わたしの永遠の故郷をさがして 第4部 『番外編』 第10話
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現在『北島』では、巨大な『新王立病院』の工事が行われているのです。
王国『北島』の『王宮』と『教団本部』の裏側で、これも建設中の、『巨大』を通り越したような、3本の『タルレジャタワー』の隣の敷地に建設中です。
となりと言っても、間には丘があって、直接接しているわけではありません。
さらに、『南島』の住民も自由に利用できることとなる『総合病院』であるため、『南島』から直通の『モノレール』も建設中でした。
通常の『南島』から『北島』に入るゲートでは、手狭になってしまって、大混雑してしまうことは、もう目に見えていたからです。
『保守派』の人たちの一部には、『北島』の神聖な静穏が阻害されかねない、と主張するグループもありましたが、さすがに『第1王女様』=『第1の巫女様』の肝入りでの建設ということから、あまり過激な反対は行いにくいようでした。
逆に『進歩派』で、『王室廃止主義者』のパブロ議員などは、これに関してだけは、早くから『基本的』には『賛成』を表明しておりました。
ただし、近い将来、『北島が完全開放されることを前提として。』でしたが。
『王国政府』と『王室』、さらに『教団』は、一般の『北島訪問者』と、病院への『訪問者』つまり『患者』やその『家族』、『お見舞いの人』『通勤の医師や看護師や職員』が、混同されないよう、また『悪意のある訪問者』が紛れ込まないようにする対策を協議していました。
さて、『日本合衆国』に、『北島』始まって以来の、直接『遊学』することになった3人は、まさにおっかなびっくりで、『王宮』での『認証式』兼『出発祝賀会』に出席していました。
一度『南島』に籍を移し、その後しばらく『南島』で学んでから、海外に『留学』をする大学生などは、これまでもいくらもあったのですが、この『3人』の様なケースは、まったく初めてでした。
つまり、本当の『テスト・ケース』だったのです。
いまは、まだ『火星人』もやってくる前の事であり、そのような『事態』を考えている人は、まったくありませんでした。
『第1王女様』を除いては、ですが。
『王宮』には、現在『第3王女様』と『第2王女様』がいらっしゃいました。
『第3王女様』は、火星の『ダレル』によって洗脳される前の、ごく普通の状態でした。
また『第2王女様』も、『ヘレナ』の分身に憑依される以前でありました。
地球人全体も、もちろん『通常』の状態であり、あちらこちらで『紛争』もあり、さまざまな分野で、国同士の間での、厳しい駆け引きが、毎日普通に行われておりました。
そんな中で、『タルレジャ王国』自体は、それなりに安定した『平和な』状態だったのです。
ただ、『第3王女様』が自ら抱えている、『北島』のありかたに関する疑問は、ますます、つのる一方だったのですが。
そこで、今回の『北島』の少年少女たちによる『日本合衆国』訪問は、小さいけれども、まずは前進だろう、とは考えていらっしゃいました。
『飾りではない、正しい姿をおたがいに見聞きし、また、『北島』の正しい姿を伝えて来てください。そうして、両国の友好関係の発展に、ぜひ役立ってください。』
『第3王女様』は、そう挨拶で申されました。
ガキ大将のブアル君には、いささか壮大すぎるお話ではあったのですが、『第3王女様』としては、これは、かなり突っ込んだ言い方だったのです。
と、いいますのも、こうした『王女様』の発言は、今回、国際的にも報道されていたからです。
『北島』関連のニュースが、世界に向けて発信されることは、あまり沢山はなかったのです。
一方『第2王女様』は、その月の3分の1ほどは、『日本合衆国』で過ごしていましたから、かの国の実情は『第3王女様』より、はるかによく知っていらっしゃいます。
