼び方をやめて頂きたい、それと、いきなりお前とは些か失礼では?」
「なに説教してくれてんの?この僕が誰だか分かって言ってんのかな?王の器に相応しい絶級勇者だぞ?」
「王の器…?ご冗談を、貴方如きが王になれるわけないですよ」
「へへッここは俺に任せてくれ、颯太ぁ」
佐々木はアモンに向かって飛び出した。しかし、もうそこにアモンの姿はなく、佐々木の横に転移し地面に叩き潰していた。
「ふむ、何故勝てると思ったのでしょうか?」
奏多と香織はただ呆然と眺めているしかなかった。あの佐々木も一応は極級勇者だったのだ。それを最も簡単に。
「なかなかやるみたいじゃん」
「なるほど、実力を見せましたが私と貴方との差にまだ気がつきませんか」
「所詮は極級だ、俺は絶級だ!」
ーー黄金の波動ーー
「ハッ!自分の力を過信し、油断したのがいけなかったなぁ?」
「勝手に死んだ事にされては困りますね?」
「な、なんだと…貴様!何をした!」
「クフックハハハ!あの程度の攻撃に何かをするまでもないですよ」
「あの攻撃を受けて尚、こうして立っているのか…?」
「どうやら己の力を過信していたのは貴方のようですね?」
アモンは颯太の後ろへ転移し、蹴り飛ばした。
「カハッ…」
「ふぅ〜、さてガブリエル、説明してもらえますか?」
威圧をかけながら問うと、ガブリエルは腰を抜かし、気絶してしまった。
「やれやれ、大丈夫か?」
「は、はい、ありがとうございます」
「私の方も大丈夫です、彼を助けていただきありがとうございます」
「久しぶりだな、奏多、香織」
「「え…?」」
「こっちに来てから見た目も中身も変わっちまったが零だよ、桐谷零」
「「零くん!?」」
アモンは奏多と香織を助けられた事を安心しつつ再会を喜ぶのだった。