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#38 策と弟

 俺は和泉を背中に背負ったまま走った。

 本当になんだって、愛車(アウディ)を置いて来ちまったのか。

 正直んところ後悔しかないね。


「お前。きちんと車を停めた場所に向かっておるのだろうなぁ??」


「ええ! 勿論ですよぉう?」

「……そうは見えぬが??」

 疑いの声で和泉が俺に言う。

 確かに、お前の勘は正しいよ、覚えているが道を反れちまってるかんな。

 道を普通に行ったところで、囲まれて殺されるのがオチってもんさ。


 なら、状況を確認してダンマルちゃんと協議をした方がいいってもんでしょうよ。


 ――『それで。兄さんは暴れたいんですか? たいんですよね??』


「待って? ちょっと、待って?? ダンマルちゃんってば、何を言ってくれちゃってんの」


 明らかに確定的な、断定的な言い方ってもんだ。

 お兄ちゃんをなんだって思ってんの、って話しさ。

 もう35歳以上のおじさんなのよ、お兄ちゃんってば。無理だって出来ないお年頃なのよね。


「暴れるのは二の次さ。今んところ大事なのは(カミ)さんさ」

「っふ、フジタぁああ~~♡♡♡♡」

 歓喜に肩に顔を埋める和泉はまるで猫のようだ。撫で声が聞えたのか。


 ――『盛らないで下さいよ? 状況が状況なんですからね?』


「盛ってなんかねぇ~~っしぃい??」


 ――『どうだが怪しいものですね! ったく!』


 電話の向こうのダンマルちゃんは激オコだ。

 いつもの短気と、俺の心配で一杯一杯なのは分かるよ。

 俺だって、こう見えてちょっと焦ってるんだからな。


「段々とさ。女王陛下探しが慌ただしくなってきてやがるよ。ダンマルちゃん!」


 ――『姫も、……娘さんも必死でしょうし。当然でしょうね』


 母親を見つけなければ、以後の20年近くは玉座に腰を据えなきゃなんねぇ。

 どこにも行けない籠の鳥になっちまうってこった。次の世継ぎを生まない限りはと。

 しかし、母親を見つけ出せば。


 またしばらくは自由を得ることが出来る娘だ。


「だよなぁ~~草生えるな」


 ――『それでも兄さんは、母親を強奪する真似をされるんでしょう? 悪魔ですね』


「そこな」


「ごたごた煩いぞ! お前らっ‼」と和泉が吠えた。

 恐らくは蚊帳の外でつまらないんだろう。

「いいから! 早く車に着くのだ‼」

「はいはい。その通りです、女王陛下様っ」

 俺も、

「ダンマルちゃん。とりあえず、辺りの地図や周囲の包囲網なんか脳に送ってくんない?」

 無茶苦茶に聞こえるかもしれないが、出来ないことを要求する気はない。

 うちの弟は万能なんだ。甘くみてくれちゃあ困るねぇ。


 ――『ったく! お土産は期待出来そうにありませんね。いい小遣い稼ぎに期待していたというのに』


「残念! 買ってあっりっまぁ~~っすぅうう」


 意気揚揚という俺の脳に地図やらなんやらと、希望したものが送信されて来た。

 流石は弟だわ。素直に脱帽するよな。


 ――『とっとと。終わらせてお土産を無事に運んで来て下さい!』


 女王陛下様よかお土産ですか。

 流石は金の亡者君だわ。


「ああ。そうするつもりだっつぅのっ!」

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