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#39 娘の開戦宣言

 弟から送られて来た脳内の地図は、どこもかしこも。

 敵さんに囲まれているのだと分かるものだった。


(弱ったねぇ)


 ――『状況が芳しくないのはお分かりだと思いますが。そこを何とかするのが貴方の仕事でしょう?』


 耳許に響くダンマルの声に、少し殺気も立ってしまったが。

 今は、それをグッと堪えるしかない。

「ああ! そうだなぁああ‼」

 少し、声は感情のままに怒りの色で吐き出してしまう。

 

「早くっ、どうにかするんだ! フジタぁあ!」


 苛立ちのは背中の和泉も一緒だ。

 一刻も早くという心境だからだよ。


「はいはいはい。女王陛下様っ」


 苦笑して俺が頷いた時だ。


「お母さま‼」とどこからともなく和泉を呼ぶ女の子の声が響いた。

 それには和泉の表情が歪み。


 藤太の表情も強張ってしまう。


「じゃじゃ馬が、困ったものだよ」


 俺の耳元で和泉が言う。

 イケボに、鳥肌も立ってしまうのだが。

 それどころでなんかじゃない。

「親が親なら――その娘も同じなんじゃないのかなぁ?」

 俺も目いっぱいの嫌味を言い返してやった。


「親ぁ? ふん、それはお前も同じじゃろう。巨大なブーメランを放つな」


 確かになと俺も思っちまったのは、あえて言わないが。

 そのじゃじゃ馬な娘は、どこに居やがんだよ。


 ――『兄さん? どうかしたの?』


「ああ。新女王陛下が来やがりましたよぉう?」


 もうこんなの嗤うしかないんじゃねぇのかね。

 足掻いても、逃げたって――女の執念程、恐ろしい感情(もん)はないって言うじゃない?


「おい! 顔を見せなっ‼」


 俺は声を荒げて、娘に言ってやった。

 これで出て来ないってんなら、全力で――強行突破さ。


 ヴォン! と電子音が鳴り。

 宙には戴冠式前の、少女が浮かび上がっていた。

 赤茶の髪に、垂れ目で。


 姉の紅葉に似ている。

 血縁関係者としか言えないな、こりゃあ。


 紛れもなく――俺の娘だ。


 ――《母王よ! 娘であるアタシを残して行かれるおつもりですか!? アタシは、まだ17歳なのですよ‼》


 気の強そうな声に、また、俺は姉さんを思い出した。

 もしくは母さんだな。

 普段は甘い口調だが、怒るとこんな声になるのが特徴だし。

「……こっちからの声は、あちらさんには聞こえんのかよ?」

「いいや。言いたいだけじゃ、あの娘はな」

「へー~~そうなの。可哀想に」

 俺も、素っ気なく言い返した。

「可哀想な目に遭わせてるのはどこのどいつなのかなぁ? 藤太ぁ~~」

 頬を突いてくる和泉に、

「知らねぇなぁ」

 俺も笑うしかないじゃねぇか。


 ――《今から! 徹底的にお探ししますからっ‼》


 高らかに宣戦布告をされちまった。

 こいつぁ、ヤバい感が半端ない。


 ――《覚悟をなさって下さいなっ‼》


「やっばくねぇかぁ? なぁって……」


 40手前で、なんだってこんな目に遭うんだって話しだよ。

 まぁ、あれだな。


 因果応報ってヤツだ。


「いいから! 早く、車に走るのじゃ‼ 馬鹿者がっ!」


 俺にしがみつく和泉。

 少し身体が震えているのも分かる。


「ああ。鬼ごっこを始めようじゃねぇか」

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