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三国ロマンス(1)  作者: かりん
5/10

乱世を終える少女5

ふ~思ってもみなかったよ。

劉備殿と一緒に来てよかった。

ん?確かこの家だったはず。

・・・

・・・そうなんだ。お父さんは戦死したんだ。

ぼうや、気を落とすなよ・・・

・・・

僕のお父さんは曹操様を守る為に犠牲になったの?

そうだ。君のお父さんは最後の最後まで英雄的な戦い方をしたんだ。

お父さんのおかげで、曹操様も私たちも生き残ることが出来た。

・・・そうなんだ。

お父さんは、曹操様が生き延びたって聞いたらきっと喜ぶよ。

曹操様のおかげで、みんないい生活が送れているんだから。

いい子だ・・・

もう少し大きくなったら、僕もお父さんと同じように、命をかけて曹操様を守る!

・・・

坊や、しっかり生き延びるんだぞ。

そうすれば君のお父さんも曹操様も嬉しい、私も嬉しい。

うん。

本当にいい子だ!姉さんに名前を教えて?

僕は昴、曹昴。

曹昴か、なるほど男らしい気概のある名前だな。

うん!

賊どもはすでに終結したようだ。

恐らく今夜、北と東の両方向に攻撃すると思う。

よし、偵察ご苦労様。

仁が順調に修復工事をしてくれたおかげで、今回の戦いはあまり問題がなさそうだ。

私たちは兵を二手に分け、防御施設を利用して戦おう。

仁と洪は私と一緒に北門に来てくれ。

淵と玄徳殿は東門に留まっていてくれ。

玄徳殿、これでどうかな?

私は問題ない。

よし、それではそうしよう。みんな損害を受けないように安全な戦いに気を付けてくれ。

・・・

・・・

月の色がきれいだ。本当に防御線によく合う夜だな。

・・・

・・・

(あの娘は本当にとっつきにくいな・・・)

これから私たちは防御施設に頼って戦闘を行う、お前は弓の使い手だから得意だよな?

・・・

・・・

(えい、賊共早く来い・・・)

いいね。すごくきれいな防御戦だった。ほとんど損害がなかった。

ふん。

元譲たちもきっと順調に終わらせただろう。

・・・

・・・

・・・・・・

・・・・・・

劉備

お?

もしもお前が今後姉さんに悪いことをしたら、私は死んでもお前を許さないからな。

え・・・

あと・・・

ん?

・・・・・・ありがとう。

・・・

(本当に変な娘だ・・・)

劉備兄さん、私たちはずっと陳留にいるの?

陳留にいるのも悪くないな、へへ。

あまり騒ぐな、兄上も考えがあるだろう。

はは、もちろん戻るつもりだよ。

(ただ、孟徳が今どうなっているかがわからないだけだ・・・)

よ!みんないるな。

元譲将軍。

玄徳殿、玄徳に頼まれてあなたを呼びに来た。

分かった。

来たか。

おう。

元譲の話を聞いたよ。この度は色々と助けてもらったみたいだな。

大したことないよ。

一緒に歩こう。

分かった。

気持ちいいだろ。黄金のような麦の波、私はここが大好きなんだ。

小さい時、私はいつもここに来た。

ここで走って、飛んで、叫んで、転げまわって・・・

・・・

だけど、一番好きだったのは、ここでおじさんおばさんたちが麦を収穫するのを見ることだった・・・

収穫の喜び、明日への期待、家族の幸福、苦労と喜び・・・

うん、こんな今みたいな夕陽だった。

・・・

ただ、今は・・・ここに誰もいなくなってしまった・・・

・・・

五千人の命・・・

五千人の命、五千の家庭の幸福、私の理想の為に亡くなってしまった・・・

なんの見返りもなく・・・

・・・

・・・一体何が正しいのか分からない、

ただ分かっているのは、今の世の中に必要なのは今のままの継続ではなく、変革だということ。

振り返っているわけにはいかない。

立ち止まっている訳にはいかない。

私の背中には五千人の命と、五千の家庭の幸福の責任がある。

いや、今後はもっと無数の、幾千幾万の人々がその幸福と生命を捧げてくれるだろう。

私は迷うわけにはいかない、躊躇している訳にはいかない。永遠に前に進まなくてはいけない。

私を邪魔しようとするものは、全てを躊躇せず叩き砕く。

もしこの時代が求めているのが救いでなければ、私の剣で終わらせてしまおう!

