エーテル作り
キルスティからすごく重大な話を聞かされて、しばらく放心していたイルナだったが、とりあえず気をしっかり持ち直す。
今自分が悩んでも何もできないし、一人ではどうする事もできないような内容だからだ。
「と、とりあえずエーテル作ろう!」
「そうそう!作ろう~!」
ぐっと握りこぶしを作り、気合を入れるとキルスティも右手で拳を作って突き上げている。
そしてまずはエーテルを作る為の魔法水を作る事にした。
水を加熱しながら魔力を流し込んでいると、キルスティが興味深そうにその作業を眺めている。
気にならないと言えば嘘になるが、このくらいならアミンがよく見ていた事もあって、気が散る事はない。
「イルナの魔力ってキレイだねぇ」
ポソリとキルスティが呟き、イルナが驚いて彼女を見る。
「え、そう?て、魔力にキレイとかあるの?」
「あるよぉ。人によって違うもん」
それは知らなかった。というか、魔力にも個性ってあるんだ、なんて普通に感心してしまった。
時々そんな風に喋りながらも、大量の魔法水を作り終える。そしてここからレッドハーブと魔石を混ぜる作業だ。
魔石はウィクトルと街に行った時にいくつか買っておいたのを持って来ていた。
空の魔石に自分の魔力を入れてもいいが、一つ入れる度に枯渇状態になるので効率が悪すぎてやる気がでなかったからだ。
「イルナ。レッドハーブは最初に入れて、魔石は魔法水が沸騰してから入れた方がいいよ」
「わかった」
キルスティに言われた通り、一度冷ました魔法水にレッドハーブを入れ、火にかける。グツグツと沸騰しだしてから、魔石をそっと鍋の中に入れた。
ゆっくりとかき混ぜると魔法水がキラキラと輝き、オレンジ色に変化した。
「綺麗なオレンジ色ね」
「うん、成功したね!さすがイルナだね!ホントは難しいから失敗して当たり前なのに!」
あっさりとエーテルを作ったイルナにキルスティがパチパチと拍手を送る。
そんな素直に称賛されると、さすがにイルナもちょっと恥ずかしくなってしまう。
「そんなに褒められると恥ずかしいわ。それに、ポーション作りはかなり練習したから、こういう作業は得意なの」
「イルナは努力家なんだね。すごい事だよ!ホントはもっと時間がかかると思ってたから」
「それなら良かったわ。キルスティから見て合格かしら?」
「うん、勿論!」
ニッコリと笑顔で返され、イルナもつられて笑顔になる。
それから数時間、イルナはキルスティに手伝ってもらいながらエーテル作りを続けた。
そしてそろそろ帰らないといけない時間になると、キルスティが遠慮がちにイルナに問い掛けた。
「イルナ、エーテル半分置いていってくれる?」
キルスティの申し出にイルナは頷く。
「勿論いいよ。キルスティがレッドハーブをくれなきゃ作れなかったもの。どうもありがとう」
「えへへ」
イルナの言葉が嬉しかったのか、キルスティがはにかみながらも喜んでいる。
そして空間魔法を唱えてエーテルをしまい、イルナに向き直った。
「これは生命の木の樹液が見つかるまで保管しておくね」
「ああ…その為の…」
「うん」
成程、とイルナが頷く。元々エリクサーを作る為にエーテルを作っていたのだから当然かもしれない。
「じゃあ私は家に帰るね」
「うん、また来てね。今度は魔法を教えてあげるよ」
「…!わかった、絶対来るわ!」
「待ってるよ」
ニッコリと微笑みながらキルスティが手を振る。それにこたえるようにイルナも手を振り、自分の家の工房へと転移した。




