プロローグ:経歴
一回目は科学が社会に蔓延り、魔法なんてファンタジー上のものでしかなかった。ブラック企業に勤め、過労にて齢四十三で死亡。
二回目は科学どころか言葉さえなく、身振り手振りで会話のふりをして狩りに勤しんだ。マンモスに踏まれて死亡、時間の概念がなかったため年齢は不明。
三回目は疫病が流行り、五つになる前に死亡した。
四回目でやっと魔法がある世界に転生したが、そこでは魔法の才能が一切無い剣士として旅をしていた。森で盗賊に襲われたあと、魔物に襲われて死亡、大体三十歳。
五回目は剣士ではなく、弓術士。戦地に赴くこともなく、寿命まで人生を楽しんだ。
六回目は魔法が存在するが、城下町の商人として。店が赤字になり、倒産して餓死。四十歳くらいだった
七回目は四回目、五回目と同じような世界観で魔法の使えない魔法研究者としてはたらいた。何の研究成果も残すことなく、寿命を終える。
八回目、侍として馬に乗る練習中に死亡。享年十歳。
九回目、宣教師として寿命を全うする。
十回目、剣士として冒険者になる。魔物に敗れ、二十三で死亡。
十一回目、剣士として冒険者。十七で死亡。
十二回目、剣士として。戦地にて三十一で死亡。
十三回目、剣士。何事もなく、寿命まで生きる。
十四回目、鍛冶屋として冒険者を支える。街が魔物に襲われ、四十七歳で死亡。
十五回目、冒険者の壁役となる。迷宮のボス戦で死亡、二十二歳。
十六回目、剣士。害悪パーティーに入り、迷宮攻略中に死亡、十八歳。
十七回目、弓術士。後ろから弓で射られ、死亡、十四歳。
十八回目、冒険者ではなく、冒険者組合の受付になる。安全に寿命を完遂する。
十九回目、王族に生まれたが、魔法の才能が無かったため、殺される。
二十回目、貧乏貴族の四男に産まれる。家が泥棒に襲われ、死亡、七歳。
以後は冒険者で交互に剣士と弓術士になる。時々、王族や貴族、などになり、科学のある世界に行く。大抵ろくでもない死因で死んでいた。
これをすでに百回以上は繰り返したはずだ。途中から数えるのも面倒くさくなって正確には覚えていないが。
五十回を超えた辺りから魔法使いになることは諦めていた気がする。
そして今回、俺は一回目の如くブラック企業に入社して自殺した。今頃ニュースで取り上げられている頃だろう。俺が務めていた会社は世間に吊し上げられているかもしれないが、そんなこと知ったこっちゃ無い。
俺は次こそまともな理由で死んでいく人生だといいなと思いながら意識を深く沈めていった。