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わたしの永遠の故郷をさがして 第4部 『番外編』 第5話


************   ************



 最後に100メートル走を実施したあとは、さすがに元気な北島の子供たちも、いささかダウン状態でした。


 お付きの二人も、タイムを計ったりしながら、また一方で、子供たちの体調をチェックしたり管理したりで、大忙しだったのです。


 子供たちが、ナリアの正体を見破れなかったのは、無理もない事ではありました。


 彼らの意識の中の『王女様』が、どういう存在なのかを鑑みれば、無理もない事だったのです。




 それから、ナリアは、たくさん残ったジュース類の入った箱を子供たちに任せ、いっしょに村まで歩きました。


 とはいっても、それはせいぜい200メートル程度の距離にすぎません。


 子供たちは、まるで、凱旋した兵士のようでした。


 農作業を終えた親たちは、直前に家に戻っていました。


 作業場などに働きに出ていた人たちも、ぼつぼつ送迎電気バスで帰って来つつありました。


 北島では、『残業』という概念は、ほぼありません。


 非常に緻密な計画的労働が組まれていて、利潤を限りなくさらに上げる、というような考え方もありませんでした。


 それでも、なぜか大変良質な作物が得られ、質の高い軽工業生産物が作られていて、これらは最近は南島にも出荷されて、結構な人気がありました。


 それは、『アニーさん』が常に監視をし、必要な対策や改良をしていることと、最先端の農業技術や、生産装置が導入されていたことに、大きな要因がありました。


 それは、『教団』や『王室』、さらに『マツムラ・コーポレーション』の支援の結果でもありました。


 夕方がやってくる中で、親たちは子供たちを迎え(逆ではないのです)今日1日の幸福を味わうのでした。


 村の中では、個別に、あるいは集団で、夕食の準備が始まっておりました。


 昔の『日本合衆国』にもあった、とてもなつかしい、夕方の光景が広がっていたのです。


 ナリアは、子供たちと共に、そんな村に入りました。




「ほら、この人が、ナリアじゃ。前に話したろ?」


 ガキ大将ブアルが、意外とほっそりとした体形の母に告げたのです。


「はあ・・・あの王宮さまにお勤めとかの人じゃね。」


「うん。『やきゅう・・』ていう遊びを、してたんじゃ。ナリアが監督。」


「まあまあ・・・・あの、こちらは?」


 お付きの二人を見ながら、その母が言いました。


「王宮の職員さんじゃ。ナリアの・・・まあ、友達なんじゃな。」


「はあ・・・それはご苦労様ですじゃ。」


「いっぱい、ジュースもらった。見たことないのも。」


「もう、暑くてとけちゃいましたけどがね。まだたくさん残ったから、みなさんでどうぞ。」


 ナリアが、そう、言ったのです。


「はあ・・・・それはまあ、どうも。」


 分厚いサングラスに、大きく膨らんだ水着の胸が、汗でかなり透けて見えている赤いワンピースを着た姿に、ちょっとびっくりしながら、母親は言いました。


 北島の住民は、普段はみな同じデザインの、うすいピンク色の貫頭着を着ていますから、これは明らかに通常ではないのです。


 ナリアは、一般の『村』の住民ではない、ということを、明らかにしていたのです。


 さらに、お付きの人を二人も連れて歩いているという事は、ただ事ではないことを意味しておりましたが、さすがにこれが『第2王女様』であるとまでは、母親も考えませんでした。


 おそらくは、教団の『巫女様組』の関係者だろうくらいに思ったのです。


 『巫女様組』は、神聖な『巫女様』のお世話をする少女たちの事です。


 北島内の、とびきり優秀な美少女が抜擢されるのですが、その実態は住民には、ほぼ『謎』だったのです。


 それでも、ブアルの母は、なかなか良い線を考えていたわけです。


 そこに、噂があっという間に広まったのか、多数の大人や子供たちが集まってきました。


 『第2王女様』にしてみれば、あえて招集をかける必要もなかったというわけです。



   **   **   **   **   **

 


 そこに、村役の一人もやってきました。


 村を代表して、『教会』や『王宮』とじかに接触のある人です。


 ほんのしばらく、ナリアを見つめてから、彼の丸い顔は、急激に赤く膨張し、驚愕に溢れたのです。


「ななな・・・これは、いや、これは。なんと・・・・『王女様』ではございませんか・・・・」


 その言葉に、周囲の大人たちは、まるで大きな地震波が、どかんと体に伝わったように震えました。


「いや、まさか、予告もなく・・・しかし、その・・最近お忍びもあるとは、聞いておりましたが・・」


 ナリアは、ニコッと笑って、分厚いサングラスを外し、まとめていた長い美しい髪をほぐしたのです。


 それは、もう、衝撃的な美しさでした。


「おおおう~~~~~!!」


 皆が声を上げました。


 北島の住民の頭の中には、巨大なスタンプで押されたように刷り込まれている、『王女様』のお姿と、その強烈なオーラそのものに、まったく間違いありませんでした。


 「はは~~~~~『王女様』!」


 まるで、『日本合衆国』の有名な某テレビドラマのような光景でした。


 「まあ、ばれましたら、しょうがございませんわ。」


 ナリアが言いました。


 でこぼこのグラウンドでの雰囲気とは、打って変わった、高貴なお姿でした。


 お付きの二人の内、女性のほうが言いました。


「『ルイーザ第2王女様』に、ございます。」


「はは~~~~~おそれいりまあす~~~!!」


 その場の全員がひれふしました。


 あわてて飛んできた村長さんが、代表して『三顧の礼』をし、最後には、ルイーザの裸足の足の親指にキスをしました。 



 *****   *****   *****



「あららら。もう、ばれちゃってるじゃないの、情けな~~! アニーさん行くわよ。」


 『第一王女様』が、指示を出しました。


『はあい。今夜は、あの村は大事おおごとですなあ。気の毒に・・・蛇に睨まれた『かえる』さんみたいな・・』


「こらあ、バカ言ってないで、さっさと、ちゃんと移送なさいまし。」


『はああああい。』


 王宮の地下ホームから、ヘレナの乗った高速移動車が、その村めがけて飛び出しました。



   ************  ***********




















 
















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