乱世を終える少女7
玄徳は本当に英雄だ。この孔融、北海の民衆に替わって、助けてくれた恩に感謝する。
孔融様そんなにお礼はいりません。人々を助ける為です。
ははは、玄徳は本当にさわやかな人物だな。
こちらへ。合わせたい人がいる。
子仲、こちらが前に話したことがある劉備、劉玄徳だ。
劉備様のお名前は伺っております。今日、この麋竺お会いできて幸せです。
子仲は徐州の別駕従事、陶謙殿の片腕だ。
お会いできてうれしいです。
玄徳は当世の英雄、子仲は国を安定させる才能の持ち主。二人ともお互いにお知りおきください。
孔融様、持ち上げすぎです。この麋竺はただの商人にすぎません。
小言をいうようじゃないが、子仲早く商売はやめて政治に集中した方がいい。
先賢も、君子は義を重んじて、利を重んじないという。商人ではやはりみっともない。
はは。
いいやいいや、お前に理を説いて、争ってもしかたない。
子仲、徐州の状況を玄徳に説明してやってくれ。
劉備殿、陶謙様を助けて、徐州の人々を救ってください。
どうしたんですか?
兖州牧の曹操が兵を挙げて徐州を攻撃し、彭城、小沛ともに陥落しました。
なんでそんなことが、孟徳はなぜ徐州を攻撃するんですか?
はい、それは徐州にとっては災難なのですが。
曹操が兖州を平定した後、琅琊に仮住まいをしている父の曹嵩を兖州に連れて行こうと考えました。
陶謙様は曹操に良くしようと思い、張闓を派遣して兵を率いて護送させました。
まさか、途中で張闓が曹嵩を殺害する等思いもつかずに・・・
(孟徳・・・)
もしその通りなのであれば、どうして曹操殿に説明して許しを請わなかったんですか?
私の見るところ、曹操は父の敵を名目にしていますが、実際のところ徐州を手に入れることが狙いです。
私たちがどのように譲歩しようとも、曹操は徐州をあきらめないでしょう。
劉備様、孔融様、兵を起こして助けてください!
この・・・
難しいことはこの麋竺も分かっています。
もし徐州を救っていただければ、万金の報酬も厭いません・・・
お金の問題じゃありません。
それでは、劉備様は曹操が徐州の人々を殺戮するのを見て見ぬふりをするのですか?
人々を殺戮する?
まさに。曹賊はすでに二つの城で殺戮を行いました。
これは孟徳の策略に違いない。
以前東郡の黄巾を平定した時、城内の人々を殺戮したという噂話を流して、相手の戦意を喪失させたことがあります。
はは、残念ながら、私の彭城の商店の腹心が見ています。
(嘘ではなさそうだ。孟徳はなんでこんなことを・・・)
もしそういうことならば、私は行ってみよう。
先に言っておくと、私は孟徳の人間性を信じています。何かしらの理由があるはずです。
今回、事情とその前後前後関係を調査し、双方の対立の解消に尽力したいと思います。
唯一保証できることは、何があっても徐州の人々がまた傷つくことにはさせないということです。
分かりました。全て劉備様にお願いします。
玄徳頼んだぞ。二人とも今晩は休んで、また明日にしよう。
こんばんは、劉備様。
麋竺姉さん、こんなに遅くに一体何の用ですか?
特に用事がなければ劉備様とおしゃべりしに来ちゃだめですか?
え・・・
入れてくれませんか?
・・・どうぞ。
はは~
劉備様は太平の世というのもはどういうものだと思いますか?
太平の世?
名君と賢い家臣、そして人々が安らかに暮らせる・・・ことかな?
まっとうな視点ですね。
麋竺は商人として思うことは、商人が自由に商売して利益を得、地位を獲得できる時代こそがいい世の中だと思います。
お・・・斬新な視点だ。
しかし賛成だ。
お、びっくりしました。劉備様は私の見方にこんなすぐに賛同してくれるのですか?
もし知ったら孔融様は鼻で笑うでしょう。
ははは、孔融殿に悪気はないよ。
先賢の孔子様の末裔として、固い考えを持っていることは当たり前のことだ。
はは、この話は孔融様に聞かれてはいけません。何があってもダメです。
劉備様は名儒家の盧植先生のところで学ばれたのに、なぜ違う考えを持っているのですか?