・・・

・・・

・・・

もう少し一緒にいてくれ・・・

うん。

・・・

・・・

本当に永遠にこうしていたい・・・

しかし、お前にもやるべきことがたくさんあるだろう。

うん。

行くといい。歴史はお前と私をいつまでもここに留まらせてくれない。

もう少し手助けしなくても大丈夫か?

ふん、この私を誰だと思っている。

もしこの曹操が自分の力で這い上がる力さえないのなら、天下を語る資格なんかない。そうだろう?

はは、そういう孟徳なら私も安心だ。

ふふ。

それなら、行くぞ。

うん。

私はもう少しここにいるから、お前は一人で行ってくれ。

うん。

付き合ってくれてありがとう。

うん。気を付けて。

ついに平原に帰るんだね。

本当にもう残らないの?兄貴、私は気にしないよ。

兄上が決めたことだ、つべこべ言うな。

私はただ兄貴の幸せを思って~

・・・

玄徳殿お待ちあれ!

元譲将軍どうしてきたんだ?

うちの孟徳から届け物がある。

ん?

これは・・・孟徳の髪の毛?

はは、私もどういうことかよく分からない。

だが玄徳殿、必ずちゃんと保管して、無くさないでくれよ。

ははははは!

・・・

(孟徳・・・)

(彼女髪を切ったのか?)

わお、前の方で何があったんだ?誰かが関所を作ったみたい。

袁紹の旗印・・・?

行ってみてみよう。

この道は通行を許さん。引き返すといい。

え?でも私たちは平原に帰らなくちゃいけないんだよ。

通ってならんといったらならんのだ。

なんで!

なぜかって?それは我が主、袁紹様の命令だからだ!それにこの高覧の剣がそう言っているからだ!

記憶違いでなければ、袁紹様の領地は渤海では?

ふん!袁紹様は諸侯連盟の盟主だ、文句でもあるのか?

・・・

高将軍、私は平原令の劉備です。将軍にはご配慮をお願いできませんか。

あなたがあの劉備?

へへ、ビビっただろ?それでも俺たちを通さないのか?

ふん!劉備だとしたら、なおさらのこと鄴城を通すわけにはいかない!

雲長姉さん、お願いしてだめなら無理やりするしかないよね。

翼徳、お前また暴れるつもりか。

兄上、どうする?

強行突破しかないだろう。命まで奪わないように気をつけろよ。

よし。私に任せて。

ははは!身の程知らずの口の利き方だな!

では、華雄を斬り、呂布と戦った英雄の力をこの高覧に見せてみろ!

袁紹軍は追撃をあきらめたみたいだな。

へへ、雲長姉さんを目にして、彼らもそんな度胸がないんだろうよ。

ふん。

(袁紹に何か大きな企みがあるようだ,天下が太平に過ごせる日々もあまり長くはないのではないか・・・)

劉備兄さん、また手紙がきたよ。

へへ、また曹操様の手紙か?

これは曹操様のだ、あ、飛姉さん触っちゃだめだよ・・・

俺に見せて!

ええ!飛姉さん、そんな勝手に開けちゃだめ・・・

ううおお・・・(読んでいる)

なんだって、彼女は兖州の黄巾残党を討伐しているって・・・

おお、それに東郡の太守をすることになったと。

あ~あ、つまらない。仕事の話ばかり、何か面白いことが見れるかなと思ったのに。

はは、これが彼女の性格だ。

こんなすぐに立ち直るとは、さすが孟徳。

そしてこれが讃兄さんの手紙。

お?見せて。

・・・

どうした?

讃と袁紹が開戦した。

え?