『まあ、基本的な精神は、『第3王女様』が、ただいま、申し上げた通りです。でも、まあ、あまり、背筋を伸ばし過ぎないで、一か月、楽しく過ごしてきてください。それが一番ですから。わたくしも、あなた方を追いかけて、あさってには『帰国』いたします。ただ、『日本合衆国』には、いま、わりと大きな『台風』が徐々に迫っているようです。もしかしたら、この先、『超大型』になる可能性もありそうです。『王国』には、めったに『台風』は来ないので、けがなどなさいませんように、そこは十分気をつけてくださいね。あちらに着いたら、よく注意を聞いて行動しましょう。それから、『交通事故』に会わないようにしましょう。『北島』との最大の違いは、自動車が目の前を、ひっきりなしに通ることです。『研修』で学んでは頂きましたが、とくに、ここは気を付けましょう。あちらの空港に着いたら、お姉さまが、いえ『第1王女様』が、お迎えに行きますから、いっしょに、おうちまで、行ってくださいね。』
『ひえ。『第1王女様』が~~~!』
ブアルが、思わず叫んだのです。
ミナナが、ブアルの大きな体をつっつきました。
『ほほほ。まあ、緊張する必要はありませんわ。あちらの国では、お姉さまもあたくしも、一般の『高校生』ですから。』
『第3王女様』には、少し違和感があったのです。
『自分は、『北島』の人々を『南島』と同じように扱われるようにしたい。でも、お姉さまたちふたりは、あちらの国や『アージア連邦』や『南北アメリカ国』や『ロロシア国』や『ヨーロッパ国』を飛び回っていて、よく知っているが、自分は、どちらも数日滞在しただけで、実際のところは、ほんとんど何にも知らない。これは、正しいことだろうか?』
つまり、『第3王女様』には、いくらかの、隠された『不安』と『不満』があったのです。
しかし、それでも、こうも思うのです。
『実際に、この『王国』を維持しているのは、もちろん『政府』だけれど、毎日『王宮』や『教団』の仕事をこなしている時間は、お姉さまたち『おふたり』よりも、自分の方が倍以上多い。それは、価値のある正しい事なんだろう。』
ようやく『中等学部』に進んだばかりの『第3王女様』は、もちろん、『秀才』です。
彼女の王位の継承順位は三番目で、まず、『女王』にはならないでしょう。
もし『女王』になったら、この王国の伝統では、二度と『世間』には出てくることが出来ないのです。
『第1王女様』は、きっと、そうなりますし、そのとき『第2王女』様は、『神様』と『女王様』と、『世間』をつなぐ役割と、さらに『公務』でもって、とてつもない大忙しになるでしょう。
つまり、将来最も活躍できるのは、『自分』なのだ、と、予測しても、いらっしゃったのです。
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ブアルたちにとっては、まったく経験した事もない、大きなセレモニーでしたが、それでも、こうしたものは、始まってしまえば、『ところてん』のように(・・・これは、この3人は知らない食べ物でしたが・・・)決められた順番に、どんどんと進んで行ってしまうものです。
だから、もう、見たこともない豪華な『昼食会』の後には、いつの間にか、これまた、まったく来たことのなかった『南島』の、その巨大な『国際空港』の出発ロビーに到着したのでした。
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************ ふろく ************
「ねえねえ、やましんさん、このお話しって、なんか他のと、雰囲気全然違うねぇ。」
あいかわらず、『不思議が池お気楽饅頭』を頬張りながら、幸子さんが言いました。
「そうですねえ。まあ、まだまだ動きが不安定で、『がたがた』『ぎしぎし』いいながらなんですよね。まったく、戦いもなければ、異世界も出ないし、宇宙人も幽霊もでない。あ、幸子さん以外は。」
「ふん!幸子は、女神様ですから。」
「ああ、そうそう。女神様も出ない。まあ、そこがいいところなんですよ。」
「たいくつじゃないですかあ! きと!」
「そうですねえ。でもね、実はこういうのが、本来の姿だったんですよ。このお話の。」
「ふぇ~~~。そうなんだ。最初からさっぱり、面白くなかたんだ。幸子が出るまでは。」
「ははは・・・ま、そう、『ふぇすな』。ははは・・・」
「そうかそうか、これが、原風景なんだ、じゃやあ、ほら、お饅頭、どうぞ!。 『原風景』ってのは、おおかた、殺風景なものだからなぁ。幸子の里もそうだったからなぁ。」
「そうなんだ・・・・・」
ふたりで、お饅頭を、じっくりと頬張りました。
ゆっくり・・・つづきます・・・
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