多分若いころに小さな商売をしたことがあって、皮膚感覚があるからだろう。
商人の存在によって財貨が流通し、人々は自分が生産したものを売って貨幣を得ることが出来る。
また貨幣を使って自分の欲しい生産物資や生活用品を買うことが出来る。
動機がどうであろうと、商人の出現は実際に人々の生活を大きく改善した。
・・・
劉備様は商人が安値で買って高値で売り、人々と利益を争っている事実をどう考えますか?
実際のところ、利益があるからこそ品物が合理的に流通できるんだ。
市場で不足している品物はいつも利益を求める商人によって産地から運び込まれる。
そして収穫が足りない時には、いつも商人がためてきた食糧を販売して利益を得る。
見たところ人々の儲けが減ったように見えるが、同時に貯蔵・運輸・販売にかかる費用が浮いているんだ。
それに商人はその分働き、リスクをとっている。合理的な利潤を得ることを非難することはできない。
・・・
はは、これは草鞋売りの意見だ。笑わないでくれ。
玄徳様の言葉、私は全く同感です。
麋竺は世の中の商人達に替わって、商人を正当に扱ってくれる玄徳様に感謝します。
いえいえ。
(劉備か、もしかすると私が探していた人かもしれない・・・)
(次の日)
え?黄巾は?
他に何の黄巾がいるのか?お前達を待っていたぞ。
北海の包囲はもう解決した。
こんなに早く。
私と子龍は昼も夜もなく急いで駆け付けたけど意味がなかったみたいね。
はは、お疲れ様。
ただ、無駄ではないよ。次は徐州に行かないといけないから。
子龍、私たちと徐州に行くのは問題ないだろ?
公孫讃様から、この2千の軽騎兵と私は玄徳殿の指示で動くように言いつけられています。
え、でもなんで突然徐州に行くことになったの?
私から簡単に説明します。
私は徐州から来た商人で麋竺と言います。
徐州は今曹操に殺戮される脅威にさらされています。
悲劇が起きるかどうかは、全て劉備様と皆さんの力量にかかっています。
そんなことが・・・
え?曹操様と戦うかもしれないということ?
安心しろ。兄貴と曹操様の関係があれば、少し話しただけで解決するよ。
でも・・・
よし、みんな出発だ。
兄貴、何人か逃げた。
うん。
・・・追わなくていいの?
子龍がすでに追っている。
そうなのか・・・私は気づきもしなかった。
へへ、兄貴これは一網打尽にしないといけないな。
子龍はさすが機転が利く、何も言わなくても大丈夫だ。
うん。
前に見えるのが琅琊だろう。
まさにその通りです。曹嵩翁が事件前に隠居していた場所は前方の、そう遠くない場所にあります。
麋竺姉さん、なんで張闓が曹嵩を殺害したか知っているの?
推測に過ぎないですが、多分お金の為です。
じゃあ張闓の経歴は知っているのか?
張闓の経歴は確かに問題があります。聞いたところだと、陶謙様に降伏した黄巾残党だとか。
黄巾?陶謙様も結構大胆な人の使い方をするんだな。
しかし張闓は徐州に来てから、立場をわきまえており、仕事の仕方も妥当で、陶謙様の深い信任を得ていました。
それだから、今回張闓が特別に曹嵩翁の為に派遣されたのです。
張闓が財宝を見て賊の心を取り戻すとは思いもしませんでした・・・
張闓はどれほどの兵を率いているんだ?今はどこにいる?
約五百人、みな張闓の直属部隊です。事件後は張闓とともに行方不明になりました。
五百人も?
陶謙様は曹操様の機嫌を伺うような態度をとっていて・・・
ん。何かおかしいぞ。
私が曹家について知っているところだと、曹嵩殿は元大尉の高官とは言え、そんなに大量の財宝を持っている訳がない。
少なくとも、張闓と五百人の兵が将来を捨ててまで今回のようなリスクをとる程の財宝はないはずだ。
それじゃ・・・なんで?
私も何も分からない。曹嵩殿の家にいって何かヒントを探しに行ってみよう。
まって、誰かきた!
ちょっと隠れよう。
なんてこった、全部探したが何もない!
お前があの爺さんが家に金を隠しているっていうからだ。爺さんを殺したのもくたびれ損だ!
俺を責めるなよ。あの爺さんのような高官が本当にあれだけの金しか持っていないなんて誰が想像するかよ。
お前だってそう考えただろう。
なんてこった。張闓とこれをやれば金持ちになれると思ったのに、本当についてない!
本当だよ。知っていれば最初から徐州に残って大頭兵をしていたのに。
誰だ?
