イルナが消えた後
携帯で初投稿...書きにくい( ´д`)
誤字あったらすみません(^_^;)
イルナに置いていかれた。その事がとてもショックで、ウィクトルはしばらく放心していた。けれど血相を変えて迎えに来たユリウスとイエルハルドに連れられ、気付けばコンラード家に戻っていた。
「いい加減、機嫌直しなよ」
ユリウスが呆れたように呟く。
イルナがいなくなってショックを受けてるのは、何もウィクトルだけではない。イエルハルドもドロテアも同様に落ち込んでいるのだ。
「分かってる」
ぽそりと呟き項垂れる。まるでフラれたようなウィクトルの様子に、ユリウスは怪訝そうに尋ねた。
「えと、イルナに婚約断られた?」
「何でそうなる!」
「だって落ち込み方が尋常じゃないし」
「ちゃんと了承してくれた!」
なら良かったと、ユリウスは胸を撫で下ろす。けれどふと気になることが頭を過った。
「あれ、でもイルナは婚約を受けること、まだルーメン侯爵にもイエルハルド殿にも伝えてないよね?」
「そうだが、だから何だ?」
「二人で話しただけだから、それを証明できないなぁと思って」
「!?」
確かにユリウスの言う通りだ。イルナは了承してくれたが、まだ誰にも報告していない。ここでウィクトルがそれを言ったところで、婚約を打診した側なので、信じてもらえない可能性も出てくる。
今のユリウスの言葉でウィクトルがさらに項垂れる。色々とショックを与えすぎかもしれないと思い、ユリウスはウィクトルに気付かれないよう溜息を付いた。
「にゃあ」
ふいに足元にアーロンが擦り寄って来る。それをチラリと見たウィクトルは、複雑そうな表情を浮かべていた。
「ウィル、この猫何?」
「…あのエルフから預かった」
あまり言いたくないのか不本意なのか、ウィクトルが投げやりな態度で言い放つ。それを見ていたアーロンは、しばらく無言でユリウスを眺めていたが、急にニヤリと口元を歪めて笑ってみせた。
「え」
猫の妙な笑い方に心底驚いたユリウスは目を丸くしてアーロンを凝視する。するとアーロンはさも楽しそうに表情を崩し、にょきっと後ろ足で二足立ちをした。
「これはこれは失礼しましたニャ。貴方様はご主人様のご友人のようですニャ。私はアーロンと申しますニャ」
「え…!?え、こ、この猫喋ったけど!?」
「ああ…、ケット・シーという猫の妖精らしい」
「はあ!?」
さすがのユリウスもこれには驚きを隠せないようで、大声を上げている。アーロンは驚くユリウスに事のあらましを説明し、ピョンとソファの上に飛び乗って寛ぐように座った。
「…何だか、イルナと出会ってから色々あるねぇ」
「ああ…」
エルフや妖精に出会うだけでなく、こんな風にかかわる事になるとは思ってもみなかった。感慨深げにユリウスが呟くと、ようやくウィクトルがのっそりと動き出した。そしてソファに座って寛ぐアーロンに向かい、質問をした。
「…キルスティは一体何者だ?お前は彼女をキルスティ様と呼んでいたが、どういう関係なんだ?」
真っ直ぐにアーロンを見据えて尋ねる。その質問に対してアーロンはニヤリと口元を歪めるように弧を描く。
「ご主人様は何も知らないのかニャ?キルスティ様はエルフの長の娘で、豊穣の精霊ヴェレス様の眷属になられたお方だニャ。イルナ様と懇意にしてるのも、多分ヴェレス様から何かしらの命を受けてると思うニャ」
「え…」
「豊穣の精霊ヴェレス様だって…?」
ウィクトルとユリウスが目を見開く。まさかの精霊の名が出て来た。今度こそ驚かないと思っていたが、やはり予想外の答えに驚いてしまう。
「私はキルスティ様から命じられてご主人様の元へ来ておりますが、ケット・シー一族としては人間の王族に飼われる等これ以上ない誉でございますニャ!この出会いに感謝してますニャア~」