なんてこった、袁紹はおそらく以前から計画していたんだ。讃、今回はまずいな。

なんで突然こんなことに・・・

兄上、私たちはどうする?

手紙の中ではそうは言っていないが、讃は助けが必要だ。

みな準備をして出発するぞ。

分かった。この前の曹操様の件もまだ袁紹にお返ししていないからね。

前に見えるのが界橋だ。手遅れになっていなければいいが。

兄貴、報告。すでに戦いは始まっている!

袁紹軍が全面的に優勢で、公孫讃軍は懸命に守っているが、長くは持ちこたえられなそう。

私たちは袁紹軍の側面を攻撃する。まず彼らのリズムを崩し、讃を助ける。

分かった!

よし!袁紹軍は乱れてきたぞ、今のうちに讃の陣地に救援に行こう。

讃!大丈夫か?

丁度今お前が来なかったら、私はやられるところだったよ。

袁紹、あの小娘本当に狡猾だな・・・

この小さな兄弟は?

私は趙雲、趙子龍、常山から参りました。

公孫様は当世の英雄と聞き、国に報いる為に参りました。

私は今英雄といえるような状況じゃないぞ。

この劉備、劉玄徳こそが本当の英雄だ。

またあとで話そう、袁紹軍の後続部隊が来るぞ。

讃は一度休んでいるといい、ここは我々に任せろ。

分かった、頼むぞ兄弟。

子龍、紹介するよ。こいつが私の妹の関羽雲長だ。

こちらが、酒が冷める前に華雄を斬り、呂布と戦った三英雄の関羽将軍ですか?

趙雲です、初めまして関将軍!

あなたもなかなかの腕のようですね。時間が出来たら一緒に切磋琢磨しましょう。

雲長姉さん、どうして人をのけ者にするのかな?

おう、俺は張飛だ、呂布と戦った三英雄の一人だぞー。

張将軍初めまして!

よそよそしいな。翼徳姉さんでいいよ!

・・・翼徳姉さん?

そうだ、劉兄さん、雲長姉さん、そして俺が翼徳姉さんだ。

・・・初めまして翼徳姉さん(顔を赤くする)

ははは、なんで顔が赤いんだ?

(まだ顔が赤い・・・)

可愛いイケメンね。

そういえば、私もお姉さんよ。

・・・お姉さん?でも見たところ私と同じ年くらいに見えるけど・・・

子龍は本当に口がうまいんだから~

ほらほら、簡雍、彼をからかっちゃだめだよ。

子龍、今回助けてくれてありがとう。お疲れ様。

ただ玄徳様の指示に従っただけです!

うふふ~~~

あ・・・負けたのか

あ!お前達はあの時のやつか?

お前達、覚えているぞ!

あ・・・私たちは誰だっけ?

ふん、とぼけたって無駄だ!

私も覚えている、酸枣に行く途中で出くわした怖い姉さん!

ばれてしまったか。

うふふ~~~嬉しいわ~~かわいい子羊ちゃん達が姉さんのことを思ってくれたなんて~

だけどお前達は董卓の手下じゃないのか?なんでこんなところにいるんだ?

二人はもしかすると袁紹は以下の名将、顔良と文醜じゃないか。

ええ?

うふふ~~さすが賢いわね。

姉さんが顔良よ。この変な姉さんが文醜、忘れちゃだめよ~

あ・・・そういう言い方する?

わお!だったら前の襲撃は袁紹の命令だったんだ。

この恥知らず、ここで死ぬといい!

うふふ~~せっかちな子羊ね。

姉さんの時間があるときに遊んであげるから、焦らないでね~

じゃあ、今日はここで失礼するわ。

顔をきれいに洗って、姉さんを待っていてね~うふふ~~

どこに行く!

・・・!

!!

あ、逃げられた。

ふん!