捕まえろ!
兄貴、こいつが頭領みたいだぜ。
助けてください!私は関係ありません。みなあの張闓が仕向けたことです。
殺されたくなかったら、正直に答えろ。
張闓のくそ野郎が、あの爺さんがお宝を持っているって俺をだましたんだ!
そうでなければ、俺が度胸があるっていっても、手を下すものか!
全ては張闓がしたことだ!
ふん、張闓はどこだ?
張闓は淮南にいくと言っていた。みんなにあそこで隠れさせて知らせを待つと・・・
淮南・・・もしかして?
袁術?
張闓と袁術がつるんでいるの?
もしかするともともと袁術のスパイだったのかも。
しかし袁術と陶謙様は盟友・・・うん、もし私だとしても盟友のところにスパイを置いておくか。
それじゃあ曹嵩を暗殺したのは・・・曹操と徐州をけしかけるため?
うん、袁紹と袁術の姉妹はお互い並び立たない。袁紹は曹操を盟友として取り込んだ。
そして袁術は陶謙殿と同盟を組んで対抗しようとした。
そして陶謙殿が曹操に近づこうとしたから、袁術は孤立することを心配しただろう。
勢力のバランスを保つ為、彼女がスパイを動かして曹嵩を暗殺し、徐州に罪を擦り付けたとしても十分な理由がある。
・・・
玄徳様の洞察力、この麋竺敬服いたします。
私たちはこの陰謀を暴き出して、悲劇が起きるのを阻止しなくてはならない。
おお!ここに子龍が残した印がある!
子龍!
賊達は洞窟奥深くに潜んでいて、まだ私たちを見つけていません。
子龍よくやった。
みな一斉に突撃だ。今回全員捕えて、一人も逃がしてはならないぞ。
承知!
本当にすごいスパイだな!
だから私たちはスパイじゃないって。
ふん、まだ言い逃れをするか!将軍が来るのをまってお前達を片付けてやる!
どの将軍ですか?曹操殿の手下の将軍は大体知り合いだぞ。
お?この禁禁ちゃんのことを話しているの?
将軍!
(え、知らない・・・美少女将軍だ)
平原の劉備だ。急ぎの用があって曹操殿の会いに来た、お手数だが伝えてもらえないか。
え~~~(左右をしげしげと見る)
え、何がダメなんだ?
シシシ、あなたがみんながべた褒めしている劉備兄さんなのね。
私は于禁、禁禁ちゃんと呼んでくれればいいわ。
禁、禁禁ちゃん?
劉備殿何の用?先に曹操様とのアポは取ってある?
重要な知らせを曹操殿に伝えに来た。徐州の進攻を止めるようにお願いしに来た。
劉備殿、私たちを阻止しにきたのね。
そうじゃない、双方が人にけしかけられて大変なことを起こすのを避けたいだけだ。
じゃあ、お兄さん禁禁ちゃんについて陣に入って頂戴。
お願いします。
劉備兄さんは本当に颯爽とした方ね。
皆さんちょっと待っててね。曹操様に伝えるように人を手配するね。
この花の露は私が自分で作ったのよ。みんな召し上がれ~。
おお、いい香り!
みなさん楽しんでね。
ははは、この娘は本当にもてなすのがうまい。
うん、孟徳はまた多くの人材を得たようだ。
なんでか分からないけど、あの娘、どこか人を不快にさせるろころがある・・・
私もあまり好きじゃない。初対面であんなになれなれしい・・・
そういう風に言っちゃダメだよ。私だって兄貴と曹操様の関係もあるし色々お世話をするよ!
皆さんお待たせ~
曹操様は、もうすぐきます。
わはは、あなたの花露は本当においしい!
シシ、みんなが気に入ってくれたのならよかった。
こちらはきっと劉備兄さんの周りで知恵と武勇を兼ね備えた飛姉さんですね!
わははは、その通り!ぐっ(しゃっくりをする)
翼徳、お前飲みすぎだ。
わ、こんなきれいな長髪~雲長姉さんですね?
雲長姉さんは華雄を斬って呂布と戦って、本当に尊敬しています~
この人は?
私は簡雍。多分知らないと思う。
雍ちゃんね、かわいい。
う・・・
本当に劉備兄さんがうらやましい。雲長姉さんと飛姉さんだけでなくて、こんなにかわいい雍ちゃんも周りにいるなんて。
うう、それに引き換え禁禁ちゃんはいつも一人だ~
(近すぎる・・・)
え、君はこんなに利発で可愛いから、すぐに多くの新しい友達ができるよ。
劉備兄さん、本当にいい人~
は・・・
劉備兄さんだったら、きっと禁禁ちゃんの為に死んでくれますよね?
