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秘密のジョブの存在


 エルフのキルスティに案内され、庭の一角にあるテラスでお茶を出された。

 さっきのカフェで出ていたハーブティーとはまた違う味のお茶だ。

 混乱しかけた頭を正常に戻す為、いったん落ち着こうという事でお茶を飲むことになったのだ。



「えと、それで『増幅術師アウキシリア』って…」

「僕も知らないジョブだな。ウィルは知ってたんだ?」

「ああ、かなり禁秘事項になっているが、確かに存在するジョブだ。ただ、ジョブは存在してもその資格を保持している者は何年も現れていない」

「そうだよぉ。だから『秘密のジョブ』になってるんだよね~」



 サラリと言ってのけるキルスティにウィクトルも困ったように顔を歪める。



「でも、そんな隠すような危険なジョブには聞こえないけど。だって増幅術って事はサポート魔法だろ?」



 そうだ。イルナも植物の成長を促したり増殖させたり、ポーションの性能を上げたりする為に使っていただけだ。

 だからこそそんな希少なジョブだと言われても、どうにもピンとこない。



「増幅魔法はとても貴重だよ。私がこの国に来て姿を変えてハーブ園をしてたのも、妖精王の命令でアウキシリアを探す為だもの」

「え…?」



 キルスティの言葉にイルナが驚いて目を見開く。今とんでもない名前が出て来たような気がしたが、聞き間違いだろうかと耳を疑った。



「ツェツィリア様~、アートゥーア様~、イグナツィ様~、全員眠っちゃったの。だから起こす為にアウキシリアが必要。でないと大変な事が起きるって、妖精王が言ってたよ」

「何だって!?」

「え、ウィル様?」



 ガタンと音を立ててウィクトルが立ち上がり、カップががちゃんと音を立てる。

 驚いてウィクトルとユリウスに視線を向けると、ユリウスも青くなって手で口元を覆っていた。

 今キルスティが言った名は、世界に散らばる他の守護竜達だ。それが眠ってしまっているのは異常としか言いようがない。



「貴方、ブラッド・オーブ持ってるね。でもまだ全然力が溜まってない。それじゃあ聖竜ガイウス様の力は復活しないよ」

「なっ、何でそれを…」



 ウィクトルがぎょっとして、ユリウスの持つ鞄に視線を向ける。

 鞄の中には魔物の核を取り込む宝玉が入れてある。それが竜の力を復活させるブラッド・オーブだ。

 その存在を言い当てて明らかに二人は動揺いていた。

 けれどキルスティは平然と話を続ける。



「そのオーブだけじゃあダメだよ。聖竜の巫女の魔力だっていつまで持つかわからないしねぇ」

「え、お、お母様の魔力?」

「力を失くしかけた聖竜に、一時しのぎで巫女が魔力を提供してるんだよ」

「ええ!?」



 まさか自分の母がそんな事になってるなんて、イルナが知る由もないのは仕方がない。

 でも、聞いてしまったからには聞かなかった事にはできない。



「ねえ教えて!そのまま聖竜様に魔力を送り続けたら、お母様はどうなるの!?」

「倒れるよ。とは言っても聖竜は強いから、時々魔力を提供するだけで今の所保ってるみたいだけどね」



 と言う事は。枯渇して復活して提供して枯渇しての繰り返しと言う事なのか。

 イルナの顔がサーッと青くなる。



「そんな…ど、どうしたら…!あ、そっか!エーテル!エーテルいっぱい作って王都に送れば!」

「それもいいかもねぇ。イルナが作ったエーテルなら、他よりずっと性能がいいし、聖竜の巫女も助かるんじゃないかなぁ」

「それじゃあキルスティ!レッドハーブあるだけ売って!」

「いいよ。というかタダであげるよ」



 タダでと言われてイルナが驚く。こんな希少なハーブをタダでもらうなんて、それこそ良心が許さないのだが、キルスティがその後に言った言葉でイルナがさらに絶句する。



「その代り、イルナにはエリクサーを作ってもらいたいんだよね~」



 とんでもない依頼をサラッとされてしまった。





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