雲長、追うな。

まず讃と合流しよう。

讃、今回は一体どういうことなんだ。

うん、北平に戻ってからすぐに、私は袁紹からの密書を受け取った。

袁紹は私と共同で出兵し、冀州を分けることを約束したんだ。

私は特に悪い話でもないと思い、その話に乗ったんだ。

袁紹の話に乗った?袁紹には気をつけろって言ったじゃないか。

私も早く勢力を拡大したいと思っていたからね。

それに、私も考えがあった。わざと進軍を遅くして、袁紹に先に韓馥を叩かせようと思った。

ところが、私が界橋に着いた時、韓馥はなんと冀州を袁紹に明け渡していたんだ。

・・・

そして袁紹は私に、私がやることはもうないから北平に帰るように言ったんだ。

こんな腹立つことがあるか!それでそのまま界橋の地で彼女との戦いを始めた・・・

その後のことは知っているだろう。こっぴどくやられてしまった・・・

讃、お前は全く袁紹にはめられたんだよ。彼女は冀州でこのことをずっと前から準備していたんだ。

もし私の推理が間違っていなければ、袁紹がお前と起兵する約束をしたのは、韓馥をダメ押しで脅し、冀州を引き渡させる為だ。

私もなんとなくそういういう気がする。

それに、以前平原で我々を襲撃した刺客がだれか知っているか?

李傕と郭汜じゃないのか?

顔良と文醜だ。

・・・

袁紹、あの小娘達、やり方が容赦ないな!あんな前からすでに準備をしているとは・・・

この借りを返さなければ男じゃない!

・・・

讃、実際のところ勝てる余力あるのか?

・・・ない。

そうだろう。だから今必要なのは講和を結ぶことじゃないか。

しかし・・・講和するにしてもその条件もない。

へへ、条件が無ければ作ればいいじゃないか。

おお、飛ちゃん何か考えでもあるのか?

うん、この軍師である私の見立てでは、袁紹はきっと私たちにまだ攻撃する余力が残っているとは思っていないと思う。

彼らの攻撃部隊が撤退するときに反撃をすれば、意表を突くことが出来る。

運がよければ、袁紹を捕らえることが出来るかもしれない。

・・・そんなにうまくいくか?

袁紹が全く準備をしていないということはないだろう。

しかし、ここで勝ちに行く決心を見せることこそが講和の条件の一つになるのは確かだ。

やるなら早い方がいい、みんなもう少し頑張ろう。

よしきた!

前の方では顔良と文醜の部隊が丁度本陣に戻る準備をしている。陣形は崩れているよ。

へへ、いい機会だ。

よし、奴らに反撃の機会を与えてはいけない。必ず一戦で壊滅させるぞ。

全軍、私について突撃!

おお!

承知!

なんでここに・・・

ああ、油断した。

子羊ちゃん達は後ろから来るのが好きだとは知らなかったわ、うふふ~

次に会った時に、私たちと真剣勝負しましょうね。

じゃあ頑張って~

逃げられた。追いかける?

彼女たちにはかまうな、私たちの目標はただ一つ、袁紹の本陣だ。

へへ、袁紹の意表をついてやったぞ。

しかし残念なことに袁紹の首を取れなかった。

もう一度突撃だ、次は袁紹をやってやる。

よし、もう一度だ。

だが袁紹を甘く見るなよ。

よし!

くそ!

袁紹様、ここは一旦この場所を捨て、鄴城に撤退した後に再結集しましょう。

だめだ。

袁紹様、既に兵は闘志を失っています。顔良と文醜将軍も行方不明です。

だめだ!

この袁紹、ここで戦死したとしても、公孫讃なんかにやられて尻尾を巻いて逃げるわけにはいかない!

兵士たちよ、聞け!

おお、袁紹様?

袁紹様!

教えてくれ、この袁紹はどういう人間だ?

袁紹様は、四代続けて三公を輩出した、天下に知らない人のいない袁家の当主です!

大きな声で教えてくれ、この袁紹はどういう人間だ?

袁紹様は冀州牧で、天下の一州の主であり、諸侯連盟の盟主です!

そうだ、それがこの袁紹だ!

必ずこの袁家を誰もが到達したことのない栄光の地に導く人間だ!

おお!