花露を飲んだのによけることが出来るなんて・・・
何?わお、頭がくらくらする・・・
毒を盛ったか!
や~ひど~い。そんな怖いことこの禁禁ちゃんが出来るわけないじゃな~い。
禁禁ちゃんはかわいい子供なんだから~
あ、言い忘れてた。この花露は酒じゃないけど、酔いやすいのよね。
于禁、なんで私たちを攻撃する?
ようやく徐州を落とせそうなのに、兄さんに壊されてたまるもんですか。
こんなことをして後で曹操様から罪を問われると思わないの。
ああ、何が起きたのか誰が知るもんですか。
名前の知れた英雄を倒せば、曹操様は必ず私をもっと寵愛してくださるわ。
では、禁禁ちゃんの幸せの為に、みんなちゃんと死んでくださいね?
ふん!
狂暴ね、見たところあなた達不服みたいね。
みんな、私たちの英雄をちゃんともてなしてあげて。
へへへ、禁禁ちゃんの幸せのために!
禁禁ちゃんの為に!あいつらを殺せ!
兄上、こうなっては彼らを傷つかないことは保証できないよ。
うん、しかたない。まずはここから出ることを考えよう。
えい、役立たずが・・・
逃げた・・・
彼女をかまうな、陣地にいる曹操軍が皆集まってきた。
みんな大丈夫?
子龍、お前達なんで来たの?
曹操陣営が混乱しているのを見て、麋竺殿に相談をしに行った。
麋竺殿が状況がおかしいというので、私は部隊を連れてきたんだ。
本当にいいタイミングで来てくれた。
玄徳様、これは一体何があったのです?
人に騙され、仕方なく曹軍とたたかった。
これは・・・これからどうします?
すぐに誤解を説明するのは難しい、まず郯城に行こう。
私がみんなの為に道を切り開く!
うん、ありがとう。
逃げられたか。
今夜我々が劉備を殺そうとしたことが、曹操様の耳に入ったら厄介です。
そうだ、まずいことになる。
幸いなことに、関与した者がみな死んで、あなたと私しか残っていません。へへへ。
そうだ、まずいことになる。お兄さんは禁禁ちゃんの為に黙っていてくれる?
へへへ、兄さんは禁禁ちゃんが一番すきさ。
う~お兄さん、最高。
だから禁禁ちゃんの為に死んでくれる?
このキモイ豚が。
・・・起こったことは大体こういうことです。
張闓が袁術のスパイだったなんて思ってもみなかった。
本当に知らずにとんでもない失敗をしてしまい、徐州の人々を苦しめてしまった。
麋竺姉さん、今回はお疲れ様。
劉備殿、なんとあっても調停を手伝ってくれ。
尽力します。
誰か、私の印を持ってこい。
これは?
もし劉備殿が徐州の危機を解決してくれれば、私は徐州牧の職を差し上げよう。
そして、もし劉備殿が徐州牧であれば、曹操もより容易に調停を受け入れやすいはず。
陶謙殿、そんなことをされなくても・・・
徐州の民衆の為、この劉備全力で取り組みます。
劉備殿はやはり仁義の人、徐州の命運は劉備殿にかかっています。
(劉焉はやはり人を見る目があるな・・・)
兄貴、前にあるのが曹軍の陣地だ。
こっちは数人で行って大丈夫?
みんな覚えておいてくれ。私たちは戦いに来たんじゃない。
おお、誰か来た。
スパイだ!捕まえろ!
俺たちはスパイじゃないよ。
申し訳ないが、平原の劉備が曹操殿に会いに来たと伝えてくれないか。
ふん、曹操様に会いたい?まず馬を降りてお縄を頂戴しろ!
お前、なんでこんなに道理が通じないんだ?
やはりスパイか、死ね!
え?なんでこんな・・・
彼らを傷つけないように注意しろ。
玄徳様、曹操軍の将官は城外で隊列を組んでいます。玄徳様に城を出て会いにくるよう言ってきています。
おお、今度は知っている人だといいな。
夏侯惇将軍だといいな。
余計なことを考えていないで、雲長と翼徳、私と一緒に城外に来てくれ。
分かった。
・・・
(え、この娘か・・・)