ユラユラと尻尾を揺らし、嬉しそうに喉を鳴らしている。どうやらケット・シーとは人間の社会に紛れ込み、普通の飼いネコとして暮らしていくのがステイタスだそうだ。その中でも王族に飼われるのは自慢中の自慢、とてつもなく幸運だとか。そんなものなのかと、ウィクトルとユリウスが首を傾げた。
「王族とは言っても、俺は滅多に王宮に戻らない。今も聖竜ガイウス様からの命で、各地を旅している。それでもお前は幸運だと言うのか?」
「当然ですニャ。それに忘れておられるようですが、私はご主人様とイルナ様を繋ぐ役割もございますニャ。王族に飼われるという誉の他にも、キルスティ様のお役に立つという二重の幸運!素晴らしいですニャ!」
「…まだ飼うとは言ってないが」
「イルナ様と連絡を取れるのは私だけですニャ。それでも飼わないと言いますかニャ?」
「う…」
完全にアーロンにしてやられている。そんな二人(?)のやり取りを苦笑しながら見ていたユリウスだったが、ふと廊下に人の気配がし、人差し指を唇の前に立て、「シッ」と二人に黙るよう合図した。
それを見てアーロンもすぐさま普通の猫のふりをする。数秒後、部屋をノックする音が響いた。
「どうぞ」
ユリウスが返事をすると、イエルハルドとドロテアが部屋の外に立っていた。中へ入るよう促すと、アーロンはソファからストンと飛び降り、ウィクトルの足元へ移動する。一瞬イエルハルドはアーロンを見たが、興味がないらしくすぐに視線を逸らした。
「ウィクトル殿下、イルナの事ですが」
「ああ」
ウィクトルが頷くと、イエルハルドも話を続ける。
「とりあえず、一か月後の聖竜の巫女の選定には戻って来ると言っていたので、我々もそれを信じて待ちましょう。幸い、あの子は転移のオーブを持っている。ギリギリでも王都へ転移すれば問題ないでしょう」
「ああ、そうだな。私達も当初の予定通り、西の森の探索が終われば一度王都へ戻る。イエルハルド殿には大変世話になった」
「いえ、当然の事です。…して、殿下」
「何だ?」
改まったイエルハルドにウィクトルは怪訝そうにすると、ゴホンとイエルハルドの隣に座るドロテアがわざとらしく咳をし、イエルハルドの脇腹を肘で突いていた。丸見えですが。
「イルナに婚約を申し込んだそうですね」
「ああ、その事か」
一体何を言われるのかと思ったが、婚約の話だというので拍子抜けする。それを興味津々の様子のドロテアが、我満できなかったらしく身を乗り出して来た。
「ウィクトル殿下、イルナからお返事は貰えまして?」
目を輝かせながら問うドロテアが、何だか小動物のように見えるのは気のせいだと言うことにしておこう。とりあえず害意はないので質問には答える事にする。
「ああ、イルナは了承してくれた」
「まあ!」
両手を目の前で合わせてドロテアが感激したように破顔する。それとは対照的にイエルハルドは苦虫を噛み潰したような表情だ。
「だが、了承の旨をルーメン侯爵に伝える事なく、イルナは消えてしまった」
「成る程、この状況では嫌がって姿を消したようにも見えますな」
「お父様!」
イエルハルドの言葉にドロテアが怒る。自分だって怒りたいと、ウィクトルは心の中で悪態をつく。そして、真面目な顔でイエルハルドを見据えた。
「イエルハルド殿。婚約の件にしてもそうだが、今回のイルナの事をルーメン侯爵にどのように伝えるべきか、今後の対策も踏まえて話がしたい」
「わかりました」
ふざける様子もなくイエルハルドが頷く。
今頃イルナはどうしているだろうかと考えながらも、ウィクトルはこれからするべき事に頭を悩ませるのだった。
誤字報告ありがとうございます!
そしてすみません~っ!




