新しい恐怖の幕開け
空の青さは日に日に色濃くなり、夏の足音がすぐそこまで迫った平日の正午過ぎ。
とある高校の昼休み。食堂に向かう者、自分の席で弁当を広げる者、グループで机を寄せて話す者、皆が皆思い思いに過ごす騒がしい教室。
教室の後ろの窓際に二つの机を向かい合わせにして座る二人の女子高生がいる。二人は広げた弁当に手をつけずスマホを見ながら話をしている。
「ねえ知ってる? また新しい怖い話が流行り出してるんだってー」
「なにそれ、最近多くない? 今度はどんな話?」
「今度はね、ビデオ通話だって」
「へー怖い話も時代の流れに乗るんだ。それでそれで?」
「それがさ、ビデオ通話中に急に変な雑音が入る時あるじゃん」
「たまにあるねそれ」
「そんな時、もし自分の後ろから女の人の声みたいなのが聞こえたら絶対に振り向いたら駄目なんだって」
「なんで?」
「後ろに真っ黒の服を着た女の人が立ってるから」
「えー何それ」
「通話相手の人は画面越しに見えるらしいよその女の人が。どこを見てるかわからないけど寂しそうな顔をしてるんだって」
「嘘、そんなにはっきり顔が見えるもんなの?」
「見えるらしいよ。でねでね、その女の人が写ったスクショが広まってるんだって」
「え、まじ? こわっ」
「ねー。私はまだその画像を見てないけど、画像を見た人はその後不幸になるんだって。やばくない?」
「やばすぎでしょ。絶対そんな画像見たくない」
「えー。私は少し見てみたいかも」
「嘘、それまじで言ってるそれ?」
「本気本気。今はまだマイナーだけどこの話もかなり広がる気がする」
「嫌だなー怖い話ばっかり広がるの」
「そう? 私は楽しいけど」
「あんたってほんと……あ、そういえば次の英語の宿題するの忘れてた。宿題やった?」
「やったやった。後でノート貸してあげる」
「まじ? たすかるー」
「私たちからしたら怖い話なんかよりも先生に怒られる方が怖いよねー」
「ねー本当」
この二人の顔が恐怖に歪むのはもう少し先の話。