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わたしの永遠の故郷をさがして 第4部 『番外編』 第7話


************   ************


「『第1王女様』がいらっしゃる!」


 村長さんは飛び上がりました。


 『第3王女様』は、わりあい頻繁に北島内の村落を巡って回ります。


 北島の住民にとっては、最も身近な『王室』の方であり、『教会』の巫女様なのです。


 一方で、『第2王女様』は、『第1王女様』と共に、学業でも、音楽でも、公務でも、日本合衆国との掛け持ちを続けているので、あまり村々にお姿を現すことは、ありませんでした。


 そこに、今回、お忍びで『第2王女様』が現れ、さらに、なんと『第1王女様』がいらっしゃるというのです。


 こうしたことは、少なくとも一か月前には準備が始まっていなければならない事であるにもかかわらず、なのです。


「何も準備ができないですじゃ。ま、仕方がないですじゃ。」


 村の副村長さんは、何かと先走りする村長さんのブレーキ役でした。


「あなたね、そうは言っても、何もしないわけにはゆきますまいじゃ。ほら、あんたたち、お酒とか、あああ、なにか、ごちそうを準備しなさいじゃ。」


「ごちそうと言うても、自分たちが食べる分以上はないですじゃね。お酒は、良かったですべかな?王女様は、まだお酒は飲めますまいに。」


「神様のお子でいらっしゃる。それは、よかろうですじゃろう。」


 そんなことを、騒いでいるうちに、『第1王女様』は、すでにこの地上に現れていらっしゃいました。


 しかし、もう、村の日はとっぷりと暮れてゆきました。


 ここには、ネオン広告も、高い建物も、コンビニも、スーパーも食堂も、酒場もありません。


 村はずれに、境界を示すLEDの街灯が、ふたつ、淡く輝いているだけです。


 ただし、役場の前には、日用雑貨品を扱う『自動供給装置』が二台設置されておりました。


 村民カードを入れ、表示される必要な物品の番号を入力すると、無料でそれなりの品物が入手できるのです。


 石鹸とか、歯ブラシとか、簡単な傷薬とか、痛み止めとか、賞味期限が長いパンとか、インスタント麺類とか・・・そうしたものです。


 しかし、ここでは、もちろん、ごちそうの注文とかは出来ません。


 お酒類は、自宅の端末から要請を出し、審査の上、許可されたものだけが、後日配達されます。


 つまり、これは、お酒を飲んではならない人(未成年や、病気とかの健康上の理由や、飲むと暴れやすい人などには、許可が出ませんでした。)や、飲み過ぎ、を排除する方策です。


 いずれにせよ、こう、急に『第1王女様』がおいでになると言われても、準備はできないわけなのです。


「村長様、お気になさらずともよいのです。今回は、『第1王女様』も非公式訪問ですから。何も準備は必要ございませんわ。」


 『第2王女様』がおっしゃいました。


「・・・して、その、王女様のご用件とは、何事でございましょうや?」


 副村長さんが尋ねました。


「新しい政策の実験です。この村に、そのご協力をお願いいたします。」


 『第2王女様』がにこやかに答えました。


「詳しくは、『第1王女様』が申し上げます。なに、そう難しい事ではございません。実は、『野球』や『ソフトボール』などを、この北島に導入したいのです。そのための準備段階のひとつとして、この、村の子供たち数人を、東京にお招きいたします。」


「ひぇ~~~~~?? 『やきう』『そふたぼーる』でありますじゃか?」


 村長さんが、さっぱりわからずに言いました。


「はい。南島では、すでに『人気スポーツ』となっております。」


「運動会の新しい種目のことですな、村長。」


 まだ若い、副村長さんが、なんとなくの解説に入りました。


「おおお。新しい運動会の演目ですとな。」


「はい、そのとおりですわ。村長様。遠からず、この村からも世界レベルの選手が生まれることでしょう。」


「それは、また、なあんとも・・・」


「あの、神さまは、お許しになるのでしょうか?この島から外に出ても、よいのでしょうか?」


 村長の奥さんが、心配そうに尋ねて来ました。


 無理もないのです。


 一般の村民からしたら、北島から外に出るということは、基本的に神の摂理に反する事だからです。


 そこは、『第2王女様』が知らないはずがありません。


「はい、ですから、『第1の巫女様』である『第1王女様』自らが、お越しになるのです。」


「おおおおお~~~~!!!!」


 どよめきが起こりました。


 『第1王女様』は、実際神の子であり、神の言葉を直に伝える唯一の存在なのです。



     ***   ***   ***   ***



 そのとき、暗闇に支配されていた村に、突然、やわらかい光が満ち溢れました。


 見回してみても、特に、はっきりとした『光源』は、何も見当たらなかったのですが、このあたりだけが、ふわっとした光に満たされたのです。


 ちょっと、実際、不思議でした。


「おおおお~~~これは神の光じゃあ!」


 村のタルレジャ教会の司祭様がつぶやきました。



 そうして、その、不思議な光の中からは、もちろん『第1王女様』と、お付きの人々が、現れたのです。



『こんな古典的な出現方法は、あまりに見え透いてますわ。まったくお姉さまは、何、考えてるんだか。』



 『第2王女様』がつぶやきましたが、それは、周囲の村人には聞こえなかったのです。




  ************   ************


















































 



 

 


 





































 

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