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わたしの永遠の故郷をさがして 第4部 『番外編』 第3話


 ************   ************


「ナリア、きつすぎだよ!」


 ブアルが、すぐに音を上げました。


「なっさけないなあ。よっしゃあ、休憩~!」


 子供たちは、小さな石のベンチが埋まっている場所まで引き上げて来ました。


 すると、そこには冷たいびんのジュースやら、ちょっと見たことがないような、紙ではないらしいパッケージに包まれた凍ったドリンクらしきもの、が積まれておりました。


「おわ~。こんなもん、どこから来た?」


 ブアルが、まっさきに飛びつきながら言ったのです。


 ナリアは、崖の上にぼけっとただずんでいる、二人の大人を指さしました。


「おあ!?あれは、ナリアの部下か?」


「そうねぇ。正式に言えば、わたくしの部下ではなくて、上司の部下なんだけど、まあ、そういう意味ではお友達かな。」


「ああ、ナリアは王宮さまに勤めてるからに、王女様の部下と言う訳じゃかな。」


「おー。さすが、カスミね。読みが早いわ。まあ、そういうことだわね。」


「あっしらのために、わざわざ用意したんか?」


 この村の女子は、自分を「あっし」と呼ぶことが普通でした。


 特定のやや古い『日本語』との繋がりが、色濃く残っているのです。


 しかし、なんで、王国の北島で『日本語』が使われるのか、そこが問題です。


 王国では、『タルレジャ王国語』と『日本合衆国語』、それに『英欧語』が共通語として認定されていたのですが、この村では、『日本語』が主体となっているのです。


 村によって、その基本となる言葉が、細かく分けられていたのです。


 その『日本合衆国語』も、『英欧語』も、『王国語』も、村によってそれぞれ違いがある、さまざまな形態のもの・・・つまり、様々な方言・・・が使われていました。


 実のところ、こうなったのには、歴史の中で『王室』と『教会』側の都合、というものがありました。


 それぞれの隣村とは、まず、基本的に言葉が違うようになっておりました。


 だから、その人がどこの村の人かが、王宮や教会の職員からも、すぐにわかるようになっておりました。


 ただ、どこの村の人も、基本的な『タルレジャ王国語会話』は、学んでいて、日常会話程度は、十分可能だったのです。


 つまり、良く言えば、北島の住民は、みな少なくとも二か国語は話せるバイリンガルだったのです。


 こうしたことは、歴史上、いろんな事情が絡まって出来てきていたのですが、それはおいおいお話が出てくるでしょう。


 ときに、北島には、北島の住民でさえ全く知らない『孤島』が、いくつもありました。


 その半分くらいは、『協会』か『王宮』の所有物でしたが、残りは、ほとんどすべてが、『第1の巫女様』の所有で、あと『国王陛下』と『第2の巫女様』『第3の巫女様』がひとつずつ所有していました。


 その島は、つまり、所有者の許可がなければ、他の人は入れないというわけなのです。


 ついでに言うと、『第1の巫女様』が勝手に入れないのは、『国王陛下』『第2の巫女様』『第3の巫女様』が持つ、3つの島だけなのでした。


 こうしたことからも、現在のタルレジャ王国では、まだ15歳の『第1の巫女様』=『第1王女様』が、すでに圧倒的な力を持っていることが分かるのでした。 


「まあ、そう思ってくださいな。」


「あっしは、こんなの初めて見たじゃ。」


 ミナナが、凍った、紙ではないカラフルなパッケージの飲料を、うれしそうに撫でまわしながら言いました。


「日本合衆国製よ。」


「え、そりゃあ、そうなんかの。しかも、日本かな。すっごいなあ、さすが『王宮』さまじゃ。いや『教会様』かの・・・あの、これ、ほんとに、食べてええのか? 冷たくて、おいしそうじゃ。」


「はい~。もちろん、どうぞ、どうぞ。わたくしのおごりですから。」


「おわ~~~!!」


 こどもたちは、ジュースや凍ったドリンクに飛びつきました。



 さて、ついでに言えば、王室内においては、『王宮言葉』というものがあります。


 普段はもちろん、王宮でも教会でも『タルレジャ標準語』が共通語として使われるのですが、王女様どうし、あるいは、王室の親戚仲間のメンバーどうしでは、『王室言葉』を使うことがよくあるのです。これは『日本合衆国』古来の武家言葉に、一部地方の方言がまとわりついて形成されていたのですが、それは、タルレジャ王家の『補完家』のひとつである『松村家』の生い立ちとも、深い関連があるとされるのでした。


 実際のところは、結果的にですが、この村の言葉は、むしろ『王宮言葉』のほうに近かったのですが、一般的には、まずは、北島内では、大変高貴な言葉として認識されていたのです。


 しかし、『第3王女様』は、こうしたことも含めて、様々な北島の在り方に、強く異議を唱えていました。


 『あきらかに、住民を差別的に分断するような方式であり、今の時代には、もはやそぐわないのです。他の様々なことと合わせて、早急に民主的な改革が必要です。』、と主張なさっていたのです。


 ただ、『第3王女様』は、上ふたりの王女様と同様、『日本合衆国』で生まれたことは事実で、日本名も持ってはいましたが、すぐに王国に移ったので、かの国に対する思い入れは、それほどは、なかったのです。また『日本語』も、かなり不得意でした。



「あなたたち、いいこと、まもなくこの村を中心に、野球教室を始めます。」


 ナリアがきっぱりと言ったのです。


「はあ??? ヤキュうヨウシツ?。。。なんじゃそれは?」


 周囲の子供たちが、しきりに首をひねったのでした。


「あなた達が、いまやってるのが、『野球』の一種なのです。この『野球』は、南北アメリカ国や日本合衆国では、人気のスポーツです。南島でも、このところ人気急上昇中ですの。日本のような『プロ球団』は、わが王国にはまだひとつもありませんが。そこで、北島にも導入してゆこうと決まったのです。まずは、そのテスト・ケースとして、ここから始めます。あなたたちは、パイオニアです。」


「ぱうおにや?」


「パイオニアです、つまり新しいことについての開拓者です。」


「うああ、すごいことですじゃね。」


 カスミが言いました。


「はい、そうなのです。さて、そこで、皆さんの中から、まず、ふたりを選んで、日本合衆国に見学に行ってもらいます。」


「ふあ~~~~!! 日本に行くじゃとかあ? あっしら、村から出たこともないじゃに。」


 ミナナが叫びました。


「まあ、そこらあたりは、ちゃんと予習をしていただきます。でも、その前に、適性試験をやります。今の練習も、そのうちのひとつでした。」


「うぎょわ~~~~。そりゃあ、ナリア、先に言ってくれんと、困るじゃよお~~。」


 カスミが文句を言いました。


 しかし、みな、このナリアが、前に来たナリアと同じ人ではないことすら、まだ、分かっては、いなかったのです。




  ************   ************















 













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