プロローグ
初投稿
〜チート付きの異世界は基礎さえ守ればおおよそバイト感覚で大金が稼げる〜
高校二年の時に3A、つまり俺のクラスが上位存在的な何かに召喚されて異世界へに送られた。どうやら魔王を倒して欲しかったらしく、そこで29人全員が特典として結構強い異能を貰って混乱やハプニングに遭いつつ一年かけて、魔王を倒した。だが29人の力を使って倒した訳ではなく、あんまり喋ったことのない根暗だった佐藤が現地の人三人くらいとパーティを組んで気づいたら倒していた。
勇者(佐藤1人)凱旋の式典では佐藤は随分とイメチェンをしてガタイも良くなり別人の様な顔つきをしていた。クラスの奴らも皆んな生活基盤が整ったと思った矢先の事に混乱してたが佐藤の代わり様に驚いてた。そんでもって後ろにいる三人は順番にロリエルフ魔法使い、みるからに緊張してる巨乳の剣士、佐藤に抱きついてぶん殴られてたロリ。その濃すぎる光景に佐藤以外の3Aは唖然としてたのを覚えてる。
ともかく俺の一年間は仲良いやつと良さげな家を借りて遊んだりクエストで金を稼ぎと魔王が復活するまで準備をしていた。そう。魔王は復活してなかったのだ、本当に気づいたら魔王が復活して佐藤が倒してた。暇してる佐々木達と麻雀をしてたら突然空が曇り、国に緊急で呼び出されて数時間ごには晴れて魔王は倒された。
その後神様から連絡があり4年後に元の世界に帰れるとのことで、もともと元の世界では時間が進んでないらしく肉体年齢も変わらない事を聞いていた事もあり、3Aは四年間の自由を得た。俺からしたら大学でのキャンパスライフとでも思って遊びまくれる素晴らしい時間であった。
かくして、今は大学一年の終わり頃三年目の3月頃である。
「俺このままじゃダメな気がする」
「おいおい親が立直してんのにドラ自摸切りとか終わってんな」
「ロン、18000は18300」
「うわぁ、南3で点差がぁ…」
「俺このままじゃダメな気がする」
「またその発作かよ山田」
皆んなで楽しく賭け麻雀をしている時に山田が
飛びかけそうになりながら真面目な目でつぶやいた。
「いやさ、異世界でチートあってやる事が賭け麻とか違うんじゃないかなってさ、もっとこう冒険したり現地の子と付き合ったりそれこそ勇者みたいにハーレム作ったりさ…」
「山田。冒険は疲れるしメリットが少ない上に楽しくなかったじゃん…。あとハーレムも美人局に引っかかってから分かったろ?現実で彼女作れない奴がハーレムなんて作れるはずがない。そういうのはイケメンの方の後藤とか宇都宮とかがやるんだよ。あいつらめんどくさいとか言ってたけど」
「はー、くっそ、イケメンに生まれ変わりてぇなー」
山田はそう言って後ろに倒れ込んだ。
おい、オーラスはどうすんだ。
でも山田の言いたい事もわかる。俺たちは顔も良くなきゃ女に慣れちゃいない。唯一さっき親で上がった澤村はイケメンだが彼女はいない。俺たちがやる事は簡単な仕事と麻雀とギャンブルくらいだ。金にも困ってない俺たちは現実に戻った後の不安とそれまでの焦りをいかに誤魔化すかが大事なる。そしてなにかするにも食指が動かないのだ、つまりダメ人間。現地の人とパーティー組むのも国の手続きが必要だし、店を構えてる奴もいるが四年間しか出来ないのに意味が無いとまで思う。
結局一般人が力と金を持っても娯楽の少ない異世界じゃ前と何も変わらない。
「あ、そういえば鈴木、今日ポーションの納品期限今日じゃなかったか?やったの?」
「あ」
ふと沢村が点棒を仕舞いながら言った言葉に俺は固まった。
やばい、今日の夕方までに卸さなきゃいけないんだった…。やっちまった。。
外を見ると少し暗くなり始めた頃だった。遅れても1時間が限界。やばい、間に合うか。
「やばい!すぐ行ってくる。3時間くらいで戻る!待ってて!」
異世界での仕事。難易度的には元の世界のバイトよりも簡単な部類だ。簡単に言えば貰った特典を利用できる仕事を見つけるだけだ。
俺の場合は回復チートを持っている。それも病気から欠損まで治せる魔法を使える。そしてエンチャントする事も出来るのでポーションなんかも作れたりする。
俺は、毎週日曜にポーション店にポーションを卸す事で生計を立てている。たまに国に最高級ポーションを高値で卸したりと収入はとんでも無く多い。魔物の住む世界で需要は高いからな。まぁ俺だけが回復チートを持っている訳じゃ無いけど。需要と供給様様である。
「ふぅ」
そうして俺のギリギリの納品が終わった頃には空は暗く星々が輝いていた。
現実には物語のテンプレは無い。少なくとも俺には。ただ生活の基準が異世界になっただけのダメ人間だ。そんなダメ人間の、いやダメ人間達の犬の餌にもならない物語だ。
せめてチートがなきゃ変わったかもね。