これがこの袁紹だ、必ずこの国の頂点に立つ人間だ!

おおお!

この冀州の掃討と北方の統一はこの袁紹にとって第一歩に過ぎない。

公孫讃のようなやつが、この袁紹の進む道を邪魔しようだと?一時たりともありえん!

おおおお!

勇敢な兵士たちよ、武器を取れ、袁紹とともに前進するぞ!

おおおおおお!袁紹様万歳!

(本初様・・・)

わお、袁紹軍がいきなり強くなった。

うん、さっきと全然違うな。

ふん・・・

袁紹軍は士気と秩序を取り戻した。ここまでだな。

惜しかった、もう少しだったのに・・・

(袁紹、あなどれないな・・・)

そうか、惜しかった。

うん、しかし袁紹も私たちに勝ちにいく意思があることを十分に理解しただろう。

こういう和議で必要なのは「趨勢の変化」と「振り上げたこぶしを下してやる」ことだ。

どういうこと?

「趨勢の変化」というのは、戦闘開始後からずっと順調だった袁紹に、流れが変化したことによって危険が迫っていることを理解させること。

そうすれば、袁紹もこれを終わらせようと思うだろう。

お~、分かった。じゃあ「振り上げたこぶしを下してやる」というのはなんだ?

袁紹はプライドの高い人間だ。何かいい口実がなければ、本当はもう収めたいのに最後までやめられないだろう。

うん、袁紹は確かにそういう人間だ。さすが兄弟よくわかっている。

それじゃあ何をすればいい?

振り上げたこぶしを下してやるには、何か口実が必要だ。私が曹操に手紙を書いて、仲介を手伝ってもらうことにしよう。

問題はこの「趨勢の変化」だ。袁紹軍の実力をもう少し弱くするのは難しい。

それじゃあ、我が軍の力を強化する方法はないだろうか?例えば、援軍・・・?

しかし、黄河以北で力のある勢力はすでにみなここにいるではないか?

あの・・・

子龍、何か考えがあるのか?

河北の地にもう一つの大軍がいます。これは黄巾残党の黒山軍の一派です。少なくとも数万人はいるでしょう。

現在の首領は張燕で、常山の人です。それなので私もたまに話を聞きます。

黒山黄巾賊か、確かにある程度の実力があるな。

もし彼らが私たちに味方するような様子を見せれば、袁紹にとっても無視できない危機といえるだろう。

黄巾軍か。子龍、お前彼らに連絡取れるか?

私は張燕と面識がありません、それにあの黄巾軍は神出鬼没で、拠点がどこにあるのかわかりません。

それではどうしようもないじゃないか・・・

誰か連絡とれるかもしれないよ。

・・・

へへ、行ってくる。

(しばらくした後)

ただいま!

おいしいご馳走はどこ?飛姉さん。

この馬鹿、食べることしか考えていないんだから!

話は分かった。だけど私たちはただ黙って使いに行かされるわけにはいかないよ。

ふん!いつもは私たちをほったらかしにして、何かあったときだけこうやって呼び出すんだから。

考えが甘い!張燕達の拠点が近くの山里にあるなんて言うわけないだろ!

・・・

あ!

姉さん、なんで私よりも馬鹿なの?

あ~、この二人馬鹿すぎてやってらんない!

でも!でも!でも!

いずれにせよ、張燕の説得の手伝いはしないからね!

そうか、じゃあしかたないな。どうせ・・・

どうせ張角ちゃんはただの操り人形の教主だからな。

なに!?

なんでもない、別の方法を考えてみる。

誰が!誰が!操り人形だって??

ふん!それじゃ誰が本物の教主か見せてくれる!

それに!私をちゃんづけで呼ぶな!

分かった分かった!

ふん!

本当に負けたよ・・・いいや、丁度張燕に会いにいく用事があったし。

お~、一緒に行こう!

讃、じゃあ私たちは出発するよ。

おう、袁紹軍もすぐには動きはないだろう。頼むよ兄弟。

なんでまだつかないんだ?道でも間違えたか?

