コント「犬と飼い主」
場所:家
登場人物:人、犬
犬「わんわん。僕はポチ。今日もいっぱい遊ぶぞ!」
人が四つん這いでやってくる。
人「わんわん。僕はポチ。今日もいっぱい遊ぶぞ!」
犬「ご……ご主人……?」
人「違うわん。僕は犬のポチだわん」
犬「やめてくれよご主人! 僕が好きなのは人間の誇りを捨てていないご主人なんだ!」
人「僕は疲れたわん。それより、二人でこうしてたら、どっちが人でどっちが犬か分からないね」
犬「冷静になってご主人。今の僕は犬役を演じている」
人「そうだね」
犬「でもご主人は、犬の真似をしているだけのヤバい人間だわん」
人「俺から見ても、犬の真似をしているだけのヤバい人間だわん」
犬「コントという前提を開始早々に壊さないでくれわん」
人「お前はネタとして犬の真似をしているだろう」
犬「当然わん」
人「俺はこのコントが終わった後もこうしていたいと思っている」
犬「すみません、一旦コント止めます!」
犬役、普通に立つ
犬「どうした……何か悩みがあるのか……?」
人「悩みなんてないわん」
犬「『わん』て語尾やめろ。今はコントじゃない……大人同士の話し合いだ」
人「悩みなんてないわん」
犬「悩みも無く人はそこまでなれるのか」
人「今は喜びにあふれてるわん」
犬「悩みより救えない状況じゃないか!」
人「お腹空いたわん! ドックフード食べたいわん!」
犬「せめて躾がされてる犬を演じてくれよ……」
人「ドックフードはしっとりしたやつじゃないと嫌だわん」
犬「しかも要求してくる」
人「カリカリは歯に詰まるわん」
犬「めちゃめちゃグルメじゃん……いや待て、お前食べたことあるのか」
人「……」
犬「なんで今だけ返事しないんだよ!」
人役、ゆっくり犬役から目をそらしていく
犬「それ怒られた犬が良くやるやつ!」
人「そんなことより遊ぼうわん!」
人役、ボールをもってくる
犬「なんでそんなに無邪気なんだよ」
人「犬は飼い主が悲しんでると、楽しませようとするんだぜ」
犬「説明の時だけ人間に戻るシステムなのね」
人「俺は犬になりたい」
犬「いよいよ懇願し始めたよ。勘弁してくれ」
人「頼む! なんでもする! お座りも、お手も何でも!」
犬「それ大抵の犬が出来るやつ」
犬役、溜息
犬「……分かったよ、もう何もう言わない」
人「ありがとう」
犬「ギャラは人間だけのものだからね」
人役、立ち上がる
人「俺は人間だぜ」
犬「欲深さが一番人間らしいよ」
終わり