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#7 《17丁目》の異世界タクシー

 真夏の車内は極楽だが、窓から差し込む太陽は、俺にとっては敵でしかない。

 俺は日焼けはしないものの肌が弱くて、ボロボロになって、剥けてしまう体質なんだ。


「今日も30℃を超えるらしいわよ。尾田さん」

「あーはい。みたいですね」

「冷房の効いた車内は快適ね♪ まりな、倖せよ」


 彼女(まりな)は、身だしなみのいい女性で、彼女からはキツくない、いい匂いの香水が、車内にこもる。だが、それが長時間に及べば、その分、鼻も麻痺をしていく。

 彼女の目的地は旭川空港だ。かなりの距離が《見知街》からはあるのだが。


『大丈夫♪ まりな、キャッシュで支払いするよ~~ほらぁ。クレカ使ったら、尾田さんにも、負担がいくシステムなんでしょぉう? まりな、テレビの番組見てて知ってるんだからぁ♪』


 その言質があるから俺も、旭川空港に行くことにした。

 ただ、やっぱりと言うか乗客は、俺に強請るんだ。

「ねぇ~~尾田さん。尾田さんっ。こういう仕事してると、何か面白いこととかあるんじゃないのぉう? まりな、退屈なの♪ 何か、お話ししてよ♡」

 ほら、来た。こういう乗客が一番、厄介なんだ。

 今回は割と距離もあるし、ひょっとしたら最後までいくかしれない。


「まりなさん。《17丁目》ってご存知ですか?」


 ◆◇


 フムクロとの出会いもあって、俺は、あの日を境に《17丁目》に行くようになった。

 同時に、

(ここで、何か。仕事してぇなぁ)

 って、思うようになった。

 現実世界もいいが、やっぱり折角来た異世界を堪能しないなんて、あり得ないって思ったんだ。

「フムクロ。何か、俺でもここで出来そうな仕事ないかな?」

「人間を相手にする場所なぞないぞ、フジタよ」

「んなの、承知で聞いてんのっ、フムクロに!」

 俺が行くのは、フムクロの家か、行きつけの酒場(ギルド)っぽい場所だ。今日は、酒場に来ていた。生憎と、俺は酒が飲めない体質で、甘い果実のジュースを飲んでいる。

 通貨の持っていない俺はフムクロの驕りで飲んでいるから、余計にここで手に職が欲しかったってのもある。


「大分、ここの言語も分かるようにもなったし。ほら~~俺の仕事って、タクシーだから。話題も大事な訳よっ! 分かる? フムクロちゃん」

「分かりたくもねぇよ、フジタぁ~~」

 大分、フムクロとも仲良くなれた俺は、言い合いも出来るようになった。

 だからこそ、フムクロに驕り返したかったんだ。


「フジタ! お前、仕事が欲しいのかよっ!」


 そこへ、サイの顔をした厳つい身体の男が、ビールジョッキを持って、仁王立ちをした。勿論、そいつとも、俺はよく話すようになった。名前はグォリー。傭兵で、今は帰郷しているだけらしい。かなり、顔がフムクロと同じくらいに効くことを、俺は知っている。

「ぁ、ああ。したいんだけどぉ」

(こいつに頼むのも、なんか、アレなんだよなぁ)

 しかも、フムクロとグォリーは仲がよくないもんだから、余計に頼り辛いってのもあった。

 どうにか、この局面で天の助けがないものかって、普段、神って奴に頼まないのに、真剣に懇願をしてしまった。


「あらぁ~~なら。日雇いの登録をすれないいじゃなぁ~~い? それか、そぉねぇ? 自分で開業したらいいんじゃないのかしら♪」


 そうにこやかに言うのは、豊満な胸を強調する服を着た、売春婦の兎のギミィで、口添えをしてくれた。まさに、天の助けってやつだ。

 そんな彼女の言葉にフムクロが大きく頷いて笑った。


「開業なら。俺も手伝ってやるぜぇ、フジタよぉ」


 ◇◆


「ぇ、ええ?? ちょっと、待って?? ぇえっと。尾田さん、貴方、……頭は大丈夫なの?」


 うん、これこれ。この反応が、普通だわな。この間の、あの乗客(サラリーマン)のテンションが、ノリがおかしかったんだよ。

「ははは! まぁ、そんな頭のおかしい話ししかないですから、私のお気に入りの音楽でも流しましょうか?」

 俺も、プレイヤーに手をやった時、

「《17丁目》って、……確か、それって都市伝説か、なんかでしょうぉう?? まりな、知ってるよぉう??」

 まりなが、そうニコニコと俺に笑顔を向けてくれるのが、バックミラー越しに見えた。

 だから、俺も信号で止まり、顔を後ろに向けた。


「私は《異世界タクシー》を運営と経営をしてるんです」

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