腹減った~~

騒ぐな騒ぐな。道はきっと間違っていない。私たちは宝の地図を持っている。

なんで宝の地図なの?

どうして張燕がここに拠点を構えているのか知ってる?

伝説で、この山里にお宝が埋まっているらしいからなんだ。

黄巾賊は宝の地図を手に入れたけど、まだ具体的な場所を見つけられていないんだ。

だから張燕は思い切ってここに山城を作った。そうすれば安心してゆっくり探せるから。

ただ、この二年で宝を見つけられたかどうかは分からないけど・・・

宝か~~ 宝物の中で転げまわりたい~~

あ、地図によると、山谷を越えたらもうつくはずだ。

おお、ついた!

この場所は本当にひっそりと隠れた場所にあるな、もし道案内がなければ見つけられない。

お!誰か来たか。

そこでこそこそしているのは誰だ?

黄巾の民なのに、この教主を見てもひざまずかないのか!

きょ、教主!

いかにも、この天師こそが天公将軍張角、張燕を呼んで来い!

おお・・・

(こうやって、劉備は難なく黒山黄巾首領の張燕に会うことが出来た・・・)

そういうことか、お前が広宗を陥れた劉備か。

道理であの三人の娘がまだちゃんと生きている訳だ。

教主がこられたとき、誰かと思ったよ。

劉備殿は温和な方だな。彼女たちをかくまっていてくれてありがとう。

彼女たちはただの子供だ。

あなたの言っていることは良く分かった。ただ二つ問題がある。

おっしゃってください。

あなたがいように、黒山軍はただ公孫讃を支援する姿を見せればよくて、実際に戦う必要はない。

その通り、目的は講和に持っていくことだ。

一つ目の問題は、どうしてあなたの判断が正しいか信じることが出来るかということだ。

私は黒山軍を戦火に巻き込みたくない。

それは・・・

あなたは広宗を陥れた英雄だとしても、聞いた話は当てにならない・・・

良ければ私と勝負してみて、私の目で劉備の雄姿を確かめさせてくれ。

・・・

分かった、首領のいう通りにしよう。

本当に楽しみだ。

さすが英雄の劉備だな。

それでは、黒山の張飛燕、どうぞよろしくお願いします!

分かった。

ああ、さすが当世の英雄、この飛燕敬服します。

あなたの判断は正しいと信じよう。一つ目の問題は解決した。

二つ目の問題は、我々黒山黄巾にとって、なんのメリットがあるかということだ。

首領は何が欲しいんだ?

黒山黄巾は、大部分がこの乱世で自立して生きていくのが難しい人たちだ。

だから黄巾に入らざるを得なかった、仕方がなく賊として生きていくしかなかった。

我々が最も欲しいものは平穏なんだ。

首領の考えというのは、朝廷に帰順するということか?

そうだ、もし正式な身分で生きていけるならば、誰も賊なんかしたくない。

うん・・・

多分私の高望みかもしれないが。

いや、機会がないわけではない。

東郡一帯の黄巾も黒山軍に属しているんだよな?

そうだ、いつも連絡を取り合っている。

私の友人で東郡太守の曹操は丁度東郡黄巾の討伐の命令を受けたところだ。

うん、聞いた。私の仲間を苦しめている。

お前を曹操に紹介してもいい。

もし、お前が曹操様が東郡の黄巾を撫順させるのを手伝ってくれれば、彼女はきっとお前の願いを満足させられるだろう。

うん、それはいい話のように思える。

これは私にとってもいいし、東郡の仲間にとってもいい、曹操様にとってもいい。理想的な案だ。

首領どうする?

劉備殿の好意、この飛燕、従わないわけにはいかないな。

それならそういうことで、援軍の件はこの飛燕に任せてくれ。

わかった、張燕殿、頼む。

(このように、劉備は公孫讃に対する黒山黄巾の指示をすんなり取り付けた。)

(しばらくして、曹操の調停は効果を挙げた。)

(袁紹は講和に応じ、双方鄴城の北で盟約を結んだ。)


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