3話 「春いちばん」
2日、3日に1度の投稿になると思いますがよろしくお願いします。
「すごい、本当に来たぞ」
「ああ、ああこれからこの国はいったいどうなるんだろうな」
門から続く大通り、道を作るようにたくさんの人が集まってくる。人々の見つめる先には大きなユニコーンが引く真っ白な城がある。
「きゃぁー!ロッソ様よー!」
「おお!すべての国の騎士団長が尊敬するほどの実力を持つと言われる赤鬼のロッソか!」
「あれ、ヴェール様じゃねーか!」
「ヴェール様ーこっち見てー!」
人々がフリーデンスのメンバーの事を口にする。
「ヴェール、手ぐらい振ったらどうだ」
「いやだねロッソ、私が手を振るのも手を繋ぐのもブランだけだもんね」
「やれやれ、本当にお前はブランっ子だな。それでロドこの後はどうすればいいんだ?」
ロッソはやれやれと両手をひらひらさせると切り替えてロドに話をふる。
「この国の王様から伝令を受けた人によると、土地の用意はしてあるそうだからそこに今向かっているの」
「おう、準備がいいな」
「でも、そのあと王様に会いに行けと言われたから断った、会いにくるならわかるけどなぜ私達が挨拶するのに会いに行かなければならないの、ほんと何様なの」
ロドは少し怒ったような言い方で、ブランくん以外の人間が私達に指図するなんて身の程をわきまえるのよ、と続ける。
「いや、王様だよ」
「わかってるうるさいヴェール」
「まぁまぁ落ち着けってロド、前回もそんな感じだったからブランと別行動になったんじゃねーか」
「わかってる...」
ロドは前回の事を思い出したかのように少し頭を下げながら言う。
たくさんの人が集うなか周りとは少し違う雰囲気を漂わせる少女がいた。
「おお、あれがフリーデンスか」
顔が隠れるほどのローブを被っているが動くたびにジャラジャラと金属のような物が擦れる音がなる。
「城を抜け出して来た甲斐があったわ。でもそろそろ戻らないとバレちゃうわね」
少女は振り返るが名残りおしそうに最後にもう1度だけ見ると群衆の中から抜け出す。
「ふふっ、今日は良いものが見れたわ」
少女は嬉しそうにはにかむ。
「おっと、こっちのほうが近道だった」
人気のない道を少女は走っていく。
「フリーデンスがきやがったか」
「そうっすね、兄貴ヘヘッ」
「何がおかしい」
「いやぁ、そろそろ狩場を変えなきゃならねぇなと思いやしてね」
いかにもガラの悪そうな2人組の男が辛気臭そうにはなしている。
「そうだな、ここでもそこそこ儲けたし移動するか」
そんな事を話していると前からジャラジャラと何か小さなものが走ってくる。
「兄貴あれ、何か持ってますぜヘヘッ」
「そうみたいだな、ここでの最後の狩りとしますか」
少女は目の前の2人組に気づかず走ってくる。
ドンッ
「いてて、なんだ?」
少女は尻もちをつくと何にぶつかったのか確認するために顔を上げる。
「おっと、ぶつかって悪かったな。私は急いでいるから先行くぞ」
少女は立ち上がると走り出せなかった。男がローブを引っ張っると少女の顔があらわになる。
「おっ、なかなかの上玉じゃねーか」
「兄貴こいつすげぇ金目の物持ってやすぜ」
「な、何をするのだ!」
薄暗い人気のない路地裏には似つかわしくない、綺麗な金色の髪に碧眼の少女は一瞬何をされたのかわからなかったが少し落ち着くと状況を理解する。
「お前たち私に手を出して後で後悔しても知らないぞ!」
「威勢だけはいいな嬢ちゃん、でもよぉ嬢ちゃん、嬢ちゃんに何ができるってんだよ」
「そーだぜヘヘッ、痛い目見たくなかったら大人しく言うこと聞いてもらえるかなぁ」
「言うことなんて誰が聞くか!ふふん!私にはこれがあるんだぞ!それっ!」
少女は白い玉をピンクのドレスから出すと地面に叩きつける。たちまち叩きつけられた白い玉から煙がでる。
「ごほっごほっ、なんすかこれ、目がかゆいっス」
「ごほっ、やりやがったなあのチビどこ行きやがった!」
少女は白い煙を利用して逃げれなかった。
「ごほっごほっ、め、めがー!ごほっごほっ」
煙がだんだんと薄くなっていく。そこにはあいも変わらず少女と2人の悪党がいた。
「このクソガキよくもやってくれたなぁ」
「い、いやそんな、ち、近寄るな!」
「ヘヘッぐへっ!」
突然片方の男が倒れる。倒れた男の上に白髪の少年が立っていた。
「やっぱり、時には自分の勘を信じてみるのもいいね。よかった間に合ったみたいだね」
「なんだ、おまえぐふっ!」
「よし、これで終わりかな」
少年はパンッパンッと手をはらうと少女をみる。
「か、かっこいい」
「ん?何か言った?」
少女はキラキラと瞳を輝かせて少年を見つめると何か決心したように唾を飲み込む。
「ブラン様〜、急に走り出さないで下さいよ〜」
「あははっ、ごめんごめん」
「こ、これはブラン様一体何があったんですかっ!」
「いやぁ、ねっ」
ブランは頭に手をおき「テヘッ」と可愛らしくはぐらかそうとする。
「テヘッっじゃないですよ。でもブラン様が無事で、」
「そ、そこの白いお前!」
「ん?僕?」
「なんですか、あなたは人が話している最中で、」
「私の執事になれ!」
「え、」
「え、嫌だけど」
雲ひとつない青空に暖かな陽射しが射し、心地よい風がふいていた。